(重要文言)
変更された就業規則の合理性の有無は、
「具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又はほかの従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況などを総合考慮して判断すべきである」
従業員全般に対し50%超の退職金を減額し、Xについてみれば約3分の1までに退職金を減額するという重大な不利益が及ぶ
このような過酷な不利益を受任させることを許容し得るだけの高度の必要性があるとは到底認められない。
(事件概要)
金銭授受から約1年を経過した後、Y代表者はFからの情報提供により上記の事実を把握し、Xを呼び出して事情聴取を行うなどした。
Xは、82万円は職人への支払いにあてた旨説明
その裏付けとして、E小学校の工事に従事した職人3名とJに対し、領収証の発行を依頼し、上記職人らはこれに応じた。
Yは、Xの説明や上記領収証を確認した結果を踏まえ、
平成23年2月14日、Y本社においてXに対し本件懲戒解雇を通知
Yは、X代理人弁護士からの求めに応じ、解雇理由証明書を発行
解雇理由は「不明朗な金銭授受による」とされていた。
(訴え)
Y社の従業員であったXが、平成23年3月15日に限りで懲戒解雇されたことが無効
翌日からXのYに対する雇用契約の解約申し入れが効力を発した同年9月1日までの賃金と、不支給とされた退職金の支払いを請求
Xは、Yが主張する退職金規定の変更について、その効力を争い、変更前の退職金規定に基づく退職金額を主張
(判決)
本件懲戒解雇の相当性について、本件懲戒解雇は無効
イ) Yの対外的信用の低下は、あるとしても軽微なものにとどまる。
ロ) 本件金銭授受の総額自体が82万円にとどまることに加え、Yもその返還請求へ向けた行為を一切していない。
(参考文言)
Xが同日に自動車内で暴行を加えたとの事実を認めるに足りる証拠はないから、
本件懲戒解雇につき、解雇事由を認めるに足りる証拠はなく、無効
懲戒処分が無効であることから直ちに不法行為が成立するものではなく、
別途、不法行為が成立要件を充足するか否か検討して判断すべき
(経緯)
平成21年9月18日 Y1と初めて面識を持った。
翌日 打ち上げ終了後、一緒に帰宅
同月22日 自動車でドライブに行き、夕食(本件ドライブ)
その後、XとY1は、電話やメールで連絡を取り合い、互いの自宅を訪れ、一緒に外食するなどしており、
平成21年12月以降 性交渉もあった。
22年6月21日 XがY1に対して、メールを送信し、これを最後に双方ともに連絡を取らなくなった。
同僚の女性教員Y1に対して車中で暴行を加え、わいせつ行為を行ったとして、Y2学院から懲戒解雇
(訴え)
Y2に対し、懲戒解雇が無効であるとして、
① 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
② 懲戒解雇後の平成23年4月1日からの未払賃金の支払いを求める。
③ 本件懲戒解雇が不法行為に当たるとして損害賠償の支払い
(判決)
Xの供述態度が原因で事実認定が困難となった面もあるから、
本件懲戒解雇が社会的相当性を逸脱する不法行為法上違法な処分であると評価することはできない。
(重要文言)
懲戒解雇は、懲戒処分の中でも従業員の身分を奪う最も重い処分
懲戒解雇事由の解釈については厳格な運用がなされるべき
拡大解釈や類推解釈は許されず、情報が外部に流出する危険性を生じさせただけ
情報を「外に漏らさないこと」という服務規律に違反したことと同視して懲戒解雇ができるとのY主張は採用できない。
(事件概要)
<吸収合併する以前>
自費で購入したハードディスクを使用
<合併後>
Yは、Xの私物であることを把握していなかった。
Aは私物の持ち出しにも許可が必要である旨説明
Xは私物であるから持ち帰るのは自由である、情報は消すつもりであるという趣旨の回答
データが外部に流出したかどうかは確認できなかった。
Y社の従業員であったXが懲戒解雇
懲戒解雇は解雇権の濫用であり無効
雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに解雇後の賃金及び遅延損害金の支払いを求める。
違法・無効な懲戒解雇により損害を受けたとして、その賠償を求めた。
(判決)
結論としてXの地位確認と未払賃金・遅延損害金の支払い請求を認容
