fc2ブログ

会社分割後の分社に異動した労働者と親会社間の合意解約の有効性


(考察)
いらなくなった従業員を分社した会社に異動させて、会社ごと潰してしまう方法をとった事例だと思われます。
分社前の会社の退職が有効といえるかが争点となっていますが、文書の記載をしてもらったとしても、それに至る協議の内容及び、プロセスを重視する必要があると思われる判例だと思われます。

(本文)
平成24年4月 従業員らに対して本件会社分割を実施することとその目的を公表
同年5月中旬頃 各説明に並行して、5条協議の実施が予定されており、B工場長から退職勧奨を受けた。
 5条協議:会社分割に伴う承継等に関する法律による通知をすべき日までに労働者と協議する。
労働組合からの脱退を条件にXを退職勧奨の対象から外し、オアスにてXの雇用を守ることを約束
同年5月上旬 Xら従業員に対し、A工場が分社化されること、分社化された後の従業員の労働条件には特段変更がない事を説明
同年6月4日 Xが労働組合を脱退したため、オアスがXの労働契約を承継することが決定し、書面にて本件会社分割に関する諸事項の通知を受ける。
同年6月7日 Y社の人事労務担当者がXらA工場の従業員に対して本件会社分割の概要を再度説明
 Xらは、生産・物流本部に属する従業員全員の労働契約がオアスに承継されること
 労働契約の承継が決定した者については承継されたくない旨を申し立てることは出来ないこと
同年7月2日 Y社は会社法上の新設分割の方法により、本件会社分割を行い、X・Y社間の労働契約は、Y社の100%子会社であるオアスに承継された。
Xはオアスとの雇用契約に署名押印
 新設分割:会社の営業の全部または一部の権利を他の会社に包括的に承継させる。
平成26年1月31日 一人株主であるY社がオアスの解散決議を行ったため、Xはオアスを解雇

XがY社に対し、主位的にオアスによる労働契約の承継はXとの関係で手続きに瑕疵がある。
 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と賃金・賞与の支払いを求め、
 Y社が会社分割前の説明に反し、オアスの解散決議を行い、Xを失職させた等として、
不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた。

(判決)
承継法
労働契約の承継の如何が労働者の地位に重大な変更をもたらし得るものである
分割会社に対して、「承継される営業に従事する個々の労働者との間で協議(5条協議)を行わせることとし、当該労働者の希望などをも踏まえつつ分割会社に承継の判断をさせることによって、労働者の保護を図ろうとする趣旨に出たものと解される」
承継法3条は適正に5条協議が行われて当該労働者の保護が図られていることを当然の前提とするもの
 承継法3条 :労働者が分割会社との間で締結している労働契約、承継会社が承継する際、分割の効力が生じた日に承継される。

会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、
当該労働者は当該承継の効力を争うことができる。

リストラや、労働組合に加入してリストラに抗う(争う)事でもって不利益を被る蓋然性が高いことを示唆される中で、
労働組合を脱退することと引き換えに労働契約のオアスへの承継の選択を迫られたにすぎず、
労働契約承継に関するXへの希望聴取とは程遠く、法が同協議を求めた趣旨に反すると判示している。
協議の内容及びプロセスを重視し、他方で、承継の有効要件として労働者の同意まで求めるものではない法の趣旨目的を蔑ろ(軽んずる)にするもので、失当と判断している。

本件会社分割に伴い、XはY社に対して、
Y社を退職することと、
以後、在職中に知り得たY社の機密事項を保持することを記した文書を提出している
<機密事項を保持した文書>
今般私は2012年7月1日付をもって、貴社を退職することになりましたが、業務上知り得た会社、関係会社、顧客または、他の社員に関する秘密事項、在職中知り得た機密事項及び貴社の不利益となる事項の保全に留意するとともに、退社後もこれを他に漏らさない事を確約いたします。

本判決は、上記文書は退職の意思表示というよりも秘密保持を誓約する内容のもの
X・Y社間の労働契約が承継されることになっていた状況下では、
退職という表現が、退社という事実上の意味を超えてXY社間の労働契約を将来に向けて合意解約するというような法的意味合いを持って用いられたものとはいえない。

Y社が未払賃金および賞与の支払義務を負うことが確認される。
スポンサーサイト



事業譲渡と解雇の有効性


(重要文言)
<譲渡に当たるか>
会社の目的の同一性、
光洋商事が譲渡した内容、
光洋商事の譲渡への関与に照らすと、
運送事業を有機的な一体としてY1社に譲渡したというべき
① 運送事業は目的が概ね同一
② 事業用車両の半数以上と什器備品の譲渡を受け、
③ 本店所在地、駐車場、給油設備は光洋商事が従来使用していた場所
④ Xらを除いた光洋商事の従業員を全員雇用したこと
⑤ 事業開始に必要な手続き、取引の承継の根回しをしたこと等

