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パワハラとうつ病自殺による損害賠償


(重要文言)
<過失相殺①>
民法722条2項の類推適用に際し、「ある業務に従事する特定の労働者の性格が
同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れるものでない場合
業務の負担が過重であることを原因とする損害賠償請求において
使用者の賠償すべき額を決定するに当たり
その性格及びこれに基づく業務遂行の態様などを心因的要因として斟酌(酌(く)んであげる)することはできない」
 民法722条2項(損害賠償の方法及び過失相殺)
被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。

<過失相殺②>
以下の内容から損害額を3割減じることとする。
 KがY1の本部に申告するなどしなかったことから
YらがKの健康状態の悪化に気づきにくかったこと
 Kが昼食を抜くなどして休息時間を適切に確保し
自己の健康維持に配慮すべき義務を怠った面があること
 同居していた両親に悩みを相談することがなかったこと
 消防団に参加を強制されることも一つの悩みであった

(訴え)
Kの自殺は、A支店長(Y2)とY1農協が、営業上の業務成績を上げるよう叱責を繰り返し、さらには暴行を加えたことにより
職務に耐えきれなくなったことが原因であると主張
Y2に民法709条(不法行為による損害賠償)
 民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

Y1に民法715条(使用者などの責任)
 民法715条
1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
 求償権
他人の債務を弁済した者が、その他人に対して返還の請求をする権利。連帯債務者や保証人が債務を弁済したときなどに生じる。
Xら(Kの両親)それぞれに対し、連帯して4313万8074円の支払いを求めた

(判決)
損害額
 X1に合計1485万4033円
 X2に合計2001万6651円
 Kに発生した損害4627万6148円(逸失利益2477万6148円+慰謝料2000万円+葬儀費用150万円)
×(1-0.3(3割減))
=3239万3303円÷2(Xら2人)-労災保険給付の損益相殺


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問題のある従業員に対するパワハラの有効性


(感想)
従業員に問題があったとしても、パワハラはパワハラである。
しかし、素因減額は認められる。

(重要文言)
Xの起用症などが寄与した点も大きいと認めて素因減額として4割相当である354万9,456円を減じ

(事件概要)
Y2の指示通りの資料を提出することはせず、その後もY2が複数回にわたり指導したが、Xは改善に取り組もうとしなかった。

平成18年7月頃、他の部署から、Y2に対し、Xの勤務態度に問題があるので改善指導をしてほしいとの要望がされた。

Y2は集計方法や問題点を確認するよう指示したが、XはY2の指示通りの資料を提出しなかった。

Y2のXに対する注意指導の回収が増えたり、その注意指導の程度が多少厳しいものになったりすることもあった。

(判決)
新入社員だ。もう任せられない等の言動につき、部下に対する注意又は指導のための言動として許容する範囲を超え、相当性を欠くものであったとして、不法行為を構成するとされた。

Y2は診断書を見ることによりXがうつ病に罹患したことを認識したにもかかわらず、Xの休職の申し出を阻害する結果を生じさせたことにつき、部下の心身に対する配慮を欠く言動として不法行為を構成するとされた。

Y2の行為は、Xのうつ病の発症及び進行に影響を与えた違法なものであって、Y2は、Xのうつ病の発症及び進行に対して不法行為責任を負うと判断した。


派遣従業員に対するパワハラ行為

(重要文言)
<従業員の不法行為>
派遣労働者という、直接的な雇用関係がなく、派遣先の上司からの発言に対して、容易に反論することは困難であり、
弱い立場にあるものに対しては、その立場、関係から生じかねない誤解を受けないよう、容易で、うかつな言動を慎むべき

<使用者責任>
Yは、Fらを正社員として使用するもの
不法行為は、Fら及びXが、Yの業務である本件労務に従事する中で、Yの支払い領域内においてなされたYの事業と密接な関連性を有する行為

<会社固有の不法行為>
派遣先は、直接の雇用関係を有する派遣会社と同様に、派遣労働者に対して、適切な職場環境を維持し、同職場環境につき、苦情申出がなされた時には適切かつ迅速に処理すべき一般的な責務を負担している。

(事件概要)
平成22年9月 Xは、派遣会社に対し、Fらからいわゆるパワハラを受けている旨申告
Yは、派遣会社から同申告内容の苦情申出を受けた。


(訴え)
Y社の従業員らから、いわゆるパワハラに該当する行為を受け、Yでの就労を辞めざるを得なくなったと主張
Yに対し、使用者責任及びY固有の不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料などの支払いを求めた。

(判決)
FらのXに対する不法行為があったと認める。
Yは、使用者責任を負う。
Fらに対して、本件苦情申出に至るまで、何らの指導、教育をしていなかったことから、
本件苦情申し出後、本件申請に至るまでの間、責任者による監視強化以外に、Fらを含むYの従業員らに対する事情聴取などの調査は行っていなかったこと、
同義務違反に基づく、Y固有の不法行為責任を認めるのが相当

