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派遣労働者の派遣先における黙示の労働契約の有効性


(考察)
派遣労働者の派遣先での従業員としての地位の確認は、これまでも多くの判例が存在し、法律上違反をしていても、それによりすぐに無効とはならないという結論が多く、今回についても不利益をこうむっていないという点で、主張を否定している。
今後、法改正によりどのように判例のスタイルが変化するかが楽しみである。

(重要文言)
労働者派遣法が、労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講じる
派遣労働者の保護などを図り、
派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする
行政上の取締法規

取締法規:特定の行為や状態の発生を防止するために定められた規定。法学上,効力規定に対する概念。私人に対して一定の行為を制限または禁止する規定で,警察法規がその例である。公共の安全,秩序の維持をはかることを目的とするから,その違反に対しては制裁を加えたり,現状回復などの措置を講じたりするが,その制限禁止に違反してなされた法律行為の効力には, 原則として影響を及ぼさない。

労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合、特段の事情がない限り、そのことから直ちに派遣労働者と派遣元の間の雇用関係が無効になるものではない。

仮に、同法に違反する事実が認められたとしても、直ちに法律上保護されるべき利益が損なわれたものとみることはできない。

<黙示の労働契約が成立するか否か>
派遣元の企業体としての独自性の有無
派遣労働者と派遣先の間の事実上の使用従属関係
労務提供関係及び賃金支払関係の実情などを検討

(事件概要)
X5は、平成16年9月1日から17年7月31日まで派遣従業員として、Y1に就労
同年8月から18年1月31日までY1と期間従業員として労働契約を締結し、就労
同年2月から同年8月まで、Y3と派遣契約を締結し、Y1に就労
同年9月から同年12月まで、期間従業員として就労
19年1月から20年3月31日まで、Y3と派遣労働契約を締結し、就労
平成20年2月頃無断欠勤
派遣就労を終了することに決定
同年3月26日から、Y2に派遣されて就労
平成21年2月、Y3とY2との間の派遣契約が解除
Y3は、X5の派遣労働契約の終期である同年3月末日を待たず、同年2月28日又は同年3月4日に解雇

(訴え)
X1およびX2はY1を派遣先、Y4を派遣元とする派遣労働者として勤務していた者
Y1との間で労働契約が成立しているとして、労働者たる地位の確認および賃金の支払いを求める
Y1およびY4に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うように求める

X3及びX4は、Y2の雇止めが無効
Y2に対し、地位の確認および賃金の支払いを求める。
Y2及びY1に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うように求め

X5は、Y3を派遣元とし、Y1その後はY2を派遣先として就労
Y1との間で労働契約が成立している
Y1に対し、地位の確認および賃金の支払いを求める
Y1、Y2及びY3に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うように求める

(判決)
何らかの権利又は法律上保護された利益が侵害されたとは認められず、不法行為が生じるとはいえない。
派遣登録をし、派遣労働者として就労することを認識した上でY1における就労を継続
派遣労働契約に基づく相応の賃金の支払いを受けており
不利益が生じていたものとは認められない。
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派遣社員らに対する雇止めの有効性

(重要文言)
派遣先が実質的に派遣労働者の採用、賃金額その他の労働条件を決定し、
配置、懲戒などを行うなどして、
派遣労働者を派遣先の労働者と同一視することができるような特段の事情がある場合には、
派遣先と派遣労働者との間において、黙示の労働契約が成立していると認める余地が生じる

Y4社において、独自の判断でX1及びX2の賃金を決定、労働時間の管理

Y1社が採用面接に類した質疑応答をした上で、同人らを受け入れることが可能であることをY4に伝えていた。
しかし、両人を選定したのはY4であって、上記面談があったとしても、Y1において、採用行為を行ったとまではいうことができない。

仮に派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情がない限り、そのことだけによって派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはない。

<雇止めの有効性>
受注変動による要員の増減は期間従業員及び派遣従業員によって調整されていることが認められ、
Y2社の期間従業員の労働契約書には、契約更新の判断基準として、「会社の経営状況による契約期間満了時の業務量」との記載がされている。
受注量の増減に対応して期間従業員の増減を行う事は当然に予定されていた。