<法人格の濫用>
支配下にあるY1社に無償で承継させ、
Xらを排除したこと
法人格を濫用した不当労働行為というべき
解雇は労働組合法7条により無効
Y1は、信義誠実の原則に照らし、光洋商事とは別個独立した法人であるとして、労働契約の効力が及ばないと主張することはできない

労働組合法
第7条(不当労働行為)
使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
1. 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。
2. 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。
3. 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
4. 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法 (昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。

<整理解雇との関連性>
労働組合法7条1号の不当労働行為に該当すると認められるため、無効と判断されるのであって、
整理解雇の4要件を満たし解雇権の濫用が否定されるかどうかと直接かかわるものではない

(訴え)
光洋商事の従業員Xらが、Xらの加入する労働組合を壊滅させる目的でXらを解雇
光洋商事の資産、Xらを除く従業員、取引先等を光洋商事の代表取締役Y2が支配するY1社に承継
本件解雇は、不当労働行為または解雇権の濫用に当たり無効
労働契約承継法4条の類推適用によりY1は労働契約関係を承継または、
法人格否認の法理によりY1は光洋商事と別法人であることを主張できない
Y1社に対して、労働契約に基づき、
① XらがY1社との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
② 未払賃金などの支払いを求めた。

労働契約承継法
第2条
第1項
第1号 当該会社が雇用する労働者であって、承継会社等に承継される事業に主として従事するものとして厚生労働省令で定めるもの
第4条 第二条第一項第一号に掲げる労働者であって、
分割契約等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を承継会社等が承継する旨の定めがないものは、
同項の通知がされた日から異議申出期限日までの間に、当該分割会社に対し、当該労働契約が当該承継会社等に承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができる。
2  分割会社は、異議申出期限日を定めるときは、第二条第一項の通知がされた日と異議申出期限日との間に少なくとも十三日間を置かなければならない。
3  前二項の「異議申出期限日」とは、次の各号に掲げる場合に応じ、当該各号に定める日をいう。
① 第二条第三項第一号に掲げる場合 通知期限日の翌日から承認株主総会の日の前日までの期間の範囲内で分割会社が定める日
② 第二条第三項第二号に掲げる場合 同号の吸収分割契約又は新設分割計画に係る分割の効力が生ずる日の前日までの日で分割会社が定める日
4  第一項に規定する労働者が同項の異議を申し出たときは、会社法第七百五十九条第一項、第七百六十一条第一項、第七百六十四条第一項又は第七百六十六条第一項の規定にかかわらず、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、分割契約等に係る分割の効力が生じた日に、承継会社等に承継されるものとする。

(判決)
解雇は無効
退職金相当額と中間収入を控除した未払い賃金の支払を認めた
精神的苦痛を慰謝する金額として30万円が相当

事務組合の解散と承継による地位確認


(考察)事業承継についても期待権の認められるケースは大いにあることに注意したい。

任用関係の主体が消滅したときに職員は身分を失う
 任用とは:ある人を役目につけて使うこと

他の地方公共団体との間に任用関係の承継ないし設定を許容する解釈は、法解釈の限界を超えるものというべき

身分を失った病院組合の職員をY市の市長が当然に職員として任用する義務を負う法律上の根拠は存在せず
職員の任用は、市長その他の任命権者が、その裁量のもと、固有の権限として任命権を行使して行うもの
Xらが、Y市に任用され、固有の勤務関係を設定することについて法律上の利益を有していると解することはできない

Y市の市長が、Xら職員に対し、解散後も任用されると期待することが無理からぬものとみられる行為をしたというような特別の事情がある場合
期待を抱いたことによる損害につき、国家賠償法に基づく賠償を認める余地がある
 国家賠償法とは:行政救済法のひとつ。公共団体の公権力の行使によって生じる損害賠償の責任と、国家の営造物の設置管理に関する損害賠償の責任を規定した日本の法律である。同法は次の6条からなっている。(1条)公権力の行使に関する規定(2条)公の営造物に関する規定(3条)賠償責任者に関する規定(4~6条)他の法律との関係

市長に向けられていた期待は、法的保護に値するものというべき
職員の身分について従来の方針を変更し、事情の変更について誠実に説明することをしなかった行為は、期待権を侵害するもの
国家賠償法に基づく損害賠償責任を負う

期待権侵害による慰謝料として、各自50万円とするのが相当

法人格の濫用と従業員の解雇との関係


(考察)
法人格の濫用による場合、雇用関係が事業と一体として承継される場合、解雇と同視すべきである事を考慮する必要がある。

(重要文言)
雇用関係が事業と一体として承継されると評価できる場合に、
事業に元に従事する労働者が事業の譲受人に採用されないことは、事業に従事する労働者にとっては、実質的に解雇されたと同視すべきもの

