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裁量労働制に関する労使協定の有効性


(考察)
労使協定の有効性について、周知徹底に加えて、個別労働契約及び就業規則等への記載の重要性を考えさせられる判例であると思われる。

(重要文言)
<降格と降給の関係について>
Y社就業規則では、降格に降給を伴うことも明記されているから、
懲戒権の濫用に当たらず、降格後の地位の賃金を下回ることがなければ、
年棒を引き下げることも可能と解される。

<労使協定の有効性>
裁量労働制に関する労使協定は、労働基準法による労働時間の規制を解除する効力を有する。
しかし、それだけで使用者と個々の労働者との間で私法的効力が生じて、労働契約の内容を規律するものではない
労使協定で定めた裁量労働制度を実施するためには
→ 個別労働契約、就業規則等で労使協定に従った内容の規定を整えることを要する

労使協定が使用者に何らかの権限を認める条項を置いても、当然に個々の労働者との間の労働契約関係における私法上の効力が生じるわけではない

本件)就業規則及び裁量勤務制度規則に具体的に引用するような定めは見当たらず、十分周知される措置が取られていなかった

(訴え)
本件は、XがY社に対し、
① 違法・無効な解雇を受け、
② 解雇前の降格及び
③ 裁量労働制からの適用除外も違法・無効
であるとして、
① 雇用契約上の権利を有する地位の確認ならびに
② 平成25年10月以降の降格、裁量労働制からの適用除外及び
③ 解雇の無効を前提とした毎月73万4,667円の賃金及び
④ 同年9月以前の降格及び
⑤ 裁量労働制からの適用除外の無効を前提とした賃金の未払い分の各支払いを求めた。

(判決)
採用労働制除外措置は、法的に有効ではないとして、本件降格による減額後の未払い裁量手当などの支払いを命じた。
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無期契約と有期契約の契約相違の合理性


(考察)
今後、同一労働同一賃金の話し合いがもたれるときに参考になると思われる。無期と有期の明確な違いをキッチリと考える必要がある。
(重要文言)
労働契約法20条の不合理性の主張立証責任
 有期契約労働者側
相違のある個々の労働条件ごとに
当該労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを
基礎づける具体的事実について主張立証責任を負う
 使用者側
労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであるとの
評価を妨げる具体的事実についての主張立証責任を負う
 労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
<不合理と認められるもの>
無事故手当
優良ドライバーの育成や安全の輸送による顧客の信頼の獲得といった目的は、両
社員のドライバーに対して要請されるべきもの
作業手当
正社員の基本給の一部と同視することはできない
給食手当
正社員の職務の内容や変更の範囲とは無関係に支給される
通勤手当
性質などに照らすと、合理性を肯定することはできない

<不合理と認められないもの>
住宅手当
正社員には転勤が予定されており
住宅コストの増大が見込まれる
有能な人材の獲得・定着を図るという目的自体は、人事労務上の判断として相応の
合理性を有する
皆勤手当
合理性を積極的に肯定することは困難であるとも考えられるが、不合理とまでは
できない
 無効と判断された労働条件の補充
労使間の個別的あるいは集団的な交渉にゆだねられるもの
無期契約労働者の労働条件を定めた就業規則などを適用しない場合は、不法行為による損害賠償責任が生じ得るにとどまる

(訴え)
Y社との間で、期間の定めのある労働契約を締結して配車ドライバーとして勤務したXが、
① XとYとの間には無期労働契約が成立しており、
仮にそうでないとしても、
無期労働契約を締結している労働者の労働条件と比較すると
無事故手当、作業手当、給食手当等の手当及び一時金の支給、定期昇給、退職金の支給に関して相違があり、
かかる相違は不合理であって公序良俗に反し、
平成25年4月1日以降は労働契約法20条にも違反して無効
② 労働契約上、上記各支給に関し、Yと無期労働契約を締結している労働者と同一の権利を有する地位にある旨主張
同地位にあることの確認を求め、
手取り賃金として最低でも月額30万円を支払う旨約したとして
③ 支払われた賃金との差額などを求めた

(判決)
Yの対応は、民法709条の不法行為を構成すると認められ、各手当の不支給額と同額の損害を被ったものと認められる。
 民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

正社員と有期社員の労働条件の差異の合理性

(考察)
通勤手当については、今後見直していく必要がある。正社員との差異についても、本社のみの事業所であれば、その他の差異をキッチリと見つけておく必要があると思われる。

(重要文言)
労働契約法20条「不合理と認められるもの」とは
当該労働条件上の相違が、職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の異同にその他の事情を加えて考察して、
当該企業の経営・人事制度上の施策として不合理なものと評価せざるを得ないものを意味すると解すべき

