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付加金の可否

今日は、中安金の助成金申請の手続きを行なってきました。
早く景気が良くなって欲しいものです。

さて、本日の裁判判例は、時間外手当と懲戒解雇に関する内容が記載されておりましたが、付加金を支払うボーダーラインが少し見え隠れする裁判判例だった気がします。


(事件概要)
平成20年10月29日、時間外手当、深夜手当を請求する旨を記載した内容証明郵便を送付(品川労働基準監督署に相談)→ 呼び出しを受け、21年1月13日に、労基署の係官がYを訪問 → 事実確認、指導などを行なったが、その後、それ以上の指導、調査などは行なった。(その後)→ それ以上の指導、調査等はなされなかった。
Yから受けた懲戒解雇が無効 → 雇用契約上の地位確認を求め、同解雇後の賃金支払を請求する。→ 解雇前2年2ヶ月間の時間外・深夜・休日労働に対する時間外・深夜・休日手当の支払、有給休暇を取得した日時分の賃金の支払及び、労基法114条に基づく付加金の支払を求めた。

雇用契約 :平成2年9月1日にYと雇用契約を締結(13年4月1日)→ 電算課における課長心得という地位(具体的な業務)→ システム関係全般、患者や医療保険への請求関係や統計関係など多岐にわたるもの(経常的な業務)→ 入院患者、外来患者に関する診療報酬請求明細書発行の業務(15年4月1日以降)→ Xの上司は病院事務長D

(Xの行為)
年次有給休暇を取得する際、所属長に所定の手続きを行なうことが求められる。(休暇を取得する際)→ Dの承認を得ていないことが多い。→ Dは書面で注意、支持した。(しかし)→ Xは、その後もこの指示に従わず、Dの承認を得ることなく欠勤

私物のパソコン12台を持ち込んで執務を行なっていた。(平成20年12月3日付の書面)→ Yは、Xに対し、私物のパソコンを早急に引き上げる。

3ヶ月で新システムのリプレースを完了する旨の理事会側の説明 → Xは新システムを導入するための新医療情報システム導入委員会の構成に加わらない。(同年10月26日)→ Xは構成員ではないにもかかわらず出席 → Dが、退職しないと業務命令違反になる旨述べても従わない。矢印 委員会の開始が10分程度遅れる。

病院事務部の在籍していたAは、Dの支持により、電算課の業務をあわせて行なう。→ Xと二人きりで電算室で業務(Aに対して)→ 1年近くやっているんだから、さっさと終わらせろ。「今の状況ならA君はここにはいらない。」「事務長の犬が。」と罵った。→ Aは、うつ病と診断され欠勤を繰り返す。

ドレーン間が途中で詰まって漏水事故を起こすのではないかと危惧 → サーバー室の床に穴をあけて対応したい旨要望 → 床に穴をあけることは進められないとの設計士の意見(直後)→ 自ら電気ドリルを購入 → サーバー室の床に穴を開けた。

(考察)
(懲戒事由) :再三の繰り返しがあり悪質(同月20日)→ 懲戒委員会を開催し、弁明の機会を設けた。(21年4月30日)→ 懲戒解雇(考察)→ 就業規則所定の懲戒事由該当事実が存在する場合、具体的状況に照らし、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念滋養相当性を欠くと認められる場合には権利の濫用に当たるものとして無効になる。(本件)→ それ自体で直ちに懲戒解雇に該当するとまではいえない。(しかし)→ XがDから繰り返し注意を受けていたにもかかわらず、これらの行為に及んだ。→ これらの行為も軽視することはできない。→ 

規律違反であるとして、社会通念上相当性を欠く。

無断欠勤、緊急の欠勤に当たり速やかな連絡がない。

私物パソコンを大量に持ち込み私物行為、許可などなく研究所施設を長期に宿泊

Aに対するパワハラ

職制の指示命令に従わないこと

反省がない。

時間外・深夜・休日労働の有無 :タイムカードの打刻がある部分は、それを始業時刻及び終業時刻(打刻がない箇所)→ シフトによる所定の始業時刻ないし退勤時刻を始業時刻ないし終業時刻と認める。(同命令票の記載)→ 勤務していたことが推認される時間帯については労働時間と認めること(どちらか一方の打刻)→ 命令票が提出されていない日時について、遡って、所定労働時間勤務したと推認(承認をした時間帯以外)→ Xの時間外労働などが泊り込みを含む尋常でない勤務態様であったことを認識 → これを禁止していなかったもの → 時間外労働などは、少なくとも黙示の業務命令に基づくものと認めるほかはない。(時間外・休日・深夜手当の額)→ 333万9,119円

