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時間外手当の計算方法の正当性

(事件概要)
Xらが、割増賃金として支払っていた運行時間外手当は労基法37条に定める割増賃金に当たらないと主張

賃金規程
乗務員については、時間外手当は運行時間外手当として支給
運行時間外手当=Y社が受託先から得る運賃収入に70%を乗じた額に一定の率を乗じて得られる額の方が多かった場合には、時間外手当相当額として支給

労基法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払う事を義務付けられるにとどまる。
運行時間外手当も、実労働時間を基礎に労基法37条所定の計算方法によって算出した割増賃金の金額に不足する場合には、その差額をXらに取得させることとされていた。
同条に違反する点はない。
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固定残業の割増賃金該当性

(考察)
固定残業の考え方について記載されている判例であり、参考になる。
(事件概要)
Y社に雇用され、薬剤師として勤務していたXが、時間外労働、休日労働及び、深夜労働に対する賃金ならびに付加金などの支払いを求めた。
終業時間は休憩時間を除き1日8時間又は4時間で週40時間
日曜日並び祝日等を休日
基本給46万1,500円
業務手当10万1,000円(みなし時間外手当)
時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない
業務手当は、固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)

(判決)
労基法37条の趣旨
時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けている。
使用者に割増賃金を支払わせることによって
① 時間外労働等を抑制
② 労働者への補償を行なおうとする趣旨

労基法37条が求めているのは、
同条ならびに政令及び厚生労働省令の関係規定に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払う事にとどまる

定額残業代の支払いを法定の時間外手当の全部または一部の支払いとみなすことができるのは、
① 定額残業代を上回る金額の時間外手当が法律上発生した場合にその事実を労働者が認識して直ちに支払いを請求することができる仕組み
② 発生していない場合にはそのことを労働者が認識することができる仕組み
③ 基本給と定額残業代の金額のバランスが適切
④ 労働者の福祉を損なう出来事の温床となる要因がない場合
⑤ 使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべき
に限られる。
時間外労働等に対する対価として定額の手当を支払う事により、同条の割増賃金の全部又は一部を支払うことができる。

具体的判断)
第1
本件雇用契約書及び採用条件確認書並びに賃金規程の記載
X以外の各従業員とY社との間での確認書の記載から、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていた。

第2
業務手当は約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり、Xの実際の時間外労働等の状況と大きくかい離するものではない。

Xに支払われていた定額の業務手当は時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていたと認められる
当該手当の支払いをもって時間外労働等に対する賃金の支払とみることができる。

選出不十分の労働者代表者が署名押印した協定書の有効性


(考察)
現在、協定書に関する労働者代表の考え方について厳しく是正されているように思われる。今回の判例でもあるように十分注意する必要が出てきている。

(事件概要)
Y社に雇用されていたXらが、
(1) 労基法に従った割増賃金及び、遅延損害金と労基法114条に基づく付加金の支払いを求める。

平成16年9月以降 XらはYとの間で期間の定めのない労働契約を締結
25年4月以降 X1は課長であり、Yにおいては労基法41条2号の規定する管理監督者として扱われていた。
平成25年3月以前 Yの就業規則においては、1年単位の変形労働時間蛙制を採用することや従業員の給与は別に定める給与規定
G係長が署名押印を行ったものの、投票・挙手などの方法による労働者代表の選出は行われなかった。
23年10月、24年12月 労基署は、Yに対して割増賃金の未払いなどについて勧告・指導
25年3月29日 Yが従前支給していた物価、外勤、現場手当の名称を固定残業手当に変更
労働者代表として署名押印した意見書が添付されていたが、実際には、全労働者の挙手による選出は行われていなかった。

(判決)
Yは、長崎労基署長に対し、一年単位の変形労働時間制に関する協定届を提出しているが、
労基則6条の2第1項所定の手続きによって選出されたものではない者が、Yの労働者の過半数を代表する者として同協定届に署名押印している。
同協定届の存在から、労基法32条の4第1項所定の協定が成立したとの事実を推認することは出来ない。

