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準委託契約者の不法行為の有効性


(事件概要)
Xの業務を遂行していたY1がX社と協業関係にあるY2社の副社長として競業行為等を行ったとして、XがY1に対して、労働契約上の職務専念義務違反もしくは競業避止義務違反、または準委任契約上の善管注意義務違反、忠実義務違反、競業避止義務違反、報告義務違反もしくは告知義務違反あるいは不法行為に基づき、Y2社に対しては共同不法行為に基づき、損害賠償などの支払と求めた。


準委託契約(仕事の完成ではなく、一定の事務処理行為を行う事)
① 勤務実態
② 報酬の取扱 責任者としてこれに見合う報酬を得ていた。(24年1,000万円→26年4月以降月額75万円)
③ 契約締結の経緯 建築人材派遣事業などを目的とする会社の代表取締役を務め、平成20年10月頃業績不振、これ以降、XはY1の経験に期待し、建築事業本部長として業務を遂行
④ 待遇
等の事情を総合考慮
Y1はX社の指揮監督下において労務を提供し、労務に対する代償を支払われていたとは認められない。
労働契約ではなく、準委任契約としての性格を有する業務委託契約と認めるのが相当

準委任契約の受任者は
① 善管注意義務を負い(民法644条):Y1との間で業務委任関係を継続するか否かをX社が判断する上で重要となる競業に関する情報について報告すべき義務を負う。
→ 平成26年3月時点で報告を受けていれば、同年4月以降、Xは本件契約を継続しなかったと認めれる。
民法644条 :委任者の注意義務、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う

② 委任者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図り、委任者に損害を及ぼさないようにすべき義務を負う
③ 次の諸事情を総合考慮の上、競業禁止義務や競業に関する報告義務を負う。
 契約内容や
 契約締結の経緯など

(判決)
X社は、平成26年9月、契約を解消したと認められるところ、同年3月25日に前記の報告を受けていれば、同年4月以降は本件契約を継続しなかったと認められる。
前記報告義務違反に基づき、X社に対し、同月以降の本件契約を継続したことにより被った損害として、同月分から同年7月分の報酬相当額である300万円の損害賠償責任を負う。

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正社員と契約社員の労働条件の相違

(事件概要)
Y社と有期労働契約を締結して勤務しているXが、
無期契約を締結している正社員とXとの間で、
無事故手当、
作業手当、
給食手当、
住宅手当、
皆勤手当、
通勤手当、
家族手当、
賞与、
定期昇給、
退職金

に相違があることは労契法20条に違反しているなどと主張

・労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認めらえるものであってはならない。

(訴え)
① 正社員と同一の権利を有する地位にあることの確認を求める
② 主位的に、平成21年10月1日から27年11月30日までの間に正社員に支給された本件諸手当との差額の支払いを求め、
予備的に、不法行為に基づき、上記差額に相当する額の損害賠償を求める。

契約社員と正社員との間に相違はなく、当該業務に伴う責任の程度に相違があったとの事情もうかがわれない。

<正社員就業規則>
配転条項 :業務上必要がある場合は従業員の就業場所の変更を命ずることができる旨の定めがあり、正社員については出向を含む全国規模の広域異動の可能性がある
等級役職制度 :公正に評価された職務遂行能力に見合う等級役職への格付けを通じて、従業員の適正な処遇と配置を行うと共に、教育訓練の実施による能力の開発と人材の育成、活用に資することを目的として、等級役職制度が設けられている。

<契約社員就業規則>
配転条項 :配転又は出向に関する定めはなく、就業場所の変更や出向は予定されていない。
等級役職制度 :設けられていない。

(判決)
無事故手当、
作業手当、
給食手当、
通勤手当、
→ これらは不法行為に当たると判断

住宅手当 :不合理と認められるものに当たらない
正社員については、転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得る。
正社員に対して上記の住宅手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえない。

皆勤手当 :不合理と認められるものに当たらないとした判断は是認できないとして、高裁に差し戻し
Y社の乗務員については、契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから、
出勤する者を確保する事の必要性については、職務の内容によって両者の間に差異が生ずるものではない。
労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当

