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育児休業による役職降格

(考察)
育児休業による不利益変更はまず認められることはないと思った方が良いかも。組織規程、勤務態度など他の要件であれば可能性はあるかもしれない。

(重要文言)
リハビリ科に異動したことによりXが得た利益とはいえても、
降格させたことによる利益とはいえない
Xはそもそも降格を望んでおらず、これにより経済的損失を被る
人事面においても、役職取得に必要な職場経験のやり直しを迫られる不利益を受ける
Xは復職時に役職者として復帰することが保障されているものではなかった
業務上の負担軽減が大きな意味を持つとはいえない

組織規程や運用から見て、業務上の必要性があったことにつき十分な立証がなされているとはいえない。
Xは独善的かつ協調性を欠く性向や勤務態度があって職責者として適格性を欠くとの主張を退けた。

(条文)
労基法65条3項(産前産後)
使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。

均等法9条3項(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 の規定による休業を請求し、又は同項 若しくは同条第二項 の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

育児・介護休業法10条(不利益取扱いの禁止)
事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(事件概要)
平成6年3月21日 期間の定めのない労働契約を締結
Fステーションの副主任の地位
平成20年2月 第2子を妊娠
軽易業務への転換を希望
同年3月1日 リハビリ科への異動
副主任の地位を免じた。
平成20年9月1日から同年12月7日まで 産前産後休暇を取得
同月8日から21年10月11日まで 育児休暇を取得
平成21年10月12日 Fステーションへの異動
上記の軽易業務への転換希望以前に命じていた副主任の地位を免じた。

(訴え)
本件措置1(主位的請求) :Yに対し、副主任を免じた措置は均等法9条3項に違反する違法、無効なもの

本件措置2(予備的請求) :育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかった措置は育児・介護休業法10条に違反する違法、無効なもの

本件各措置は不法行為又は労働契約上の債務不履行に該当するなどと主張
管理職(副主任)手当及び損害賠償金、各遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
違法、無効であるとともに不法行為として損害賠償責任を負わせるべき



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退職後の給与減額の有効性

(重要文言)
解雇処分後に給与減額処分はなしえない。

解雇処分後に従業員の離職を職務放棄とみることはできないとして、給与減額の根拠が否定

(訴え)
第1事件
Yに対し、
① Yに解雇されるまでの未払い賃金と立替金の支払い
② 解雇予告手当の支払い
③ 違法な業務を行うクリニックで勤務させられたことや些細な事柄で怒鳴りつけられるというパワーハラスメントを受け、
精神的苦痛を受けたなどして慰謝料の支払い
④ 労基法114条に基づく解雇予告手当金と同額の付加金の支払い命令を求めた

第2事件
Xらが業務命令に従わず職務放棄
訪問看護サービスの実施が不可能になり損害を被ったなどと主張して、
① 債務不履行(民法415条)もしくは不法行為(同709条)にも続く損害賠償請求又は
② 使用者の被用者に対する求償権行使(同715条3項)として損害金などの支払いを求めた。

(判決)
Yに対して、Xらにつき慰謝料各50万円を認容

降給・降格処分と解雇の有効性

(参考文言)
賃金が、労働者にとって最も重要な権利ないし労働条件の1つであることからすれば、
給与規定の定めが存するとはいえ、その変更を使用者の自由裁量で行うことが許容されていると解することはできず、
そのような賃金の減額が許容されるのは、労働者側に生じる不利益を正当化するだけの合理的な事情が必要
そのような事情が認められない以上、無効になると解するのが相当
合理性の判断に当たっては、
① 減額によって労働者が被る不利益の程度
② 労働者の勤務状況などその帰責性の有無及び程度
③ 人事評価が適切になされているかという点など
④ その他両当事者の折衝の事情
を総合考慮して判断

使用者は、人事権の行使として広範な裁量権を有するが、その人事権行使も、裁量権の逸脱、濫用に当たる場合には無効

降給処分及び降格処分の有効性を基礎づけることはできないことからすれば、
いわんやそれよりも重い処分である解雇の有効性を基礎づけることはできないのは明らか

通勤手当は、それが実費補償としての性質を有するから、現実の勤務がない以上、交通費分についての請求は理由がない

賞与はいずれもY1による査定に基づいて支払われたと解される。
差額賞与請求権が発生する根拠はなく、
本件解雇後は具体的な査定が存しない以上、賞与請求権が発生する余地はない。

