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事業譲渡による整理解雇の有効性


(事件概要)
Y社の安達営業所のタクシー車両34台、一般乗用旅客自動車運送事業をグループ会社であるK社に譲渡
安達営業所を閉鎖
従業員全員を解雇

(訴え)
整理解雇の4要件を満たしておらず、解雇権濫用した無効なものであると主張
労働契約上の地位の確認
未払い賃金及び遅延損害金の支払い

(判決)
 人員削減の必要性 :大幅な債務超過から税や社会保険料の滞納、人員削減をも含む抜本的な経営再建策を実行する必要があった。
しかし、経営を再建するために直ちに事業の一部を売却して現金化するほかない状態にあったとまでは認めることは困難
 解雇回避努力 :従業員の情報を提供して雇用の要請、解雇された従業員の一部に対してKへの就職を勧誘するなど
解雇回避措置として十分なものであったとはいえない。
 説明会 :事業譲渡について一切言及することなく抽象的な解雇理由に言及するに留まった。
組合からの団体交渉の要求にも応じていない。
十分な説明・協議が行われたと認めることができない。

会社更生法の適用下における整理解雇

(重要文言)
会社更生法の適用下において、更生計画を上回る収益が発生したとしても、このような収益の発生を理由として、更生計画の内容となる人員削減の一部を行わないことはできない。

更生計画を上回る営業利益を計上していることは、更生計画に基づく人員削減の必要性を減殺する理由とはならない。

<整理解雇における解雇権濫用法理>
① 人員削減の必要性の有無及び程度
② 解雇回避努力の有無及び程度
③ 解雇対象者の選定の合理性の有無及び程度
④ 解雇手続きの相当性など

の当該整理解雇が信義則上許されない事情の有無及び程度というかたちで類型化された4つの要素を総合考慮

(経緯)
平成22年3月以降 退職金の上乗せや一時金の支給などを条件に、二度にわたる特別早期退職措置を実施
整理解雇の方針を表明する前後の四度にわたる希望退職措置を実施
パイロットは、稼働ベースで80名分が削減目標に達しなかった。
平成22年12月9日 就業規則52条1項4号に該当するとして、解雇の予告
同月31日 Xらを解雇

22年度のY社の連結経常利益は1,884億円に上り、過去最高益を大幅に更新

就業規則52条1項4号 :企業整備などのため、やむを得ず人員を整理するとき

(訴え)
Xらが、当該整理解雇は無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および解雇の意思表示後の賃金などの支払いを求めた。

(判決)
① 解決認可された更生計画でも、事業規模に応じた人員体制とすることが内容とされていたものと認められる。
② 賃金などの減額、数次にわたって希望退職者を募集
③ 「病気欠勤・休職等による基準」「年齢基準」を用いたことも不合理でない
④ 労働組合と団体交渉などを尽くしていた。

整理解雇が有効

派遣労働者に対する整理解雇

(重要文言)
具体的に、「整理解雇の有効性の判断に当たっては、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性及び手続きの相当性という4要素を考慮することが相当である」

職務担当手当 :従業員が受託業務を担当した時、または、派遣社員として取引先にて派遣勤務した時に支給されるものと規定
待機社員に対して支払われるものではないと認めることができる。

赴任手当 :従業員が、会社の業務命令により、同居家族と別居して単身で勤務地に赴任する場合に、別居により生活費負担が相当増加すると認められるときに支給する場合があると規定

(訴え)
X(派遣法施行令4条の定める26業務中の、「研究開発」の技術者としての派遣に該当)が、Y社が平成21年5月31日付で行ったXを同年6月30日付で解雇する旨の意思表示は、整理解雇の要件を満たしておらず無効であると主張

Yに対し、Xが労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同年7月1日以降の賃金の支払いを求めた。

(判決)
本件解雇の時点で、切迫性はともかく、Yに人員削減の必要性があったと認められること及びYの本件解雇を含む整理解雇に係わる従業員や労働組合に対する協議・説明が明らかに相当性を欠くとはいえない事を考慮しても、整理解雇の一環として行われた本件解雇は、本件就業規則19条6号の「経営上やむを得ない事由のあるとき」に該当すると認めることができない
本件解雇は無効

<人員削減の必要性>
支出の相当割合を占める人件費を削減することが求められていた。
人員削減の必要性が生じていたことは否定しがたい。

<解雇回避努力>
Yが整理解雇の実施に当たって削減人数の目標を定めていたかも明らかではない。
Yが、本件解雇当時、人員削減の手段として整理解雇を行うことを回避する努力を十分に尽くしていたとは認めることができない。

<人選の合理性>
整理解雇の対象となる核技術社員の有する技術や経歴などについて検討した形跡はうかがわれない等として、客観的な合理性を有していない。

<手続きの相当性>
次の通り、Xにとって必ずしも納得のできるものではなかったことが窺われるものの、Yが一定の説明および協議を行っていること
Yの対応が明らかに相当性を欠くとまではいうことができない。