<不法行為>
労働者派遣法が「行政上の取締法規であることを踏まえれば、仮に、同法に違反する事実が認められたとしても、そのことから、直ちに派遣労働者の個々具体的な法律上保護されるべき利益が損なわれたものとみることはできない」

仮にY1社において労働者派遣法に違反する何らかの事実が認められたとしても、X5の何らかの権利又は法律上保護された利益が侵害されたとは認められず、Y1社に不法行為責任が生じるとはいえない。

(事件概要)
X1、X2は、Y1社を派遣先、Y4社を派遣元とする派遣労働者
平成21年2月 Y1からY4に対し、X1及びX2が行っていた業務に関し労働者派遣契約を更新しないとの連絡
同月16日 Y4はX1及びX2に対し同年3月31日の期間満了をもって派遣労働契約を終了すると通告
X3及びX4は、Y2に雇用された期間従業員
平成21年1月 リーマンショックに起因し、受注量の急減などにより、X3及びX4を含む期間従業員265名全員との雇用契約を同年3月28日で打ち切ることとし、通知
平成16年9月1日から17年7月31日まで
X5は、派遣従業員として、Y1に派遣
17年8月から18年1月31日まで
Y1社との間で期間従業員としての労働契約を締結し就労
18年2月から同年8月まで
Y3と派遣労働契約を締結し、Y1に就労
18年9月から同年12月まで
Y1に期間従業員として就労
19年1月から20年3月31日まで
Y3と派遣労働契約を締結し、Y1で派遣従業員として就労
20年2月頃 無断欠勤だったこともあり、Y3はX5の派遣就労を終了
20年3月26日 Y2社に派遣されて就労
21年2月 Y3とY2との間の労働者派遣契約が同契約の定めに基づき解除
Y3は、X5の派遣労働契約を、終期を待たず、同年2月28日又は同年3月4日に解雇

(訴え)
Y1社との間で労働契約が成立しているとして、地位の確認及び平成21年5月以降到来する分の賃金の支払い
Y1及びY4に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うよう求め
Y2の雇止めが無効
Y2に対し、21年3月29日以降の労働者たる地位の確認
21年5月以降到来する分の賃金と満期慰労金の支払いを求める。
Y2及びY1に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うよう求める。
Xら(X5、X1からX4)は、Y3を派遣元、Y1社、その後Y2社を派遣先として就労
Y1との間で労働契約が成立しているとして
Y1に対し、労働者たる地位の確認および21年2月以降到来する分の賃金と満期慰労金の支払いを求める
Y1、Y2及びY3に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うよう求めた。

(判決)
X3は、Y2社の期間従業員として就労し、その間、10回にわたり雇用契約が更新、その後、派遣従業員として就労
再び期間従業員として採用され、同一業務についていた。
合計約3年6か月にわたって期間従業員として就労し、その間11回の契約更新を経ているもの

偽装請負(違法派遣)に関する交代要請の正当性

(参考文言)
派遣法違反の事実を認めつつも、通常、偽装請負それ自体が、労働者の雇用関係に直接不利益を与えるものとは解されない。

<派遣法26条1項7号、40条1項、41条3号>
派遣先は労働者派遣契約において「安全及び衛生に関する事項」や「苦情処理に関する事項」を定める義務があり、このことは偽装請負(違法派遣)の場合でも異ならないところ、設けられていない中で、派遣先による交代要請は安易なもので正当な理由がなく、交代条項に基づく権限を濫用した

(経緯)
B社と国Yが設置する神戸刑務所長との間で管理栄養士業務委託契約を締結
管理栄養士X1が本件刑務所に派遣
本件刑務所総務部用度課長の主導のもと、管理栄養士の交代要請をされる

(訴え)
これらが原因で就労の機会を奪われたことから、損害賠償責任を負うと主張

 本件業務委託契約は偽装請負
 正当な理由がないのにBに交代要請をし、実質的に違法な退職強要などを行った
 職場環境調整義務を尽くさなかったこと等

(判決)
G用度課長も苦情・要望の処理を放置し、容易に交代条項の規定により交代要請を行おうとしたとして、交代条項に基づく権限を濫用したものとして交代要請は違法
本件刑務所長及びG用度課長には過失があるとして、X1の控訴を認容
経済的損害(120万円)、精神的損害(30万円)、弁護士費用15万円の合計165万円を認めた。

