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諸手当の不正受給を理由とする懲戒解雇及び、退職金の不支給の有効性


(事件概要)
積極的に虚偽の事実を申告して
被告Xによる住宅手当及び、単身赴任手当の不正受給
社宅使用料の支払いなどを不正に免れた事
賃料支払いを不正に免れた事
本人赴任手当の不正受給
帰省旅費の不正受給など
により、
積極的に虚偽の事実を申告して各種手当を不正に受給
本来支払うべき債務の支払いを不正に免れたりする。
Y社に400万円を超える損害が生じていた
Xに対する懲戒解雇が有効

諸手当などに掛かる計537万余円の不当利得返還請求が認められた。

懲戒解雇を理由とする退職金の不支給に関して
Y社の退職金制度は賃金の後払い的性格及び功労報償的性格の色彩が強いものである。
相当大きく減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為に当たると言わざるを得ないものの、その功を完全に抹消したり、その殆どを減殺したりするものとまではいえず、
本件不支給規定の適用は、退職一時金の6割である189万369円を不支給とする限度のみ合理性を有する。

Xには本件とは別に懲戒処分歴がある。
始末書の提出を指示するとともに、2日間の出勤を停止する旨の出勤停止の懲戒処分を行っている。

弁明の機会を付与された際にも、
懲戒解雇がされるまで、Yに対して明確な謝罪や被害弁償を行う事もなかった。
同解雇の効力に疑義を生じさせるような手続き上の瑕疵も認められない。

Xが30年以上にわたりYに勤務していたことといった諸事情を考慮しても、懲戒解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものという事は出来ない。
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名誉毀損、情報漏洩を理由の懲戒解雇及び、普通解雇の転換の有効性

(考察)
認識の誤りは否定できないが、懲戒解雇の難しさを感じる判例だと思われる。普通解雇の転換については本判例と同じ判決が出ていることが多いように思われる。

(重要文言)
<金融商品取引法166条(会社関係者の禁止行為)1項5号の解釈>
上場会社等と契約締結の交渉をしている法人の役員等がその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには、
職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず、
他の役員などが知った重要事実が法人内部でその者に伝わったという事の出来る場合でなければならないというべきであるが、
その者の職務に関し知ったといえる限りは、重要事実の伝達ないし流出の方法や経路は問わないものと解される。

<懲戒解雇が無効である場合の普通解雇の転換>
懲戒解雇は、就業規則上企業秩序違反に対する制裁罰として規定
普通解雇とは制度上区別されている
懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が予備的に包含されているという事はできない

辞令書にも、予備的にも普通解雇の意思表示をする旨の記載は認められない

懲戒解雇の意思表示に普通解雇の意思表示が内包されているものとは認められない

(事件概要)
Y社との間で労働契約を締結していたXが、平成24年6月29日付懲戒解雇は無効であるとして、労働契約上の地位にあることの確認
月例賃金などの支払いを求める。
懲戒解雇はXに対する不法行為に当たると主張
民法709条に基づき、慰謝料1,000万円などの支払いを求める。

平成21年11月5日 E社は、公募増資を行うことを決定
22年1月以降 E社及び主幹事証券会社であるY社の役職員らによって準備
同年9月29日 公募増資は公表
平成24年6月8日 証券取引等監視委員会は、公募増資に関して検査
結果、C社およびAが、Xから、
Y社の他の社員らが交渉に関して知り、
Xがその職務に関して知った、
E社の業務執行を決定する機関が株式の募集を行う事についての決定をした事実の伝達を受け、
公表された時点より以前に、E社株式を売りつけたもの
いずれの行為も、金融商品取引法175条1項に規定する行為に該当するという事実が認められた。
内閣総理大臣および金融庁長官に対し、課徴金納付命令を発出するよう勧告するとともに、その旨を公表
平成24年6月29日 Y社はXに対し、Xを懲戒解雇する旨の意思表示をした。
<懲戒解雇辞令書>
<懲戒事由①>社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え、受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視員会の勧告を受け、報道された
<懲戒事由②>顧客の情報も漏洩していた
就業規則42条(懲戒事由に関する規定)
11号 会社の名誉又は威信を傷つけた場合、
14号 機密情報に関する会社の規則に反した場合および、
20号 この規則あるいは会社の他のいかなる規則、方針、規程、あるいは他の日本の法律に定められた業界を規制する規則、方針、規程に違反した場合
に該当する旨の記載