本件)
正社員は、就業場所および業務内容の変更命令を甘受しなければならず、
全国規模の広域移動の可能性がある
教育を受ける義務を負い、
中核を担う人材として登用される可能性がある
労働契約法20条に反するということもできない。

通勤手当に関し、正社員が5万円を限度として通勤距離に応じて支給(2km以内は一律5,000円)
契約社員は3,000円を限度でしか支給されないとの労働条件の相違
公序良俗に反するとまではいえないものの、経営・人事制度上の施策として不合理なもの
労働契約法20条「不合理と認められるもの」に当たる。

無効とされた労働契約の条件が自動的に代替されることになるとの効果を労契法20条の解釈によって導くことは困難

通勤手当について労契法20条に反し、同条に違反する労働条件の定めは、強行法規違反として無効
不法行為を構成する。

(参考条文)
労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

(言葉の意味)
強行法規 :法令の規定のうちで、それに反する当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定をいう。

(訴え)
期間の定めのある労働契約を締結したXが、期間の定めのない労働契約を締結した労働者と比較して不合理な相違のある労働条件を定めた部分は公序良俗に反して無効
同一の権利があると主張

(判決)
正社員の最低支給額である5,000円と、受給額である3,000円の差額である2,000円は不法行為による損害
労契法20条施行後の差額合計1万円が被った損害と認められる。

臨時社員に対する同一労働同一賃金の正当性


(考察)
臨時社員の存在意義を明確にしている判例であると思われる。曖昧な気もするが、8割という格差は今後の参考になると思われる。

(重要文言)
「正社員」「臨時社員」の区別は、雇用契約の内容の際から生じる契約上の地位であり、労基法3条にいう「社会的身分」には該当しない。

臨時社員として採用したまま固定化し、2か月ごとの雇用期間の更新を形式的に繰り返すことにより、女性正社員との顕著な賃金格差を維持拡大
同一(価値)労働同一賃金の原則の根底にある均等待遇の理念に違反し、公序良俗違反となりうる

均等待遇の理念も抽象的なもので、使用者側の裁量を認めざるを得ない

同じ勤務年数の女性正社員の8割以下となる場合に、裁量が公序良俗違反となるとして、その差額分につき違法な賃金差別を認めるにとどめた。

臨時従業員制度も企業の雇用調整の必要上、その存在意義を否定し得ないから、単なる名目的なものと断ずることはできない。

(参考条文)
労基法3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

(訴え)
正社員と勤務時間も勤務日数も変わらないフルタイムのパート労働者として「同じ仕事」をしてきたにもかかわらず、
過去5年余りの間に約230万円から550万円の賃金差別を受けたとして、不法行為に基づき、
差別賃金相当額など総額約1億4700万円の損害賠償を請求

(判決)
女性正社員の賃金の8割までの差額を被告の不法行為に基づく損害額と認定し賠償支払いを命じた。

フリーシフト制の休業認定について


(考察)
画期的な雇用契約であると思われる。休業の認定については興味深い。勤務可能日の申告が労務を提供する意思表示と就労義務と認められるかどうかで、具体的な証拠がないとして却下した事については参考になる。

(重要文言)
<フリーシフト制>
労働基準法35条1項に定める法定休日を日曜日とする旨の合意がなされた契約
Yから従業員に対して、翌日勤務すべき場所が具体的に指定されることによって、具体的な勤務日及び勤務場所が定まる。
具体的に指定されない場合、当該勤務日の具体的就労義務が免除されるという特質を有する契約

<休業の認定>
月曜日から土曜日までのうち、Yが就労の日時・場所を指定しなかったために勤務できなかったのは使用者の責めに帰すべき事由による休業であると主張
これに当てはまる休業日42日分について賃金の支払いを求めていた。

各日についてXがYに対し勤務が可能であると申し出て労務を提供する意思表示をしたこと、YがXに対し就労義務を具体的に免除したことを認めるに足りる証拠はない。

(事件概要)
祝日を除いた月曜から土曜日までの6日間に、
その日ごとYから支持される作業現場に赴いて稼働
就労日の前日に翌日の作業場所を指示
1週間前までの勤務可能日の申告をするよう指示
事前に休日の申告をしていない従業員に対して作業場所を支持して作業に従事

(訴え)
Yに対し、
平成23年9月18日に20日、
24年9月18日に20日、
25年9月18日に20日の合計60日の年次有給休暇を取得
その時期指定権を行使したとして、
労基法39条に基づき未払賃金60万円、
雇用契約に基づき、23年11月分から25年8月分までの未払残業代として7万5,451円
23年10月31日から25年6月6日までの会社都合による休業日42日分の未払い賃金として42万円、
休日労働した24年7月8日の未払い割増賃金として2,750円
の支払いを求めた。
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