管理監督者性 :労働者が、労務管理について経営者と一体的な立場 → 労働時間、休日等の規制を越えて活動することを要請されてもやむを得ない重要な職務や権限を付与されていることを前提(賃金等の待遇及び勤務態様の面)→ 十分な優遇措置が講じられているのであれば、厳格な労働時間などの規制を行なわなくても、その保護にかけるところはないという趣旨に出たものと考えられる。→ 管理監督者に該当するということは出来ない。

有給休暇取得分の賃金請求の可否 :就業規則所定の手続きを踏んでいない。→ 請求を否定

付加金 :職務手当5万円が支給されていたこと、休日ないし深夜労働手当の額は月平均で10万円に上る。→ 少なくとも積極的に残業を強いられた形跡はない。→ 上司との間の意思疎通を欠いた責任の一端がXにあることも否定できない。(労働基準監督署監督官の調査を受けた際)→ Xが管理監督者であるとの認識を示し、監督官も一応の理解を示している。(総合考慮)→ 付加金の支払を命じない。
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退職年金の減額

こんばんは。
本日は、昨日のスキーのために、足が筋肉痛になっています。
動くのすら辛い現状に、年を感じる今日この頃です。

さて、本日の判例は、退職年金の減額についてです。

昨今、会社の倒産が多く聞かれる中、その会社が年金の積立を行っている団体に対する年金支払請求権の範囲(?)について、参考になる気がしました。


(事件概要)
平成11年11月、中央労使団体は、確認書を作成(港湾労働者年金制度)→ 12年5月以降、年金額を従来の30万円から25万円に減額することなどを合意(被告Y協会)→ 本件規程における年金額の定めを、30万円から25万円に改定 → これに対し、Xらは、Yに対して、年金額の一方的な減額は無効 → 年金の減額分の支払いを求めた。(判決)→ Xらの請求を認容

中央労使団体 :A協会は、全国の港湾運送事業者などを構成員とする事業者団体(他方)→ B協議会及びC同盟は、港湾運送事業に従事する全国の港湾労働者で組織される労働者団体

港湾労働者年金制度 :AとBおよびCとの間で合意された協会に基づいて制定(年金額の増額、支給方法などの変更)→ 中央労使団体の協定に基づく本件規定の改正や、確認書の作成といった方法(受給資格者:原告X1からX47およびX48からX50)→ Yから港湾労働者年金制度規定に基づき年金受給権を有する旨の裁定(港湾労働者年金証書の交付)→ 年額30万円の本件年金を受給

被告Y協会 :港湾関係の産業界の労使の団体が合意して創設された港湾労働者年金制度を運営する財団法人

登録事業者 :年金原資を負担することを義務づけられ、労働者の登録義務、労働者の変更・脱退届出義務 → 裁定請求の手続き義務などをYに対して負っている。


(考察)
本件減額の効力 :年金支給に関する法律関係は、登録事業者を要約者、Yを諾約者、受給資格者を第三者とする第三者のためにする契約(受給資格者が取得する年金支払請求権)→ 裁定請求という受益の意思表示によって生じると解するのが相当 → 事業者が加入申請手続き(Yがその加入申請を承諾)→ 当該加入契約の締結を承諾 → 年金制度に加入(適用対象者として労働者を雇用などした場合)→ 年金制度に登録し、受給資格要件を満たした上でYに対して裁定請求 → Yが裁定(本件規程)→ すでに裁定を受けた受給傾斜の年金額が当然に変更される旨の裁定はない。(裁定後)→ 年金額の減額がありえることを予定した留保条項などは全くない。→ 本件留保合意の存在を認めることは出来ない。

本件留保合意の存否 :本件規定の内容だけでなく、本件規定の位置づけ、中央労使団体の協定書の内容、従前の年金額などの改定経緯などを考慮して決定すべきであるという主張(本件年金制度)→ 多数の権利者につき集団的・画一的処理を要するもの → 本件規定の解釈によって受給権者の権利関係が大きく影響を受けるもの(解釈)→ 規程の文言から離れた解釈を求めることそれ自体が受給権者の法的地位を著しく不安定にすること(減額請求権の留保)→ 文言により明らかにされていない。(中央労使団体の交渉)→ 将来の年金減額のための規定を設けることが議題になったことや検討されたこともない。(本件減額の問題)→ Y、登録事業者および、中央労使団体のいずれも、将来における年金額の減額変更を年金受給権者の承諾なくして行なうことが可能であるとは考えていなかった。

