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条件附採用教員に対する免職処分の妥当性

(判例からの教訓)
会社として、やるべき事をキッチリとしていないと、例え問題のある人物であるとしても免職処分とすることは難しい。

(重要文言)
<初任者研修>
① 平成23年9月以降の指導教員が不在
② 研修シラバスの作成に指導教員が参画していない
③ 授業以外の研修の時間数が足りない

十分な初任者研修が行われていないにもかかわらず、単なるXの未熟な人格態度を持って、直ちにXが教員としての適格性を欠くと判断することは相当ではない。
仮にE中学において、実のある初任者研修が行われれば、その研修考課による成長、改善の可能性はあったというべき

<パワハラ>
以下の内容は国家賠償法上の違法な行為と認めることはできない。
① Xに対する観察授業の実施
② Xの初任者研修の指導教員を解任して後任を選任しなかった
③ F校長がXの正式採用を「否」としたこと

(経緯)
服装、職員室を訪れる生徒や電話への対応、作問委員会での居眠り、授業についての保護者から寄せられる苦情などについて、F校長およびG副校長らから指導を受けていた。

条件附採用期間を1年間とする教員として採用され、E中学に勤務していた原告Xが、E中学のF校長からXに対する特別評価所見の「採用の可否」について「否」とされ、その後、平成24年3月31日付で免職処分を受けた。

(訴え)
F校長の不当な評価に基づきなされた本件処分は、都教委の裁量権を逸脱ないし濫用する違法の処分であると主張
本件処分の取消を求める。
F校長から違法なパワハラを受けたとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料500万円等の支払いを求めた。

(判決)
条件附採用期間中に初任者研修が行われるものであるから、その研修考課に基づく成長、改善の可能性をも考慮して判断されるべき
FのXに対する総合評価は、客観性を欠き、かつ不合理なものであったとし、Fの総合評価が是正されるべき
Xは正式採用された蓋然性が認められる。
判断は客観性を欠き、不合理なものであって、裁量権の逸脱、濫用があるものと認められる。
本件処分は取消を免れない。

蓋然性 :その事柄が実際に起こるか否か、真であるか否かの、確実性の度合

休職後の復職請求と経営再建などを理由の解雇の有効性


(重要文言)
Xに対し、度々指導や注意をしていたことは認められるものの、けん責や減給、出勤と停止といった段階的な処分に付したことを認めるに足りる証拠もない。

主治医の診断書を提出して復職を申し出た労働者に対し、会社は休職事由が消滅している限り復職を承認しなくてはならない。

Yが危機的な経営状況であることを裏付ける客観的な証拠は全くないなどとして退けている。

(事件概要)
Yに雇用されていたXが、Yに対し、YのXに対する解雇が無効であると主張
① 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
② 未払賃金等の支払い

平成15年9月 Yに入社した者
平成21年9月頃 体調を崩し、医者からうつ状態
平成23年4月28日以降 Yを休職
平成24年9月28日 Xは、主治医からの復職可能との診断書を添えて、Yに復職を請求
24年10月4日 Yから解雇

Xは復職に当たっては就労可能を称する診断書を提出し、従来の労働条件通りでXを元の職場に就労

コンサルタントとして勤務した従業員の適格性欠如を理由の解雇の有効性

(重要文言)
記帳・経理業務を専門に担当するコンサルタントとして勤務していたXが、
平成23年5月以降、担当する顧客にかかる職務遂行に当たり、
期限を守らない
会計処理を誤る
顧客からの問い合わせに適切に回答しないなど職務を懈怠し
それが明らかになる都度、注意・指導されながら、その職務遂行状況に改善が見られなかった。
M社の委託契約を打ち切られ
S社から担当変更を求められ
B,P社の社会保険料の計算を誤り修正に多大な労力を要した事など

Xの職務遂行の状況やY社の注意・指導の状況、Yが退職を勧奨して当事者双方の合意による円満な退職を実現しようとしたことなど

本件解雇は客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められ、解雇権の濫用に当たらないと判断


(事件概要)
平成20年9月 Yの顧客向けの記帳・経理業務を専門に担当するコンサルタントとして勤務
平成24年2月13日 Yの人事責任者Aらと面談し退職を勧奨
平成24年3月31日 Xが退職勧奨に応じ、退職届を提出しなかったことから、就業規則55条所定の解雇事由に該当することを理由に同日付の解雇の意思表示
就業規則55条(7)
特定の地位、職種又は一定の能力を条件として雇入れられた者で、その能力、適格性が欠けると認められるとき