<差額賃金請求>
① 労契法20条は、職務の内容等の違いに応じた均衡の取れた処遇を求める規定である。私法(私人としての利益や関係について規定した法律)上の効力を有し、有期労働契約のうち同条に違反する労働条件の相違を設ける部分は無効となる。
② 同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではないと解するのが相当
③ 労契法20条に違反する場合、正社員の定めが契約社員であるXに適用されることとなると解することは、就業規則の合理的な解釈としても困難

→ 本件確認請求及び本件差額賃金請求は理由がない。

<損害賠償請求>
① 両者の労働条件の相違が不合理であるか否かの判断は規範的(何が理想で何が理想でないかに則って)評価を伴うものである。
② 当該相違が同条に違反することを争うものが、それぞれ立証責任を負うものと解される。



男子学生によるセクハラ行為の存否と職場環境配慮義務


(事件概要)
XはY2学園に雇用され、非常勤講師として稼働
① Xが、Y1から授業中に臀部を触られるなどしたため、多大な精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づき慰謝料などの支払いを求めた。
② XとY1との関係の改善に向けた方策を何も講じなかった。Xが多大な精神的苦痛を被ったとして、労働契約における債務不履行に基づき慰謝料などの支払いを求めた。

(Y2の対策)
合計で約20名の学生に電話を掛けて、
平成26年11月4日 授業の状況を聴取しようとした。
4名の学生から聴取することができた。
4名はいずれも、XとY1との間でトラブルが発生した等の特段の事情について述べたことはなかった。

平成26年11月18日 Xの主張するハラスメントに該当する事実は認められないと結論
平成27年1月15日 Y2学園を退職

(判決)
ポイントの一つともいうべき事情についての供述を避けようとする態度に終始
Y1の供述の信用性には疑問がある
個別的な怨恨(えんこん)等は、全く疑うことは出来ず、
Y1は、平成26年11月4日の授業中に、Xの臀部を触っていたとの事実を認定するのが相当
Y1の年齢などを考慮するとY1がそのような認識を持ったとしてもそれはやむを得ない側面があることも否定できない
慰謝料額を10万円と算定

ハラスメント行為はなかったという結論を下したことについては、不十分な調査によって被用者であるXに不利な結論を下したというほかはなく、
Y2学園の措置は労働契約上の義務に違反するものと認められる。

Xとの関係を改善させるものではなく、単に両者間のトラブル再発を防止するために意味があるにとどまる
Y2学園の義務違反を認めた。
Xに支払うべき損害賠償の額については、80万円を相当とした。

正社員と有期契約社員に対する労契法20条の考え方


考察)
現場でも良くある話であり、正社員と有期契約社員の間で業務内容が大きく相違しないことの方が多い気がします。
それに対して、本判例は同一労働同一賃金ではなく、有期契約社員に適用される労契法20条で話が流れています。
同条では、一定の賃金の相違を許容しており、2から3割程度許容されており、手当については業務に起因しない手当の支払いを求めているように思います。

本文)
Y社との期間の定めのある労働契約を締結した原告Xらが、期間の定めのない労働契約を締結
Y社の正社員と同一内容の業務に従事していながら、手当などの労働条件について正社員と差異がある。
労働契約法20条に違反する。
Y社社員給与規程及びY社社員就業規則の各規定がXらにも適用される労働契約上の地位にあることの確認を求める。

労働契約法20条施行前においても公序良俗に反すると主張
同条施行前については不法行為による損害賠償請求権に基づき、
施行後については同条の補充的効力を前提とする労働契約に基づき、
予備的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、
諸手当の正社員との差額と遅延損害金の支払いを求めた。

労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
業務の内容、業務の責任、職務の内容、配置の変更の範囲、その他の事情について不合理と認められるものであってはならない。
通勤手当、食堂の利用、安全管理などについての相違は特段の理由がない限り合理的とは認められない。

同条は、同一労働同一賃金の考え方を採用したものではなく、
同一の職務内容であっても賃金をより低く設定することが不合理とされない場合があることを前提としている
有期契約労働者と無期契約労働者との間で一定の賃金制度上の違いがあることも許容するものと解される。

労働契約法20条の不合理性の判断について
問題となっている労働条件の相違が不合理と評価されるかどうかを問題としている
合理的な理由があることまで要求する趣旨ではない。