本件年金制度に関する法律関係 :公的制度を構築することを目的として行なわれる多数当事者間での複合的な契約関係があるという主張(本件年金制度)→ 労働者の福祉に寄与する公的な性格をもつ。(可能な限り集団的・画一的処理が要請されて、個別の年金受給者が受給)→ 自らの意思に従って契約内容を選択・決定する余地がないという実態が認められる。(しかし)→ 直ちに、本件年金支給の法律関係を多数当事者による複合的な契約関係であるととらえなければならないわけではない。

事情変更の法理 :権利の変更が認められるという主張(適用される場合)→ 客観的な権利変更の必要性のみならず、権利者に対して権利変更に関する適正手続きが保障されている必要(本件減額)→ 受給権者との関係で個別同意の取得、協議の実施、意見の聴取、説明の実施などがなされていない。(労働者側の意見が労働組合を通じて反映されている場合)→ 受給権者と現役労働者との利害は一致しているとはいえない。→ 年金減額を否定

(年金原資の未納と年金支払請求権)
年金原資の納付が年金支給義務履行の停止条件でありまたはこれと先履行の関係にあるという主張

原資負担者が年金原資の負担額を納付することが年金支給義務の履行の停止条件又は先履行の関係にあることを定めた規定は存在しない。(倒産などにより年金原資を負担する事業者が消滅した場合)→ 年金受給資格者が年金裁定請求の手続きを行い又は地区港湾協会と協議の上で決定すると規程されている。(年金原資相当の負担額が納付されていない場合)→ 年金の支給が停止されることを予定していたとは認められない。

年金原資の納付が年金支給義務履行と同時履行の関係にあるという主張

受給資格者が事業者と勤務して規程期間労務を提供して退職した後に受給する年金(受益の意思表示(裁定請求)をした後)→ 全く知らない事情によって、年金支給額が左右されるのは相当でない。(登録時業者が倒産などにより原資負担能力を喪失した場合)→ 原資負担者を変更することにより年金支給義務を尽くすとされている。→ 年金原資負担者の年金原資の納付とYの年金支給義務との間に対価的な関係を認めることは出来ないとして、これを退けている。

セクハラ

今日は久々にスキーに行ってまいりました。
体がガタガタで眠たいです。


今回の判例はセクハラについてです。

私の解釈としては、セクハラをされた方が、セクハラをされたと思ったら、訴えられた方は諦めるしかないという考え方がありましたら、本判例では、細かい事を一つ一つ考察をし、結論としてはセクハラを認めないという結論が導き出されています。



(事件概要)
被告Y大学のB男性教授である原告Xが、A女性准教授に対して、(平成19年6月から20年1月)→ 飲酒の執拗・強引な誘い、身体接触などのセクハラ行為を行ない、(結果)→ Aに心身の疲弊をもたらし、週1回のカウンセリングを受ける事になる。→ Aの教育・研究環境を悪化させた。→ 原告Xに対し、Y大学から懲戒処分として減給処分(平均賃金の1日分の半額、2ヶ月)を受けた。→ 処分の無効を主張 → 処分の付着しない労働契約上の権利を有する地位の確認及び減給された金員の支払いを求めた。


