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業務委託注文者との黙示の雇用契約の成否


(考察)
今後、このケースの判例は多く存在しそうな感じがするが、重要文言についての内容は覚えておく必要がある。

(重要文言)
職安法44条及び労基法6条に違反する行為がされた場合においても、
特段の事情がない限り、そのことだけによって本件雇用契約が無効になることはないと解するのが相当
上記特段の事情の存在を肯定し得るだけの主張立証はないといわざるを得ない

(参考条文)
会社法429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
1項 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

職業安定法44条(労働者供給事業の禁止)
何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

労働基準法6条(中間搾取の排除)
何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

(事件概要)
Xが、Y4社との間で雇用契約を締結
ミクロとY4社との間の業務委託契約
ミクロとY1社との間の業務委託契約
Y1社のD工場に派遣されて作業に従事


(訴え)
雇用契約および業務委託契約はいわゆる偽装請負である
公序良俗に反して無効
雇用契約上の地位の確認
Y1、Y4については共同不法行為に基づく損害賠償
Y2、Y3、Y5と合わせて共同不法行為または会社法429条1項に基づく損害賠償を求めた。

(判決)
仮に、Yらの職安法44条及び労基法6条に違反する共同不法行為や任務懈怠が認められるとしても、
これらの行為により、Xが損害を被ったという事はできない。
Xの請求は退けられた。


委託契約の途中契約に関する労働者性

(考察)
時間的拘束力がないこと、再委託が認められていることについては、今後委託契約をする際に求められるものであると考えられる。

(重要文言)
業務内容に関して
具体的な業務について個別に実施するか否かの選択ができるわけではないが、
包括的な仕事の依頼を受託した以上、当然

訪問すべき日や時間を指定して個別の仕事を依頼するなどという事は、およそ予定されていない

上記の選択権のないことを本来的な意味の諾否の事由の有無の問題ととらえるのは相当でない。

定期的にローテーション制がとられることは、本件契約の内容となっていたこと
諾否の事由がないという事はできない。

業務実績があげられなかった場合、解約となる可能性はあるが、特別指導があることで、通常の場合の助言や要請に強制力が生じるというのは飛躍といわざるを得ない。

助言指導にスタッフが従わなかったこと自体につき、スタッフに対して何らかのペナルティを科したことを認めるの足りる証拠はない

稼働日数や稼働時間を把握することもできたが、業績不振の原因を把握するために行われたもの
→ 稼働日数や稼働時間も相当幅があり、スタッフの裁量に任されていた。
訪問についても、具体的にどの日、どの時間についても裁量に委ねられている。

稼働日数分働かなくても指導を受けることもない。
→ 時間に対する拘束性は強いものではない。

訪問以外では、待機を強いられるわけではない。

再委託も認められており、実際にも再委託制度を利用している者がいる。

(事件概要)
地域スタッフ
勤務成績不良を理由に途中解約
週刊稼働日数や稼働予定日を記載した業務計画表
実際には、空欄であることが多い
1日1回送信キットを使用し送信
1週間に1度業務の報告書を提出
所得税の源泉徴収はされておらず
事務所得として確定申告処理
社会保険料は納付されていなかった

(判決)
労働契約的性質を有すると認めることはできない。

全員取締役の労働者性


(考察)
内容としては、正社員をすべて役員とした場合の労働者性における考察だと思うが、管理監督者であるかどうかの査定と同様の考え方で良いと思われる。報酬において、売上高や利益をもとに考えているところは取締役としての考え方が出ていると思われる。

(条文)
労基法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1. 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2. 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3. 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
4. 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労基法114条(付加金の支払)
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。

(参考文言)
労基法上の労働者に該当するといえるか否かの問題は、労務供給者に該当するか否かの問題に帰する
客観的な事情をもとに、実質的な指揮監督関係ないし従属関係に服していたか否かという観点に基づき判断すべき

指揮監督関係ないし従属関係に服していたか否かという観点から判断すべき
① 取締役就任の経緯、
② その法令上の業務執行権限の有無、
③ 取締役としての業務執行の有無、
④ 拘束性の有無・内容、
⑤ 提供する業務の内容、
⑥ 業務に対する対価の性質及び額、
⑦ その他の事情を総合考慮

本件)
新入社員への株式譲渡についても、基本的に、その譲渡承認がされることもない
会社法296条以下所定の株主総会の招集手続きが取られたこともなく
総会として必要な同法318条所定の議事録の作成及び備置きがされた形跡はうかがわれない
活動記録に、日々の出退社時刻と各種業務時間数を入力、厳格に管理
事前の場合、欠勤報告書の提出を要し、使用などの曖昧な表現は認められない
2週間を超えての休暇及び1週間を超えての病気欠勤又は使用休暇については、給与を減額
人事異動や授業配置についても、Xが自由に選べるわけではなく、本部での決定
給与23万円程度及び、賞与を支給
その対価は、年間売上高83億円、経常利益12億円強を上げている会社である取締役の報酬としては、低廉にすぎる

(事件概要)
参加条件通知書を提出
① 就業開始日
② 就業場所
③ 業務内容
④ 就業時間、休憩時間
⑤ 休日
⑥ 給与所得
⑦ 欠勤などの査定
⑧ 通勤手当
⑨ 退職
⑩ 競業避止義務
⑪ 除名の各項目

6か月の試用期間経過後、平成23年10月17日に就任承諾書を差し入れて、形式上は取締役とされ、株式も購入
Xは、平成23年3月11日から25年12月21日まで、Y社の類塾に在籍
時間外労働を強いられていたにもかかわらず、取締役であったことを理由に残業代の支払いを受けなかった。

(判決)
Xは、Y社の実質的な指揮監督関係ないしは従属関係に服していたものといわざるを得ず、紛れもなく労基法上の労働者であったと認められるべき

時間外手当の不支給が、労基法37条に違反していることは明らか
労基法114条に基づいて、Y社に対し、過去2年分のXの時間外手当にかかる付加金の支払いを命じるのが相当

委託契約者の更新拒絶に対する労働者性と有効性


(考察)
委託契約に関する内容として興味のある判例です。当たり前の事ではありますが、委託契約書に則って対応することの重要性が分かる判例です。

(重要文言)
労基法において、労働者は、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと定められている。(労基法9条)
当該労務提供者がこれに当たるかどうかは、契約内容および労務提供の実態などを総合考慮して、使用従属性があるといえるかどうかに帰着する。

<業務委託契約書>
1年間の契約期間が定められ、
配送業務の受託に当たっては有効期間の定めのあるソクハイ配送技能認定証の保有が必要
有効期間を延長するためにはソクハイ配送技能認定更新試験に合格する必要がある
契約の内容が説明され、署名押印
その規程の内容通りにソクハイ配送技能認定試験も受験
契約終了時期が到来するにあたっては、更新手続き等の問い合わせをしていた
実質的に期間の定めのないものであったとみることは困難

(事件概要)
Y社との間で運送請負契約書、業務委託契約書と題する契約を順次締結
Xらは、契約期間を1年間とする内容
有効期間を延長するためには、Yが実施する同内容のソクハイ配送技能認定試験に合格しなければならない。
Xらが契約終了を告知

(訴え)
Xらは労基法上の労働者であり、契約終了の告知は解雇のあたるところ、同解雇は理由がなく無効

(判決)
本件更新拒絶に解雇権濫用法理の適用があるという事はできない。

労働者派遣法の申込義務における労働契約の有無


(考察)
労働者派遣法40条の4の申込義務について解説されているが、私法上の雇用契約が発生しない形を取っている。不法行為についても保護された利益を侵害していないという考え方がとられている。

(重要文言)
労働者供給事業への該当性(職安法違反)、及び派遣先と派遣労働者との間での明示又は黙示の労働契約の成立を否定

<派遣受入期間の制限のある業務について、派遣受入期間の制限への抵触日以降も、派遣労働者を使用しようとする場合(労働者派遣法第40条の4)>
申込義務は公法上の義務であり、これにより私法上の雇用契約申込義務が発生する訳でない。
本件では、派遣元から派遣先への抵触日通知も欠く。
派遣先の直接雇用の申込義務を否定

公法:国家と市民との関係を規律する法 憲法
私法:私人間の関係を規律する法 民法

<不法行為責任の有無>
派遣法の規制を順守
派遣労働者に対し、信義誠実の原則に則って対応すべき義務
この義務に違反して、派遣労働者の権利又は法律上保護された利益を侵害したとき

<正社員になることの勧誘>
Yの人事に関する責任ある立場の者による発言ではなく、Xらと日々労働を共にする現場の上司による意向打診
Xらの意向を社内の決定権限のある部局に伝えるとの内容
Xらの期待は、客観的にみて合理的な期待として権利又は法律上保護された利益とは認められない。

(事件概要)
Xらは、M各社において雇用
平成8年2月以降から18年11月10日以前には業務処理請負の従業者
翌11日以降は労働者派遣の派遣労働者
Xらの就労期間は、短い者で約4年、長い者では13年4か月に及んでいた。

平成21年11月頃、同月10日の労働者派遣契約の期間満了に際して、同契約が更新されないこと
翌11日以降、就業を拒否

(訴え)
労働契約上の権利を有する地位
信義則に則って対応すべき条理上の義務違反の不法行為

(判決)
偽装請負の下でも継続して訴外M社に雇用され賃金の支払いを受けていた。
実態が労働者派遣である以上、偽装請負ではなく形式上も労働者派遣とした場合と比べて、Xらに不利益があったとは認められない。
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