(損害額)
悪質性が軽微とは言えないなどして 慰謝料50万円・弁護士費用5万円
Y固有の不法行為責任 慰謝料30万円・弁護士費用3万円

パワハラの有効性

平成24年11月20日、お客様からの褒め言葉を別のお客様より又聞きしたときの、少し恥ずかしく、すごく嬉しい気持ちは、何度味わっても良いものです。

明日から更に頑張るぞという気持ちになった一日でした。
さて、今回の判例は、パワハラに関する事案です。少し前までの判例としては、被害にあったものが、パワハラ、セクハラにあったと感じた時点で被害者有利という判例が出ていたように感じましたが、この頃の判例は少し違うようです。
具体的には、「パワハラを行った者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様などを総合考慮」であり、細かい個所は次の通りです。



12月も勉強会をさせて頂きたいと考えております。

内容としましては、「労働契約法の改定」「社会保険料の減額方法」等、会社の問題及び、経費の節減を念頭に入れたものを行いたいと考えております。

詳しい内容はコチラを参照ください。→ http://www.nakamine-office.com/1212_seminar.pdf



(事件概要)以下パワハラ(平成20年5月下旬)→ 長期欠勤中に初めて病院でメンタルケアを受診 → 精神疾患に羅患していることが記載された診断書などを提出したのは、それが初めて(平成21年1月)→ 上司の指示に反し、かつ社長決裁を経ないまま、無断で、Y1に多大な損害を被らせかねない内容の広告を出稿しようとしたことが発覚(平成21年3月25日以降)→ 有給休暇を取り、「適応障害にて、通院中である。平成21年4月1日より、1か月半程度の自宅療養を認める」との同年4月3日付診断書を提出(平成21年4月23日)→ Yとの面談を予定 → 出社時にXはすでに帰途についていたため、具体的な症状を確認することが出来ず → 直接休職命令を通知することもできなかった。→ メールにて、休職を命じた。(有給休暇終了後の平成21年4月15日から)→ 90日間の休職期間に入った。(満了時同年7月13日までに)→ Y1の就業規則24条に基づく復職願を提出せず → 本件就業規則25条により自然退職扱い
 メール :Xの休職は就業規則20条1項(4)号の「自己の都合による場合」に該当するものと判断 →「先日頂いた診断書からX1は一か月半程度の自宅療養が必要だと理解しておりますが、間違いなかったでしょうか?そうであれば、会社としては病気が完治するまで就業規則第20条に基づき休職を命じたいと考えております。休職期間…は90日間です…」
本件パワハラ1関係 Y1は、「X、おまえ、酒飲めるんだろう、そんなに大きな体をしているんだから飲め」などといって、グラスを手で防いでいるXに対し、しつこく飲酒を勧めた。
本件パワハラ4関係 Y1においては、いわゆる直行直帰を原則として禁止(平成20年7月1日)→ Y2があらかじめXに対し直帰せずに一旦帰社するよう指示していた。(しかし)→ Xは、直帰するという伝言メモを残し、既に帰宅(憤慨したY2)→ 2度にわたって携帯電話をかけ、その留守電で、Xに対し、「私、怒りました」。…「明日私は、あのー、辞表出しますので、でー、それでやってください」などと怒りを露わにする録音を行った
本件パワハラ5関係 日程調整をめぐって → Y2とXとの間でトラブルが発生(Y2は怒りを抑えきれなくなり)→ 留守電に、「…辞めろ!辞表を出せ!ぶっ殺すぞ、お前!」などと録音
 パワハラを受けたことにより精神疾患等を発症
(1) Y1については民法709条、715条および719条または労働契約上の職場環境調整義務違反(Y2)→ 民法709条および719条に基づき、連帯して、損害賠償金などの支払いを請求(判決)→ パワハラが不法行為を構成するためには、質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要(具体的には)→ パワハラを行った者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様などを総合考慮 →「上司等が、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為」をしたと評価される場合に限り → 被害者の人格権を侵害するものとして民法709条の不法行為を構成するものと解するのが相当(パワハラ5)→ これを有に認定することができ、かつ、同行為は、Xの人格権利益を侵害するもの → 不法行為に該当(しかし、その他のパワハラ)→ そのほとんどが、それを行った事実は認められない。あるいはXに対して不法行為と評価し得るほどの違法性を備えたパワハラに当たるものとは言い難い。(パワハラ5と適応障害との相当因果関係)→ 是認しうるだけの高度の蓋然性を認めるには未だ合理的な疑いを挟む余地があるものと言わざるを得ず → 相当因果関係は認められない。(しかし)→ その事業の執行について行った不法行為であると評価することができる。(民法715条1項、民法719条1項)→ 慰謝料として70万円が相当
 蓋然性 :ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い。確からしさ。これを数量化したものが確率
 民法709条(不法行為による損害賠償) :故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
 民法715条(使用者等の責任)
一 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
二 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
三 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
 民法719条(共同不法行為者の責任)
一 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
二 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
(2) 業務上の疾病に当たることなどを理由 → 自然退職扱いの前提となる休職命令は無効ないしは信義則に反する(判決)→ 休職命令に該当することは明らか(本件退職扱い)→ 面談を一方的に放棄 → 休職命令それ自体に対しては特に異議などを述べなかった。→ Y1から復職意思の有無や自然退職の注意喚起があった。→ その意志さえあれば容易なはずの復職願を提出せず → 休職期間の満了を迎えたもの → 退職扱いに先立って専門医などからの意見聴取を行わなかったことをもって、客観的合理性や社会的相当性に欠けるものということは出来ない。(以下、(ア)(イ))→ 地位確認請求および賃金請求が棄却
(ア) 地位確認
(イ) 退職後の賃金の支払い

