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リハビリ出勤後の休職期間満了による解雇の有効性

(事件概要)
Y社と期間の定めのない雇用契約を締結し、建築設計技師として勤務してきたXが、うつ病により休職
リハビリ勤務をしていたが、平成24年6月11日付
休職期間満了の通知(休職期間満了を理由とする退職の取扱及び、解雇の意思表示)をした。

Yに対し
① 本件退職措置及び本件解雇は無効なものであると主張し、地位の確認
② 本件確定の日までの未払い賃金及び、遅延損害金
③ 債務不履行及び不法行為に当たると主張して、慰謝料及び弁護士費用550万円

就業規則において
休職中のものが休職期間を満了してもなお債務不能のときは休職期間満了をもって退職すると記載

(考察)
休職制度とは
休職期間中の使用者による解雇を制限し労働者の地位を保全するもの
労務の提供ができなかったにもかかわらず解雇権を留保されていた労働者が主張立証責任を負うと解するのが相当
本件)
Xが本棚の整理やコピーのような日常的な事務作業すら満足にできなかった。
しかし、これらの業務の重要度がXの建築設計士としての職務内容において比重の低いものであることは明らか
設計技術者としての業務遂行能力の回復見込みがないなどとは判断し得ない

休職原因である復職不能の事由の消滅とは
従前の職務を通常程度に行う事が出来る状態にある場合をいう

それに至らない場合
労働者の能力、経験、地位、精神的不調の回復の程度などに照らして、
相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合を含むものと解するのが相当

リハビリ的な勤務
勤怠や職務遂行状況が雇用契約上の債務の本旨に従い従前の職務を通常程度に行うことができるか否かのみならず、
相当期間内に
作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合であるか否かについても検討する
休職原因となった精神的不調
の内容、現状における回復程度ないし回復可能性、職務に与える影響について、
医学的な見地から検討することが重要

使用者の責めに帰すべき事由によって労務の提供ができなかった期間
他の仕事について中間利益を得たときは、使用者は中間利益の額を賃金額から控除できる
しかし、
労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については、控除の対象とすることが禁止されている
解雇期間中の賃金を支払う事由発生時)
平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時間的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することが許される

(判決)
相当の期間内に通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込まれる状況にあったとみるべき
Y社が行った休職期間満了を理由とする退職扱いはその効果が認められない。
Xには解雇事由がなく、権利濫用となり無効
損害賠償請求をいずれも棄却
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休職期間満了による退職扱いの有効性


(事件概要)
東電に雇用されていたXが、傷病により休職し、就業規則の定めに基づく休職期間の満了により雇用契約が終了し、退職したとされたのに対し、休職期間満了時に復職が可能であったと主張

(判決)
原告Xについて休職の事由が消滅したというためには
① 休職前の業務が通常の程度に行える健康状態
本件)→ 提示に勤務できる状態にまで回復していたとはいえない。
② 当初軽易作業に就かせれば、ほどなく上記業務を通常の程度に行える健康状態
本件)→ 認めることもできない。
③ ①、②が十全にできないとき、Xと同職種、同程度の経歴のものが配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務を提供する事
本件)→ 現実的可能性があると認められる部署が存在したと認めることは出来ない。
④ Xがその提供を申し出ている事

が必要

地位確認請求が退けられた。

休職期間中のリハビリ出勤の有効性


(事件概要)
Y協会の従業員Xが、精神的領域における疾病による傷病休職の期間が満了したことにより解職
(1) 同期間満了前に精神的領域における疾病が治癒し、休職の事由が消滅しており、解職が無効であり、
① 労働契約上の権利を有する地位の確認
② 休職期間経過後の賃金及び賞与の支払を求める。
③ テスト出局開始から傷病休職満了までの期間について、給与規定による賃金及び、これに対する遅延損害金の支払い
④ 不法行為に基づく損害賠償金及び、遅延損害金の支払い

(判決)
<違法性>
本件テスト出局を無休で実施したことに問題が認められるが、健保から傷病手当金等が支給されていることなどに鑑みると、本件テスト出局が無給であることをもって、違法であるとまではいえない。
<賃金請求権>
休職者は事実上、テスト出局において業務を命じられた場合にそれを拒否することは困難な状況
単に本来の業務に比べ軽易な作業であるから賃金請求権が発生しないとまではいえない
当該作業が使用者の指示に従って行われ、成果を使用者が享受している場合、労働基準法11条の規定する「労働」に該当する。
最低賃金法の適用によりテスト出局については最低賃金と同様の定めがされたものとされる。
賃金請求権が発生する。

最低賃金法4条2項 :労働契約で最低賃金に達しない賃金を定めるものはその部分について無効となり、最低賃金となる。

Xの行った作業が、X処遇区分の賃金に相当する対価に見合う労務を提供したものと認めることは困難
本来の債務の本旨に従った労務の提供を行ったとはいえず、職員給与規程による賃金の支払請求は認められない。