 YとC組合(Xが加入)との団体交渉を経て一定の合意に達した。
 平成21年3月末時点における待機社員に対し整理解雇にかかる説明会を開催した。
 K課長が、同年4月及び5月の2度、Xに対し、整理解雇にかかる書類を渡すなどして経営状況が悪いために整理解雇を行う旨を説明したこと

職務担当手当・赴任手当は解雇時に待機社員であったXに支給されるべき手当であると認めることはできない。

整理解雇の有効性

平成24年5月17日、今日は本当に暑くて、仕事をするのが辛かったあ。

今回の判例は、整理解雇の有効性についてです。

毎回の事ながら、四要件を満たしていることが必要であり、今回もこの要件について確認の上で、合理性なしと判断されています。



(事件概要)

平成22年3月時点の従業員数は600人余、そのうち東播工場勤務者85名(平成21年頃)→ 大規模開発プロジェクトの減少、大型公共工事の縮減、海外からの受注減など → 生産量が最盛期の20%程度に低下(21年12月末)→ X1に整理解雇を通告したことを契機に、組合分会が結成 → 分会からの労働協約締結や賃上げなどに関する団交要求に応じたものの、労働協約締結を拒否(平成22年2月)→ 主要取引先である2社からの新規発注が途絶えた。(平成23年1月)→ 生産量はかなり減少し、3月末で休止することを通告(希望退職募集した結果)→ 分会組合員21名、非組合員12名が退職し、さらに数名が退職(団交を要求)→ Yが団交に応じなかったため、労委へのあっせん申請、救済申し立て(結果)→ 3月になって団交に応じ、数度の団交(同年6月25日付)→ Yは解雇を譲らず、工場の保全と事後管理のための人員を除く28名に対して、就業規則に基づき、本件整理解雇を行った。→ 工場の操業停止を理由に債務者Y社を整理解雇された債権者(X1からX22)が、解雇無効を主張 → 地位保全仮処分及び本案一審判決言い渡しまでの間の賃金仮払い仮処分を求めた。(結論)→ 本件整理解雇を無効として、賃金仮払いを命じる。(退職金が振り込まれているとしても)→ 解雇の効力が争われている以上は用いることが出来ない建前 → その受領をもって保全の必要性を否定することはできない。(地位保全処分)→ 仮処分が任意の履行に期待するため実効性に乏しい。→ 雇用契約上の地位が国内滞在の要件となる外国人の場合や、技能低下など、特段の事情がない限りはその保全の必要性は認めがたいとして却下


(考察)

整理解雇の有効性 :労働者側に帰責事由がない一方、終身雇用を前提とする我が国の企業において整理解雇回避のための相応の努力をせず解雇することは信義則に反する。→ 整理解雇が合理的なものとして有効とされる。(整理解雇の4要件ないし要素)→ 人員削減の必要性があったかどうか、使用者が解雇回避努力を尽くしたかどうか、解雇の対象者の人選が合理的なものであるのかどうか、解雇の手続きが相当であるかどうかなどの観点から、慎重に検討する必要がある。(総合的に考慮)→ 労働契約法16条により解雇は無効 → 毎月の賃金仮払いを命じる。

① 人員削減の必要性 :Yは現に赤字で、それが継続する見込みを踏まえた創業の停止の判断 → 高度の経営上の必要性ないし合理的な運営上の必要性に基づくもの → 人員削減の必要性それ自体は認められる。

② 解雇回避努力 :Yが工場での社外工の削減、休業の実施、新規採用の取止め、希望退職者の募集を行った。(解雇対象者)→ 他部門から受け入れ不能という回答があった。→ 配点可能性を全く否定するものかどうかは疑問の余地がある。(個別的に)→ 配点の希望の聴取や具体的な配転交渉が行われた形跡がないうえ、個々の労働者にあらかじめ整理解雇基準を説明し、配転先の打診などをきめ細かく行うことが必要 → 組合側の拒否により不可能絵であったという事情も明確に認められない。→ 解雇回避努力が尽くされたとは言い難い。(加えて)→ 一部非常勤ではあるものの9名の社外工を残している。(工場以外)→ 新規採用を行っている。(給与や賞与面)→ 経費削減が行われているか疑問の余地がある。

③ 人選の合理性 :余剰人員を企業の再建という観点から削減するために行われる解雇である。(整理解雇の対象)→ 企業の再建にとって必要な人材かどうかという相対的判断によって行う。→ 残留者の人選基準が明示されたとは言い難い。→ 合理性が十分に裏付けられたとはいえない。

④ 解雇手続きの相当性 :十分に協議する義務(しかし)→ 誠実な交渉や譲歩もなく進め、その間、解雇対象者の個別な配転可能性を具体的に検討することもなく解雇に至った。(一定の情報を開示し、団交に応じたとしても)→ 解雇対象者ないし組合との間で誠実に協議・説明をなしたものとは評価できない。

整理解雇

こんにちは。
明日からグアムへ行ってきます。
4日くらい間が空くと思いますが、また書きたいと思います。
今回の判例では、地裁の判決を無視した態度について、整理解雇に関する判決を揺るがしていると共に、不法行為を構成している事に新しさを感じました。