(参考文言)
<労働者の職位や役職を引き下げる降格処分>
人事権の行使として就業規則などに根拠規定がなくても行い得る。
使用者が有する人事権といえども無制限に認められるわけではなく、その有する裁量権の範囲を逸脱、またはその裁量権を乱用したと認められる場合は、その降格処分は無効
特に、給与も減額されるなど不利益を被る場合には、その降格に合理的な理由があるか否かは、その不利益の程度も勘案しつつ、それに応じて判断されるべき
<懲戒権>
顧客リストの送信により、Yに実害が生じた形跡は認められない
<不法行為>
Xの行為も懲戒事由に該当する行為であって、責められるべき点があることも否定できないことに鑑みると、解雇後の賃金損失は填補されており、賃金相当額以上に損害賠償を命ずべき特段の事情はない
(経緯)
部長職として、賃金を月額48万円とする期間の定めのない雇用契約を締結
平成21年12月14日 分析のため必要である旨を告げて、Y社取締役からY社顧客リストのデータを受け取った。
同月18日および24日 訴外B2社の代表取締役CにメールでY顧客リストを送信(上司への相談なし)
平成22年1月19日 Yの退会済の過去の顧客から、Yの宣伝メールが送信されたと苦情メールが送信され、Xに対して注意をし、Xもその注意を受け入れた。
平成22年3月30日 部長職降格・月額給与5万円(部長職手当相当額)降給処分
平成22年4月7日 Xの送受信メールの内容の調査を行い、顧客リストを送信したCへのメールを発見し、XがB2に転職して、顧客情報を不正に利用することを企図していると推測
平成22年4月8日 Xを問いただしたところ認めたが、転職を検討したこともあるが取りやめた、CがYの顧客情報を利用したことはないはずであるなど述べた。
顧客データ送信行為について、就業規則61条および62条に基づいて、Y社から懲戒解雇処分
(訴え)
解雇が無効であるとして、地位確認および解雇後の賃金の支払いを求める。
降格・降給処分が無効であるとして、部長の地位にあること及び降格・降給処分前の額である月額48万円の基本給の支払いを受ける地位にあることの確認並びに平成22年4月以降本判決までの賃金支払い
懲戒解雇などが不法行為に当たるとして、損害賠償を請求
(判決)
降格・降給処分を裁量権の濫用により無効
具体的事実のうち、顧客からの苦情のみで、どの程度広範囲の顧客に対し送信したかについては証拠上明らかでなく、役職手当相当額5万円の賃金減額を伴う処分の合理性を基礎づけることはできない。
懲戒権の濫用に当たり、無効
顧客リストの送信には、Y商品の販売代理店の営業を促進させ、Yの売上を伸ばすという面があったこと
当時行い得た調査を十分に行わずに踏み切っている。
不法行為の成立を否定
(事件概要)
22年6月24日 同僚のAと河川清掃業務に従事していた際、Aが拾い上げた鞄の中から10万円程度の千円札の束を見つけ、バケツの水で洗った後、その約半分をXに交付する様子を、カメラで気づかれないように撮影(Xは受領した後そのまま鞄に戻し、塵芥槽内に放置した)
平成22年12月22日付 以下を理由に大阪市長から懲戒免職処分
(ア) 上記の通り、現金をAと配分してその後廃棄
(イ) 職場で蓄えていた拾得金銭の一部をジュース代に使用
(ウ) 拾得した物品を私的に取得
(エ) 暴言や恐喝などの行為
(オ) 河川事務所内の壁や備品を破損
(訴え)
その理由としている事実の誤認に加え、裁量権の逸脱又は濫用に違法があるから無効であるとして、同処分の取消を求めた。
(判決)
同僚から分配された約5万円を受領した後、元あったカバンに戻して廃棄に至らせた行為は、所有者への返還意思がなかったことが明らか。
Xが拾得した現金やICカード等を領得後に廃棄したこと、拾得したリュックを使用したことは懲戒事由に当たり、また同僚、上司らに対する暴言や器物破損行為が認められるから、懲戒事由
しかし、次の事案を指針の標準例も勘案すると、懲戒処分歴のないXに更生の機会を与えることなく直ちに懲戒免職とした処分は重きに失し、違法というべき
長年の河川事務所ぐるみの物色・領得行為があり、それを招いたY市に帰責事由が認められること、
領得によりXは利益を得ておらず、着服した場合との違法性に大きな違いがあること
一連の粗暴行為に対するYの対応にも問題があったこと
Xの内部告発により不適切な公務の是正が図られたことは有利な事情と考慮すべきこと