(重要文言)
非違行為の懲戒事由該当性
従業員の私生活上の非行であっても、事業活動に直接関連を有する者及び企業の社会的評価の毀損をもたらすものについては、企業秩序維持のための懲戒の対象となりえる。
相当性→相当性を欠く
懲戒権を濫用したものとして、労働契約法15条により無効であるというべき
同種事案との比較において悪質性は高くない
軽微な罰金20万円の略式命令で処分されるにとどまる
債務者Y側において、刑事手続きにおける起訴・不起訴以外の要素を十分に検討した形跡が窺われない
Xには前科・前歴やYからの懲戒処分歴が一切なく、勤務態度にも問題がなかった
(事件概要)
25年○月○日 通勤のために乗車した電車内で痴漢行為をしたとして、条例違反の被疑事実で逮捕され、取調べ
26年1月10日 顛末書および始末書を提出
2月20日 被疑事実で起訴
26日 簡易裁判所において罰金20万円
4月25日 就業規則56条2号に該当するとして、論旨解雇を通告
5月2日 論旨解雇に伴う退職金32万9,220円を支払った。
顛末書 :原因、結果、結末などをひたすら書き記したもの
始末書 :反省を表明し、二度としないことを誓わせるもの
就業規則56条2号「職務の内外を問わず会社の名誉を損ないまたは社員としての体面を汚す行為があったとき」
(判決)
平成26年8月から27年7月まで、毎月20日限り、月額25万円の賃金仮払いの限度で保全の必要性があると一応認められる。
地位保全は認められず
(重要文言)
<分限処分>
分限処分(ぶんげんしょぶん)とは、一般職の公務員で勤務実績が良くない場合や、心身の故障のためにその職務の遂行に支障があり又はこれに堪えない場合などその職に必要な適格性を欠く場合、職の廃止などにより公務の効率性を保つことを目的としてその職員の意に反して行われる処分のこと。
(参考判例)
地公法28条1項3号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に強制することのできない持続性を有する素質、能力、性格などに起因してその職務の円滑な遂行に支障があり、
又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をい」い、
「この意味における適格性の有無は、諸般の要素を総合的に検討した上、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関連においてこれを判断しなければなら」ず、
「その判断が合理性を持つ判断として許容される限度を超えた不当なものである場合には、裁量権の行使を誤った違法なもの」であると判示
「分限処分が免職である場合には、当該職員が現に就いている職に限らず、転職の可能な他の職をも含めてこれらすべての職についての適格性を欠くものかどうかを特に厳密、慎重に判断する必要がある」
(訴え)
Y村の職員であった原告Xが、Yの村長から平成22年8月13日付で地公法28条1項3号に基づく分限免職処分を受けた
本件処分の違法性を主張して、その取消を求めた
(判決)
Xが現に就いている職に限らず、
転職の可能な他の職をも含めたすべての職について、
簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因して職務の円滑な遂行に支障があり、
又は支障を生ずる高度の蓋然性があるとは認められず、
これに反するY村長の分限免職事由該当性にかかる判断には、裁量権の逸脱・濫用の違法があるとして、Xの分限免職処分が取り消された。
(重要文言)
出向前に、就業規則に定められた休暇申請手続きを得ずにXが欠勤したことを理由として、出向先が行った減給処分につき、
出向中においては、Xは出向元との間の雇用関係に基づき服務規律に服するとともに、
出向先の勤務管理及び服務規律に服することになるのであるから、
出向先が出向元からの依頼を受けて出向前の行為についてXを懲戒処分することができる。
<使用者責任>
Y4が加えた暴行は、不法行為を構成するもの
Y4の行為はXの勤務時間中の態度を戒めるために行われ、
XとY4の個人的な関係に起因するものとは認められない
Y3社の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関係を有すると認められ、
Y4の行為はY3社の事業の執行についてなされたものという事ができ、
Y4とY3社が連帯して賠償責任を負う
(事件概要)
乙事件
Y1社らに出向していたXが、Y1らがした懲戒処分の無効を主張して処分に基づき減額された賃金などの支払いを求める。
甲事件
Y1らの従業員から暴行行為を受けたとして、同従業員らに対し不法行為に基づき損害の賠償などを求めた。
(判決)
処分無効を前提とする減給請求などを棄却
Y4の行為によりXが被った損害は慰謝料と弁護士費用の合計5万5,000円について、Y3社とY4が連帯して支払うことを命じた。
(重要文言)
<憲法19条違反>
卒業式という式典における慣例上の儀礼的な所作として国歌斉唱の際の起立斉唱行為を求めることを内容とする本件各職務命令は、Xの思想及び良心の自由を侵すものとはいえない。
<教師の教育の自由(憲法23条、26条)を侵害するか>
大学教育と異なり「普通教育では、児童、生徒の側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会均等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき要請があることなどからすると、普通教育において、教師の完全な教授の自由を認めることはできない」
(事件概要)
平成18年3月 X(平成16年4月から本件中学校で教員として勤務)は、国歌斉唱時の不起立は信用失墜行為であるから今後しないことなどの注意指導を受けた。
平成19年3月以降 各卒業式において規律及び国歌斉唱を行わなかったので、本件第1から4処分を受けた。
処分1 18年度について戒告
処分2 19年度について減給10分の1
処分3 20年度について減給10分の1
処分4 21年度について停職1か月
<本件各通達>
教職員が通達に基づく学校長の職務命令に従わない場合には、職務の責任を問われることを教職員に周知することとされていた。
「過去に非違行為を行い、懲戒処分を受けたにもかかわらず、再び同様の非違行為を行った場合は、量定を荷重する」と定められていた。
(訴え)
第1から3処分の取消と精神的苦痛に対する慰謝料などおよび遅延損害金の支払いを求めた訴訟(甲事件)
XがY(代表者・都知事)に対し、本件第4処分の取消と精神的苦痛に対する慰謝料などおよび遅延損害金の支払いを求めた訴訟(乙事件)
(判決)
第1処分に当たり、懲戒処分の中で最も軽い戒告処分を選択したことについては、社会通念上著しく妥当を欠くものとはいえず、懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱し、又は、これを濫用したものとして違法であるとはいえない。
第2から4処分に当たり、懲戒処分が加速度的に累積して荷重され、短時間で反復継続的に不利益が拡大していくことなどを勘案すると、戒告1回の処分歴があることのみを理由に第2処分として減給を選択したことは、裁量権の範囲を著しく超えるものとして違法と判断
各処分を選択したことについて、職務上尽くすべき注意義務を怠ったものと評価することは相当ではなく、慰謝料請求は退けられた。
(重要文言)
精神的な不調のために欠勤を続けている労働者は精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤ないことが予想される。
「精神科医による健康診断を実施するなどした上で…、その診断結果などに応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべき」
(事件概要)
問題解決されたと自分自身が判断できない限り出勤しない旨をY社に伝えたうえで、平成20年7月末まで約40日間にわたり欠勤
Xは、就業規則に基づき、出勤命令違反として平成20年9月30日をもって本件処分を受けるに至った。
なお、Yは、本件処分に際して、Xに対して精神科医による健康診断などは実施していなかった。
(訴え)
Y社に対し、処分無効を主張して雇用契約上の地位の確認および賃金などの支払いを求めた
(判決)
「精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切な者とは言い難い」
就業規則所定の懲戒事由を欠き無効