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吸収合併による退職金規程変更の有効性


(考察)
退職金、賃金規程の変更については、十分すぎるくらいの説明が必要であることを改めて感じる判例だと思います。

(重要文言)
<労働条件の変更>
使用者が掲示した労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合、
変更を受け入れる旨の労働者の行為があるとしても、
当該行為をもって直ちに労働者の同意があったものとみるのは相当ではなく、
変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべきである

<同意書の有効性>
Xらは、退職金に関する労働条件の変更に対する本件同意書への署名押印に際し、
変更によって生ずる具体的な不利益の内容や程度についての情報提供や説明を受けていなかったと判断
本件同意書への署名押印はその自由な意思に基づいてされたものとはいえない
Xらが同意したとは認められない

<労働協約の効力>
労働協約書の締結について、組合内部での協議などを経ずに作成したもの
本件職員組合の大会や執行委員会が執行委員長に本件労働協約締結権限を付与した事実は認められない
本件基準変更を定めた本件労働協約の効力はXらには及ばない

(訴え)
C信用組合の職員であったXらが、同信用組合とY信用組合との15年1月14日の合併によりXらにかかる労働契約上の地位を承継したYに対し、Cの職員退職給与規程(旧規程)に基づく退職金の支払いを求めた。

(判決)
Xらに支払われるべき退職金の金額は、Cにおいて旧規程に基づき支給される退職金の金額であると判断
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退職手当不支給の相当性


(考察)
全額不支給が認められるケースは珍しい気はするが、前例や他の管理職らとの均衡を示しているところは重要

(訴え)
在職中に懲戒免職事由に該当する行為があったとして不支給とした処分の取り消し

(運用方針)
懲戒処分相当の場合に退職手当を全額不支給とすることを原則
→ 処分庁に広範な裁量を委ねたと解される

処分者が運用方針に則って処分をしたといえるかどうかによることが相当

本件)Kの行った非違行為は非難の程度が大きく、公務に対する信頼を大きく損なうもの
金銭着服
その隠ぺい行為
Kの勤務実績は良好とはいえず、分限降任処分、減給処分
Kの非違行為に関連して管理職らが戒告
町長と副町長が減給処分

(判決)
Xの請求を棄却

早期退職特例の適用の可否と過払金の返還請求

(重要文言)
退職勧奨を受けて定年に達した後に退職した国家公務員は、
国家公務員退職手当法4条1項およびその委任を受けた退手法施行令3条1号並びに退手法5条1項およびその委任を受けた退手法施行令4条2項1号に規定する
「その者の非違によることなく勧奨を受けて退職した者」に該当しないから、
被告Yの新制度切替日前日額を算定するに当たり、
退手法5条の3に規定する定年前早期退職特例は適用されない。

Yが、本件過払金に相当する額を旅行費用として費消したとしても、当該費用の支出を免れた部分について、Yに現存利益が存在するとして、
公法上の不当利得に基づく本件過払金および遅延損害金の支払請求が認容

(事件概要)
原告国XのA税務署で勤務していたYが、退職勧奨に応じて60歳の定年に達した後に退職
Yに対して2958万245円の退職手当を支給
Xは、本来、Yには定年前早期退職特例が適用されないから、
Yに支給されるべき退職手当の額は2884万2544円

(訴え)
本件退職手当との差額である102万9601円が過払いとなっていると主張
Yに対し、公法上の不当利得に基づき、102万9601円及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
定年前早期退職特例が適用されるとの判断に基づいて算定された退職手当額を受け取ったYは、本来受け取るべき退職手当額との差額を法律上の原因なくして利得していることになるから、
Yは、原告Xに対し、不当利得に基づき、本件過払金及び遅延損害金の支払い義務を負う。

非違行為に対する退職金不支給規定の効力

(重要文言)
非違行為発覚後の合意退職の場合であっても、任命責任が辞職を承認するか否かを判断するまでに事案の審査を了することができなかった場合には、辞職を承認したからと言って、懲戒解雇又は論旨解雇に該当しないと認められたとはいえない。

懲戒処分についての判断を留保した上で、辞職を承認するとの判断をしたものと認めるのが相当

<賃金後払いとしての性格を有する退職手当>
不支給ないし制限することができるのは、「労働者のそれまでの勤続の功労を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られる」

