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市職員の自殺と公務起因性

(事件概要)
平成19年11月 勤務時間中に市庁舎から飛び降りて死亡
公務外災害認定処分について、取消を請求
(一審判決)
本件処分を取り消ししたため、Yが控訴
(二審判決)
Yの控訴を棄却

(詳細)
公務起因性について
 公務と疾病の間に相当因果関係を要し
 相当因果関係があるといえるためには、その疾病が公務に内在又は随伴する危険が現実化したものであることを要する
公務起因性の判断
 強度の精神的または肉体的負荷を与える事象を伴う業務に従事したために精神および行動の障害又はこれに付随する疾病が生じた場合といえるかを判断
 本人を基準とするのは相当でなく、平均的な職員を基準とすべき
 平均的な職員を基準として、心理的負荷の有無や程度を判断するのが相当
<平均的な職員>
完全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の公務につき得る者を含む
(本件)
精神的負荷は一般的にみても強度の域に達していた
① 他の室長と比べると精神的、肉体的負荷が大きかった
② 具体的業務は相当程度負荷の大きいもの
③ 上司との関係が強い精神的負荷となっていたこと
④ 公園の設備計画をめぐる技術職職員らとの対立による強度の精神的負荷があったこと
⑤ 異動の希望がかなわないまま、事故対応や議会対応があったため休むことができなかったこと
⑥ 業務以外の精神的疾患を生じさせるような問題はなかった
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基礎疾患を有する従業員の心停止による死亡と業務起因性


(考察)
どんな形であっても業務起因性を認める状況が出来ている気がします。今後の判例も気になるところです。

(事件概要)
Kが心停止により死亡
Kの妻であるXが、Kの死亡は過重な労働に従事したことが原因であって業務に起因するものであると主張
宮﨑労働基準監督署長に対し、労災保険法による遺族補償給付及び葬祭料の請求ならびに労災就学など援護費の申請を行った。
本件各不支給処分を受けた。
その取り消しを求めた事案

(判決)
Kの職場において発症前6か月以前から平均して2時間を超える時間外労働が恒常化
1週間という短期間内に、出張が3回断続的に行われており、
出張先は、大口の取引先で本件クレームにかかる商品を販売した相手方であった。

基礎疾患として
Kにブルガダ症候群が存在
心室細動によって引き起こされた可能性が否定できない。
誘因の有無やその程度とは無関係に発症し得るものであるとしても、
本件発症はKが従事していた業務に内在する危険が現実化したものと評価するに十分
Kの業務との間に相当因果関係を認めることができる。

精神障害の発症に関する業務起因性

(考察)
残業に関する明記のない判例として、興味があります。
労働者のストレスによる脆弱性について考慮され、それが尚且つ相当因果関係が認められています。
今後の会社運営として、各従業員の配慮が一段と必要であると思われます。

(本文)
平成20年7月 Xは臨床検査技師として本件病院の検査室において勤務を開始
平成22年6月1日 Eが入社
Eは、Xに対して退職を勧める発言をし、他社の募集要項まで渡すこともあった。
同年10月1日 Eが技師長に昇格しXの上司となった
同年11月5日 Xは「退職を勧められている件と仕事の状況」と題する37ページにわたる文書を提出し、検査室の状況の把握と職場の環境改善を要請
平成23年1月27日 4者面談において、C事務部長らは冒頭からXに対して本件病院として辞めてもらいたい旨を明確に申し入れ、Xが円満退職に応じない場合は顧問弁護士を依頼する。揉めるようなら弁護士と話すように一方的にB会の意思を伝えた。
Xは、本件4者面談日のころから3時間程度しか眠れない日が続き、平成23年1月末日頃までの間に本件疾病を発症し、その後しばらく働き続けた後、求職した。

Xがパワハラや退職勧奨ないし強要を受けて精神障害を発病
労働者災害補償保険法に基づく休業補償給付を請求
処分行政庁である半田労基署長から業務上の疾病とは認められないとして同給付を支給しない旨の処分を受けたため、取消を求めた。