(判決)
地位確認請求ならびに月例賃金などの支払いを求める部分は理由がある
慰謝料の支払いを求める部分は理由がない

平成22年9月12日以前 XとY社におけるE社担当のアナリストであったIとの接触
同月22日から24日 XとYにおける募集担当者であったJとのやり取り
これらを合わせ考えても、Yの内部においてXに本件情報又は公募増資の実施公表の日が同月29日であるとの情報が伝わったとは認められない

以上の他にXに伝わったと評価すべき事情は認められない
金融商品取引法166条1項5号に該当すると認めることはできない

懲戒事由①は就業規則所定の懲戒事由に該当するものとは認められず、
懲戒事由②はその一部が就業規則所定の懲戒中に該当するものと認められるものの、
上記会話を懲戒事由として懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇処分を行うことは重きに失することが明らかである。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできず、懲戒権の濫用したものとして無効

情報漏洩を理由の懲戒解雇の有効性

(考察)
懲戒解雇に至るまでの過程の難しさを再認識した判例であるとともに、理由のある懲戒事由に関しては不法行為についてもある程度考慮してもらえるという認識も持てる判例である。

(重要文言)
就業規則所定の懲戒事由に該当するには、本件勧告および報道によるYの名誉または威信の毀損についてXに帰責事由がなければならず

顧客情報の漏洩は懲戒事由に該当するが、Xに背信的な意図がなかった
軽視できない違反行為は反復継続していなかった
漏洩について注意や指導がなされていなかった
弁明の機会が与えられていなかった
懲戒権の濫用に当たる

(重要条文)
金融商品取引法
第百六十六条(会社関係者の禁止行為)次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。)であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。)については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第五号から第八号までに規定するものに限る。以下同じ。)を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け、合併若しくは分割による承継(合併又は分割により承継させ、又は承継することをいう。)又はデリバティブ取引(以下この条、第百六十七条の二第一項、第百七十五条の二第一項及び第百九十七条の二第十四号において「売買等」という。)をしてはならない。当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする。
一  当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社並びに当該上場会社等が上場投資法人等である場合における当該上場会社等の資産運用会社及びその特定関係法人を含む。以下この項において同じ。)の役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人、使用人その他の従業者(以下この条及び次条において「役員等」という。) その者の職務に関し知つたとき。
二  当該上場会社等の会社法第四百三十三条第一項 に定める権利を有する株主若しくは優先出資法 に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者又は同条第三項 に定める権利を有する社員(これらの株主、普通出資者又は社員が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条及び次条において同じ。)であるときはその役員等を、これらの株主、普通出資者又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 当該権利の行使に関し知つたとき。
二の二  当該上場会社等の投資主(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項 に規定する投資主をいう。以下この号において同じ。)又は同法第百二十八条の三第二項 において準用する会社法第四百三十三条第三項 に定める権利を有する投資主(これらの投資主が法人であるときはその役員等を、これらの投資主が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 投資信託及び投資法人に関する法律第百二十八条の三第一項 に定める権利又は同条第二項 において準用する会社法第四百三十三条第三項 に定める権利の行使に関し知つたとき。
三  当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。
四  当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)であつて、当該上場会社等の役員等以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたとき。
五  第二号、第二号の二又は前号に掲げる者であつて法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ第二号、第二号の二又は前号に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知つた場合におけるその者に限る。) その者の職務に関し知つたとき。

上場会社などと契約締結の交渉をしている法人の役員などがその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには、
単にそのものが職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず、
当該契約の締結若しくはその交渉または履行に関して他の役員などが知った重要事実が法人内部でその者に伝わったということのできる場合でなければならない
重要事実が法人内部で伝わったというためには、伝達された情報が重要事実の主要部分を認識し得るものとなっていることが必要である。

(事件概要)
原告Xが「社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え、受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視委員会の勧告を受け、報道された」ことを理由として懲戒解雇

(判決)
本件勧告の内容が事実であればXの帰責事由があることは明らかであるが、認定した事実が事実であったとは認められない
懲戒事由に該当しない。

Xには証券会社の営業に携わる者として著しく不適切な行為があり
それ自体が懲戒事由に該当する可能性があった
懲戒事由の一部はその情状も決して軽視することのできない違反行為
懲戒事由について証券取引等監視委員会が認定した事実を信じて懲戒解雇を行ったYの判断は不自然・不合理ではない
本件懲戒解雇は不法行為には該当しない

内部告発を理由とする懲戒解雇の有効性


(考察)
民法629条については、目次の更新について期間の定めのない契約に相当するという考え方は覚えておく必要がある。

(重要文言)
不法行為に該当するような退職勧奨行為などが認められることからすると
理事長兼校長から退任させようとしたこと
学園に反抗する姿勢を示したことには、酌量されるべき相応の理由があったと認められる。

