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パワハラなどを理由とする懲戒解雇への強行切り替えの有効性


(事件概要)
平成24年1月頃 Y大学のハラスメント相談員に対し、D,E,FはXからパワハラを受けている旨相談
同月27日 Xに対し、労基法違反となるような行為は辞めるよう依頼
同年2月20日、3月14日 Xと面談し、調査委員会を立ち上げる可能性、調査の結果、ハラスメントの存在が認定されれば、議決を経て処分されることを説明

同年5月11日 Xと面談、平成24年4月8日付で調査委員会を設置し、事情聴取や聞き取り調査
平成26年9月18日 パワハラ、セクハラを行ったこと、改善指導を受けたにもかかわらず、非違事由
論旨解雇とする旨の審査説明書を交付することを決定
同月25日 同審査説明書を交付
同年10月7日 Xは、陳述請求書と共に懲戒処分をしない事、緩やかな懲戒処分を選択すべきことを求める陳述書を提出
同月15日 Yに対し、口頭での意見交換を求めるための要請書を提出
同月22日 Yは、陳述を受理したが、意見交換の必要性がないものと判断
同年11月20日午前9時30分頃 Xに対し、論旨解雇の応諾所又は応諾拒否所のいずれか一方にサインをするように求めた。
Yは、Xに対して、決定を保留することは認められない事等を告げ、
Xがこのまま帰宅した場合、Yは、Xが論旨解雇に応諾しなかったものとして懲戒解雇することになる旨を告げた。

同日午前10時30分頃 応諾書にサインすることなく帰宅する意向を示したため、懲戒解雇処分とする旨を告げて、懲戒処分所および処分説明書を交付

<懲戒事由>
① 業務の適正な範囲を超えた勤務時間に関する不適切な発言
② 業務の適正な範囲を超えた指導・叱責あるいは侮辱・ひどい暴言のパワハラ
③ 女性を蔑視したセクハラ発言
④ 私的な事に対する過度な立ち入り
⑤ 他のものを不快にさせるセクハラ
⑥ 他大学公募への応募や留学の強要など

Y大学と労働契約を締結していたXが、パワハラ及び、セクハラ等を理由とする解雇は無効であると主張
Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
賃金、期末手当、勤勉手当の支払いを求める。
YがXに対する論旨解雇処分を懲戒解雇処分に強行的に切り替えた行為により、意思決定の機会を奪われた。
精神的損害を被ったと主張
民法709条に基づく損害賠償請求として、慰謝料100万円を求めた。

民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

判決)
懲戒解雇の手続きが違法であったとしても、手続き的瑕疵は軽微なものであり、懲戒事由の悪質性等に留意して本件懲戒解雇の有効性を検討

ハラスメントに当たると評価された各行為が就業規則所定の懲戒事由に該当することを認めた。

Xのハラスメント等の悪質性が高いとは言い難い。
Xには過去に懲戒処分歴がない
ハラスメントの一部を認め、反省の意思を示していた
懲戒処分として最も重い処分であり、即時に労働者としての地位を失う。

大きな経済的および社会的損失を伴う懲戒解雇とすることは、Xの懲戒事由との関係では均衡を欠く。
社会通念上相当性を欠くといわざるを得ない。

論旨解雇を本件懲戒解雇に切り替えた行為が不法行為を構成することを肯定
精神的損害に対する慰謝料を認め、金額としては15万円が相当

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恋愛関係のあった者へのセクハラに対する不法行為


(考察)
責任の範囲を明確にしている判例あると思われる。
(事件概要)
Y4社の子会社であるY3社の契約社員であるXが、Y4社の子会社で会ったY2社の正社員であったY1のなした一連のセクハラ行為等により多大な精神的苦痛を被った
① Y1に対しては、不法行為に基づく
② Y2社に対しては、Y1の不法行為にかかる使用者責任に基づく
③ Y3社に対しては、雇用契約上の安全配慮義務違反又は雇用機会均等法11条1項所定の措置義務違反を内容とする債務不履行に基づく
④ Y4社に対しては、安全配慮義務違反ないし不法行為に基づく損害賠償として、
慰謝料300万円などの支払いを求めた。