(判決)
Xの心理的負荷は、社会通念上、客観的にみて精神障害を発症させる程度に過重なものであったと評価することが相当とされた。

疾病が業務上のものであるといえるためには)
業務と当該疾病との間に相当因果関係が認められることが必要
当該危険が現実化したと評価し得る場合に、相当因果関係が認められる。

業務に内在又は随伴する危険の程度)
通常の勤務に就くことが期待されている者を基準とすべきであり、ここでいう通常の勤務に就くことが期待されている者とは、
安全な健常者のみならず、一定の素因や脆弱性を抱えながらも勤務の軽減を要せず通常の勤務に就き得る者
平均的労働者の再下限の者も含む。

労働省労働基準局長通達「心理的負荷による精神障害の認定基準について」)
法令と異なり、行政上の基準(通達)にすぎない
参考資料と位置付けるのが相当

従業員死亡の業務起因性


(考察)
認定基準を基準としてとらえ、満たないことが業務起因性を認める余地がない事までを意味しないという考え方は参考になる。
(重要文言)
 労災保険法の業務上疾病といえるためには、業務と疾病との間に相当因果関係が認められなければならない
 相当因果関係があるというためにはその疾病が当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得る必要があること
 その評価は当該労働者と同種の平均的労働者を基準とすべきこと
 発症の基礎となる血管病変などがその自然的経過を超えて著しく悪化し発症した場合は、相当因果関係を認めるのが相当

認定基準は、業務の過重性の評価を適正、迅速に行うために設定されたものであって、その基準を満たせば業務起因性を肯定しうるに過ぎず、その基準に満たないことが業務起因性を認める余地がない事までを意味するものではない

(事件概要)
虚血性心疾患により死亡したKの配偶者であるXが、Yに対し、Kの死亡は過重な業務に起因するとして、半田労働基準監督署長による遺族補償給付などの不支給処分の取消を求めた。

(判決)
Kの死亡と長時間労働との相当因果関係の有無を判断する上では、発症前1か月間の時間外労働時間が最も考慮すべき要因
発症前1か月間の時間外労働時間は少なくとも85時間48分であり、この時間外労働時間数だけでも、脳・心臓疾患に対する影響が発現する程度の過重な労働付加であるという事が出来る。
Kは、過重な時間外労働を余儀なくされ、それにうつ病による早期覚醒の症状が加わって更に睡眠時間が1日5時間に達しない程度にまで減少したことにより、血管病変などがその自然経過を超えて著しく増悪し、その結果心停止に至ったものと認められ、相当因果関係を認めることができる。

公務起因性


(考察)
公務起因性について、量的要因ではなく、質的要因を重視した判例であると思われる。
(重要文言)
公務上の災害とは、公務に起因する災害、すなわち公務員が公務に起因して負傷、疾病、傷害又は死亡した場合をいう。
公務と災害との間に相当因果関係が認められることが必要
公務と災害との間の相当因果関係の有無は、その疾病が当該公務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき

脳・心臓疾患が発症した場合、公務に内在する危険が現実化して脳・心臓疾患が発症したものとして相当因果関係を認めるのが相当

(事件概要)
Kが死亡したことについて、Kの父であるXが、地方公務員災害補償基金愛知県支部長に対し、過重な公務に起因すると主張
地方公務員災害補償法に基づく公務災害認定請求をしたところ、
Kの死亡を公務外の災害と認定する処分を受けたため、本件処分の取り消しを求めた。

(判決)
発症前1ヵ月目の時間外勤務時間数は少なくとも95時間35分
民間認定基準において業務と発症との関係性が強いと評価できるとされている水準のいずれにもやや満たないもののほぼ同じ水準に達しているという事が出来る

<職務の質的過重性>
① 指導担当者の取りまとめ役、学校の実績や生徒の就職に影響する授業を担当し、担当授業に関する精神的負荷は相応に強いもの
② 全国的に非常に優秀な成績を収めており、同様の成績を収めることが期待、精神的負荷を受けていた
③ 公務及び担当授業時間数が他の教員と比較して多いものであったこと、精神的な負荷は、相当程度強いもの
④ 1日体験入学が次年度の入学者数に結びつき得る重要の職務、精神的負荷がかかるもの

以上の4点から、本件疾病の発症及びKの死亡と公務との間には相当因果関係があり、公務起因性を認めるのが相当

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