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調査回答拒否に対する戒告処分の取消


(感想)
今回のケースでは、問題点を視認していることもあり、戒告処分に処するのは難しく、賠償についても、実損分は支払いをしてもらったこともあり、損害賠償は棄却されたことは良くあるケースであると思う。

(事件概要)
本件調査票の提出は拒否するが、業務において支障なきように現認してもらいたいと述べ、本件調査対象部位に入れ墨がないことを視認により確認された。
Xに対し、同人が刺青の有無などを訪ねる調査に所定の書面で回答しなかったことが職務命令違反に当たるとして、懲戒処分としての戒告処分

(訴え)
Xが、Y市に対し、上記調査は憲法13条などに違反する違憲・違法な調査
上記調査に回答するように命じた職務命令及び本件処分も違法
本件処分の取消ならびに国賠法1条1項に基づく慰謝料等を求めた。

(判決)
Xが求めた本件処分の取消は認容したが、損害賠償請求は棄却
X自身は刺青をしていないのであるから、本件調査対象部位をH所長らに視認させることにより、損害賠償を認めるほどの精神的苦痛を受けたとは認めがたい。
交通局から本件調査票を提出するよう求められたことについても、Xの人格的利益が侵害されたものと評価することはできない。
本件処分が違法であるとはいえ戒告にとどまるものであり、経済的不利益についても、判決により本件処分が取り消されることで、上記不利益は回避され、Xの名誉も回復されることになるのであるから、別個に慰謝料の支払いを命ずるまでの必要はない。
本件調査により特定の職員が刺青をしているとの情報を含む本件刺青情報を収集することはY市の個人情報保護条例6条2項に違反し違法
差別情報を収集することを目的とするものであるから、同項に反し違法
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平成24年5月26日、今日は天気が良いのに、子供が風邪で外に出れず・・・・。残念!

暇を持て余しながら、本日読んだ判例は、配置転換命令です。

いつもの通り、二つの内容(①就業規則の記載、②配置転換が権利の濫用に当たらないか)に争点が認められ、結局のところ、毎回と同様の判例が出た感じです。



(事件概要)

Xは、Yに入社後、大阪営業所の営業担当として勤務 → Yは、親会社からの売り上げ減少による人件費削減の指示を受ける。(平成21年3月23日頃まで)→ 削減対象の従業員を全体で9名とすることを決定(同日以降)→ Yの東京・大阪の各事務所において、個別の従業員に対する退職勧奨が開始(同月25日以降)→ Yは、4回にわたり、Xに対し退職勧奨に応じるよう面談 → Xはこれを拒絶し、自ら退職する意思はない旨回答(平成21年4月16日)→ Yは、Xに対し、同日付の解雇予告通知書により同年5月16日付で解雇する旨の意思表示(翌17日)→ Xは、Yに対し訴外労働組合に加入した旨通知 → 同組合は、Xに対する解雇の撤回を協議事項に掲げてYとの間で数回の団交を行った。→ Yは解雇の方針を撤回しなかった。(平成21年6月22日)→ 大阪地裁に対し、解雇無効を理由に地位保全及び賃金仮払いの仮処分申し立てを行った。(同年12月18日)→ 人員整理の必要性があるとは認められず、解雇権濫用 → Xの賃金仮払いの一部を認容する決定(本件処分決定を踏まえて)→ 解雇を撤回、本件仮処分に基づく賃金仮払いを行う。(平成22年2月22日)→ ①Xに対し、本件解雇を撤回、②22年3月1日より名古屋営業所の「輸出入カスタマーサービススタッフ」としての勤務を命ずる旨の辞令 → R社の100%出資にかかる日本法人であるY社が、従業員である原告Xに対してした同社の名古屋営業所への配転命令が無効 → XがYに対し、配転先である同営業所における雇用契約上の義務を負わないことの確認を求める。→ Xに対する解雇の意思表示行為が不法行為に該当する。→ 民法709条に基づく損害賠償の支払いを求めた。