Xは、平成20年11月頃Y3社に契約社員として採用され、Y4社の事業場の一つであるA1事業場の敷地内にある建材工場で作業に従事した。

Y1から12万円を借り入れ、
平成21年10月下旬ころから毎月1万円ずつを任意に返済
Y1とXとの間に平成22年1月頃までは親密な関係があった。
同年2月頃からは客観的に親密な交際関係は両者間に存在していない。
平成22年3月頃までには、Xの同僚であるDに対し、Y1から付きまとわれている旨相談
本件借入金を完済できるまでは、関係をはっきり断ることができないものと我慢

借入金を完済できるようになった同年7月頃まではY1からの一方的な働きかけに耐えていた。

(判決)
Y1は、民法709条、710条により、不法行為に基づく損害賠償責任を負う

Y1を雇用していたY2社は、本件セクハラ行為にかかるY1のXに対する不法行為につき、民法715条により、使用者としての損害賠償責任を負う。

Y3は、自ら雇用する労働者に対する雇用契約上の安全配慮義務を負担し、
雇用機会均等法11条1項に基づき、
① 労働者からの相談に応じ、
② 適切に対応するために必要な体制の整備
③ その他の雇用管理上必要な措置を講ずるべき事業主としての措置義務を負担している。

平成22年9月上旬ころ、G係長にセクハラ行為について訴えて対応を求め
同月22日にはDを通してG係長に同様の申出
同年10月5日及び同月12日にも、FないしGに対しセクハラ行為を訴えるなどしたにもかかわらず、
Xの訴えに真摯に向き合わず、
何らの事実確認も行わず、
事後の行為に対する予防措置を何ら講じなかった
Y1が管理職であったことから、Dの方を工場街へ転出させるなどして、不祥事を隠ぺいしようとした疑い

Xに対する安全配慮義務違反があり、かつ債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。

Y1のXに対する本件セクハラ行為が行われた当時、この両名がいずれもY4社のグループ会社の従業員である。
DがXのためにY4社の相談窓口に電話で連絡をして調査及び善処を求めたのに対し、
Y4の担当者らがこれを怠ったことによって、Xの恐怖と不安を解消させなかったことが認められる。

Xに対し債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。

損害額は、慰謝料200万円及び弁護士費用20万円であり、連帯して支払う義務を負う。

セクハラ発言などによる懲戒解雇の有効性

(考察)
言葉によるセクハラに関して一例が出ているが、話をするときに気を付けないといけない。
(重要文言)
<セクハラ行為>
基本的に言葉によるセクハラについて就業規則所定の懲戒事由に該当する。
原告が自認したものとして
どうやってお客さんを攻略してるの?「枕」とかやったの?
誰と付き合っているの?彼氏はいるの?
婚約者と最近どうなの?
そのボッテガのバッグ可愛いね。自分で買ったの?高かったんじゃないの?
何人と付き合っているの?
どういうのがタイプなの?
この他に性交渉を持った男性の人数や
性交渉の際にどのような様子になるのかなどを尋ねたりしていたことが発覚

これに関連して、
アメリカの性犯罪被害者の対処行動に関する研究に依拠して
職場の同僚の間でのセクハラについては、
被害者が内心では不快感や嫌悪感などを感じていながら、職場の人間関係の悪化などを懸念して、加害者に対する抗議、抵抗や会社に対する被害の申告を差し控えたり躊躇したりすることも少なくないと考えられる

(訴え)
Y社に雇用された原告Xが、論旨退職の通知を受け、退職に同意しなかったため懲戒解雇された
解雇は無効であるとして雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認などを求めた
<論旨退職通知書>
① 同僚の訴外Aに対するセクハラ行為
② 平成25年6月の電子メールによる社外活動に関する相談
③ 26年1月の同様の相談
④ 改ざんした電子メール記録提出
⑤ 顧客に対するY社の承認を得ていない資料使用が記載

(判決)
Xのセクハラ行為は悪質であるが、被害者である訴外Aの不快感ないし嫌悪感や精神的苦痛については、必ずしもY社の主張する通りとは解されず、この点では、Xのセクハラ行為の悪質性を過大評価すべきでない

Xの各行為はそれぞれ懲戒事由に該当
相応の懲戒処分を受けても然るべきであるが、
いずれの行為についても考慮すべき事情などがあり、
従前注意、指導といった機会もなかった
これらの行為全てを総合考慮しても、
懲戒処分における極刑といわれる懲戒解雇と、その前提である論旨退職という極めて重い処分が社会通念上相当と認めるには足りず、
Xを降職までの懲戒処分にとどめ、然るべき注意、指導をするという選択肢があり得ないとは解されない
懲戒解雇は無効

