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就業規則の不利益変更に対する適用の可否

<訴え>
スタッフ職制度の導入に伴う就業規則の変更は、労働条件を労働者に不利益に変更するものであって、Xらにはその効力は及ばない
原告A1からA10の10名が、
定期昇給が実施されたことを前提とした支払賃金
ならびに賞与の支払い、
及びこれらに対する遅延損害金の支払いを求めた。

判決として、請求を棄却

内容は次の通り

<争点となる条文>
労契法9条 :従業員と合意することなく、不利益に労働条件を変更できない。
10条 :9条の例外として、次の内容を満たせば変更できる。
 周知
 不利益の程度
 必要性 :維持することが困難となる事情
 相当性 :経過措置の有無、代償措置、他の条件の改善状況、社会的相当性
 交渉の状況
 変更に関わる事情

① 変更に関わる事情
和歌山県下の他の同一規模の農業協同組合と比較して、収益率が低い。
3期連続で事業損失を計上していた。

② 交渉の状況、周知
労働組合が明確に反対の意思表示をしたことはなかった。
本店各課長や支店長などに対する説明
各支店における説明に際して使用した資料の回覧
人権啓発研修会ならびに全職員研修会における説明
各支店には、就業規則の規程集が備え付けられており、就業規則等の内容を確認することができた。
就業規則等やスタッフ職制度に関する規程は、内部のイントラネットで閲覧することも可能であった。

周知)
全職員に周知されていたものと認められる。

交渉の状況)
労働組合が内容等を理解したうえで、反対の意思表示をしていない。
変更を経つつも、10年以上にわたって継続して適用されてきたものであり、一応の定着をみていると評価できる。

③ 不利益の程度、相当性
スタッフ職以降直前の基本給と同額
賞与は原則として支給しない。
定期昇給は実施しない。
推進業務の目標数値は、他の職員よりも軽減された。

不利益の程度)
変更に係る不利益の程度が大きいということは出来ない。

相当性)
賞与については、臨時に支払われる賃金の性質を持っている。
過去に継続して定期昇給が実施された結果、他の職員に比して、賃金も相当程度になっている。

スタッフ職制度に伴う変更後の就業規則等の内容が相当性を欠いているとまでは認められない。

④ 労契法9条の合意
制度の制定及び、改正につき、賛否の表明あるいは改正に対する明示的な同意をしたことはなかった。
不服を述べたこともなかった。
黙示的な同意があったと評価することは出来ない。

⑤ 労契法9条の不利益
従前)
裁量によって賞与を支給
定期昇給を実施することができた
変更)
賞与が原則的に支給されなくなり
定期昇給も実施されなくなった

一般的客観的に対比すると、労働条件を不利益に変更するもの
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人事制度変更に伴う不利益変更の有効性

(考察)
不利益変更では珍しく合理性が認められている。結局のところ、従業員も会社の運営決定に巻き込んで長い時間を掛けて、話し合うしかないという感じに思われる。

(重要文言)
<重要な権利に不利益を及ぼすこととなってもやむを得ない高度の必要性>
解雇や整理解雇は、従業員に大きな影響を及ぼすもの
Yの性質からすれば、人件費の支出が大きな割合を占める
定期昇給の停止や手当削減などの一時的な対策のみでは経営状態を改善する効果は限定的であるといわざるを得ず
本件変更には、労働者の退職金などという重要な権利に不利益を及ぼすこととなってもやむを得ない

<代替措置>
一定の激変緩和措置を設けている
職群資格を設けたことが一定の代償措置と評価できる
Yにおける退職金の支給率及び基礎となる基本給の額は、大阪府という同一地域内において高いものとなっている
変更後の内容は相当なものといえる

<交渉・説明>
本件組合などとの交渉・説明も行われてきており、その態度も誠実なものであるといえる
要求を受けて資料を開示するなどしていたほか、
交渉においても、新人事制度が所与のものであって、変更の余地がないというような強硬な態度をとることなく
平成24年度の賞与の支給、昇給の延伸及び激変緩和措置などに関する要求を受けて、従前提案していた制度から変更する
突如として本件変更の必要性があることを説明したものではなく、
以前から、複数回にわたって新人事制度導入の必要性やその内容について説明を行っていたと評価することができ、
Y期連続赤字という経営状態であっても、直ちに昇給を停止するなどの措置を講じるのではなく、
従前の給与規則に基づいて賃金の支払を継続してきた
柔軟な対応をとっていたと評価することが出来る

(訴え)
Y法人において、新人事制度が施行され就業規則が変更されたことで退職金が減額となった原告Xらが、変更前の規則に基づく退職金と既払退職金との差額及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
変更は合理的なものと認められる

65歳定年制の設置という不利益変更の有効性


(考察)
期間雇用契約に対する定年の在り方について、規則を細かく分けることが大切であると思われる。

(重要文言)
<従前の労働条件に対する不利益変更法理の有効性>
旧公社には年齢による再任用の制限がないという労働条件が存在していた
このような労働条件は旧公社からY社に引き継がれている

