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うつ病発症及び、自殺と安全配慮義務

(考察)
珍しく、安全配慮義務違反が認められないケースの判例でした。従業員の申し出に対して対応を怠らないことが重要であると思われる。

(重要文言)
過労などによる精神状態の悪化は瞬時に起こるものではなく、ある程度の期間を通じて漸増的に生じる
業務負担の軽減措置をも考慮
予見可能性などを含めた安全配慮義務違反の有無を判断
過重な業務指示を短期間のうちに修正し、適切な業務調整を行ったと評価され、安全配慮義
務違反が否定

主治医と面談し、復職の可否や復職後の対応方法について相談
復職後はKに対して軽易な業務を与えるにとどめるなど配慮
復職後の対応が知見を照らして、不適切であったとはいえず、安全配慮義務違反があったとは認められない。

(事件概要)
Y2社への出向に前後してうつ病を発症
出向元Y1社への復帰後の自宅療養中に自殺したKの遺族による安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求

労災保険法に基づく遺族補償給付などの請求をしたところ、不支給とする決定
本件処分を不服として、審査請求手続き等を経た
請求をいずれも認容する旨の判決を言い渡し、確定

(判決)
Y1、Y2のいずれの責任も否定

安全配慮義務の法的責任の根拠


(考察)
派遣労働者への安全配慮義務に関する認定、また安全配慮義務自体の法的責任の根拠について参考になる判例であると思われる。

(重要文言)
亡Aおよび亡Bに対する安全配慮義務を認めるとともに、派遣労働者であった亡Cについても、業務上の指揮命令権を行使してその労務を管理していた。
YとCは特別な社会的接触関係にあったと認められ、
Yの安全配慮義務を肯定

津波の高さや到達時刻などに関する予想を考慮せずに安全な場所の存否を基準とする避難行動を義務付けるとすれば、
際限のない避難行動を求めれ、
結果的には、事後的に判断して安全であった避難場所への非難が行われない限り義務違反が認められることになりかねない。

より安全な避難場所がある場合にはそこに非難すべき旨の安全配慮義務を課することは、義務者に対して、不確定ないし過大な義務を課することになるから相当とはいえない。

安全配慮義務違反の法的責任を負うには、回避すべき危険に関する具体的な予見可能性が必要である。

(事件概要)
地震による津波に流されて死亡
行方不明となった日最高印及び派遣スタッフ合計12名のうち、A,B,Cの3名の遺族であるXらが、
立地の特殊性に合わせた店舗を設計すべき義務
安全教育を施したものを管理責任者として配置すべき義務
Yが災害対応プランの21年の改正において、津波からの避難場所としては不適切な屋上を避難場所として追加したこと
D支店長において、津波などに関する情報を収集する義務
指定避難場所である堀切山への避難を指示すべき義務をそれぞれ怠ったこと
Dが上記⑥の義務に反して屋上への避難を指示したことを黙認したこと
上記⑥の義務に違反して屋上への避難を指示した後、避難場所を屋上から堀切山に変更する支持を行うべき義務を怠ったこと等

Yの安全配慮義務違反により上記3名が死亡した旨主張
安全配慮義務違反の債務不履行または不法行為による損害賠償請求権に基づき、上記3名から相続した各損害賠償金及びその遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
堀切山と比較して、避難に要する時間が短く、避難する途中で直面する可能性のある危険を回避できると考えられる。
屋上を追加したことには合理性があると認めることができ、安全配慮義務違反があったと認めることはできない。

Xらの控訴を棄却

公務員のうつ病による自殺と損害賠償請求


(感想)
公務員の場合、国賠法が適用されるため、個々人ではなく、国又は公共団体が賠償責を負うことは知っておきたい。
葬祭料については、実際に支払ったものを自らが申請するので、損害として改めて計上しないことも知っておきたい。
いつものことながら、遺族補償一時金の支給については、損益相殺的な調整をしている。

(重要文言)
Y1組合との関係は雇用ではなく、任用関係にあったもので、民主的な規律に服すべき公務員関係の一環をなすもの
民間の雇用関係とはおのずと異なる法的性質を有する
公務員に対する指揮監督ないし安全管理作用も国賠法1条1項にいう「公権力の行使」に該当する。

国賠法1条に基づく責任が認められることから、Y3及び、Y2は個人としての不法行為を負わない。

国賠法1条(公務員の不法行為と賠償責任、求償権)
1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

<安全配慮義務違反>
勤務が過酷であることや上司らのパワハラを認識しながら、何らの対策を講じることなく、新人医師に我慢してもらい、半年持ってくれればよい、持たなければ本人が派遣元の大学病院に転属を自ら申し出るだろうとの認識で放置
Y1にはKの心身の健康に対する違反が認められる。

X1は自らが相殺を行った者として同給付申請を行っていたものである
上記認定にかかる葬祭費用150万円は実際的にX1の固有の損害とみるのが相当
上記相殺補償によりその限度で既に損益相殺済みの者として扱う。
本件損害として改めて計上をしない

遺族補償一時金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したとき
その補填の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当