29枚の文書を交付していた説明及び相談した行為
多少の混乱を生じさせ、心情を害したことは否定できないが、
懲戒免職処分にすべきほどの重大な実害が生じたとまでは認められない。

懲戒免職とすること
社会通念上相当なものとして是認することはできない
解雇権の濫用として無効

黙示の雇用契約更新について定める民法629条が、
期間の定めのない雇用の解約の申し入れに関する同法627条の規定により解約の申し入れをすることができると定めている
→ 雇用契約が黙示に更新された場合、更新された雇用契約は、期間の定めのないものになると解するのが相当
平成20年4月1日以降、期間の定めのないものになった
本件管理職規程として
管理職の任用期間は2年以内とされているが、
任用期間を更新することができるとされている
→ 民法629条と異なる法理が適用されるとも認めがたい

<就業規則懲戒規程記載の重大な反社会的行為、これに準ずる不都合な行為に該当>
学校法人外部の有力な第三者に説明し、当該部外者の力を利用して理事長を退任させようとする行為
理事長の名誉毀損、侮辱にわたりかねないもの
当該理事長の違法行為を含んでいる場合には、この限りではない。

(重要条文)
民法第629条(雇用の更新の推定等)
雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場合において、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第627条の規定により解約の申入れをすることができる。
2 従前の雇用について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、身元保証金については、この限りでない。

民法第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三カ月前にしなければならない。

(事件概要)
平成17年10月7日 X2がY1学園の理事に選任
平成18年4月 X1はY1に参事として採用、雇用期間2年の雇用契約を締結
19年4月 X1は副校長に昇任し、学園理事に選任
20年3月31日までに雇用契約を更新するかどうかについて決議せず
20年10月7日 X2は理事に再任
同年4月1日以降 X1は副校長として勤務を継続し、Y1らは異議を述べなかった
22年4月1日以降 X1は副校長として勤務を継続し、異議を述べなかった
平成22年10月15日 X1を懲戒解雇し、X2を懲戒解任
X1はY1学園の教職員服務規則28条7号
重大な反社会的行為があったとき、その他、前各号に準ずる不都合な行為があった時などに該当
X2は役員規程16条各号及び寄付行為11条1項各号に該当する行為

(訴え)
本件解雇を不服として、雇用契約上の地位を有することの確認
本件解雇後の賃金などの支払いを求める
違法な退職勧奨及び違法な本件解雇をした旨主張
損害金550万円などの支払いを求め
違法な本件解任をしたY1学園及び本件解任を主導したY2に対し、共同不法行為による損害賠償請求権に基づき
連帯して、220万円などの支払いを求めた。

(判決)
本件解任を無効
不法行為を否定

懲戒解雇の有効性

(感想)
当たり前のことではあるが、弁明の機会を与えることは重要である。また、懲戒事由記載の文言についても、「著しく不良」「極めて重要」など、かなり認めてもらうには高いハードルがあると思われる。

(重要文言)
同条2号所定の事由(職務怠慢、素行不良)
その職務の遂行の積極的な懈怠があり、
その懈怠が顕著な場合であることを要する
職務の遂行に顕著な支障をきたした場合、その行状が著しく不良な場合であることを要する

9号(無許可の物品持ち出し)
明示的な持ち出しの禁止を認識しながら、殊更、業務上極めて重要な物品を持ち出すなど、その情状の悪いことが顕著なことを要する。

11号(加害行為)
行為者の行為の故意・過失の有無・程度、加害行為による損失の代償を考慮し、その情状の悪いことが顕著なことを要する

就業規則52条2項(懲戒処分)
その事実を調査し、関係協議のうえ、処分を決定する旨定めている。
同条に定める手続きを踏む必要があり、殊更に懲戒解雇は懲戒処分のうち最も過酷な処分である
特段の支障がない限り、事前に弁明の機会を与えることが必要というべき

(事件概要)
Xに対し、処分決定書を交付
同日付の懲戒解雇処分を通告
処分理由は、
就業規則55条2号 職務怠慢、素行不良
就業規則55条9号,11号 無許可の物品持ち出し、Y法人に対する加害行為

(訴え)
XがY法人から3次にわたり懲戒解雇の意思表示を受けた。
これらの解雇はいずれも無効であると主張
Y法人との間で雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める
雇用契約に基づき、賞与を含めた未払賃金および遅延損害金の支払いを求めた

(判決)
サーバーセキュリティ更新業務などの各行為について、就業規則55条2号に該当するまでのものとは認められない
事前の弁明の機会を得ないまま懲戒解雇を行うことは懲戒手続きにおける手続き的正義に反するものとして社会的相当性を欠き、懲戒権の濫用となる
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
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