(経緯)
平成20年2月頃 警備業務などを業とするY1に採用
東京営業本部営業開発部長に任ぜられ
同年3月以降21年2月まで 月額80万円の給与(交通費は別途支給)
平成21年3月27日支給分から 46万7,040円と交通費3万2,960円に減額
(給与減額1)
平成21年4月1日 関連3社を合併
同年11月 東京事業本部の組織変更
第一営業部の営業部長(降格処分1)
平成22年4月 独任官と称する地位に降格(降格処分2)
同年6月27日から 44万7,040円と交通費3万2.960円(給与減額2)
平成22年7月15日 Y2社長は、X1との面談の中で、このままの状態で雇用継続はできない旨述べた
退職するか、新しい営業部長の下で月給30万円の一営業部員として勤務するか、L図書館で警備業務に就くかを決めてほしいと述べた。
平成22年8月17日 本件訴訟を提起

(訴え)
X1がY1社の営業開発部長として就労してきたが、
降格処分を受け、営業開発部長から降格された後、解雇されたので、
上記降給、降格の各処分及び解雇がいずれも無効であると主張
Y1社に対し、営業開発部長としての雇用契約上の地位確認を求めるとともに、
減額分の差額賃金及び差額賞与の支払い並びに解雇後の賃金及び賞与の支払いを請求

(判決)
X1らの主張をほぼ全面的に認容

懲戒による給与減額の有効性

(重要文言)
労基法24条に基づき、使用者に生じた債権を持って労働者の賃金債権と相殺することは許されない。

(経緯)
昭和46年 Y社に入社
平成12年3月 Xの管理するダミー会社の預金口座に外注費として振り込ませるという不明朗な資金の流れが税務調査の対象
Xはその事実関係を大筋で認め、金額の使途については営業経費として使用した旨を述べた
平成12年5月19日 代表取締役およびその他の役員、顧問弁護士らで税務調査に対する対応について協議し、525万円9,000円、5,758万2,622円を弁護士名義の預金口座に送金
平成12年6月13日 本件仮差押命令(Y社は、Xが発注先会社に架空の請負代金として4億596万余円を振り込ませて費消したため、Yに対し同額の損害賠償義務があることを認める旨の念書を提出)
平成18年3月22日 謝罪文の提出がなければ懲戒を実施する旨の文書を交付。Xは本件開示行為につき、議事録が機密に該当するものではなく、またA社との人間関係を維持し、最終的にはYのためにやむを得ずに行った行為であるなどと反論
同年6月20日 月額3万円を役員会が解除決定する日まで減額するという内容の懲戒処分
平成19年3月28日 Xの座席が観察できる位置に監視カメラを設置
同年6月22日 Xの携帯電話をナビシステムに接続し、常時位置確認できるように設定。深夜、早朝や休日、退職後についても数度にわたり居場所確認を使用されている。
平成20年1月 Yを定年退職

(訴え)
<XがY社に対し>
① 6284万余円の預託金などの返還請求
② 減給の懲戒処分や謝罪文提出要求に対し不法行為又は使用者責任に基づく慰謝料請求
③ 監視カメラの設置、携帯電話のナビシステムの接続によるXの居場所の確認などに対し不法行為又は使用者責任に基づく慰謝料請求
④ 懲戒処分によってなされた賃金など減額分に対する差額請求など
⑤ 業務上の立て替え払い分に対する返還請求
⑥ 貸付金の利率に関して不当利得返還請求
⑦ 遅延損害金②から⑥の合計3,866万1,837円の支払い

<Y社がXに対し>
Xの背任行為により4億円余りの損害を被ったとして、既払い分を控除した3億余円の損害賠償及び遅延損害金

(判決)
原告Xが被告Yの顧問弁護士に送金した525万9,000円および5,758万2,622円につき、Xが主張する預託契約の成立が否定

Xの管理する複数のダミー会社の預金口座に外注費として振り込ませる方法によって蓄財した合計4億596万8,716円を、個人的な株取引などに費消し、Yに同額の損害を与えた。
Xは「労働契約上の債務不履行に基づく損害賠償債務を負担しているというべきである」が、その消滅時効は商法522条に基づき5年
H社関係の損害賠償請求権のうち「本件仮差押命令の請求債権5,000万円についてはその発令によって時効中断の効果が認められる」が、それ以外の部分は「消滅時効が完成したというべきである」

