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遺族補償年金の受給要件について


(考察)
遺族補償年金について、妻と夫で支給要件が変わる事について、差別的事柄がないことを示す判例と思われる。

(重要条文)
憲法14条1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法25条
1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない

(経緯)
平成10年10月18日 妻Kは自殺
夫Xは、Kの死亡当時51歳

22年4月 公務上の災害と認定

遺族補償年金にかかる不支給決定は、Kが死亡した当時51歳
所定の要件60歳以上であることに該当せず
23年1月 遺族補償年金、遺族特別支給金、遺族特別援護金及び遺族特別給付金につき、いずれも不支給とする旨の決定

(判決)
遺族補償年金は憲法25条の趣旨を実現するために設けられた社会保障制度の一環
立法府の広い裁量にゆだねられており、
著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用とみざるを得ないよう場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない。
受給権者の範囲、支給要件などにつき何ら合理的理由のない不当な差別的取り扱いをするときは別に憲法14条1項違反の問題を生じ得る。

Xの請求を棄却
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労災保険給付は使用者自らの負担といえるか

(感想)
労基法と労災保険法の関係性を示した判例といえる。内容は条文を並べたものであるが、労災保険の支給が使用者自らの負担の場合と異にするものではないと判断されたのは有意義である。

(重要文言)
業務災害に関する労災保険制度は、労基法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提
労災保険法に基づく補償給付の実質は、使用者の労基法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであると解するのが相当

使用者自らの負担により災害補償が行われている場合とこれに代わるものとしての労災保険法に基づく保険給付が行われている場合、
労基法19条1項但し書の適用の有無につき取り扱いを異にすべきものとはいいがたい

(事件概要)
15年3月13日に医療機関で頸肩腕症候群に罹患
平成15年6月3日から1年間の欠勤及び、16年6月3日から1年間の私傷病休職、さらに18年1月17日からの欠勤について、「Y大学勤務員災害補償規程」に照らし、労働災害による「欠勤」
規程所定の欠勤期間である3か年が経過した平成21年1月17日に至ってもXの症状にほとんど変化がなかった
規程に基づく2年間の業務災害休職
「休職期間を満了しても、なお休職事由が消滅しないとき」に該当するものと判断し、解雇
打切補償として1,629万余円を支給
平成23年10月24日付で本件解雇の意思表示

(訴え)
打切補償として平均賃金の1200日分相当額の支払いを受けたうえでされた解雇
Xは労基法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に該当せず、
本件解雇は同法19条1項但し書所定の場合に該当するものではなく
同項に違反し無効
労働契約上の地位の確認などを求めた

(判決)
労基法81条にいう同法「75条規定によって補償を受ける労働者」に含まれるものに対して同法81条の規定による打切補償を行ったものと認められ
本件については労基法19条1項ただし書の規定により同項本文の解雇制限の適用はなく、本件解雇は同項に違反するものではない。

懲戒処分による精神障害・自殺の業務起因性

(感想)
労災の認定基準に対しては、従業員の過失の有無を問わないところから、懲戒事由に対する精神疾患でも認定されるところが興味深い。精神障害については、認定基準に従って行うことについても覚えておきたい。

(重要文言)
<傷病と業務との間の相当因果関係の判断基準>
業務上の傷病とは、当該傷病が被災労働者の従事していた業務に内在する危険性が発言したものであると認められる必要があると解される。
<業務の危険性の判断>
同種の平均的労働者、すなわち、何らかの個体側の脆弱性を有しながらも、当該労働者と職種、職場における立場、経験等の社会通念上合理的な属性と認められる諸要素の点で同種の者
特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準
当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷が一般に精神障害を発症させる危険性を有し、
当該業務による負荷が他の業務以外の要因に比して相対的に有力な要因となって当該精神障害を発病させたと認められれば、
業務と精神障害発病との間に相当因果関係が認められると解するのが相当
<精神障害の業務起因性>
厚生労働省の平成23年12月26日付の認定基準に従って判断するのが相当

(参考条文)
労基法第75条(療養補償)
1 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

(事件概要)
平成16年2月13日 アルコール検知、停職2日の懲戒処分
平成20年6月28日 アルコール検知、バス業務を行わず、下車勤務を行う。事情聴取
平成20年7月3日 署長からお前はクビだと言われた。死んだほうが楽だなどと述べた。
平成20年7月4日 同年6月29日以降、食事を摂っていないため、ケトンガスが体内で発生し、検知器が作動してしまった
平成20年7月7日 自殺

(訴え)
Xの夫である亡Kについて、退職を強要されたことが原因で精神障害を発症し、その結果自殺したもの
本件精神障害が労災保険7条1項1号及び労基法75条所定の業務上の疾病に該当する。
平成21年6月19日 監督署に対し、遺族補償年金などの支給を請求
不支給処分をしたため、その取消を求めた。

