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不正アクセスに関する懲戒処分


(考察)
今後のマイナンバー制度導入に関しても、興味深い内容であると思われる。懲戒処分の度合いを知るにも良い判例であると思われる。

(重要文言)
Xが部下に指示して情報ネットワークシステムにおける自身のIDに特定利用権限を設定させた行為、当該権限を行使して本来の閲覧権限ではアクセスできない各フォルダおよびその中のファイルにアクセスした行為
地公法33条の信用失墜行為ならびに同法29条1項各号(懲戒事由)ならびに同法28条1項3号(降任事由)に該当

懲戒権者が裁量権の行使としてした懲戒処分は、社会観念上著しく妥当を書いて裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認められる場合でない限り、違法とならない。

<実損>
新聞報道により、広く市民に知られるところとなり、信用失墜の度合いも小さくない。
かつての部下であるFらに対し、その抹消を執拗に要求
夜間にサーバー室に侵入させてまで実行させるという隠ぺい工作を行っている。
事後対応も悪質であることのほか、過去に懲戒処分歴もある。

(事件概要)
Xは、C課長の本来の閲覧権限ではアクセスできない各フォルダおよびその中のファイルにアクセスした。
Xに特定利用権限が設定されていたことがYの知るところとなった。
アクセスログ調査により、Xによる本件アクセス行為が明らかになった。
Yは、これら一連の事象に関して、Xを含む関係者に対して、懲戒・分限処分を行った。
Xに対しては、20日間の停職及び課長から主幹への降任

(訴え)
Y組合に勤務する公務員であるXが、地方公務員法29条1項各号に基づき20日間の停職とする旨の懲戒処分及び同法28条1項3号に基づき課長から主幹へ降任する旨の分限処分を受けたことについて、いずれの処分も違法であると主張
その取消を求めた。

(判決)
本件懲戒処分を行ったことが、処分権者の裁量を逸脱・濫用したものとはいえない。
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懲戒処分の有効性

(考察)
今回の懲戒処分は当たり前の対応に思えるが、それでもなお院内にとどまるなどの考慮において全てにおいて有効とは認められない事は納得しづらい。

(重要文言)
<3か月間の停職>
3か月間の停職をもって対応したことは重きに失する。
懲戒処分には社会的相当性がない。
① Xの非違行為は決して軽微な態様のものではないが、前回の懲戒処分がなされてから4から5年後になされたもの
② 基本的には病院内部にとどまる行為
③ 患者に対して直接損害を与えるものではない

<降任・降格>
人事上の措置として特段違法と評価されるところは見当たらないこと等からすると、人事権を濫用したものではなく有効

<不法行為>
懲戒処分は無効であるが、客観的に合理的な理由があったなどの事情に照らせば、不法行為にはならない。

(事件概要)
医師Xが3か月間の停職の懲戒処分、医長から医員への降任、それに伴って降格されたことについて、これらが無効であるとともに、Xに対する不法行為に当たる。
① 医長として勤務し、本件降格前の給与を受ける雇用契約上の地位の確認
② 本件降格前の賃金額と実際に支払われた賃金額との差額等の支払い
③ 停職期間中に支払われるべき賃金等の支払い
④ 慰謝料300万円等の支払い

(判決)
病院の管理職として院外処方を推進する義務があったのに方針に従わず、それを妨げる行為、
検査室を私的に利用した上に、私物を撤去して退去するようにとの院長の命令にも従わなかったこと
パワハラをしたとして同僚を誹謗中傷、同僚の私事(懐妊)を病院内に公にしたことを指摘
懲戒処分には客観的に合理的な理由がある。

住宅手当等の不正受給を理由とする懲戒処分


(重要文言)
全体の奉仕者である公務員の法令に従う義務(地公法32条)に違反
その職の信用を傷つけ、職員の職全体の不名誉となる信用失墜行為(同法33条)
同法29条1項1号及び3号の懲戒事由に当たることが明らか
停職6か月という処分は重い処分ではあるものの、これが停職にとどまっている以上、裁量の範囲を逸脱したものと認めることはできない。
① 本件非違行為の態様
② その結果の重大性
③ 公務員の職が被った信用毀損の程度
④ 市民に与えた影響
⑤ 非違行為発覚後のXの対応等を考慮

(事件概要)
Xは、住居手当として月額2万8,000円の支給を受けていた。
住宅を購入
住宅手当として月額8,000円が支給
Y市はXに対し、従前通り借家に居住している前提での金額を支給
毎月2,400円多く支給し続けていた。
住所変更などの手続きを行わず、不正に住居手当及び通勤手当を受給し続け、新聞報道されたことでY市の信用を失墜させた。
弁明の内容などから反省の態度が見られないことを理由に、停職6か月の懲戒処分
虚偽申告をして融資を受けるなど、日ごろの勤務態度にも問題があることを理由に、分限免職処分

分限処分(ぶんげんしょぶん) :一般職の公務員で勤務実績が良くない場合や、心身の故障のためにその職務の遂行に支障があり又はこれに堪えない場合などその職に必要な適格性を欠く場合、職の廃止などにより公務の効率性を保つことを目的としてその職員の意に反して行われる処分のこと。

(訴え)
Xが、住宅手当及び通勤手当の不正受給等を理由に明石氏公営企業管理者から停職処分及び、分限免職処分を受けた。
事実誤認などがあるからいずれも無効であると主張してその取消を求めた。

(判決)
停職6か月という処分は重い処分ではあるものの、これが停職にとどまっている以上、裁量の範囲を逸脱したものと認めることはできない。
分限免職処分の処分事由が、本件懲戒処分事由とほぼ重複し、既に停職6か月という重い処分がされていることからも、相当なものという事はできない。

遅刻などを理由の停職処分の有効性

(重要文言)
<損害賠償の範囲>
Yの担当職員がXの弁明にもかかわらず、職務上通常尽くすべき調査義務に違反
Yによる本件停職処分は国家賠償法上も違法であり、YはこれによりXが被った損害を賠償する責任がある。

本件停職処分がなければ昇給できていたと主張し、逸失利益の支払いを求めたが、これを裏付ける証拠はないとされた。

(経緯)
平成22年○月○日 Yは、Xが「平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間に、少なくとも72回にわたり、電車の遅延などを理由として出勤次元に遅れた上、72回のうち71回について、部下の職員に指示して、出勤記録を出勤の表示に修正させた」
Xを停職3か月の懲戒処分
本件停職処分を行った事実を報道機関及びYのホームページなどに公表

(訴え)
Xが、Yに対し、本件停職処分の取消を求めるとともに、本件停職処分に伴う減収分や慰謝料等として557万198円の損害賠償の支払いを求めた。

(判決)
本件停職処分を取り消すとともに、Yに対し、386万1,239円の支払いを命じた。
期末勤勉手当などの返納分86万3,449円
本件停職処分中の3カ月分の給与183万4,086柄
期末勤勉手当の減額分76万3,704円
慰謝料20万円
弁護士費用20万円