本件会議の議事録は、会社外部に開示することは予定されておらず、Xは、Y社内部で問題を解消する機会があったから、仮にK部長との信頼関係を維持するなどの目的があったとしても、その不当性は払拭されない。
「会社の機密を社外に漏らしたとき」という「表彰及び懲戒規定」に該当する。
社内手続きについても特段、違法・不当はうかがわれないから、本件減給処分は、客観的、合理的理由があり、社外通念上相当であるから有効

セキュリティー向上という本件監視システム設置の必要性が認められ、「ネットワークカメラによる撮影が、Xのプライバシーを侵害するということはできない」
行動の予定の入力指示についても不法行為を構成するものではない

Xの勤務時間外である早朝、深夜、休日、退職後の時間帯、期間」の居場所確認に限り、不法行為を構成するとし、慰謝料として10万円が相当であり、使用者責任を負う。

配車減による賃金減額、割増賃金の算出


(重要文言)
労働時間の多寡が各従業員の収入の多寡に直結するという本件事情
Yが合理的な理由なく特定の従業員の業務の割り当てを減らすことによってその労働時間を削減することは、不法行為に当たる。
Xに対する配車の減少について、他の従業員に対する対応との均衡が問題であり、明らかにするための証拠が必要
慰謝料については、差額賃金が支払われることによって精神的損害も慰謝されるものと認めるのが相当
ある手当が時間外労働に対する手当として基礎賃金から除外されるか否かは、名称のいかんを問わず、実質的に判断されるべき

(経緯)
賃金月額が30万円を下らない金額となるよう仕事を与える合意があった
平成21年6月から22年6月まで :月額30万円を超えていた。
同年7月以降 :配車が減少、7月25万円、8月20万1,000円
9月以降 :20万円を下回っている。

(訴え)
① 賃金との差額
② 労基法37条所定の割増賃金を支払ってないとして47万9,075円

(労働条件)
時給制
平成21年5月から同年8月 :950円(基本額850円、無苦情・無事故手当100円)
同年8月から22年3月まで :980円(基本額880円、無苦情・無事故手当100円)
同年3月から同年9月まで :1,000円(800円、職務手当200円)
同年9月以降 :980円(784円、196円)
*職務手当は残業代を含むものとして支給

(判決)
契約書では、「Xの賃金は時給制とし、かつ、勤務時間は会社指定時間、休日は会社指定日とすることが定められており、一定の月収を保証する趣旨の規定もない」
「YがXに対する配車を減らした結果、Xの月収が30万円を下回ったとしても、そのことが債務不履行に当たるということはできない」

不法行為の成否
以下イ)からハ)の通り、不法行為に当たると認めるのが相当

イ) A1営業所全体の業務量の減少
他の業務の所管をB1からA1に移す余地があった。
従業員2名がB1に配転されていると指摘して、「A1営業所に所属するバス運転手1日ン当たりの平均の労働時間が減少したということもできない」

ロ) Xの勤務態度
Dから契約を打ち切られることを回避するために、YがXにDバスを配車しないようにしたことには合理的な理由がある。
A) Xに注意指導を行っている。
B) 改善の姿勢に乏しい。
C) D社から「最近、運転が荒いとのお声を多数お寄せいただいており、このままではリスク案件にもつながってしまう恐れがある」とのメールを受け取っている。

ハ) 他の従業員との均衡
明らかにするための証拠を提出していない。
Xに対する配車の減少は、他の運転手に対する対応との均衡を欠いていたものと認めるのが相当

割増賃金を算出するための基礎賃金の算定
バス運転手に支給される無苦情・無事故手当および職務手当は、時間外労働の対価としての実質を有しないものと認めるのが相当
(ア) 実際に時間外労働を行ったか否かにかかわらず支給される。
(イ) バス乗務を行った場合にのみ支給され、側乗業務、下車勤務を行った場合には支払われない。
(ウ) 専門的な職務に従事することの対価として支給される手当
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