上限規則を設けることによって不利益を被ることになることは否めないが
不利益の程度は限定的なものといわざるを得ない一方で
上限規則を制定することの必要性が認められ、
その内容それ自体も相当なものであるという事ができ、
その他の事情も合わせて考慮すると、
本件上限規則の制定により旧労働条件を変更する合理性が求められ、
これを周知する手続きが採られていることを踏まえると、
本件上限規則は、本件規則の一部として規範的効力が認められ、雇用契約の内容となる

(訴え)
Y社との間で期間の定めのある雇用契約を締結して就労し、その後雇い止めされたXらが、それぞれ、Y社に対し
① 当該雇い止めは解雇権濫用法理が類推適用され、無効
雇用契約上の地位の確認並びに雇用契約に基づく未払賃金およびこれに対する遅延損害金の支払いを求める
② 当該雇い止めがXらの雇用継続に対する合理的期待を違法に侵害し、精神的損害を与えたと主張
不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた

<期間雇用社員就業規則>
会社の都合による特別な場合のほかは、満65歳に達した日以後における最初の雇用契約の満了の日が到来したときは、それ以後、雇用契約を更新しない

(判決)
Xらの請求を棄却

育児短時間勤務制度利用を理由とした昇給抑制


(考察)
育児介護休業法23条の2に関する説明文のような条文であり、参考になる。昇給に関する不利益の考え方についても参考になる判例であると思われる。

(重要文言)
育児・介護休業法23条の2の規定は、同法の目的及び基本理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当

不利益な取り扱いをすることが同条に違反しないと認めるに足りる合理的な特段の事情が存しない限り、同条に違反するものとして違法であり、無効

育児・介護休業法23条の2の規定は強行規定である。

不十分な利益を与える部分が併存するとき、この利益を与える部分を含めて全部無効とすれば、労働者は不十分な利益すら失ってしまう。

解雇、降格、減給などの作為による不利益取り扱いをする場合に、禁止規定としてこれらの行為を向こうとする効果を持つのは当然
しかし、本来与えられるべき利益を与えないという不作為の形の場合、必要な請求権を与え、あるいは法律関係を新たに形成ないし行政する効力までをも持つものとは、その文言に照らし解することができない。

過去の法律関係については、確認の利益に欠ける。

(重要条文)
育児・介護休業法第23条の2 事業主は、労働者が前条の規定による申出をし、又は同条の規定により当該労働者に措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

(参考)
強行法規(きょうこうほうき)とは、法令の規定のうちで、それに反する当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定をいう。 強行規定ともいう。 契約などによって変更することが認められている規定をいう「任意法規(任意規定ともいう)」と対になる用語である。 強行法規に反する契約などの合意は法律行為として無効となる。

「行為」のうち、動静の「動」が作為、「静」が不作為と呼ばれます。
不作為の例としては、赤ちゃんが泣いているのにミルクをあげない、人をはねてしまったのに救助しない、といったものがあげられます。
これに対して、作為の例としては、契約書にサインをする、ナイフで人を刺す、といったものがあげられます。

(判決)
本件昇給抑制にかかる行為を無効とは解さない。

昇給の事実がないため労働契約に基づく賃金請求権として請求することはできないが、
不法行為に基づく損害賠償として差額賃金相当分の支払い及び慰謝料の請求が認められた。

不法行為による財産的な利益を侵害されたことに基づく損害賠償の請求にあっては、
財産的損害が填補され回復することにより精神的苦痛も慰謝され回復するものというべきであるが、
本件昇給抑制は、翌年度以降も抑制された号棒を前提に昇給するもの
不利益が退職するまで継続し続けるだけでなく、退職金の金額の算定方法によっては、退職金額にも不利益が及ぶ可能性
あらかじめ補填を受け回復することができない。
財産的損害とは別に慰謝料10万円が認められる。

合併に伴う退職金減額の従業員同意の有効性


(考察)
給与や退職金についての労働条件の不利益変更についての難しさがつづられた判例であると思われる。署名だけでは効力をもたらすことが難しいというのは、相当なハードルの様に思われる。

(重要文言)
労働条件は、労働者と使用者との個別の郷甥によって変更することができ、
このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても、
その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではない。

変更が賃金や退職金に関するものである場合、
変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべき

<労働条件の変更に対する労働者の同意の有無>
 労働者の行為の有無だけでなく、
 労働者にもたらされる不利益の内容及び、程度
 労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様
 当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等

当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき

(事件概要)
合併により、Xらにかかる労働契約上の地位を承継したYに対し、Cの職員退職給与規程に基づく退職金に支払いを求めた事案

(判決)
新労働条件による就労に同意した者の氏名欄に署名押印
新労働条件による就労に同意した者の氏名欄などへの署名押印により、本件基準変更の効力が生じたとした二審判決が破棄、高裁に差し戻された。


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