(訴え)
平成24年3月31日をもって解雇された原告Xが、Y社に対し、解雇が無効である等として、Xが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認ならびに同年4月1日以降の賃金などとともに、Xに対する不法行為に該当する、あるいは、Yが労働環境を整備する注意義務に違反したとして慰謝料の支払いを求めた。

成績不良などを理由の解雇の有効性

(事件概要)
求人票には「正社員」「雇用期間の定めなし」等と記載
<雇用契約書>
「平成24年1月24日から同年12月20日まで」
平成24年3月6日 本件雇用契約締結後1か月以上経っても新規の契約締結の実績が1件も上がっていないことを理由に解雇を通告

(訴え)
本件雇用契約は期間の定めのない労働契約であり、かう、Xの退職はY社の不当解雇によるものであって無効である旨を主張
雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認および上記退職後の賃金の支払いを求めた。

(判決)
雇用期間が1年近くあることや成績を上げれば雇用期間に関係なく正社員になれると聞いたことなどから、本件雇用契約書記載の雇用期間の有期雇用契約であることを了解した上で本件契約を締結したものと認めることができる

本件解雇の時点では、XがY社で就業し始めてからまだ1か月半程度しか経過していないのであり、その間、新規の契約を1件も締結することができなかったことをもって直ちにXの勤務状況や業務能率が著しく不良で、向上又は改善の見込みがないものと認めることはできない。

有期雇用契約の終期である平成24年12月20日までの間の賃金などにつきY社に支払いが命じられた。

退職強要の違法性及び、休職期間満了を理由の解雇の有効性

(重要文言)
退職勧奨は、その自由な意思形成を阻害するものであってはならない。
退職勧奨の態様が、退職に関する労働者の自由な意思形成を促す行為として許容される限度を逸脱し、労働者の退職についての自由な意思決定を困難にするものであったと認められるような場合には、
当該退職勧奨は、労働者の退職に関する自己決定権を侵害するものとして違法性を有し、使用者は、当該退職勧奨を受けた労働者に対し、不法行為に基づく損害賠償義務を負う。

<業務起因性>
精神障害を発症している労働者について、
平均的労働者であっても精神障害を発症させる危険性を有するほどに強い心理的負荷となるような出来事があり、
概ね6か月以内に精神障害が自然経過を超えて悪化した場合には、
精神障害の悪化について業務起因性を認めるのが相当

(事件概要)
平成21年3月 うつ病と診断
同年8月17日から22年2月28日まで 第一回休職
同年3月1日より復職可能と認めると診断 リハビリ勤務 賃金は休養前の75%
平成22年8月22日 第1回面談 同年9月末日での退職に向けて返事がほしい
同年8月24日 第2回面談 仕事や会社から離れた方が良いのではないか
同月26日 第3回面談 CとDは、体調のことを考えると続けられないと言って退職を説得
同月29日 第4回面談 退職の意思表示はしないことを伝えた。
同月30日 第5回面談 「これ以上何もなければ解雇はしない」等といった。
合計5回の面談 約1時間から2時間行われた。

さらに体調が悪化
うつ病により3か月の休養加療を要すると診断
平成23日9月1日から同年11月30日までの3か月間休職
同年12月1日付書面 休職期間満了により退職となる旨などを通知

(訴え)
① 退職強要により精神的苦痛を被ったとして不法行為に基づいて慰謝料の支払い
② 休職期間満了により退職扱いされたことについて、これが無効であるとして労働契約上の地位確認及び退職扱い後の賃金支払い
③ 未払残業代の支払い

(判決)
Xの退職に関する自己決定権を侵害する違法なものと認めるのが相当
業務起因性を認め、休職期間満了により退職したとすることはできず、労働契約上の権利を有する地位にある
退職勧奨による慰謝料30万円、未払賃金の請求50万6,309円
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