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定年退職後の有期労働者の労契法20条違反の有無

(考察)
定年再雇用による賃金の調整が否定されたわけではないが、話し合いを持つ必要と皆勤手当については継続して付帯した方が良いと思われる。

(事件概要)
Xらは、定年前にはY社と無期労働契約を締結し、バラセメントタンク車の乗務員として勤務
満60歳で定年退職後、有期労働契約を締結し、嘱託社員としてバラ者の乗務員として勤務

Y社を定年退職した後、有期労働契約を締結して就労しているXらが、
無期労働契約をYと締結している正社員との間に、労契法20条に違反する不合理な労働条件の相違が存在すると主張

主位的に
正社員に関する就業規則等が適用される労働契約上の地位にある事の確認を求める。
差額及び、これに対する遅延損害金の支払いを求める。

予備的に
不法行為に基づき上記差額に相当する額の損害賠償金及び、遅延損害金を請求

<賃金体系>
正社員 →再雇用者(26年4月1日付改定)
基本給 →基本給(月額12万5,000円)
能率給 →調整給(老齢厚生年金の報酬比例部分が支給されない期間について月額2万円)
職種による職務給 →歩合給(職種により7から12%)
精勤手当(5,000円) →×
判決)精勤手当はその支給要件及び内容に照らせば、従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤することを奨励する趣旨で支給される
嘱託乗務員と正社員との職務の内容が同一である以上、両者の間で、その皆勤を奨励する必要性に相違はないというべき
労契法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当

無事故手当(5,000円)
住宅手当(1万円) →×
家族手当 →×
役付手当 →×
時間外労働等の超勤手当
嘱託乗務員の時間外手当の計算の基礎には精勤手当が含まれないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができる。

通勤手当
賞与 →×
3年以上勤務した乗務員に退職時に退職金を支給 →×

(判決)
<高年齢法>
60歳を超えた高年齢者の雇用確保措置を義務付けられており、定年退職した高年齢者の継続雇用に伴う賃金コストの無制限な増大を回避する必要がある
定年時より引き下げることそれ自体が不合理であるという事は出来ない。

定年退職後の継続雇用において職務内容やその変更の範囲等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは、Y社が属する業種又は規模の企業を含めて広く行われている。

<労契法20条>
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

有期契約労働者が定年退職後に再雇用されたものであることは、労契法20条にいう「その他の事情」として考慮される。

当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当

労契法20条に違反する場合、同一のものとなるものではないと解するのが相当

精勤手当及び、超勤手当(時間外手当)に係るXらの主位的請求は理由がない

予備的請求について
不法行為に基づく損害賠償として、損害賠償金及び遅延損害金の支払い義務を負う。
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契約社員と正社員の労働条件相違に対する妥当性


(考察)
今後の同一労働同一賃金の対応として役立つ判例であると思われる。残業代に関する考え方は参考になる。

(重要文言)
<労契法20条の不合理性>
労働者は不合理なものであることを基礎づける具体的事実について主張立証責任を負い、
使用者は不合理なものであるとの評価を妨げる具体的事実についての主張立証責任を負う

<賃金制度>
正社員には長期雇用を前提とした年功的な賃金制度を設け、
短期雇用を前提とする有期契約労働者にはこれと異なる賃金体系を設けるという制度設計をすることには、
企業人事施策上の判断として一応の合理性が認められる

正社員:月給制で昇給・昇格、資格手当加算等あり
契約社員B:時給制で、採用当初は一律時給1,000円で昇給なし
契約社員Bの本給は高卒新規採用の正社員の1年目の本給よりも高く
3年目でも同程度
10年目の本給を比較しても8割以上は確保

住宅手当)
正社員に支給、契約社員Bには支給されない
正社員は転居を伴う可能性
住宅コストの増大が見込まれる

賞与)
功労報償的な性格や将来の労働への意欲向上としての意味合い等
長期雇用を前提とする正社員に対し賞与の支給を手厚くすることには一定の合理性が認めらえる

<残業手当の支給要件の違いについて>
労基法37条の「割増賃金の趣旨に照らせば、従業員の時間外労働に対しては、使用者は、それが正社員であるか有期契約労働者であるかを問わず、等しく割増賃金を支払うのが相当等いうべき
このことは使用者が法定の割増率を上回る割増賃金を支払う場合にも妥当するというべき」

労基法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1. 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2. 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3. 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
4. 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働契約の期間の定めの有無のみを理由とする相違であって、前述した労働基準法37条の趣旨に鑑みると、不合理なものというべき

(訴え)
Y社の契約社員として期間の定めのある労働契約を締結し、売店で販売業務に従事してきた原告Xらが、
期間の定めのない労働契約を締結しているYの従業員がXらと同一内容の業務に従事しているにもかかわらず賃金などの労働条件においてXらと差異があることが、
労働契約法20条に違反しかつ公序良俗に反すると主張

労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

不法行為または債務不履行に基づき、
① 平成23年5月分から退職日(在職中のX1については28年9月分)までの差額賃金相当額、
② 慰謝料及び弁護士費用の賠償金並びに
③ 褒賞を除く各金印に対する支払期日以降の民法所定年5部の割合による遅延損害金の支払いを求めた

(判決)
早出残業手当に対する認定差額の支払い
早出残業手当の差額相当の損害賠償の請求にかかる弁護士費用500円の支払いを命じた
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