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病欠者や休職者に対する整理解雇による従業員選定の妥当性


(考察)
整理解雇の従業員の選定に対して、休職や病気欠勤による相当日数労務の提供が出来なかった者を勤務者と対比して貢献度が低いないし劣後すると評価していることに注目している。

(本文)
Xは、Y社において客室乗務員として就労
Yには労働組合として、組織率82%を占めるJAL労働組合(Xが所属)
16%を占めるCCUが併存

平成21年頃 皮膚が赤くなる
平成22年1月19日 会社更生手続きを申立、企業再生支援機構による支援を受ける
同年3月から同年4月 客室乗務員を対象とする早期退職の募集
22年3月頃 状態が相当悪化して年休を取得
同年4月 顔面酒さ及び接触皮膚炎との診断
同年4月28日 国内線の事業規模を約3割縮小
同年5月 乗客と接することが困難なほどに症状が悪化
同月17日から同年10月18日 病気欠勤
平成22年8月31日 更生計画案を裁判所に提出
一般客室乗務員にあっては45歳以上の者を対象
同年9月3日 希望退職措置説明会を実施
同月27日 第一・二次希望退職が目標人数に不足
同年10月26日 最終希望退職措置募集
同年11月12日 目標人数に満たない場合、整理解雇を行う方針を決定

人選基準案
a) 平成22年8月31日時点の休職者
b) 同年度において病気欠勤日数が合計41日以上である者
c) 休職期間が2か月以上である者
病気欠勤日数及び休職期間の合計が61日以上である者
20年度から22年度にかけての過去2年5カ月において、病気欠勤日数、休職期間、病気欠勤日数が一定数以上である者
d) 人事考課の結果が標準を下回って毎年「2」以下である者

平成22年11月15日 病欠・休職など基準において、当該基準に該当する者であっても、同年9月27日時点で乗務に復帰してる者であって、18年10月1日から20年3月31日までに連続して1か月を超える病気欠勤ないし休職がなかった者は対象外とする旨の基準を付加(本件復帰日基準を付加)

平成22年11月30日 東京地裁は本件更生計画案を認可
同年12月9日 Xを含む客室乗務員108名に対し、整理解雇を通知
解雇理由)
平成22年度において病気欠勤日数が合計41日以上
病気欠勤日数等の合計が61日以上である者に該当

判決)
Xの請求を取り消した。

整理解雇の4要件)
① 人員整理の必要性
一般更生債権の87.5%の債務免除を内容とする本件更生計画案を策定していたもの
所定の期日までに大口債権者である主要取引銀行5社からの賛成票を得ることが不可欠
上記主要行はYが人員削減計画を達成できるかについて非常に強い関心を示していた
希望退職措置により削減目標人数の人員削減を達成することができない状況
本件更生計画案の可決・認可後に人員削減計画を見直してこれを変更する余地はない
速やかに削減目標人数を達成するための人員削減を行う必要性

② 解雇回避努力義務の履行
上記措置は合理的であり、整理解雇に当たり、十分な解雇回避努力をしたものと認めている。

③ 被解雇者選定の合理性
使用者の経営上の理由による解雇であるから
将来の貢献度に着目し、
再生していく過程にある至近の2から3年間に、どれだけの貢献が期待できるかという点を重視
人選基準を設けることは合理的

使用者と労働者間の労働契約)
労務の提供をすることが労働者の基本的な義務
労務の提供をすることが、貢献があったと評価するための前提として必要
過去の貢献度を評価するにあたって、
過去の一定期間において病気欠勤や休職により相当日数労務の提供ができない欠務期間があったとの事実の有無を重視することは、合理性を有するものである。

欠務期間があった者は、病欠や休職をしないで勤務を行ってきたものとの対比において、過去の貢献度が低いないし劣後すると評価することは合理的

現在乗務復帰しているとしても直近の時期に欠務期間があったものについては将来の貢献度が相対的に低いないし劣後すると評価
整理解雇の被対象者とすることが肯定

④ 解雇手続きの妥当性
上記による。
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契約期間途中の整理解雇の有効性


(考察)
労働契約法の改正(平成25年4月1日施行)有期契約社員の無期転換制度による2018年問題に伴って、企業間でのルール化が必要になると思われる。今後はこのような判例を多く目にするだろうと思われる。

(重要文言)
労働契約の有効期間中は労契法17条に拘束されるのが原則
 労契法17条(契約期間中の解雇等)
1. 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2. 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
 やむを得ない事由とは、期間満了を待たずに直ちに契約を終了させざるを得ないような重大な事由

人員削減の必要性
債務超過や赤字の累積など高度の経営上の困難から人員の削減が必要であり、
企業の合理的な運営上やむを得ないものとされるときには、
これが存在すると解される。
 本件)
累積赤字が減少傾向にあり
人員削減計画の具体的内容についてまったく主張疎明がない
債務者の経営合理化のために人員削減をすることにあったと認められる
人員削減の必要性を認めることはできない

