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休職規定変更及び、復職拒否の有効性


(感想)
労働契約法10条により、就業規則の変更の有効性を求めるのが難しくなっている現状だと思います。
また、うつ病については、従業員に承諾を得て、診療録の提供を受けるなど、医師との密なやり取りが不可欠になってきていると思います。
余談にはなりますが、本裁判で記載されている復職要件の9項目は他の事業所でも十分に使える内容にはなっていると思います。

(重要条文)
<労働契約法>
10条(就業規則による労働契約の内容の変更) 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
※本件
業務外傷病のうち特に精神疾患は、一般的に再発の危険性が高く、完治も容易なものではない
「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件とする本件変更は、業務外傷病者の復職を著しく困難にするもの
変更の必要性及びその内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらない。
合理的なものということはできない。

(重要文言)
業務外傷病により休職した労働者について、治癒したというためには、原則として、労働者が主張・立証すべきもの

使用者が休職制度を設けるか否か、その制度設計については、基本的に使用者の合理的な裁量に委ねられている

内部資料として作成されたものにすぎず、従業員には開示されていない。
内規による運用が本件雇用契約の内容として、Xの復職可否の判断を無条件に拘束するものではない。

Xの復職可否の判断の際に医師に照会し、Xの承諾を得て、同医師が作成した診療録の提供を受けて、Yの指定医の診断も踏まえて、診断書及び本件情報提供書の内容を吟味することが可能であったが、何らの医学的知見を用いることなくして、診断を排斥
不合理なものであり、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものというべき

(事件概要)
平成22年12月13日 うつ状態と診断
同月14日 Yに診断書を提出
23年10月14日まで 傷病休暇を取得
24年9月1日 就業規則の変更
24年12月20日まで 療養休職
24年12月6日 診断書及び情報提供書を提出
※症状が改善したため、同月14日より就労可能であるとの所見が記載
同月17日 Y指定医の診察を受け、復職に問題ないとの診断
平成24年12月20日 雇用終了に関する通知を交付し、本件雇用契約終了を通知

<就業規則の変更>
傷病休暇、療養休職および復職の制度に関し、
復職とは従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行できる状態の勤務を行うことをさし
リハビリテーションとして短時間勤務などが必要な場合、休職期間中に行うもの
※療養休職者の復職可否判定基準
①本人が職場復帰に対して十分な意欲を示している。
②通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる。
③復職する部門の勤務日、勤務時間の就労が継続して可能であること。
④業務に必要な作業をこなせること。
⑤作業などによる疲労が翌日までに十分回復していること。
⑥適切な睡眠覚醒リズム。
⑦昼間の眠気がないこと。
⑧業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していること。
⑨休職期間が満了するまでに問題なく職務が遂行できる健康状態に回復していること。

(訴え)
雇用契約を締結した後、業務外傷病により傷病休暇及び療養休職を取得した原告Xが、療養休職期間満了時に休職事由が消滅したから、X・Y間の雇用契約がY社の就業規則により終了するものではないなどと主張

Yに対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求める。
未払賃金及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
地位確認及び賃金支払いについてXの請求を認容

育児休業取得に対する不利益取り扱い


(重要文言)
Yの育児休業規定9条3項に基づく職能給の不昇給は、Y病院の人事評価制度の在り方に照らしても合理性を欠き、育児休業取得者に無視できない経済的不利益を与える者であって、育児休業の取得を抑制する働きをするもの

育児介護休業法10条に禁止する不利益取り扱いに当たり、かつ、同法が労働者に保障した育児休業取得の権利を抑制

ひいては同法が労働者に同権利を補償した趣旨を実質的に失わせるものであるといわざるを得ず、控除に反し、無効というべき

(事件概要)
人材育成評価システムマニュアルには、育児休業、長期の療養休暇または休職により、評価期間中における勤務期間が3か月に満たない場合は、評価不能として取り扱う旨の規定

Yは、Y病院の労働組合に確認した上で、22年9月に、育児介護休業規定9増3項において、「昇給については、育児休業中は本人給のみの昇給とする」と改めて、同年10月1日から適用

Xは25年1月31日付でYを自己都合退職

(訴え)
Yが開設するY病院において看護師として勤務していた控訴人Xが、平成22年9月4日から同年12月3日まで育児休業を取得
Yが、Xの3か月間の不就労を理由として、23年度の職能給を昇給させず、そのため昇格試験を受験する機会も与えなかった。
これらの行為は、育児介護休業法10条に定める不利益取扱いに該当し、公序良俗(民法90条)に反する違法行為であると主張
Yに対し、不法行為に基づき、昇給・昇格していれば得られたはずの給与、賞与及び退職金の額と実際の支給額との差額ならびに慰謝料の支払いを求めた。

賃金体系変更

(参考条文)
<労働契約法>
3条(労働契約の原則)1項 :労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
8条(労働契約の内容の変更) :労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
9条(就業規則による労働契約の内容の変更) :使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
12条(就業規則違反の労働契約) :就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
<労働組合法>
7条(不当労働行為) :使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
一 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
二 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
三 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
<民法>
90条(公序良俗) :公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

(重要文言)
不利益が重大であるとする点について、「Xらが、本件第二次変更による減額が原因で現実に生活に困窮を来すことになったことを認めるに足りる証拠もない」
売上高に対する人件費の割合が高く、常に7割を超える状況で人件費を削減する必要性があった
3年近くにわたり20回以上、団体交渉が行われてきた。
実施から1年余り経過して、その内容を給与規程に明示したものであり、代償措置や経過規定が設けられていないからといって、内容の相当性を欠くという事はできない。