性的行為を行った准教授に対する懲戒処分

平成24年4月1日、今日はエイプリルフールでしたが、日が変わってしまったので、もう嘘はつけないですね。

今回は、停職処分を行った大学の話です。これだけ問題を起こした准教授に対して、懲戒解雇でも良いのではと思う私自身に対して、判決は次の通りでした。

少し残念な結論を見た気がします。

ただ、就業規則の取り決めについては、勉強になる話を頂くことができました。


(事件概要)
平成20年11月、週刊誌に被告Y大学の准教授である原告Xが、新入生歓迎会の後、帰ろうとしていた女子学生Aを自らの研究室に連れ込んでレイプをした旨の記事がXの実名入りで掲載(臨時教授会)→ Xの懲戒処分について審議を行った結果、Xの行為は大学の名誉または信用を傷つけ、また、大学の秩序、風紀または規律を乱したもの(就業規則37条1項5号、6号の懲戒事由に該当)→ 同条2項3号の停職6か月の処分を行うことが相当であるとの決議(不服審査委員会)→ 同様の決定(平成22年3月17日)→ Xに対し、停職6か月の懲戒処分を発令(Xの主張)→ 同処分の無効確認並びに停職期間中の賃金478万余円などの支払いを求めるとともに、不法行為に基づく慰謝料220万円などの支払いを求めた。(不法行為)→ Yに故意または過失があったとは認められない。(懲戒処分の公表)→ Xの氏名を特定しておらず、公表の内容も処分事由を要約して行ったに過ぎない。→ 不法行為責任が否定 → Yの裁量を逸脱した違法があるとしてこれを取り消した。(しかし)→ 不法行為に基づく慰謝料請求は棄却

(考察)
主張① 平成12年5月の時点、Yが認定したXの行為を懲戒する規定は存在しなかった。→ 現在の懲戒処分に関する規定をその制定以前の行為に適用することはできない。(判決)→ 法人化前のQ大学から法人化後のYに勤務するようになった際、別に辞令の交付を受けた事実は窺われず(法人化前にXが行った行為に対する就業規則の適用に関して)→ XとY間において別段の合意がされた事実も認められない。(Xは、Yが法人化される前に行った行為)→ 就業規則37条1項各号に該当する事実が明らかになった場合 → 同条2項各号に定めるところに従って懲戒処分を受けることについて合意したものと認めるのが相当

主張② Yが認定した「女子大学院生と深夜かなりの時間、二人きりで研究室で過ごした」という事実は、仮にそのような事実が明らかになったとしても、「性交渉が疑われる」ものではないから、懲戒事由に当たらない。(判決)→「研究室は、教育及び研究のための施設として教員に使用を許可しているもの」→ 学生が安心して教育を受け、研究を行うことができるように配慮すべき立場 → 自ら、深夜に大学院生であるAを研究室に誘い、密室である研究室において性交渉の事実をうかがわれるような状況を作り出した行為 → 就業規則所定の懲戒事由に該当 → 就業規則37条1項5号、6号に該当

主張③ Yが、不服審査手続きにおいて、Xの代理人弁護士の同席要求を許さなかったこと、および、Xに反論の機会が与えなかったことは、手続上、違法である。→ 不服審査手続は、内部手続きである。(不服審査手続きに関する規定)→ 代理人の出席を認める規定はない。(Yが代理人弁護士の同席を認めなかったとしても)→ 手続きとして不相当であるということはできない。→ Xは事情聴取において十な反論の機会が与えられた。(本件通知を受け取った後)→ 事情聴取を行うとして呼び出しを受けたにもかかわらず、2度にわたって欠席したことが認められる。→ 反論の機会が与えられなかった旨の主張は事実に反する。

主張④ 停職6か月の処分は重すぎるなどの理由から、Yのなした懲戒処分は違法であると主張 → 一定の非難は免れない。(平成10年4月にセクハラに相当する行為)→ 始末書を提出したにもかかわらず、その約2年後の12年5月に研究室において性交渉の事実を疑わせる状況を作り出している。(XがAと性交渉に及んだ当時)→ 配偶者がいたものであり、Xの行為は強い道徳的批判に値する。(事情聴取)→ Aとの性交渉も同意の上であれば問題ないとの開き直りとも受け取れる態度を示していた。→ 停職処分を選択したこと自体は相当(本件処分以前)→ Xに懲戒処分歴は窺われない。(一方)→ Xは同僚教員からも非常に有能な研究者と認められる存在 → AがXから交際を強要されたような事実も窺われない。(12年5月から約8年半が経過した時点)→ 引き続きXがYの准教授の地位にあることを考慮 → 記事が公表されたことによるY大学の社会的信用の低下は限定的なものに留まる。(停職期間中)→ 賃金の支払いがなされないのみならず、Yの施設の利用もできない状態 → Xが被る不利益も大きい。→ 停職期間としてはせいぜい3か月程度にとどめるのが相当(停職期間を6か月間)→ Yの裁量を逸脱した違法があるというべき(本件処分)→ 相当性を欠き、Yの懲戒権を濫用したものとして、違法、無効であるというべき
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