(経緯)
平成20年11月6日 自転車で通行中の当時16歳の女子高校生に対し、致傷の行為をはたらき、加療1か月を要する障害を負わせる。
平成21年6月22日 逮捕
平成21年7月13日 合意退職
平成21年11月26日 懲役3年(t年間の保護観察付執行猶予)の判決
平成21年12月24日 退職金を不支給とする旨の通知

(訴え)
退職金1,375万1,750円および、これに対する遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
諸般の事情を総合的に考慮すれば、Xの請求は退職金額の7割を減額した額である412万5,525円および遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。
 職場外での強制わいせつ致傷事件で有罪判決
 本件非違行為が私生活上の非行であること
 被害者との間では示談が成立して民事上、道義上の責任については解決済み
 Yが被害者との関係で使用者責任を問われるものではなかったこと
 Xが管理職ではなかったこと

非違行為と退職金の不支給

25年1月9日、遅くなりましたが、皆様、明けましておめでとうございます。本年もブログを拝見頂ければ幸いです。

正月は食べ過ぎで2キロ増えてしまいました。

さて、今年初めの判例は、僕の顧問先でも問題になった事のある退職金についてです。

懲戒解雇をした場合に、退職金を支払わないのは実際に問題とならないのか?

こちらの判例では、全額不支給処分を取り消しております。

細かく説明してくれているので、分かり易い資料としても使えると思いました。




(事件概要)
京都市教育委員会が京都市立中学校教頭であった原告Xに対し、Xが酒気帯び運転をしたことなどを理由として、懲戒免職処分及び一般の退職手当の全部を支給しないことを内容とする退職手当支給制限処分を行う。→ 懲戒免職処分についてはやむを得ないとしながらも、本件処分については裁量権の濫用である主張 → 本件処分の取り消しを求めた。
 本件非違行為 :Xは、道路交通法違反(酒気帯び運転)の罪で起訴 → 罰金50万円の略式命令を受けた。(平成22年○月18日未明)→ 京都市教育委員会に発覚(同月19日)→ 新聞などで報道
(争点)退職手当の法的性格、および、退職手当支給制限処分の審査方法
 法的性格 :アからウが統合した複合的な性格を有している。(本件)→ 算定基礎賃金に勤続年数別の支給率を乗じて算定、支給率がおおむね勤続年数に応じて逓増(自己都合退職の場合)→ 支給率を減額
ア 沿革としての勤続報償
イ 賃金の後払い
ウ 退職後の生活保障
 退職手当支給制限処分 :全部または一部を支給しない処分をするに当たっては、(1)から(5)を勘案すべき(審査方法)→ 退職手当管理機関の裁量権の行使に基づく処分が社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべき
(1) 職務及び責任
(2) 勤務の状況
(3) 非違の内容及び程度
(4) 非違に至った経緯
(5) 公務の遂行に及ぼす支障の程度ならびに非違が公務に対する信頼に及ぼす影響
 懲戒処分と退職手当支給制限処分の関係 :賃金の後払いとしての性格を有することに照らす場合 → 懲戒免職処分を受けて退職したからといって直ちにその全額の支給制限まで当然に正当化されるものではないのは明らか → 全額の支給制限が認められるのは、非違行為が、退職者の永年の勤続の功を全て抹消してしまうほどの重大な背信行為である場合に限られる。
(判決)①から③より、退職手当が相応に減額されることはやむを得ない(④から⑧)→ 本件非違行為が永年の勤続の功績を全て抹消するほどの重大な背信行為であるとまでは到底言えない。→ 社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる。→ 本件処分を取り消した。
① Xの飲酒量が多く、非違行為が極めて危険かつ悪質
② 夫婦関係の不和という動機に酌量の余地は皆無
③ 中学校教論で且つ管理職の立場 → 本件非違行為が職務に与える悪影響は大きい
④ 27年間教員として勤務 → 学校教育に多大な貢献 → 本件懲戒処分を受けるまで処分歴はない。
⑤ 本件非違行為は酒酔い運転ではなく酒気帯び運転
⑥ 職務行為とは直接には関係のない私生活上のもの
⑦ 事故の結果も幸い物損
⑧ 示談をして被害弁償を行っている
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Author:roumutaka
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