パワハラ

24年10月17日、今日は個人相談会で、ある事業所を訪れました。

この頃良くある、監督署からの是正勧告でお困りの会社でした。

少しでも私のアドバイスが役立ってもらえれば幸いです。



今日の判例は、パワハラについてです。

つい、この間まではパワハラやセクハラについては、被害者側がそう感じた場合には認められることが多かった気がしますが、この頃は、下記の内容のように、細かく確認をすることで判決が出されているように感じます。


11月にも、勉強会を開催いたします。

詳細は次の通りです。

http://www.nakamine-office.com/


お誘い合わせの上、お申し込みください。


(事件概要)Xは、平成18年4月28日、脊髄空洞症などに羅患したことにより、同日から同年7月15日までの間、I病院に入院し、退院後、自宅療養を経て、同年9月に職場復帰し、Q支店に配属(19年11月16日)→ Xは、脊髄空洞症による左肩関節、左肘機能の著しい障害により身体障害者等級4級と認定(20年12月5日から21年3月13日)→ 不安抑うつ状態によりI病院に4回通院(平成21年2月)→ Xは、不安抑うつ状態とインフルエンザにより欠勤(同年3月13日)→ Y1に対し辞表を提出(同年3月31日)→ 選択定年退職(訴え)→ Xが、上司のパワハラにより退職を余儀なくされたとして、Y2らとして不法行為に基づく損害賠償を請求(Y1に対して)→ Y2らの使用者責任を追及 → Y1が、雇用する労働者の業務の管理を適切に行い、心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っている。(注意義務を怠ったとして)→ 不法行為に基づく損害賠償および遅延損害金を求めた。
1. パワハラ(不法行為) :Y2は、ミスをしたXに対し、厳しい口調で辞めてしまえ、(他人と比較して)以下だなどといった表現を用いて、叱責していたことが認められ、それも1回限りではなく、頻繁に行っていたと認められる。→ ミス及び顧客トラブルでY2に叱責されている内容からすると、Xが通常に比して仕事が遅く、役席に期待される水準の仕事が出来てはいなかったとはいえる。(しかし)→ 本件で行われたような叱責は、健常者であっても精神的にかなりの負担を負うものであるところ(脊髄空洞症による療養復帰直後であり)→ 同症状の後遺症などが存するXにとっては、さらに精神的に厳しいものであったと考えられる。→ Y2が全くの無配慮であったことに照らすと、上記X自身の問題を踏まえても、Y2の行為はパワハラに該当する。
2. Y1の使用者責任 :Y2らに不法行為責任が発生しない事のみを使用者責任が発生しない根拠として主張(民法715条1項ただし書き)→ 選任、監督に相当の注意をしたことなど責任発生を阻害するほかの事情を主張していない。→ Y1に使用者責任が認められる。
 民法715条1項(使用者等の責任) :ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
3. 配転等について注意義務違反 :Xが病気明けであることを踏まえ、外勤から内勤へと異動(Xの事務能力、Y2との関係及びY1銀行Q支店の繁忙度などから)→ 本店のサポートセンターへの異動を行い、残業や情報処理能力の問題の解消のため現金精査室へ異動(Xの体調面の問題)→ 最後に人事総務部への異動 → 短期間で各部署へ移されている上、その結果、各部署で不都合が生じたことから次の異動を行ったという場当たり的な対応である感は否めない。→ Y1が能力的な制約のあるXを含めた従業員全体の職場環境に配慮した結果の対応 → 従業員の配置転換には、使用者にある程度広範な裁量が認められている事にも鑑みると、Y1銀行に安全配慮義務違反がるとして、不法行為に問うことは相当ではない。
4. 損害額 :Y2の行為について、Xの精神的苦痛を慰謝するのに100万円の支払いをY2およびY1に命じた。(逸失利益)→ Y1に責任が認められるのは、Y2のパワハラに対する使用者責任となる。→ XがY2と共に勤務していたのは平成19年4月30日まで(その後退職まで)→ 2年近くの期間がある。→ Y2及びY1の行為によりXが退職を余儀なくされたとまでは言い難い。→ 本件で認められる不法行為と、Xの退職との間に相当因果関係があるとまでは認められない。→ 本件では、逸失利益まで損害に含めることは相当ではない。
プロフィール

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Author:roumutaka
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顧問先様への新しい情報の発信及び、提案の努力を怠りません。

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