休職期間満了の有効性


(考察)
休職期間満了による有効性を実現するにあたり、必要な事項が明記されている判例であると思われる。
(事件概要)
Xが、休職期間満了により退職扱い
求職命令の無効確認、
労働契約上の地位確認、
就労拒絶期間中の賃金・賞与や慰謝料などを請求

(争点)
(1) 本件休職命令の有効性
本件労働契約の債務の本旨に従った履行をすることができる状態にあった。
賃金請求権を失わず、休職期間満了を前提とする自然退職も認められない。
職種や業務内容が特定されていたことを認めるに足りる証拠はない。

Xが配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務提供が可能なときは、履行の提供があったものと認められる余地がある。
① Xが就労することには障害があると考えられるとのY社産業医の意見書
② 対人接触を最小限にするため在宅勤務制度を例外的に適したとしても、社内外との調整や、他の社員との共同作業が必要になることには変わりない

職種などに限定がない事を考慮しても、Y社内における配置転換により労働契約上の債務の本旨に従った履行の提供をすることができるような職場を見出すことは困難

(2) 休職期間満了時の休職事由の存否の主張・立証責任
労働者が復職を申し入れ、債務の本誌に従った労務提供ができる程度に病状が回復したことを立証したとき

雇用契約の終了の効果が妨げられると解するのが相当

(3) 退職手続きの違法性の有無
復職に際しては復職に支障がない旨の医師の診断書を提出するよう求めていたが、それも提出していなかった。

(判決)
Xの請求を棄却

リハビリ勤務中止後の休職満了による解雇の有効性


考察)休職に関する考え方で参考になる。
復職の検討としては、通常業務を想定した作業付加の元で勤怠がきっちりとできること
リハビリ勤務では、作業の成果や責任などを求めなければ、会社の指示に従わせること自体は当然であり、問題ない。

Xは、うつ病を理由に
20年2月25日から同年6月24日まで 傷病欠勤
20年6月25日から22年10月31日まで 傷病休職(22年2月25日から無給休職)
22年5月12日から テスト出局
22年11月1日 復職
うつ病に起因するとみられる頭痛又は体調不良を理由に
23年8月19日、同月25日及び26日 傷病欠勤
うつ病が再発したことを理由に
23年9月12日から24年1月13日まで 傷病欠勤
24年1月16日から 傷病休職
25年4月8日から テスト出局
25年7月26日 テスト出局が中止
25年9月16日から 無給休職
26年9月22日から テスト出局
26年12月19日 中止
27年4月15日 休職期間が満了し、解職

就業規則では、
傷病欠勤が4カ月を超えた場合には休職
休職期間の延長に関する規定
休職期間が満了した際には解職
4カ月の傷病欠勤中は賃金の95%
それに続く1年8カ月の傷病休職期間には90又は95%
その後の1年6カ月は無給
4カ月を超えた休職者には産業医が認定した場合に限り、復職を命ずる。

テスト出局制度
職場のメンタルヘルスケアガイドに詳細な定めがあり、リハビリを行うに当たってYが場を提供するもの
業務ではなく、リハビリの一環として位置づけられている。

 同期間満了前に精神疾患が治癒していたと主張
解職が無効
労働契約上の権利を有する地位の確認
テスト出局開始以後の賃金及びこれに対する遅延損害金を請求

判決)
テスト出局は、傷病休職中の職員に対する健康配慮義務(労働契約法5条)に基づく職場復帰援助措置義務の考え方を背景に、Yが制度化したもの

 労働契約法5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

その内容として、労働契約上の労務の提供と同水準又はそれに近い水準の労務の提供を求めることは制度上予定されていない。

原則24週間のプログラムで、後半12週間はフルタイムの出局をすることになっており、管理職がその管理監督を行うことを指摘

主治医による復職可能との判断を前提にし、段階的に出局時間を長くし、作業負荷を増加させて通常勤務に近づけていくこと自体は合理的

最後の2週間は職場の実態に合わせて通常業務を想定した作業を行うこととされている

テスト出局のほとんどの期間の作業内容は軽度のものが想定されており、職員、管理職及び産業医の3者で協議して決定・変更するもの

<復職の検討を行う状況の目安>
疾病の完治が条件ではなく、
通常業務を想定した作業負荷の元において、無断で遅刻、退勤、欠勤することなく、通勤を含めて安全に実施されていること
制度上、作業の成果や責任などが求められているとは認められない。

管理職の指示に従うこと自体は当然
テスト出局中にXが行った作業が、労働契約上の労務の提供といえるようなものとは認められない。

 テスト出局の中止や解職に違法性があると主張
不法行為に基づく損害賠償などを請求

判決)
対人関係を含めた日常生活上のストレス負荷に端を発した側面が大きいと考えられる。
テスト出局において定められた出退局時刻を守って出局することは、精神科領域の疾患に罹患した職員が復職するためのステップとして重要

平成26年12月18日にXの精神状態ないし健康状態が悪化し、同月19日も状態が回復していなかった

テスト出局を中止したことに違法な点はない事等を指摘

Xの地位確認及び賃金請求はその前提を欠き、不法行為も認められない。

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Author:roumutaka
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