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請負契約と雇用契約の考え方


(考察)
現在、請負契約と労働契約において各官庁の調査においても良く耳にする話であるため、明確な判断をとれる文言がほしいところであるが、結局のところは指揮命令系統がどこにあるかが争点になりやすいように思われる。

(本文)
Yは、運送事業を目的とする株式会社であり、
A社がB社らに請け負わせた配送業務を、さらに下請として請け負っていた。
平成24年12月 Yは、Bから請け負っている配送業務の一部をXに委託
Y社に自らの車両を持ち込み、配送作業を下請
25年1月頃 Xは、Bの従業員からAの倉庫での作業を打診
同月16日 倉庫作業を行うようになった。

X・Y間の契約)
配送業務については走行距離
倉庫業務については労働時間に基づき支払う。

平成26年9月10日以降 配送業務を行わなくなり、倉庫作業のみを行っていた。
27年3月27日 Yから倉庫に行かなくてよい旨告げられる。
同年4月15日 YからXに対してBからYとの請負契約を解除する旨の通知があり、
Bからの発注がない事
Bからの発注がなくなったことによるX・Yの契約終了については口頭で中地済みであるが、念のため本書面で通知
XがYとの雇用契約であると主張しているので、Yは予備的に同日付で解雇の通知をしたことを申し述べる記載がなされた通知書を送付

YがXとの請負契約を解約したことに対し、倉庫作業に関してX・Y社間で雇用契約が成立しており、Yによる解雇は無効であると主張

雇用契約上の地位確認や未払割増賃金等の支払いを求めた。

(判決)
倉庫作業におけるXの労基法および労契法上の労働者性について)
Bから指示を受け指揮監督に服していたこと
業務遂行における時間及び場所の拘束を受けていたこと
労働基準法及び労働契約法上の労働者に当たる。

倉庫作業にかかる作業報酬について、Yが報酬額決定に関与していたとはうかがわれない。
作業報酬額を決定したのはYではなくBである。
Bは倉庫作業を請負であると認識していたと認められ、雇用者の地位を意識的に引き継がせる意思のなかったことは明らか
Yには、自己がXを雇用する雇用者の地位にあるという認識も、これを他社から引き受けた認識もあったとは認められない。
雇用契約が成立したと認めることはできない。

雇用契約は、当事者間の契約の形式に関わらず成立を認めるべき場合がある)
順次請負契約である場合に孫請人が下請人を介することなく元請人の下で孫請業務とは異なる別個の作業に労働者として従事した場合、
下請人の意思とは無関係に下請人と孫請人との間に雇用契約の成立を認めることは、労働者派遣法の趣旨や労働者の保護を考慮してもなお不当

X・Y間の社会保険関係が成立していること)
社会保険関係の成立、労働基準監督署による労基法違反の是正勧告、労働局長による労働者派遣法違反の税制指導書は、
真正な順次請負関係であったことを適切に評価せず、Xを倉庫作業に従事させるためにBらのもとに派遣した事案と同様の見立てをしている点で失当であり、採用できない。

X・Y間の雇用契約が成立したと認めることは出来ない。
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宮大工の労働者性

(考察)
今回の判例では、詳細に労働者性についての仕分けが行われており、今後の考え方に参考になる
(重要文言)
労災保険法にいう労働者は、労基法9条にいう労働者と同一と解するのが相当

労基法9条の労働者とは、
職業の種類を問わず、事業又は事業所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと定義
① 使用者の指揮監督下に置かれているか否か
② 報酬が提供された労務に対するものであるか否か

によって判断するのが相当

労基法は刑事法でもある
使用従属性は、明確かつ厳格に解釈しなければならない

雇用契約、委任契約、請負契約といった契約の形式にとらわれるのではなく、労務提供の形態や報酬の労務対償性及び、これらに関連する諸要素を総合考慮し、実質的に判断する必要

<使用従属性を判断する要素>
① 労務提供の形態
仕事の依頼、業務従事の指示などに対する諾否の事由の有無、
業務遂行上の指揮監督の有無、
勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
代替性の有無
等に照らして判断するのが相当