(概要)
Xらはいずれも本件組合の組合員又は組合員であった者
少子化、車離れ、ライフスタイルの変化など社会的な流れの影響を受けて、経営状況が悪化
平成18年5月25日 団体交渉において、本件組合に対し、会社再建を目的として、給与体系の見直しなどを提案
20回以上にわたり団体交渉や書面のやり取りによる協議
合意に至らなかった
21年3月13日付 本件組合に対し、一律3万5,000円引き下げて、年齢給、勤続給、技術給および調整給を廃止
教習1時間当たりの教習手当は増額
平成21年5月以降(一次変更) Xらの基本給を22万9,200円から19万4,200に変更
22年7月1日付(二次変更) 給与規定中の基本給部分を19万4,200円と改定

(訴え)
本件各変更は、労働条件の不利益変更
労契法3条1項、8条、9条、10条に違反
労働組合に所属しているXらを狙い撃ちにした不利益取り扱い、支配介入に当たり、
労組法7条1号、3号及び、民法90条に違反し無効であると主張
① 1か月当たりの基本給として22万9,200円の、
基準内賃金として勤続給、技術給、年齢給の、
基準外賃金として調整給の各支払を受ける労働契約上の地位を有することの確認を求める。
② 21年5月支払い分から24年11月支払い分までの差額賃金、退職金受給年齢に達したものに支給された退職金の差額及びこれらに対する遅延損害金の支払い
③ 退職したものについて、21年5月分から退職日までの差額賃金、退職金の差額及びこれらに対する遅延損害金

就業規則変更の合理性


(重要文言)
不利益を労働者に法的に受任させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合、効力を生ずるもの

<合理性の有無>
労働者が被る不利益の程度、
変更の必要性の内容・程度、内容自体の相当性、
代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、
交渉の経緯
国社会における一般的状況などを総合考慮して判断

労働条件を労働者に不利益に変更する内容でありかつ合理性がない就業規則の変更であっても、当該就業規則の変更について労働者の個別の合理がある場合には、
当該労働者との間では就業規則の変更によって労働条件が有効に変更される。
同意の有無の認定については慎重な判断を要し、
各労働者が当該変更によって生じる不利益性について十分に認識したうえで自由な意思に基づき同意の意思を表明した場合に限って同意をしたことが認められる。

X5らについては、
本件各意見書を提出した際に本件役職定年制の内容及び不利益性について理解していなかったことは考え難い
Yの移行に反する意見の表明により不合理な人事異動などを受けたものがいたと認識していたとは認められない。
自由な意思に基づき本件役職定年制の導入に同意したと判断

(経緯)
平成12年1月5日 管理職を対象とする説明会
同月12日 各支店及び本部の職員代表を対象とする説明会
同日 本部および飛田支店を除く支店の職員代表から異議がない旨の書面が提出
同月13日 X5が、「異議ありません」と記載した上で署名押印し、Yに提出
同月24日 X9が、「異議ありません」と記載した上で署名押印し、Yに提出
同年2月14日 意見や反論に対して回答することを目的として説明会
同月15日 意見聴取を目的とする説明会
同月16日 異議がない旨の書面が提出



(訴え)
Xらが、Y社が導入した役職定年制に伴う就業規則の変更は無効であると主張
Yに対して、労働契約に基づき、本件役職定年制が適用されなかった場合における給与、賞与、および退職金と、Xらに実際に支払われた給与などとの差額等の支払いを求め
X6が、不法行為に基づき、本件役職定年制が適用されなかった場合における雇用保険の基本手当と実際に支払われた基本手当との差額等の支払いを求めた。

(判決)
削減幅は年10%という大幅なもの
定年を迎える時点において50%にまで達する
不利益性の程度が非常に大きなもの
他の信用金庫と比べて経費率が高く、職員の賃金を削減する必要性が一定程度
55歳以上の職員にのみ著しい不利益
若手・中堅の職員については給与などの減額がなされていない
早期希望退職制度の導入などの代償措置を導入することが不可能であったことを窺わせる事情もない
Yの破綻等の危険が差し迫っているほど高度なものではない。

(損害額)
役職定年制の導入に関して、就業規則の変更が合理性を欠き無効と判断されることは予見できた
不法行為の成立を認める。
受給した雇用保険の基本手当の額と本来受給できた基本手当の額との差額により損害額が算定

降格処分及び、解雇の有効性

(一般論)
降格処分の有効性 :以下①から③等の諸点を総合してされるべき
①. 使用者側の人事権の行使についての業務上・組織上の必要性の有無・程度
②. 労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適正を有するか否か
③. 労働者の受ける不利益の性質・程度

(重要文言)
解雇事由に該当する行為として求められるのは、懲戒処分ですでに制裁を受けた行為であって、解雇事由としてこれを重視するのは相当でない。
Yの業務を阻害するようなものとは認められず、いずれも解雇に値するほど重大なものと評価できない。

(訴え)
雇用契約上の地位にある事の確認
賃金未払分、賞与未払分、解雇後の未払賞与、未払賃金の支払いを求めた。

(判決)
解雇権を濫用したもので無効として、雇用契約上の権利を有する地位にある事の確認
未払賃金として平成20年8月から平成21年4月まで毎月10日限り14万5,000円、同年5月から同年12月まで毎月10日限り14万4,000円及び、各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払
解雇後の賃金として平成22年1月から本判決確定の日まで毎月10日限り50万円及び、各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度で理由があるから認容
その余は理由がないからいずれも棄却
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Author:roumutaka
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