派遣労働者の契約終了

平成24年4月10日、今日は入園式で一日仕事という仕事をせず、子供との時間を過ごしました。
本当に子供の成長の早さには驚かされるばかりです。

今日は、話題の派遣事業に関する判例です。
リーマン・ショックの影響で派遣切りが行われ、これまでの判例と同様に黙示の労働契約に関しては、否定されています。
しかし、自分のこれまでの知識の中で、派遣先に対して、派遣元と共に共同不法行為として損害賠償を求めた判例はこれが初でした。




(事件概要)
平成20年11月初めの時点、リーマンショックによる世界同時不況の影響(21年1月)→ 各派遣会社との派遣契約を解約し、解消する方針を急遽決定(平成20年12月2日)→ Y2は、Y1から中途解約の通告があったことを理由に、X3を含む34名の派遣労働者に対し同月末日をもって解雇する旨を通告 → 受注高の減少によるとの簡単な説明をしたのみ → 具体的な説明もせず、雇用継続や就業機会の確保に向けた努力や配慮の姿勢を示したりすることもなかった。(Y3)→ Y1に対し、解約時期について交渉を行うとともに、X2らに早期退職になる旨通告(X2との話し合いの結果)→ 有給消化を消化、合意退職扱い(X2に対し)→ 単発の仕事であれば新たな派遣先を紹介することができる旨申し出た。→「結構です。自分で探します。」と答えたことから、新たな派遣先を紹介することはなかった。(Y4)→ Y1に対し、中途解約の撤回を申し入れる。(翌2日)→ 解雇せざるを得ない旨伝えた。(同月11日)→ 再就職の支援に向けてできる限りの努力をする姿勢 → 訴外J社の正社員の求人募集の情報を得て、X1に紹介 → 応募書類の提出もしなかったため、Y4が詫びることになった。→ 被告派遣会社Y2・Y3・Y4社(Y2ら)から被告Y1社に派遣労働者として派遣される形式で就業していた原告Xら(平成21年1月9日)→ X1(同月31日)→ X2(同年2月19日)→ X3につき、それぞれY2らから解雇(X2は合意退職扱い)→ Y2らは名目的雇用主にすぎず、X1らの実質的な雇用主はY1 → X1らとY1との間に黙示の雇用契約が成立 → Y2らによる解雇も実質的にY1社が主導して行ったもの → X1らの解雇は解雇権の濫用に当たる。(Y1に対し)→ 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金の支払いをそれぞれ求める。(X1らを解雇したこと)→ X1らの雇用契約上の地位を不当に侵害するもの → Y1とY2らとの共同不当行為に当たる。→ 600万円の請求

Y2、Y3、Y4 :業務請負業、一般労働者派遣業、人材紹介事業等を目的とする株式会社 → Y1にも労働者を派遣


(考察)
黙示の雇用契約 :派遣元事業主が名目的な存在にすぎず、派遣先事業主が派遣労働者の採用や解雇、賃金その他の雇用条件の決定、職場配置を含む具体的な就業態様の決定、懲戒などを事実上行っている。(派遣労働者の人事労務管理など)→ 派遣先事業主によって事実上支配されているような特段の事情がある場合であることを必要とする。(X1らのY1の事業所における就業)→ 実態としても労働者派遣 → X1らにおいても雇用主はY2らであるとの認識をもって就業 → 派遣労働者の人事労務管理などを事実上支配していたような事情は窺えない。→ 黙示の雇用契約が成立するといえる事情は認められない。

共同不法行為の成否 :中途解約は、法的にX1らの雇用主の地位にないとはいえ、著しく信義にもとるもの → 不安定な地位にある派遣労働者の勤労生活を著しく脅かすもの(Y3)→ 解約日を9日間延長するとともに、有給休暇の消化、自己都合による欠勤の場合にも給与相当額を補填 → 考慮しても、派遣先事業主として信義則違反の不法行為が成立する。→ 慰謝料の支払いが命じられた。(Y2)→ 自ら雇用主として契約責任を果たすための真摯な努力をすることを怠った責任は重い。→ Y1の行為と共同不法行為を構成 → 精神的損害に賠償責任を負うと判断(Y3,Y4)→ 派遣元としてできる限りのことをしていた。→ 不法行為を成立することを否定
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Author:roumutaka
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