② 報酬の労務対償性
報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合、補強すると考えられる。

③ 労働者性の判断を補強する要素
次のことを総合的に判断する必要がある。
事業者性の程度
 機械、器具の負担関係
 報酬の額
 損害に対する責任
 商号使用の有無等
専属性の程度
その他の事情
 報酬について給与所得として源泉徴収を行っている
 労働保険の適用対象としている
 服務規律を適用しているなど

<本件において>
1.仕事の依頼、業務従事の指示などに対する諾否の事由の有無
本件全証拠を精査しても、KがCから本件各工事の仕事を依頼された際、これを断ることが困難であったことをうかがわせる個別具体的な事情は認められない

2.業務遂行上の指揮監督の有無
Cの具体的な指揮命令を受けていたことを認めるに足りる的確な証拠は認められない

3.勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
本件各工事はそれぞれ現場が定まっていたが、業務の性格上当然
作業時間について契約上の拘束があったとまで認めることはできない
出退勤自国の記録なども見いだせない

4.報酬の労務対償性
大工手間作業について、
品名として大工手間など、終了として人数を記載するなどした請求書を提出
確定申告書における給与所得の内訳欄にKの商号として使用している甲野工務店から426万3,000円(収入額全額)と記載している。

(事件概要)
Kは、23年7月頃独立し、一人親方などとして、特別加入
Cは、F神社の修理工事を請負、Kに対し、1日2万円の支払いを条件として、契約
大雪によりFが倒壊したため、修理工事とは別に1日2万円の支払いを条件として解体撤去工事も依頼

Xの夫であるKが、工事に従事中、屋根から落下し死亡
労基署長に対し、遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求
Kが労基法9条に定める労働者とは認められない。
不支給処分
これを不服として、本件各処分の取り消しを求めた。

Xは、特別加入者としての遺族補償給付などの支給を請求し、支給決定されている。

(判決)
Kが、C工務店の指揮監督のもとに労務を提供していたものと言えないことに加え、
CからKに支払われた報酬については労務対償性があるとは言えない
Kが労災保険法上の労働者に該当するとは言えない
原告Xの労災不支給処分取消請求が棄却

委託契約に対する労働者性


(考察)
問題となっている委託契約の労働者性に対する分かり易い判例になっている。
(重要文言)
労契法上の労働者性の判断
(ア) 仕事の依頼、業務従事の指示などに対する諾否の事由の有無
(イ) 業務遂行上の指揮監督の有無
(ウ) 勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
(エ) 代替性の有無
(オ) 報酬の労務対償性
(カ) 事業者性の程度
(キ) 専属性の程度
(ク) その他の要素(地域スタッフの報酬の源泉徴収、地域スタッフは労働保険の対象外であること、Yの就業規則の不適用)

(訴え)
Xが、Y協会との間で、平成9年1月29日に、放送受信契約の取次等を業務内容とする有期の委託契約を締結
3年ごとに計6回契約を更新
15年余にわたり業務に従事
Xの業績不良を理由として本件契約につき中途解約

Y協会に対し、Xは労契法上及び労組法上の労働者に当たり、本件中途解約は、
労契法17条1項違反、
民法90条違反(不法労働行為)、
本件契約の解約制限条項違反又は信義則違反により無効であると主張

労働契約法第17条(契約期間中の解雇等) 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

民法90条(公序良俗) 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

① 労契法上の地位確認
② 24年8月25日から25年1月24日までの休業見舞金などの支払い
③ 25年2月1日以降の事務費などの支払い
④ 25年6月20日以降の報奨金、特別給付金などの支払い
⑤ 不法行為に基づく損害賠償などを請求

(判決)
訪問する先や日時を自らの裁量で決定することができる等、包括的に業務を委託
Xに具体的な仕事の依頼や業務従事の指示などに対する諾否の事由がないと認めることはできない
指導・助言を行う体制を敷いているが、これに応じなくても、債務不履行責任を問われたり、経済的不利益を課されたりすることはない
稼働日、稼働時間、訪問区域、経路などは、地域スタッフの裁量に基づき決定
業務遂行上の指揮監督を受けているという事はできない

委託業務の代替性が認められ、
報酬の労務対称性は乏しく、
交通費は地域スタッフが負担
兼職も禁止・制限されていない
地域スタッフのYに対する使用従属性を認めることはできない

本件中途解約が公序違反(不法労働行為)、本件契約の解除制限条項違反、信義則違反であるとするXの主張がいずれも退けられ、業績不良を理由とする中途解約が有効

共同設立者の労働者性


(考察)
兼務役員の報酬の内訳の算出方法が面白い。
(重要文言)
<労働者性>
従業員としての地位を全く否定することは困難
少なからず、同地位を有していたものとみるのが相当
 勤務時間や場所などについて、これらを自由に決定出来る状況になく
 会計上、給与の名目で月額報酬を支給
 雇用保険に加入
 取締役としての就任登記がなされていない

会社組織の指揮命令下で美容師として稼働するという側面を有している以上、原則として従業員性が認められる

従業員の立場とは基本的に相いれない立場といえるような特段の事情がある場合でない限り、従業員性を否定することはできない
実質的に使用人兼務役員のような立場にあったといえるにすぎない

<報酬の内訳>
報酬月額57万円のうち、
少なくともXに次いで美容師としての稼働実績を残している一般従業員の賃金と同額の37万円が賃金相当額
残額20万円が実質的に役員報酬額に相当

<報酬額を変更する旨の合意>
XがYと共同して代表取締役となり、両者が同額の役員報酬を受領していることを前提
同報酬の減額を念頭においてなされたものというべき
抽象的な内容にすぎないものと推認される
賃金相当額の合意があらかじめ具体的にされたものという事は到底できない

(訴え)
Y社の経営する美容院において、少なくとも平成23年3月17日から25年2月末まで稼働していた原告Xが、
Yに対し、Yとの間に労働契約が成立している旨を主張
同契約に基づく賃金等の支払いを求めた。

(判決)
賃金相当額37万円から22万円への4割ほどの大幅な減額について、賃金減額の通告に納得していたものでない
真意に基づき同意していたことを認めるに足りる証拠はない
各月15万円(合計105万円)分に限り請求が認容

地域スタッフの労働者性と労契法の適用の有無

(考察)
従業員とみなされなくても、それに準じる程度とみなされると労契法を類推適用するという考え方は覚えておいた方が良い。

(重要文言)
<労契法17条1項の類推適用>
原告Xは、Y協会に対し、直ちに指揮監督関係を肯定することはできないが、
労契法上の労働者に準じる程度に従属して労務を提供していたと評価することが出来る

契約の継続及び終了においてXを保護すべき必要性は、労契法上の労働者とさほど異なるところはなく、本件契約の中途解約については、労契法17条1項を類推適用するのが相当

労働契約法第17条(契約期間中の解雇等)
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

(訴え)
Xが、Y協会との間で、平成9年1月29日に、放送受信契約の締結や放送受信料の集金などを業務内容とする有期の委託契約を締結
3年毎に計6回契約を更新
15年余にわたり業務に従事
業績不良を理由として中途解約をされた
本件中途解約は、
労契法17条1項違反
民法90条違反(不当労働行為)
本件契約の解約制限条項違反又は信義則違反により無効であると主張
本件契約に基づき、
労働契約上の地位確認
24年8月25日から25年1月24日までの休業見舞金、報奨金、特別給付金と、事務費、遅延損害金等の支払いを求めた

(判決)
本件中途解約は、Xの業績不良を理由とするもの
期間満了を待たずに直ちに契約を終了せざるを得ないような事由であるとまではいえない
本件契約中途解約は労契法17条1項の類推適用により無効
休業見舞金、報奨金、特別給付金、事務費などの支払いが命じられた。

契約を更新しなかった理由は、Xの長期にわたる業績不良、長期休業など
YがXの契約更新申し込みを拒絶したことは、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当
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Author:roumutaka
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