配転命令 :Xは、1か月に1回程度、有給休暇を取得 → 病気の母親に付き添って病院に送り迎えしていた。(平成22年9月22日)→ 母親は死亡(配転命令に異議)→ 同年3月1日以降名古屋営業所において就労

名古屋営業所 :所長が不在のうえ、社員は7名の小所帯で、営業部門3名を支えるカスタマーサービススタッフ2名がいるという状況 → 輸出案件も1か月で10ないし20件程度と必ずしも多くなく、カスタマーサービスの部署しかなく、そこで輸入案件とともに輸出を取り扱って処理してきていた。(配転後)→ 大阪営業所におけるXの後任者はいなかった。→ 大阪から新幹線通勤をしていたが、交通費については、全額Yが負担

民法709条(不法行為による損害賠償) :故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

契約書 :平成18年11月にYと雇用契約を締結 →「本契約に基づく被雇用者の就労拠点は、大阪に所在するYのオフィスとする。→ Yの業務上の必要性に応じ、被雇用者は業務遂行のために転勤あるいは出張を求められる場合がある。→ Yは親会社、支社又は日本における関連企業またはそれに類するほかの場所へ業務遂行のために、被雇用者を配転あるいは出向させる絶対的な権利を有する。」との記載 → Xは、Yとの採用面接などにおいて、同条項の削除を求めなかった。→ 高齢の母親がおり、叔父も入院していること、家のローンがあることから大阪以外での勤務が困難である旨話をするなど、勤務地限定の合意があることを前提とした話をしていない。

解雇予告通知書 :同年5月16日付で解雇する旨の意思表示(解雇理由)→ 大幅な業績悪化に伴い全世界規模で組織を改編せざるを得なくなり、日本支社大阪事業所営業部においても剰員を生じたためと記載


(考察)

本件配転命令の適法性 :勤務地限定の合意があったか否か(上記契約書の通り)→ Yにおいては、最終的に従業員の同意を得ることはあるとはいえ、勤務場所を異にする配点が行われていたことからすると、Xが主張するような勤務地限定の合意があったとは認められない。→ 名古屋営業所の位置づけや同営業所においてXが従事した業務内容などを勘案 → 解雇を撤回し、Xが職場復帰するという平成22年3月時点において、あえてXを輸出案件を特化した、あるいは輸出案件もできるカスタマーサービススタッフとして同営業所に配転する必要性及び合理性は認めがたいと判断(Xの営業職としての資質)→ 問題があったとまでは認められない。→ 業務上の必要性及び合理性があると認めがたい本件配転命令は、権利を濫用した無効なもの → Xは、名古屋営業所において勤務する雇用契約上の義務を負っていないと判断(不法行為)→ Xの復職に当たって、不当な動機目的をもってなされたものと推認 → 損害賠償請求権を発生させるに足りる違法性を有している。→ 不法行為に該当(損害額)→ 社内規定では認められないにもかかわらず、Xが申請した新大阪名古屋間の新幹線利用にかかる通勤費を全額負担している。→ 配転に伴って、一定の配慮をしている。→ 配転命令後、毎日ほぼ定時に退社している。→ 大阪営業所で就労していた時と帰宅時間が著しく異なるとは認めがたい。→ 母親は平成22年9月22日に死亡、叔父は入院中であり、毎日介護する必要があるとはうかがわれない。→ 生活上の不利益はさほど大きいとは認められない。→ 精神的損害の慰謝料として50万円が相当

XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及び、その額 :人員削減の必要性について疑義(しかし)→ Yは、親会社の指示に従い人員整理に踏み切らざるを得なかった状況 → Yにおいて特段Xに対する不当不法な目的などがあったと認められない。→ Yは、整理解雇の有効性を十分に認識 → 整理解雇の有効要件毎にその充足性を慎重に検討して整理解雇を行ったと推認できる。→ Yの判断について明白重大な誤りがあったとまでは認めがたい。→ Xに対して、本件仮処分決定に従って金員を支払っている。(仮処分決定後)→ 解雇の意思表示を撤回 → XとYとの間の雇用関係が回復している。→ 損害賠償請求権を発生させるに足りる違法性を有していたとまで評価することはできない。
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