歩合給の計算方法に対する賃金規程の有効性


(考察)
歩合給の計算として、実質上残業代を支給しない計算方法を作成したとしても、明確に区分できるのであれば、合理的であると考えられます。

(事件概要)
Y社との間で労働契約を締結
タクシー乗務員として勤務していたXらが、タクシー乗務員賃金規程における歩合給について、割増金と同額を控除することによって、割増金の支払いを免れているから、
労基法37条1項に違反
公序良俗に反して無効
歩合給から交通費と同額を控除することは、交通費の支払いを免れる
交通費の支給を定めた本件労働契約の債務不履行に当たると主張
賃金請求権に基づいて、未払賃金および未払交通費ならびに遅延損害金の支払いを求める。
労基法114条に定める付加金として未払割増金と同一額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める。

<賃金規則>
平成22年4月改定
① 基本給 :1乗務(15時間30分)当たり1万2,500円
② 服務手当(タクシーに乗務せずに勤務した場合)
乗務しないことにつき従業員に責任のない場合 :1,200円/h
責任のある場合 :1,000円/h
③ 深夜手当
((基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間))×0.25×深夜労働時間
(対象額A÷総労働時間)×0.25×深夜労働時間

④ 残業手当
((基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間))×1.25×残業労働時間
(対象額A÷総労働時間)×0.25×残業労働時間

⑤ 公出手当
法定外休日
((基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間))×1.25×休日労働時間
(対象額A÷総労働時間)×0.25×休日労働時間
法定休日
((基本給+服務手当)÷(出勤日数×15.5時間))×1.35×休日労働時間
(対象額A÷総労働時間)×0.35×休日労働時間

⑥ 歩合給(1)
対象額A-{割増金(深夜手当、残業手当及び公出手当の合計)+交通費(片道分)×出勤日数(7.75時間ごとに1日分に換算)}

⑦ 歩合給(2)
(所定内揚高-34万1,000円)×0.05(公出揚高は当月の揚高より除外する)

 割増金および歩合給を求めるための対象額(対象額A)
(所定内揚高-所定内基礎控除額)×0.53
+(公出(休日出勤)揚高-公出基礎控除額)×0.62

 所定内基礎控除額 :所定就労日の1乗務の控除額(平日は2万9,000円、土曜日は1万6,300円、日曜祝日は1万3,200円)に各乗務日数を乗じた額
 公出基礎控除額 :公出(所定乗務日数を超える出勤)の1乗務の控除額(平日は2万4,100円、土曜日は1万1,300円、日曜祝日は8,200円)

(判決)
① 本件規定の労基法37条違反の有無
歩合給(1)の算定
割増金を控除する旨を定めた本件規定が、労基法37条に違反することはない。
本件賃金規則における賃金の定めが通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とに判断することができる。
割増賃金として支払われる金額が労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回ることはない
Xらの請求はいずれも理由がない。

労基法37条
労働契約における通常の労働時間の賃金をどのように定めるか特に規定していない
労働契約の内容となる賃金体系の設計は、法令による規制及び公序良俗に反することがない限り、私的自治の原則に従い、当事者の意思によって定めることができる。
歩合給(1)の算定に当たって、割M資金相当額を控除する方法は、労働時間に応じた労働効率性を歩合給の金額に反映させるための仕組みとして、合理性を是認することができる。

Y社の乗務員の約95%が加入する労組との間で労使協議を重ね、組合内部での意思決定の過程を経て、協定の締結に至ったものであって、合理性を裏付ける事情と認められる。

② 本件規定の明確区分性の有無
通常の労働時間の賃金に当たる部分と労基法37条に定める割増賃金に当たる部分とが明確に区分されて定められている。

③ 割増金の金額適格性(労基法37条所定の割増賃金との比較)
対象額Aを総労働時間で女子、これに0.25または0.35を乗じた金額に該当する労働時間を乗ずる旨を定めている。
労基法37条などに定められた割増賃金の額を常に下回ることがないという事が出来る。
Xらが主張する未払いの割増金又は歩合給があるとは認められない。