(考察)
セクハラ行為の有無 :総合勘案するとXの言動とは必ずしも相容れない部分があるといわざるを得ない。→ Aが主張するようなセクハラ行為があったとまで認めることは出来ないと認定(Aの主張や証言)→ ある程度具体的詳細な内容を含んでいる。→ 本件当日を境にしてAの精神状態が急変している。→ AがXに対してセクハラ行為をでっち上げる明確な動機は不明 → Aにとって救済申し立てをすること自体特段メリットは存在しない。→ 心身上のエネルギーの消費や、研究生活を送るものとして学内外における様々なリスクを伴うものであることが容易に推察される。→ AがあえてY大学に対し、虚偽の救済申し立てをするとは考えがたいという面も否定できない。
イ. 飲酒の約束に至る際のセクハラ行為(性的意図をもった執拗・強引な誘い) :Aの証言などを検討 → XとAとの間における平成20年1月16日の飲食の約束 → Aに対して不快感を抱かせるようなセクハラ行為があったとは認められない。
ロ. 飲食店Eにおけるセクハラ行為(XがAの左太股の付け根部分に5から10秒間手を置いて、Aが拒否したにもかかわらず、7から10回程度同行為が繰り返された事など):店内の状況(Xらが座った席は個室ではなく、料理人前のカウンター席、約2時間半飲食)、Aの証言などを検討 → E店内において、Xのセクハラ行為があったとは認められない。
ハ. 御堂筋線G駅に行く地下鉄社中におけるセクハラ行為(腕を組もうとして二の腕をつかまれる等):乗降客が多く、特に午後9時過ぎ頃は通勤ラッシュ時ほどではないものの席に座れない混雑の状況(Aの証言などを検討)→ Aが地下鉄内でXから不快感を抱かせるようなセクハラ行為を受けたとは考えがたい。
ニ. 阪急G駅構内におけるセクハラ行為(Aの正面から自分の懐へ腰から抱き寄せる行動):Aの証言などを検討(Xに宛てたお礼メールの内容など)→ Aが主張するようなXの行動はなかったと認めるのが相当
ホ. メールの内容 :XがAに対して、自らの地位を利用して高圧的な態度を取っているとは認められない。
ヘ. Aの言動 :Aの方から求めている。(他方)→ Xは、Aに対し、執拗にメールを送信したり、電話もしていない。

本件懲戒処分の相当性 :セクハラ行為があったとは認められないから、その余を判断するまでもなく無効 → Xの地位確認および本件処分によって減給となった金員の支払い請求はいずれも理由があるとして認容

既往症を持つ従業員の労災事故

こんばんは。
今日はこれから、スキーに行ってきます。

仕事で固定資産税を減額できる可能性をお客様へお伝えしたところ、かなりの反響でして、この営業は当分続けようと思った今日この頃です。

さて、本日は早めに勉強をしました。

労災保険の業務起因性についてです。

良くある内容ですが、入社前から継続される病気(既往症)を持った従業員について、どこまでが労災保険が適用されるのかを示した内容です。

少し珍しいと思ったのは、「治療機会の喪失」です。

仕事が忙しくて、治療が必要なのに行ける状況を作ることが出来なかった場合であり、本判例はこれを認めており、労災保険の不支給を取り消しております。


(事件概要)
17年10月6日朝に出勤 → Aは、普段より疲れている様子、昼食時に大量の汗 → 夕刻の救急出動後に軽度の喘息があったりする様子 → AはK出張所内で夕食をとった後、疲れたから早く休むと同僚に告げる。(午後8時半頃)→ 出張所内の救急隊寝室に向かった。(その後)→ 救急隊寝室に入った同僚らは、Aがベッドで伏臥していたために就寝しているものと考えていた。(翌朝の起床時間)→ Aが起きなかったため声を掛けた。→ Aはすでに死亡しており、死亡硬直が始まっていた。→ Aの死亡を公務災害とする認定請求 → Y横浜支部長は、Aの発症前1ヶ月間の従事職務は通常のもの → 異常な出来事や突発的事態もなく、過重な精神的、肉体的付加は認められない。→ Aのアレルギーなどの病的素因や基礎疾病が自然経過的に発症したもの → 公務外災害とする本件認定処分を行い、Y審査会も再審査請求を棄却(訴え)→ 原告Xの夫で、横浜市の消防職員であった亡Aの死亡につき、喘息などの基礎疾患によるもの → 公務外の災害に当たるとした被告の地公災基金Y横浜支部長の処分の取消を請求

職務内容 :昭和54年に横浜市消防隊員 → 救助、消化、救急の業務全般に従事(平成14年10月)→ K出張所に勤務 → 24時間2交代制

(考察)
公務起因性 :一般論として、公務と死亡との間の相当因果関係を認定するに当たっては、公務が唯一の原因または相対的に有力な原因とする場合に限らず(当該職員に基礎疾患があった場合)→ 公務の遂行が基礎疾患をその自然の経過を越えて増悪させた場合に公務起因性が認められる。(認められない場合)→ 客観的に見て治療を要する状況にあるにもかかわらず、職員において休暇の取得その他治療を受けるための方法を講じることが出来ず、引き続き職務に従事しなければならないような事情が認められるとき → 公務起因性が認められる。(本件)→ Aの死因は死亡直前の喘息発作によるものと判断するのが相当 → 消防署の勤務形態及び職場環境がAの死亡を引き起こしたとまでは認められない。(喘息の主原因)→ 自宅で飼育していたウサギをアレルゲンとするものと判断でき、Kの環境によるものと認めることは出来ない。(Aの発症前6ヶ月の勤務状況)→ 概ね月35時間未満の時間外勤務にとどまる。(休暇も取得できていた。)→ 発症当日の勤務が過重なものであったとも認められない。→ 公務の遂行によって死亡したものとは認められない。

治療機会の喪失 :発送当日、A自身が欠員の補充として救急隊の補勤にあたる。(他出張所からの補充人員で部隊編成を行なっている状況)→ Aは欠員に対する補充人員確保には担当者へ相当な負担が掛かることを認識 → Aの体調を気遣う同僚に対して、「出勤しちゃったしね。人がいればね。」と返答(職場全体の状況)→ 勤務開始後に体調不良により勤務を離脱する事が極めて少なかった。(客観的状況)→ 勤務中に喘鳴が出た時点で速やかな治療を要するところ(当時の職場環境)→ 勤務途中で公務から離脱することは著しく困難 → 職員もそのような職場環境を十分認識していた。→ 公務から離脱することを申し出ることなく公務を続けたもの → 公務と死亡との相当因果関係がある。→ 公務外認定処分を取り消した。

労基署長による休業補償と療養補償の不支給処分

今日は、顧問先様の次年度の雇用契約書作成と労働時間、労働日の打ち合わせに行ってきました。

固定の時間外労働を付けたり、計画年休などで対策を打っていますが、本当に現法律は、中小企業には出来ないと思う今日この頃です。

さて、本日の判例は、業務災害に関する業務起因性を争った内容です。

当たり前のように、業務起因性について、考察を行なっています。



(事件概要)
X(A社の従業員)は、平成7年4月から、使用後のガスボンベに残っているガスを抜き取り、検査、洗浄、再塗装などといったガスボンベの再生作業に従事 → 12年12月16日の就労を最後に休職(13年12月31日)→ Aを退職 → Y労基署長に対し、Aの作業場内においてガスボンベ再生作業に従事したため科学物質過敏症を発症 → 休業補償並びに療養補償の保険給付を請求 → Yは、Xが発症した傷病は業務との相当因果関係が認められないとして、休業補償と療養補償のいずれについても不支給とする本件処分(平成15年4月)→ 行政不服申し立ての手続き → 審査請求を棄却(16年2月27日)→ 再審査請求を行い、この請求は同年4月30日に受理(同年6月12日)→ 本件取消訴訟を提起 → 相当因果関係を否定して不支給とした本件処分は違法として取消

(考察)
再審査請求が受理された日から3ヶ月を得ないうちに提起された本件訴えは不適法なものとして却下されるか :訴え提起の時点で不適法であったとしても受理の日から3ヶ月を経過した時点 → 瑕疵が治癒されると解するのが相当