論旨退職及び懲戒解雇が不法行為上違法な処分であるとまでいうことはできない
Xの請求を棄却

管理職のセクハラに対する不利益変更の有効性


(感想)
管理職のセクハラについては、職責や立場に照らしても認められるケースが従業員よりはあると思われる。
ただし、今回は問題とはされないが、給与が大幅に減額されることについては、不利益を伴うために問題とされる可能性

(重要文言)
<セクハラ禁止文書>
① 性的な冗談、からかい、質問
② その他、他人に不快感を与える性的な言動
③ 身体への不必要な接触
④ 性的な言動により社員などの就業意欲を低下させ、能力発揮を阻害する行為
等が列挙

Xらは管理職として「セクハラの防止のために部下職員を指導すべき立場にあったにもかかわらず」、職場内において「多数回のセクハラ行為等を繰り返したものであって、その職責や立場に照らしても著しく不適切なもの」

各降格についても、資格等級制度規程には、「降格事由の一つとして就業規則46条に定める懲戒処分を受けたことが規定されており、また、上記の通りXらに対する各出勤停止処分は有効である」

相応の給与上の不利益を伴うものであったこと等を考慮したとしても、左右されるものではない。

(事件概要)
X1、X2は各々課長代理の等級に格付け

セクハラの防止のため種々の取り組みを行っていた。

Yの就業規則には、社員の禁止行為の一つとして、「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」を定め、「会社の就業規則などに定める服務規律にしばしば違反したとき」等に該当する行為をした場合は、減給または出勤停止に処するものとされていた。

(訴え)
複数の女性従業員に対して性的な発言などのセクハラ等をしたことを懲戒事由としてY社から出勤停止の懲戒処分を受けるとともに、これらを受けたことを理由に階の等級に降格
上記各出勤停止処分は懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効
上記各降格もまた無効である等と主張
上記各出勤停止処分の無効確認や上記各降格前の等級を有する地位にあることの確認などを求めた。

(判決)
懲戒権を濫用したものとはいえず、有効なものというべきである

セクハラを理由とする懲戒処分の有効性

(参考条文)
労働契約法15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
使用者が労働者に対して懲戒処分を行うためには、労働者の行為が、就業規則に定める懲戒事由に形式的に該当するにとどまらず、企業秩序を現実的に侵害したり、その現実的な危険があったりするなど実質的に懲戒処分に相当するような行為であること、すなわち懲戒処分を行う事について「客観的に合理的な理由」があることが必要

(参考文言)
Xらがどのような行為が問題とされているかを認識して反論することが可能な程度には事実を適示していた。
Yは、複数回にわたり事情聴取を行うなどし、Xらにも弁明の機会を与えた上で、懲戒事由を認定

Xらが、Bから明確な拒否の姿勢を示されたり、その旨Yから注意を受けたりしてもなおこのような行為に及んだとまでは認められない。

Yでは、これまでセクハラ行為を理由とするものを含めて懲戒処分が行われたことがなく、具体的にセクハラ行為に対してどの程度の懲戒処分を行う方針であるのかを認識する機会がなかった。
事前の警告や注意、更にYの具体的方針を認識する機会もないまま、突如、懲戒解雇の次に思い出勤停止処分を行う事は、Xらにとって酷に過ぎるというべき

(事件概要)
Y社の従業員Xらが、セクハラ行為などを理由としてYから受けた出勤停止について、
懲戒事由とされた事実がなく、手続きの適性も欠き、懲戒事由との均衡を欠く不当に重い処分でもあるから無効
懲戒処分を受けたことを理由とする降格も無効
① 懲戒処分の無効確認
② 降格前の地位の確認
③ 懲戒処分による出勤日数の減少を原因として減額された給与及び賞与の減額分及び遅延損害金
④ 降格を原因として減額された給与の減額分の各支払い
⑤ 無効な懲戒処分及び降格をしたことが不法行為に当たるとして、慰謝料各100万円及び遅延損害金の支払い

(判決)
本件各処分を無効
不法行為に基づく損害賠償請求は失当
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