労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
本件)
19条2号の場合に当たると解するのが相当
 5年余りから8年余りにわたり有期労働契約の更新を多数回にわたり更新
 契約期間の設定に合理的根拠は見られない
 債権者らの業務が恒常的業務であることが一応認められること
 更新手続きは形式的なものであったこと

(訴え)
Y社に雇用され、工場で就労していた債権者有期労働契約労働のXらが、
① 整理解雇の無効
② 労働契約存続
③ 労働契約上の地位保全及び、賃金仮払い

(判決)
賃金仮払いの保全の必要性のほか、就労機会の確保、社会保険の被保険者資格継続などの必要性から地位保全の必要性が認められる。

株主が決定した会社解散についての整理解雇の有効性


(感想)
解散決議について、株主が決定したものついては、解散の理由を説明するのも困難であるとして、解雇権を濫用したものとして扱われることが少ないように思われる。

(参考文言)
真実企業が廃止された以上、それに伴う解雇は、原則として、労働契約法16条が規定する「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に当たらず、有効であると解するのが相当

解散による企業の廃止が、労働組合を嫌悪し壊滅させるために行われた場合等、当該解散などが著しく合理性を欠く場合には、会社解散それ自体は有効であるとしても、当該解散などに基づく解雇は、「客観的に合理的な理由」を書き、社会通念上相当であると認められない解雇であり、解雇権を濫用したものとして、労契法16条により無効となる余地がある。

会社解散の解雇であっても、会社は、従業員に対し、解散の経緯、解雇せざるを得ない事情および解雇の条件などを説明すべき

手続的配慮を著しく欠いたまま解雇が行われた場合には、「社会通念上相当であると認められない」解雇であり、解雇権を濫用したものとして、労契法16条により無効と判断される余地がある。

(事件概要)
株主総会を開催して解散を再度確認し、その旨が登記された。


(訴え)
会社の解散に伴って整理解雇などされたことに対して、整理解雇の無効、会社の団体交渉拒否について不法行為による損害賠償などを求めた。

(判決)
事業を継続することは不可能であったとして、本件解散決議を行ったことが合理性を欠くという事はできない。

整理解雇の有効性

(参考文言)
同一法人内においていわゆる配置転換として系列大学等に異動することを認めるかどうかは、経営判断の問題であり、整理解雇を選択することがおよそ許されないとは言えない。

Xらの就業場所が北海道短大に限定されていたという事実は、Xらがその同意なくして北海道短大以外の場所で就業させられないことを意味するにとどまり、出来るだけの雇用確保の努力をすべきであった。

一般の企業とは異なり、北海道短大以外の学校において、新たな科目を設けたり、教員の配置人数を増加させたり、Xらを特定の科目の教員として採用したりすることは不可能であったというべき

<整理解雇>
使用者における業務上の都合を理由とするものであり、落ち度がないのに一方的に解雇され収入を得る手段を奪われるという重大な不利益を労働者に対してもたらすものである
① 人員削減の必要性
② 解雇回避努力義務の遂行
③ 被解雇者選定の合理性
④ 解雇手続きの相当性
を総合考慮して判断すべき
全てが充足されなければ整理解雇が無効になるとは解されない。

<回避、軽減するための十分な努力の例>
採用の要請
早期希望退職者への退職金の割増
再就職支援会社の利用の提案
他の学校法人への紹介文書の送付

<解雇手続きの例>
本件募集停止決定後本件解雇に至るまで、Xらの加入する組合との間で11回にわたり団体交渉
教職員協議会における意見交換や、教職員との個別面談などを実施して、説明を行った事などから、十分な説明、協議があった。

(事件概要)
Y法人内の北海道短大の23年度以降の学生募集の停止を決定
平成24年3月28日付文書により、Xらに対し就業規則上の「事業継続にやむを得ない事由が発生したとき」に基づき
同月31日付で解雇するとの意思表示をし、同文書は同月30日、Xらに到達した。

(訴え)
原告AからH(Xら)の8名が、平成24年3月31日付でなされた解雇(整理解雇)は無効

(判決)
本件解雇が無効であることを前提とするXらの請求はいずれも理由がない。

学校教員の整理解雇の有効性


(重要文言)
<大学教員の整理解雇に対する整理解雇の4要件適用の可否>
担当科目等の職務内容などに何らかの具体的な限定を加える合意を伴うものであったと認めるに足りる証拠はない。
さまざまな授業科目を担当してきた実績がある
一方、担当職務の変更にはおのずと制約があり、大学に生じた事情次第では解雇をいかようにも避けがたい事態も生じえると考えられる。

整理解雇法理の適用を免れる理由はない。

(訴え)
Xが、次年度に担当する授業科目がなく、従事する職務がないことを理由として、平成23年3月31日限り解雇されたことにつき、解雇権濫用に当たり無効であると主張
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