業務起因性 :XがAでの業務に従事する中で化学物質過敏症に羅患したと認定(労働基準法施行規則別表第1の2)→ 第1から8号については、業務起因性の推定が働く(9号)→「補償給付の請求者側で、業務との因果関係を具体的に立証しなければならない。」(化学物質過敏症)→ 赤外線瞳孔検査、重心動揺検査及び、付加テストも陽性(症状)→ 最初は症状が少なく、次第に多様な症状が出てくる傾向(症状経過)→ 平成9年頃から平成13年に至るまでそのような経過をたどっている。→ 5年半もの期間にわたり有機溶剤にかなりの程度曝露されていたと認められる。→ 羅患していたと認めるのが相当
① 平成7年10月頃以降9年4月までの時期、ボンベの数が増えた。→ 毎日と総作業をしていた。
② 塗装を終えたボンベが数十本以上、乾燥を終えるまで置かれていた。
③ 有機溶剤や塗料を入れた缶が密閉されずに置かれていた。→ これらが常に蒸発
④ 廃棄設備がない。(9年5月)→ 自動塗装となった局所排気装置が取り付けられた。(12年4月と14年6月)→ 換気扇が取り付けられた。
⑤ 塗装機を導入する以前は屋外で塗装作業をしていた。→ 冬の寒い時期や雨の降り込むときは窓を閉めたりシャッターを閉めたりする。→ 工場内で作業をすることもあった。
⑥ 作業環境測定では管理濃度以下(測定当日)→ 局所排気装置・換気扇・扇風機が稼動 → 出入口ないし窓を開けた状態(当該測定結果)→ 作業状況を忠実に再現していることは出来ない。→ 作業していた当時の作業環境においては、上記測定結果よりもトルエンなどの化学物質がより高い濃度で存在していたものと推認
⑦ 噴出したシンナーがXの顔面に当たって右目に入り眼科を受診 → 右角膜科学傷と診断されたことがあるが、当日だけ治療を受けるにとどまったこと(当日のみ)
⑧ 14年7月11日、FはYから求められ、Xの症状は「化学物質過敏症」との意見書を提出→ 現在に至るまで診断基準として普遍性を持ったものとはなっていない。
 化学物質過敏症 :統一的な定義や診断基準が認められているわけではない。→ 原因となる化学物質に暴露されることにより反応して症状が現れ、その後微量の化学物質であっても再接触の場合に再び過敏状態として症状が現れるような病態がある。→ それほど異論があるわけではなく、一般に医師らは合意事項や具体的診断基準を参考に診療に当たっている状況にある。→ 化学物質過敏症の存在は肯定

(化学物質過敏症の経緯)
就職間もない平成7年9月頃から体調不良を訴えて各種医療機関を受診(休職期間中の13年4月18日)→ C病院のD医師から「化学物質過敏症の疑いもある。」と診断 → Dは、E病院アレルギー科のF医師を紹介 → Fに診断を依頼(13年12月)→ Fは、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエンを使用した負荷テストを行なった。(本件負荷テスト)→ G医師は、病状説明書において、「化学物質過敏症としてよい」と報告

チェック・オフ

今日はバレンタインデーなのに、前々チョコレートをもらうことが出来ませんでした。残念!

今日の勉強内容は、労働組合との条例を巡る裁判でした。
労働組合を弱体化する意図の下でなければ、条例を改正する事も不可能ではないようです。


(事件概要)
被告Y市(大阪市)の非現業職員らによって組織された職員団体・原告X1職員組合およびその組合員X2~X39が、主位的に、従前の給与条例で認められていたチェック・オフを廃止する改正条例のY市議会による制定処分の取消と、Y市長によるその公布処分の取消、予備的に本件改正条例の無効確認を請求(加えて)→ 本件改正条例の制定と公布、施行後のチェック・オフ廃止によって生じた無形損害について、国賠法による損害賠償請求
 請求額 :X1組合について、1,000万円、組合員個人について各50万円などを請求

(経緯)
Y市では、職員の超過勤務手当の不適切処理などの厚遇が問題視されていた中(平成20年)→ Y市議会の一部会派から職員団体との癒着や馴れ合いを改めるためとしてチェック・オフを廃止する内容の本件改正条例案が提出(同年3月28日)→ 賛成多数で成立、公布(21年4月1日)→ 施行されて以降、Y市はチェック・オフを中止

改正条例制定行為及び市長の公布行為の処分性 :条例の制定及び公布は、いずれもそれ自体で国民の具体的な権利義務ないし法的地位に影響を及ぼすものではない。→ 首長に再議権(審議のやり直し)があることによりその公布行為の性質に変更が生じるものではない。→ 抗告(不服申し立て)訴訟の対象となる処分性を有しているとはいえず、不適法な訴えとして却下を免れない。

本件改正条例制定の処分性 :条例はそれ自体が抗告訴訟の対象たる処分に当たらない。(しかし)→ その適用を受ける特定の個人の権利義務や法的地位に直接影響を及ぼす場合 → 例外的に当該条例の制定行為をもって処分と解するのが相当である場合も否定できない。(チェック・オフ)→ 団結権等何らかの権利から直接導かれるものとはいえない。→ 便宜供与に過ぎないから、組合の取立て委任及び組合員の支払委任をし得る法的地位が、法的保護に値する利益とは認められない。(本件改正条例)→ 一般的抽象的法規範を定立する普通地方公共団体の議会の固有の立法作用としての性質を有するものである。→ 無効確認も不適法であるとして却下