本件)
Y1の運送事業とは、その目的が概ね同一であり、取引先も同一
Y1は光洋商事から事業用車両の半数以上と什器備品の譲渡を受け、本店所在地、駐車場、給油設備は、光洋商事が従来使用していた場所
Xら組合員を除いたものを全員雇用
不動産の借用についても斡旋し雇用を承継

光洋商事は、運送事業を有機的な一体としてY1に譲渡したというべき

(事件概要)
Xらが、光洋商事の代表取締役であるY2は、Xらの労働組合を壊滅させる目的で、Xらを解雇し、光洋商事の資産、Xらを除く従業員、取引先などを自らが支払するY1社に承継させたが、
Y1は光洋商事とXらとの労働契約を承継した、
または法人格が否認されるとして、
Y1に対し、XらがY1との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認、
未払い賃金の支払い等を求め、さらに、Y2に対して不法行為に基づき、損害金各110万円の支払い等を求めた。

(判決)
事業用車両の対価である2,000万円の交付を認める証拠はなく、運送事業を無償で譲渡
什器備品などを無償で引き継ぐなどの優遇は、Y2とY1との強い関係をうかがわせるもの

Y1については独立の経営実態が存在しないというべき

承継した場合の労働条件の変更は可能か


(判例に対する自分なりの意見)
労働契約承継法によれば、労働者が希望すれば、そのままの労働契約が保障される。
不利益変更までも付いてくるとすると、承継するまでに話し合いを済ませている方が良いかも。

(参考文言)
Xに対し、三者択一の回答を求めた。
(イ) 阪神電鉄を退職してYに転籍するか
(ロ) 阪神電鉄を退職するか
(ハ) Y以外での就労を希望するか
その中に、阪神電鉄との間の従前の労働契約をそのままYに承継させるという選択肢はなく、そのような選択が可能であるとの説明もされなかった。
配慮を行わないことに対して異議申出の前提となる労働契約承継法所定の通知の手続きを省略し、Xの利益を一方的に奪ったもの

同法の趣旨を逸脱するものと言わざるを得ず、いずれも公序良俗に反して無効
Xが適法に同法4条1項所定の異議申出を行った場合と同様に、そのまま承継会社であるY社に承継される。

不利益変更にXが同意したことが認められるとしても、
Xの利益を一方的に奪う手続きに基づいてされたもの
公序良俗に反して無効
Xの同意によっては変更されない。

(参考条文)
労働契約承継法の各規定
承継会社に承継される事業に主として従事する労働者には、各会社分割に当たり、当該労働者が希望しさえすれば、分割会社との間で従前の労働条件がそのまま承継会社に承継されることが保障されている。

通知義務の規定(労働契約承継法2条1項)
例外規定はないから、転籍にかかる同意が得られたからといって上記通知などの手続きの省略が当然に許されるものと解されない。

労働契約承継法2条1項(労働者等への通知) :前項の分割をする会社(以下「分割会社」という。)は、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二条の労働組合(以下単に「労働組合」という。)との間で労働協約を締結しているときは、当該労働組合に対し、通知期限日までに、当該分割に関し、当該労働協約を承継会社等が承継する旨の当該分割契約等における定めの有無その他厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。

(経緯)
9年4月 腰椎椎間板ヘルニアに罹患して手術を受けた。
腰椎由来の神経障害が残り、排尿・排便が困難となる障害が残った。
10年1月 復職
本件排便傷害などを理由として、Xの勤務シフト等において必要な配慮を行う。
少なくとも、午後の比較的遅い時間からの勤務シフトばかりを担当させるという勤務配慮を行うことが合意
平成20年7月16日から同月18日
各従業員に対する説明会を実施
同説明会で、補足説明資料を配布
本件説明資料には、「勤務配慮は原則として認めない」との記載
同年4月1日 Xは、Yに転籍することに同意する旨を記載
「自動車事業経営改善計画に対する同意書」と題する書面を提出
Yとの間で、勤務配慮は原則として認めない事などを内容とする新たな労働契約を締結
Yに転籍

(訴え)
排便・排尿が困難となる障害を有することを理由に、勤務シフト上の配慮を受けていたXが、Y社に転籍した後、上記勤務配慮を行わなくなった。
公序良俗に反するなどと主張して、従前どおりの配慮された勤務シフトに基づく勤務以外の勤務をする義務のない地位にあることの確認を求める。
従前受けてきた配慮が受けられなくなったことなどにより、Xが精神的苦痛を受けた。
不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び遅延損害金の支払いを求めた。
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
毎日、2時間以上の勉強を欠かさず、一歩ずつでも前進致します。
顧問先様への新しい情報の発信及び、提案の努力を怠りません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる