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うつ病増悪による自殺と業務起因性


(考察)
流れの中で業務起因性が認められている。業務起因性についての判断要素が盛り込まれているので、参考になる。

(重要文言)
<うつ病により自殺を図り死亡したことの業務起因性>
業務上の疾病にかかった場合とは、業務に起因して疾病にかかった場合をいう
業務と疾病との間に相当因果関係が認められなければならないと解すべき
当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき

業務の危険性の判断は、
同種の平均的労働者
すなわち、
何らかの個体側の脆弱性を有し
労働者と職種、職場における立場、経験等の点で同種の者
通常業務を遂行する事が出来るものを基準とすべき

平均的労働者にとって、置かれた具体的状況における心理的負荷が一般的に精神障害を発症させて死亡に至らせる危険性を有し
業務による負荷が業務以外の要因に比して相対的に有力な要因となって当該精神障害を発症させて死亡に至らせたと認められれば
業務と精神障害発症及び死亡との間に相当因果関係が認められる

認定基準の別表1における心理的負荷の強度が「強」に該当する出来事があったとは認められない

うつ病発症から死亡前までの間に生じた出来事を総合評価
うつ病を増悪し、業務起因性が認められるか否かを判断すべき

(事件概要)
Kに発言した精神症状は「F32うつ病エピソード」と判断
XがKの自殺について、訴外㈱アピコにおける過重な業務に起因するものであると主張
岐阜労働基準監督署長に対し、いずれも支給しない旨の処分
本件各不支給処分の取り消しを求めた

(判決)
うつ病を発症した平成21年8月頃から死亡前の平成22年2月頃までの間に生じた出来事を総合考慮
Kがうつ病を増悪し、自殺を図り死亡したことについて、業務起因性が認められるか否かを検討
結論的に業務起因性を認めている。
心理的負荷とうつ病の増悪により自殺を図り死亡したこととの間に相当因果関係を認めるのが相当

長期間にわたる長時間労働の業務起因性


(考察)
6か月前の残業に関する事例は良くあるが、長期間にわたる長時間の業務において、反証が示されない限り業務起因性が認められるという判例は新しい。

(重要文言)
Kが従事していた業務が、長期間にわたる長時間の業務その他血管病変などを著しく増悪させる業務に該当する場合、
特段の反証がない限り業務と本件発症との相当因果関係が肯定され、本件疾病およびこれを原因とする死亡が業務に起因するといえる。

Kが受持していた業務は、長期間の過重業務に該当し、上記業務と本件発症との間には相当因果関係が認められる。

(事件概要)
本件発症前16か月の21か月間のKの時間外労働時間数は、100時間を超えた月が11か月、80時間を超えた月が4か月、45時間を超えた月が6ヶ月

本件発症6ヶ月より前の業務の過重性
本件発症前36か月ないし7か月の30か月間において、少なくとも本件発症36か月頃から、恒常的な長時間労働に従事してきた。

本件発症前15か月ないし11か月を見ると、100時間を超えるか又はほぼ100時間の長時間になっていた。

平成22年2月5日早朝、自宅で頭痛などを訴えて病院に救急搬送され、同日死亡

(訴え)
Xらが、Kが長時間にわたる長時間労働及び精神的負荷に伴う業務に起因する虚血性心不全により死亡したとして、池袋労働基準監督署長に対し、労災保険法に基づく遺族補償給付などを請求
これらの給付などを支給しない旨の各処分
Xらが各処分は違法であるとして、Yにその取消を求めた。

(判決)
本件各処分は違法なものとして取消を免れない。

認定基準を満たさない場合の業務起因性


(考察)
認定基準に満たされなくても業務起因性を認められる場合はあるとはいっても、今回の判例のようなケースが認められると訴え得のようなイメージができてしまう。

(重要文言)
新認定基準に該当しない事例については当然に相当因果関係が否定されるという論理的な関係にはない。
本件疾病とXの業務との間の相当因果関係の有無を個別具体的に判断すべき

(事件概要)
Xが、業務に起因して、心肺停止、蘇生後低酸素性脳症となったと主張
療養補償給付の支給を請求
処分行政庁は平成21年10月6日付で不支給決定
Xが本件処分の取り消しを求めた。

(判決)
その発症の5日前に上司である総務部長Gから2人きりで数十分にわたり一方的に怒鳴られたこと、
業務の集中期に見積書などの決済拒否をされたこと
組織において勤務する通常の労働者にとって、その態様に照らし、相当に強い緊張をもたらす突発的で異常な事態
当該出来事による強度の精神的負荷がXの有していた血管病変などをその自然の経過を超えて急激に悪化させたことによるもの
本件疾病の発症とXの業務との間の相当因果関係が認められた。
叱責及び決済拒否という出来事から24時間を経過した後に発生したからといって、本件疾病と当該出来事との間の相当因果関係を否定することはできない。

7か月後の精神障害発症・自殺との業務起因性


(考察)
今回のケースについても、認定基準の例外的な要素を持っており、今後の実務上の対応で気を付けるべき要素であると思う。

(重要文言)
認定基準が発症前概ね6か月のものを検討すべきものとしているのは、精神障害については発病前からさかのぼれば遡るほど出来事と発病との関連性を理解することが困難となるもの
精神障害が発病する前1か月以内に主要なライフイベントのピークが認められること等からすれば、発症前概ね6か月以内の取扱いには相応の合理性は認められる。
しかし
認定基準も概ね6か月としているにとどまり、その前後の出来事を何ら顧慮すべきでないとするものではない。
発症前6か月を超えた出来事により精神障害を発症することがないともいえない。

(事件概要)
Kの妻であるXが、平成17年8月22日自殺したのは業務上の心理的負荷によるものとして、監督署長に対し、労災保険法に基づき遺族補償給付などの請求
不支給処分を受けたことから、Yに取消を求めた。

(判決)
業務により強い心理的負荷を受けた後も一定の業務による心理的負荷を受け、その業務遂行中に本件精神障害が発症し、自殺に至ったものであるとして、業務起因性を認めた。

判断指針および認定基準の考え方について


(考察)
判断指針および認定基準の考え方について書かれた判例として良いと思う。

(重要文言)
<判断指針および認定基準>
労災保険の事業を行う行政内部の通達にすぎず
これが認められないとダメというような法的な拘束力はないが、要件が満たされれば、業務起因性が認めらえる。
認定基準の要件が完全に充足されているとはいえない場合、事案の内容や認定基準の基礎となっている医学的知見に照らし、業務起因性を認めるのが相当

(労働時間の判定)
乗務時間の他、点呼、アルコールチェックなどの出庫前の業務に要する時間 15分
帰庫後の業務に要する時間(戦車などの時間を含む) 60分
Xが従事した配車調整に要する時間 60分

(事件概要)
Xは、ハイヤー常務として稼働
長時間労働や上司であったCからのパワハラという業務上の原因でうつ病に対して労災保険法による療養補償給付を請求
業務起因性を否定して同給付を不支給処分
本件処分の取消を求める。

(判決)
本件疾病には業務起因性が認められる。
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