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従業員による知的障碍者への暴言等と使用者責任の有無

Xからの伝聞以外には暴行などがあったことを裏付ける証拠がなく、Xが被告Y2の言動を否定的に受け止める傾向があることが否定できない
Xの主張は採用できない。

Y2がXに対し、複数回にわたって幼稚園児以下であるとの発言、馬鹿でもできるでしょとの発言
不法行為に該当する。

Y2による不法行為が事業の執行につき行われたことは明らか
Y1社は民法715条に基づき、使用者責任を負う。
民法715条(使用者等の責任) :ある事業のために他人を使用する者は、事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。
選任及び、監督について相当の注意をした時、注意をしても損害が生ずるべきであったときはこの限りではない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も前項の責任を負う。
3 前項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

・暴行・暴言等を受けている疑いのある状況が存在
事実関係を調査して適正に対処する義務を負う。
事実関係の調査及び対処を合理的範囲で行う安全配慮義務を負う。
本件) 複数回にわたり暴言を受けていたことにつき、I店長は、事実関係を確認し、Y2に注意をしている。
合理的な範囲の対処を尽くしていないという事は出来ない。

従業員の配置は、人事権の行使として原則としてその裁量に委ねられている。
雇用契約上X及び、Y2の就労場所及び職種が限定
Y2を配置転換、XとY2の業務を分けるといったことは困難
Xの配置転換に関し、Y1に合理的配慮が足りなかったという事は出来ない。

(判決)
Y2がXに対し、暴言をしたことによりXが精神的苦痛を受けたとは認められる。
これに起因して、Xが退職するに至ることまでが通常生ずべき結果であるとまではいえない。
不法行為との間で相当因果関係を認めることは出来ない。
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施設長、理事長及び、使用者法人に対する損害賠償請求


(考察)
ごく一般的な使用者賠償責任に関する判例であると思われる。管理監督の権限を有する者にも損害賠償を負うことを再確認したい。

(重要文言)
使用者は「労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務」を負い、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者

使用者の上記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべき注意義務を負っている

Kの直属の上司であった被告施設長Y3が、業務上の指揮監督を行う権限を有する立場
理事長Y2も、Kが所定休日にも出勤して仕事をせざるを得ない状況にある

上記注意義務を怠った過失があり、不法行為に基づく損害賠償を負う

Y1も、不法行為に基づく損害賠償を負う。
Y3との関係では民法715条、
Y2との関係では社会福祉法29条・一般社団財団法人法78条(代表者の行為についての損害賠償責任)

(参考条文)
第715条(使用者等の責任)
1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

(事件概要)
A1施設で事務管理室室長として勤務していた亡Kが、脳動脈瘤破裂による膜下出血を発症して死亡
長時間労働等の過重な業務が原因
Kの妻であるX1および3人の子が、Y1法人、Y2、Y3に対し、Kの業務過重性とYらの注意義務違反を主張
Y1について不法行為又は債務不履行
Y2およびY3については不法行為に基づき、損害賠償を請求

(判決)
週40時間を超える時間外労働時間
発症前1か月目 91時間50分
2か月目 99時間40分
3か月目 146時間42分
4か月目 125時間43分

その他、重要文言参照

逸失利益 4,936万2,258円
慰謝料 2,800万円
損益相殺 労災保険の葬祭料122万5,627円、遺族補償年金1,385万6,222円
弁護士費用 250万円

エリアマネージャーのパワハラ行為に対する使用者責任

(感想)
事業の執行について行われたものについては、使用者責任が求められる可能性が高い。
管理監督者になる者には、指導監督の在り方について研修等を受けさせることで、リスクを軽減することができると考えられる。

(重要文言)
Y3は、エリアマネージャーになるに当たって、部下に対する指導監督の在り方について指導や研修などを受けたことはなく、また、朝礼おける暴言、暴行を含めて、パワハラ行為について指導などを受けたことがないことが認められる。

Xら固有の慰謝料については、Kの慰謝料を算定する際に考慮、評価されており、Kの慰謝料とは別にXら固有の慰謝料を認めることはできない。

<使用者責任>
使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負うと解するのが相当であり、使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の上記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべき

Y3の不法行為は、Y1社の事業の執行について行われたものであるから、Y1社には使用者責任も成立する。

(事件概要)
Kは、21年11月頃、D店の店長になった。
X1は、Kの自殺に関し、平成23年10月5日、J労基署長に対し、遺族補償一時金などの支給を請求

(訴え)
Kが長時間労働及び上司であったY3からのいじめ・暴行などのパワハラにより急性のうつ病を発症して自殺したと主張

Y1社に対して債務不履行(安全配慮義務違反)及び使用者責任(民法715条)による損害賠償請求権に基づき、
Y1社の代表取締役であるY2に対して会社法429条1項による損害賠償請求権に基づき、
Y3に対して不法行為(民法709条)による損害賠償請求権に基づき、
損害賠償などを求めた。

(判決)
Y1社・Y2・Y3についてそれぞれ責任を認め、Xらに対する損害賠償を命じた。


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