(考察)
復職の可否の判断に、障害者法による雇用の責務を考慮する必要があるという記述に驚かされた判例でした。
(重要文言)
休職の事由が消滅とは
通常の職務を通常の程度に行える健康状態になった場合
または当初軽易作業につかせればほどなく従前の職務を通常の程度の行える健康状態になった場合
職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合、
当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務に就いて労務を提供することができ、
かつ、その提供を申し出ているならば、
なお債務の本旨に従った履行の提供がある。
復職の可否の判断においては
障害者基本法、発達障害者支援法、障害者雇用促進法による障害者の雇用にかかる責務の趣旨も考慮すべき
しかし、これらは努力義務にとどまる。
合理的配慮の提供義務も、労働契約の内容を逸脱する過度の負担を伴う配慮の提供義務を事業主に課すものではない。
(事件概要)
Yに雇用され、業務外の傷病により休職
平成24年2月29日をもって休職期間満了により自然退職となる旨をXに告知
以後の就労を拒絶
(訴え)
就業規則の定めに基づき休職期間満了により退職を告知されたXが、休職期間満了時において就労は可能であったとして、地位確認および賃金等の支払いを請求
(判決)
労務を提供でき、かつ、その提供を申し出ていたともいえないとして、Xの請求を退けた。
(感想)
休職事由は企業の裁量が認められる事案ではあるが、復職の要件については、産業医等の相談、担当医の意見聴取など、どの判例でも細かい作業が必要であるのは辛い。
(重要文言)
休職とは、従業員について労務に従事させることが困難または不適切な事由が生じた場合、
労働契約関係を維持させながら労務への従事を免除または禁止することである
休職期間中に休職事由が解消して就労可能となれば休職は終了すると解されている。
Yの方で産業医などと相談の上、Xの回復状況を確認すべき
(事件概要)
Yの就業規則
休職事由の一つに、「特別の事情があって休職させることが必要と認められるとき」が掲げられ、
その休職期間は「必要な期間」と定められていた。
復職に関しては、「休職の事由が消滅したときには、直ちに復職しなければならない」と定められていた。
D病院 :Yの代理人が現職の具体的な仕事内容が遂行可能稼働医師に問い合わせたところ、Xがリハビリのために同月4日から通院を開始していたE病院で確認した方がいいと回答
E病院 :高所作業を安全に遂行できる状態化を同医師に問い合わせたところ、「病後であり完全な県常任より当然リスクは高い。自己責任あるいは職場の判断として頂きたい。…危険作業と考えられ推奨できない」との回答
XがE病院で身体機能検査を受けたところ、通常歩行及び応用歩行ともふらつきがなく、検査のいずれも原点項目がなく満点
Xがリハビリを経て元の業務ができる程度に回復していたものの、
Yが実際に回復状況を確認することなく、回復前の診断書に基づき復職を認めないまま解雇
身体機能検査で現に回復が確認し得た時点で休職事由が解消していたものとして、解雇無効と判断
(判決)
本件解雇は解雇権濫用により無効
Xの労働契約上の地位確認せ一級ならびに賃金支払い請求を認めた。
(重要文言)
従来の判例をみると、主治医の診断書を提出して復職を申し出た労働者に対し、会社は休職事由が消滅している限り復職を承認しなくてはならないとしていた。
<賃金請求権>
労務の現実の提供を受けて発生するもの
解雇など、受領拒絶の意思を明確にしている場合、履行の提供の要件は軽減
労働者に履行の意思と能力が客観的に認められれば、履行の提供があったものと認めるのが相当
(事件概要)
平成15年9月 Yに入社
平成21年9月頃 体調を崩し、うつ状態との診断
23年4月27日 Yとの間で団体交渉をもち、覚書を締結
覚書 :Xは復職に当たっては就労可能を証する診断書を提出し、その際Yは、従来の労働条件通りでXを元の職場に就労させる。
同月28日以降 Yを休職
24年9月28日 主治医からの復職可能との診断書を添えて、Yに復職を請求
同年10月4日 解雇
(訴え)
Y社に対し、YのXに対する解雇が無効であると主張
① 権利を有する地位にあることの確認
② 解雇された平成27年10月以降の未払賃金等の支払い
(判決)
Xは、復職可能な健康状態になったこと及び復職の意思を明確に示しえて復職を請求した。
労務提供の履行の意思と能力は客観的に認められ、履行の提供があったものと認めるのが相当