(事件概要)
Xは、平成16年4月15日、訴外A 社が保有するヘアケアのブランドの1つを担当するクリエイティブディレクター(CD)としてYに採用(平成18年3月7日)→ Xに対し、Yの業績悪化およびXの勤務成績不良を理由として退職勧奨(同年7月)→ Xを仕事から外した。(同年11月28日)→ 東京地裁に対し、Yを相手方として、退職勧奨の禁止及びXの仕事を取り上げないことを求める。(Yが雇用契約は終了した旨を主張)→ Xは、話し合いによる解決の余地がないと考え、別途、訴訟を起こす。(平成19年2月14日)→ Xに対し、同年1月25日限りで雇用契約は終了したので、立ち入ることを禁じる旨の通知 → 同年2月分以降の給料の支払いを停止 → Xは、賃金仮払いなどを求める旨の仮処分を東京地裁に申し立て。(同年4月13日)→ 同年4月から20年3月まで1か月48万円の仮払を命ずる仮処分決定(平成20年1月9日)→ XY間において、①19年12月分の賞与の内金として49万余円②20年4月から本案訴訟の第1審判決言い渡しまで1か月48万円をそれぞれ支払う旨の和解が成立(同年9月5日)→ 本案訴訟の控訴審判決があるまで1か月48万円の仮払を命ずる仮処分決定(平成19年6月6日)→ 雇用契約上の地位の確認、賃金・賞与の支払い、慰謝料の支払いを求める訴訟を提起(20年7月29日)→ 慰謝料額を60万円の限度で認容すること以外、Xの請求を全て認める旨の判決 → Yは、不服として控訴(21年4月23日)→ 控訴を棄却する旨の判決(Yは、上告受理申し立て)→ Xとの訴訟外での話し合いによる解決を図るべく交渉 → 解決に至らなかったことから判決を履行(同年7月3日)→ 申し立てを取り下げ(同月10日)→ Xに対し、上記判決で命じられた金額から木払い分を控除した額を遅延損害金とともにXに支払った。(平成21年7月16日)→ 企業年金・退職一時金、未消化の有給休暇の買い上げ、特別退職金の合計1,204万余円の支給を条件とする退職勧奨 → Yが同年2月から別途実施した希望退職募集の際に、Yが対象従業員に対して提示した条件と同じ。(同年7月24日)→ 職場復帰を求める通知を送付(同年8月28日)→ Xに対し、面談をして退職勧奨の提案の経緯や理由を直接説明 → Xは、退職勧奨には応じられない旨を回答(同年10月15日)→ Xに対し、同年11月15日をもって解雇する旨の通知

職務内容 :広告表現の企画と制作を担当するクリエイティブ部門において、クリエイターを統括するチームリーダーである。


(考察)
人員削減の必要性 :組織再編などに伴う企業の合理的運営上の必要性 → Yの経営状況が客観的に高度の経営危機下にあること、倒産の危機に瀕していることを認めるには足りない。

解雇回避措置の相当性 :人員削減の必要性が企業の合理的運営上の必要性という程度にとどまる。→ 相当高度な解雇回避措置が実施されていなければならない。(解雇回避措置)→ 希望退職者の募集、不利益緩和措置としての退職条件の提示 → 甚だ不十分と言わざるを得ない。

本件解雇に至るまでの紛争の経緯 :判決後にXを実際にYで勤務 → XY間の関係をいったんは原状に戻すという手続きを踏むべき。→ 本件解雇に至る手続き相当性を揺るがす大きな事情 → 整理解雇としても有効ではない。


能力不足ないし整理解雇に関する人選の合理性
① 相当程度高額の賃金の支払いを受けている。
② 中途採用者として、入社当初からCDとしての成果が求められる立場
③ 最重要の担当ブランドについて、特に躍進もない代わりに逆に急落もない。
④ シェアの漸減傾向が窺われるとも一定のシェアを維持していたともいえる。
⑤ いくつかのクライアントの新規開拓の成果を上げた。(しかし)→ それらの中には長くは続かないものもある。
⑥ 別のクライアントの新規開拓の成果 → それらの中には長くは続かないものもあった。
⑦ CDの人事評価 :平成17年まではむしろ良好(18年3月7日)→ 退職勧奨がなされ、それまでの間の評価期間が約4か月 → 7月にYから仕事を与えられなくなった。→ 同年の評価は必ずしもXの業績の実態を正しく示したものとは認められないと判断

精神的苦痛 :前件訴訟により、Xに関する雇用契約上の地位確認などにつきほぼ全部敗訴の判決が確定していた。(しかし)→ その後も約2年間にわたってXの出勤を許さず、再び退職勧奨 → 無効という本件解雇に及んだ。→ 不法行為を構成するというべき → 専業主婦の妻と幼い双子(一人は障害がある。)の児童を抱えている。→ こうしたYの行為によって著しい精神的苦痛を被った。→ 30万円の慰謝料の支払いが命じられた。
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roumutaka

Author:roumutaka
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