労働契約法20条の効力(補充的効力の有無)
心得を示す規定ではなく、
同条に違反する労働条件の定めは無効というべき
民法709条の不法行為が成立し得る。

民法709条
故意または過失によって、権利または法律上保護される利益を侵害し、賠償を負う。

労働者の立証責任
不合理なものであることを基礎づける具体的事実についての主張立証責任を負う。

使用者の立証責任
不合理なものであるとの評価を妨げる(評価障害事実)についての主張立証責任を負う。
労契法20条の諸要素を総合考慮
労働条件の相違が不合理であると断定するに至らない場合、当該相違は同条に違反するものではない

就業規則の比較
適用される就業規則等が異なるのは、有期労働契約か無期労働契約かによる
労働条件の相違は、期間の定めの有無に関連して生じたものであると認められる。

正社員と契約社員に適用される就業規則および給与規程等が個別独立に存在し、
就業規則、給与規程等の合理的解釈として、正社員の労働条件が有期契約社員に適用されると解することは出来ない。

判決)
<相違する個別の労働条件の不合理性>
労働条件の相違について
不合理性が認められたのは、年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇
不合理性が認められないと請求が棄却されたのは、外務業務手当、早出勤務等手当、祝日給、夏期年末手当、夜間特別勤務手当、郵便外務・内部業務精通手当
労契法20条に違反するもので、各手当の不支給は、Xらに対する不法行為を構成する。

Xらの損害
正社員に対する支給額の8割相当額
住宅手当については6割相当額を損害として認める。

公務員の不法行為に対する考え方

(考察)国家賠償法1条1項の考え方が重要となる判例であると思われる。私的な事と公的な事の仕分けが重要である。
<甲事件>
Y2法人が設置する大学、大学院の准教授であるXが、所属する教室の主任であったY1に対し、
Y1から度重なるハラスメント行為を受けたと主張
不法行為を理由とする損害賠償請求権に基づき、1,920万円等の支払いを求める
妨害活動及び、名誉棄損行為の差し止め

判決)
(i) Y1の行為の違法性について、主任としての裁量を逸脱または濫用した違法な行為である。
(ii) XのY1に対する請求は、XがY2法人のハラスメント防止委員会などによる解決ではなく、訴訟による解決を希望
提起したことが信義則に反し、訴権(国家に対して個人の権利の保護を要求する。)の濫用に当たるということは出来ない。
(iii) ①から⑤の行為は、私経済作用又は国家賠償法2条の営造物の設置管理作用に当たるものではないことは明らか
公権力の行使に当たり、Y1の職務行為そのものというべき
国家賠償法1条1項の適用があるため、Y1個人は、不法行為に基づく損害賠償責任を負わない。
① 間仕切り上のホワイトボード等を設置
② 鍵の管理にかかる行為
③ 鍵の紛失についての発言をした行為
④ 報告書を提出した行為
⑤ 授業の割り当てにかかる行為

国家賠償法2条
設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じた時は国又は公共団体はこれを賠償する。

Y1の公務員としての立場を背景とすることなく行われた私的な行為は国家賠償法1条1項の適用がないため、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

Y1はXに対し、本判決慰謝料の額150万円をもって相当と認める。

<丙事件>
Y2法人に対して、
Y2法人が、Y1のXに対するハラスメント行為に加担し、これを放置したとして、
内部告発者の保護義務ないし職場環境の整備義務違反の債務不履行に基づき、

Y1の行為について
民法715条ないし国家賠償法1条1項に基づき、合計1,500万円等の支払いを求める

民法715条(使用者責任)
他人を使用する者は、第3者に加えた損害を賠償する。
相当の注意を払ったときはこの限りではない。

国家賠償法1条1項
公務員がやったことは国が責任を取る。

(判決)十分な調査を行っておらず、具体的な対応もしていない。
Xの職場環境改善に向けた対応義務を尽くさなかったことについて、債務不履行を負う。
Y2法人がXの職場環境の破壊に組織的、積極的に加担したとする的確な証拠はない。
精神的苦痛に対する慰謝料の額を50万円とした。
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
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