④ 賃確法6条1項(賃金を退職日までに支払わないと退職日の翌日から遅延利息が掛かる)の適否
労基法114条(付加金)所定の付加金を課すことの可否
未払いの割増金又は歩合給があるとは認められない
遅延損額金及び付加金の請求を棄却

専門業務型裁量労働制に関する労使協定の有効性


(考察)
労使協定の労働者代表の選出に関して話が出ており、今後代表の選出に関しては細かい対応が必要になる可能性がある。
周知方法についても、具体的に説明を求められるため、説明会などの方法が望ましいように思われる。
管理監督者に関する考え方についても記載されており、参考になる。

(本文)
Xらが、
① 未払時間外手当があるとして未払時間外手当元金及び遅延損害金
② 各未払時間外手当に対応する労基法114条に基づく付加金及び遅延損害金の各支払い
③ A1について、同意のないままなされた賃金の減額変更が無効であるとして未払賃金差額及び遅延損害金、有給休暇を消化したにもかかわらずY社がその分の賃金を支払わないとして当該未払賃金額及び遅延損害金
④ A1について、長時間労働によりうち病に罹患したとして不法行為または債務不履行である安全配慮義務違反による損害賠償として、慰謝料および弁護士費用のうち相当額ならびに遅延損害金の各支払い

A1は、C部技術課課長職であったが、
平成25年12月度に係長に降格
月4万円の役付手当の減額
26年4月にも賃金減額
A1は同年6月4日にうつ病との診断

平成23年4月20日 Yの従業員であるBとの間で専門業務型裁量労働制にかかる労使協定
労基署に届け出
同月21日 就業規則を改定して専門業務型裁量労働制を採用
当該就業規則を労基署に届け出

平成27年2月10日 A1はYに対して、同年3月20日をもって退職するとの記載のある退職届を提出したが、撤回し、同年3月31日をもって退職することを通知
同月21日から同月31日までの労働義務日すべてについて有給休暇を取得する旨を通知

(判決)
Xらの請求をいずれも認容

専門業務型裁量労働制を採用するためには、
① 労基法38条の3第1項に従って労使協定が行われることに加えて、
② 個別の労働者との関係では、専門業務型裁量労働制を採用することを内容とする就業規則の改定などにより、専門業務型裁量労働制が適用されることが労働契約の内容となることを要する。

本件)
① 労働者の過半数を代表する者とされた際の選出の手段、方法は不明
② Yは、労働者代表の選出の具体的な選出方法について何ら説明することができない。
③ 従業員の過半数の意思に基づいて労働者代表が適法に選出されたことをうかがわせる事情は何ら認められない。
④ 保管場所が従業員に周知され、いつでも閲覧し得る状態になっていたということは出来ない。

回覧資料について
① 専門業務型裁量労働制に関して、労働時間等について変更との記載のみであり、周知といえるかは疑問
② 具体的な説明がなされたことを認めることのできる客観的な証拠はない。

実質月額4万円の役職手当
総合考慮して、管理監督者性が否定
① 時間外手当が適用されず経営者に準じる管理監督者に当たる役職に対する対価とは考え難い。
② タイムカードの打刻を行わず時間管理が労働者に任されている外形を取っているとしても、実際に労働時間管理が原告A1に任されていた実質がない
③ 事業について何らかの裁量を有し、労務管理、人事、予算などについての決定権限を持っていたものと認めることのできる事情がない

退職届
合意解約の申込みの撤回は有効である。
① 労働契約の合意解約の申込みと解釈
② 合意解約に伴うその他の条件について交渉を開始したものと解することができ
③ 未だA1の合意解約の申込みに対するYの承諾の意思表示があったものと解することができない。


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