国賠法請求の可否 :チェック・オフ自体は便宜供与であり団結権から直接導かれるものではない。(地公法55条1項の交渉対象事項)→ 一般的に当然考慮の対象となるべき利害関係事項 → チェック・オフはこのような利害関係事項に当たらない。→ 地公法55条による協議がなされなかったとしても違法とはいえず、国賠法上の違法性はない。

条例の制定・施行に至る経緯 :改正条例制定に向けた議論の中で一部議員から組合に対する敵対的発言があったとしても、各会派の議論を経て通常の手続きで可決成立 → 組合弱体化の意図それ自体を認めることは出来ない。→ 職員団体に与える影響などのよう考慮事項を考慮しなかったとか、際議決権を行使しなかったことが違法であるとも言えない。→ 立法裁量権の逸脱もないとして国賠法上の違法性はないとされた。

(参考)
チェックオフ :使用者が労働組合からの委託を受けて、組合員たる従業員の賃金から組合費を徴収して、これを一括して組合に引き渡すこと(S24.8.8 労発第317号)→ チェックオフ自体は、組合活動に対する経費援助にはならない。(S24.8.1 労働法規課長内翰)→ 労働組合の運営に対する支配介入ではない。(トップ工業事件)→ 組合活動に対する便宜供与を含む労働協約が失効したことを理由として、便宜供与を拒否することは直ちに不当労働行為とはいえない。(しかし)→ 労働組合を弱体化する意図の下に、チェックオフの便宜供与を打ち切ったことは不当労働行為に該当(大映事件)→ 従来慣行的に行なわれてきたチェックオフを組合と協議することなく突如として一方的に、しかも組合脱退者が続出しているさなかににわかに廃止したことは、組合運営の混乱と組織の弱体化を期待してなされたものと評価されてもやむを得ない。

地公法55条(交渉)1項 :地方公共団体の当局は、登録を受けた職員団体から、職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関し、及びこれに附帯して、社交的又は厚生的活動を含む適法な活動に係る事項に関し、適法な交渉の申入れがあつた場合においては、その申入れに応ずべき地位に立つものとする。

派遣添乗員の事業場外みなし労働

本日は、ちょっとしたセミナーに参加させて頂きました。

対象は、固定資産税を軽減する事が出来るという画期的な内容のもの

もう一つは、不動産任意売却についてのセミナーでした。

詳細が知りたい方は是非一方を。


さて、本日の判例は、事業場外の労働時間制についてです。

現状、携帯が普及し、あらゆる面で会社が従業員の動向を把握できる時代となってきました。

今後は、難しくなりそうな予感がする今日この頃です。


(事件概要)
訴外A社が企画し、再考する国内旅行に添乗員として派遣されていた被控訴人X(控訴人Y社に派遣添乗員として登録)が、平成19年3月から20年1月までの添乗業務につき、時間外割増賃金及び深夜割増賃金などの支払いを求めた。

雇用契約 :平成19年3月から20年1月までの間、日当が1万500円(派遣社員就業条件明示書)→ 1日の労働時間について、原則として午前8時から午後8時(休憩1時間)の11時間との記載

仕事内容 :ツアー前日にA社の事務所に出社 → パンフレット、最終工程表、指示書等の添乗関係書類を受領(最終的な打ち合わせの後)→ 起床・自宅出発時に電話連絡 → 就業場所に30分前に到着して各種業務を開始 → 添乗関係書類により指示されたツアーの行程管理(添乗業務の終了後)→ 速やかにA社に対し、各日の行程について記載した添乗日報・添乗報告書を提出(国内ツアーに際しては)→ 添乗員は概ねYに電話番号を登録した自らの携帯電話を携帯してツアーに参加 → 緊急の連絡にこれを使用

(考察)
労基法38条の2(事業場外みなし労働時間制) :①使用者の労働時間の把握が困難であり、実労働時間の算定に支障が生ずるという問題に対処(②)→ 労基法の労働時間規制における実績原則の下で、実際の労働時間に出来るだけ近づけた便宜的な算定方法を定めるもの → その限りで労基芳情使用者に課されている労働時間の把握・算定義務を免除するもの(労働時間を算定し難いときとは)→ 就業場所が事業場外であっても、原則として従業員の労働時間を把握する義務がある。→ 就労実態などの具体的事情を踏まえ、社会通念に従い、客観的に見て労働時間を把握することが困難であり、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合(本件)→ 派遣先であるA社の指揮監督の態様によって判断(上記仕事内容)→ 添乗業務は労働時間を算定しがたい業務には当たらない。