(事件概要)
時間外勤務時間は
平成19年10月 205時間50分
同年11月 175時間40分
自殺前3週間 121時間36分
自殺前4週間 167時間42分

Y2から握り拳で1回、ノックするように頭を叩かれて、危ないと注意されたこと等、Y3やY2から多くの指導を受けたり注意されたりしていた。

平成19年12月10日午前零時頃 自宅として居住していた本件病院の職員用宿舎の浴室内にて、コンロで燃料を燃やし、一酸化炭素中毒となって自殺

22年8月24日付 本件自殺は公務災害に当たると認定
X1は、地方公務員災害補償基金より、遺族補償一時金、遺族特別支給金等及び、葬祭補償を受領

(訴え)
Xらが、Y1組合の運営する本件病院に勤務していたKが過重労働や上司らのパワハラにより、うつ病を発症し、自殺に至った。
Y1及び、当時のKの上司であったY2とY3に対し、債務不履行または不法行為に基づき、
死亡慰謝料等及び、損害元金の各支払いを求めた。

(判決)
Kが従事していた業務は、質的にも相当過重なものであったばかりか、
Y2やY3によるパワハラを継続的に受けていたことが加わり、これらが重層的かつ相乗的に作用して一層過酷な状況に陥ったものと評価

過重業務やパワハラがKに与えた心理的負荷は非常に大きく、同人と職種、職場における立場、経験などの点で同等の者にとっても、社会通念上客観的にみて本件疾病を発症させる程度に過重であったと評価
これらの行為と本件疾病との間には優に相当因果関係が認められ
本件自殺は本件疾病の精神障害の症状として発言したと認めるのが相当
パワハラなどと本件自殺との間の相当因果関係も認めることができる。


X1について3,081万8,745円
X2について6,929万3,745円

うつ病に対する安全配慮義務違反


(感想)
うつ病に対して、使用者の安全配慮義務がどの程度必要であるかを考える一つの指標になると思われる。
休業補償については、支給決定の受けられる可能性が高くても、やはり支給決定を受けていないものについては、損害賠償額からの控除されることはなかったことが再認識できる。

(重要文言)
XがYに申告しなかった自らのメンタルヘルスに関する情報は、神経科の医院への通院、その診断にかかる病名、神経症に適応のある薬剤の処方などを内容とするもの
自己のプライバシーに属する情報であり、人事考課などに影響し得ることがあらとして通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報

使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康にかかわる労働環境などに十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている
労働者にとって過重な業務が続く中でその体調の悪化が看取される場合には、メンタルヘルスに関する情報については労働者本人からの積極的な申告を期待し難いことを前提としたうえで、必要に応じてその業務を軽減するなどの労働者の心身の健康への配慮に努める必要がある

本件傷病手当金等は、業務外の事由による疾病などに関する保険給付として支給されるもの
X保有分は不当利得として健康保険組合に返還されるべきもの
損害賠償の額から控除することはできない
いまだ支給決定を受けていない休業補償給付の額についても、これを控除することはできない。

(事件概要)
平成13年3月15日および4月24日 時間外超過者健康診断を受診
Yの産業医は、特段の就労制限を要しないと判断
平成13年5月23日 激しい頭痛に見舞われ
同年6月1日 療養のため連続して欠勤
同月7日 時間外超過者健康診断の際、頭痛、めまい、不眠などについて申告
同月下旬 課長に対し体調不良のため業務を断ろうとしたが、了承を得ることはできなかった
同年7月28日から8月6日 有給休暇などを利用して療養
同年9月 休暇を取得
同年10月9日以降 診断書を提出した上で、欠勤を開始
平成13年10月以降 Yからの賃金の支払いを受けていないが、傷病手当金等の支給を受けている。
平成15年1月10日 休職を発令し、定期的な面談などを続けた
16年8月6日 職場復帰をしなかったため、9月9日付で解雇の意思表示
16年9月8日 労基署に対し、休業補償給付支給請求
18年1月23日 うつ病が業務上の事由によるものであるとは認められないことを理由として、支給しない旨処分

(訴え)
うつ病に罹患して休職し休職期間満了後に解雇されたXが、うつ病は過重な業務に起因するものであって解雇は違法、無効であるとして、Y社に対し、安全配慮義務違反等による債務不履行または不法行為に基づく休業損害や慰謝料等の損害賠償、Yの規程に基づく見舞金の支払い、未払い賃金の支払い等を求めた。

管理監督者の安全配慮義務及び、上積み補償の損益相殺


(感想)
労災上積み補償が福利厚生としてではなく、従業員の業務上の死亡による損害を填補する趣旨として損害賠償金に定められた事は有意義であると思う。

(重要文言)
脳・心筋疾患の業務上外の認定に関する厚労省労働基準局長通達「脳心臓疾患及び虚血性心疾患などの認定基準について」
① 異常な出来事
② 短期間の過重業務
③ 長期間の過重業務

<管理監督者への配慮義務>
自分の判断で自らの勤務時間を適正なものに減ずることは困難
勤怠管理の権限が与えられていたことが安全配慮義務を否定する根拠にはならない。

<損益相殺>
逸失利益 6,791万7,708円
死亡慰謝料 2,800万円
葬祭費用 150万円
(損益相殺として)
労災遺族補償年金 2,016万8,753円
葬祭料 97万6,500円
労災上積み補償 2,400万円

(事件概要)
Kが死亡したのはY社における長時間かつ過重な業務が原因
Yには安全配慮義務違反があったと主張
債務不履行に基づく損害賠償として、損害金の支払いを求めた。
平成17年6月26日 Kは、急性心筋梗塞により死亡
20年4月4日 Kの死亡原因である急性心筋梗塞が業務に起因する疾病である旨の認定
労災保険法に基づく遺族補償年金2,016万8,753円、同法に基づく葬祭料97万6,500円、
Yによる労災上積み補償2,400万円の合計4,514万5,253円がXに支払われた。
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