(判決)
Kが自殺当時適応障害を発病していたことを認定
アルコール検査に3回引っかかったとの発言や、クビになるかもしれないとの認識
Kの心理的負荷の強度は「強」と評価

精神障害は、業務に起因して発病したもの

車内での受動喫煙症発症と業務起因性


(感想)
化学的な根拠を示すという考え方は面白いが、こんなことで労災請求をするのだというビックリもあります。

(重要文言)
公務上の災害といえるためには、単に当該公務と災害との間に条件関係が存在するだけではなく、社会通念上、公務に内在する危険の現実かとして災害が発生・増悪したといい得ること、すなわち公務と災害との間に相当因果関係が必要

(事件概要)
建築完了検査の現場に行くために公用車に乗り込んだ際、本件公用車に充満していたたばこの煙から生じた化学物質に曝露したことにより化学物質過敏症を発症した等と主張
公務災害認定を申請
Xに生じた疾病は公務上の災害とは認められないとして公務外災害と認定する処分

(訴え)
Xが本件処分の取消

(判決)
車内から厚生労働省又は環境省が示した基準値を上回る量のホルムアルデヒド、TVOC及びベンゼンが測定されていることは認められる
これらの基準値は人がその化学物質の示された濃度以下の曝露を一生受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろう数値として設定された基準値
待機の汚染に係わる環境上の条件につき人の健康を保護するうえで望ましいとして設定された基準値

本件実験の結果によっても、本件公用車内に、直ちに急性中毒症状のような重大な健康被害を生じさせるに足りる大量の化学物質が充満していたと認めることはできない。

Xの症状が他の要素に起因する可能性も認められること等の諸事情に照らすと、社会通念上、本件公用車を使用するという公務に内在する危険が現実化して化学物質過敏症を発症したと認めることはできず、Xの化学物質過敏症の発症に関して公務起因性を認めることはできない。

海外出張による睡眠不足による脳梗塞発症と業務起因性

(感想)
発症前6か月の時間外労働以外で、直前の短期間の間における時間外労働と内容により業務起因性を認めた例としては参考になる。
過失相殺否定に関しても、今後の対策として参考になる。

(重要文言)
労災保険法に基づく保険給付は、労働者の業務上の疾病等について行われるもの(同法7条1項1号)
労働者の発症した疾病を業務上のものと認めるためには、業務と疾病との間に相当因果関係が認められることが必要である
労災保険制度が、労働基準法上の危険責任尾法理に基づく使用者の労災補償責任を担保する制度である
上記の相当因果関係を認めるためには、当該疾病などの結果が、当該業務に内在する危険が現実化したものであると評価し得ることが必要

本件疾病発症日を基準として1か月ごとに区分した場合における当該1か月間の時間外労働時間数は多い月で60時間弱
本件疾病発症前2か月間から6か月間までの範囲で1か月当たりの平均時間外労働時間数を見た場合、いずれも40時間前後にとどまっており
新認定基準(平13.12.12基発1063号)の枠組みの下でXの時間外労働時間数を捉える限り、Xの本件疾病発症前に従事していた業務が量的に過重であったとはいえない。

本件疾病発症前2か月前後の時期に、1か月未満の期間における時間外労働時間が100時間を超える状況もあったこと
本件ブラジル出張はそれ自体の負担が非常に大きい
Xに継続的な睡眠不足をもたらし、これが3度にわたり繰り返されたことにより、疲労が蓄積し、その回復・解消に至らないなど相当に負担の大きい就労状況であった
本件プロジェクトの内容やそこでのXの地位・役割などといった点も考慮に入れると、Xには、業務による過重な肉体的、精神的負荷がかかったものといえ
業務と本件疾病の発症との間に相当因果関係の存在を肯定できる。

<過失相殺の否定>
帰国後、本件疾病の発症までの間に、9日間連続して休暇を取ったこと及び勤務があった7日間を見ても、時間外労働はほとんどない
これまでの業務と発症との間に認められる強い関連性を否定・減殺する事情としては十分でない。
Xがブラジル出張の際にビジネスクラスまたはファーストクラスの座席に搭乗していた事実
業務と発症との間の強い関連性を否定・減殺する事情であるとは言い難い。

(訴え)
平成19年5月12日に脳梗塞を発症したのは業務に起因するものであるとして、中央労働監督署長に対し、労働者災害補償保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付の請求

21年11月20日にこれらを支給しない旨の処分を受けたため、本件各処分の取消を求めた。

(判決)
Xの発症した本件疾病の業務起因性を認め、Xの請求を認容
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