実労働時間 :移動中や自由行動時間、食事の時間なども、添乗業務の性質上労働からの開放が保障された時間とは言いがたい。(休憩時間)→ 実質的に待機時間である。→ Yが否認しているいくつかのツアーについては、添乗員同行の事実を認定せず、結論として約51万円の時間外割増賃金などとこれと同額の付加金の支払を認容

(参考判例)
阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件

出来高給の成否

今日は、1月31日に産まれた第2子と共に、実家に挨拶行ってきました。

さて、今日の判例は給与規程の作成に役立つような気がしました。
出来高給とは、名の通り売上高等に対して、その何%を給与として支払うというセオリーを持っていましたが、時間に対する賃金支払いを応用することも、場合によっては出来高給として認められるケースがあることに、この判例を呼んだ意味を感じました。


(経緯)
平成21年5月分までの給与支給の際、一時期を除いて、Y社から業務インセンティブおよび超勤手当を支給 → Y社は、従来、ポータブルポス開始と終了の時間でSDの労働時間を管理(19年9月23日頃)→ 従業員が現実に従事した時間外労働時間を基礎に労基法所定の計算方法により計算された時間外労働手当を支給していなかった。(労基書から是正勧告20年夏頃)→ Yは、Xに対し、17年10月分から19年9月分までの未払い割増賃金約11万円(750時間分)を支払おうとする。(しかし)→ Xから時間外労働がもっと多くある旨指摘(21年3月5日)→ Xの主張する時間外労働時間1,445時間を認め、未払い割増賃金118万3,290円をXに支払った。(平成21年3月26日)→ Yに対し、違法な300円控除措置による未払い残業代および賃金の支払いと17年10月分から19年9月分までのXのSD業務インセンティブ実績表の写しの開示を求めた。(300円控除措置)→ 違法ではなく、未払い残業代はない旨回答 → SD業務インセンティブ実績表の写しを送付(平成21年4月30日)→ 労基書から業務インセンティブの計算方法を就業規則に記載していないことなどについて是正勧告(平成21年6月26日)→ 給与規程15条にSD業務インセンティブの計算式など詳細を明記原告Xが、Y社から支給される業務インセンティブ中の1日当たりの総労働時間に時間単価300円をかけた金額を控除する措置は、給与規程に根拠がなく違法無効(業務インセンティブ)→ 出来高給ではなく、残業代の計算に誤りがあり、未払残業代および未払給与がある。→ 未払い残業代312万1,102円および未払い給与または損害賠償金326万520円の計638万1,622円と遅延損害金など並びに未払い残業代と同額の付加金の支払を求めた。(判決)→ Xの未払い残業代及び未払い給与又は損害賠償金、遅延損害金並びに未払い残業代と同額の付加金の請求が退けられた。


給与規程15条
1項 :業務インセンティブは、業務別に定め、仕事量の測定に基づき支給する。なお、測定に当たっては、地域的な要素を加味する。
2項 :仕事量の測定については他担当業務インセンティブ日額表および業務インセンティブランク格付け表に定め、店所業績に応じて単価を変動させる。

給与規程20条1項
社員が会社の指示により所定労働時間外・休日または深夜にわたり勤務した場合及び労使協定による特定日に勤務した場合は以下の計算式により手当を支給する。なお、時間外労働の取り扱いについては、別に定める。

1時間の単位額=((基本給+リーダー手当+地域手当)×月間所定労働時間165時間の1,25)+(業務インセンティブ×総労働時間(月間所定労働時間+超勤時間)の0.25)

(考察)
300円控除措置 :業務インセンティブ中の1日当たりの総労働時間に時間単価300円をかけた金額を控除する措置 → 業務インセンティブの計算過程に過ぎない。→ 業務インセンティブは300円控除措置とそれ以外の部分を全体として把握するのが相当 → 業務インセンティブから300円控除措置のみを切り離し、300円控除措置のみが給与規程15条に反して違法無効ということは出来ない。→ Xの主張を退けている。
(i) 業務インセンティブの目的 :従業員の労働時間の短縮と効率化という業務インセンティブの目的にはそれ自体合理性がある。
(ii) 1日の業績全体で評価して計算される業務インセンティブの額が不当とは言い切れない。(計算方法)→ 従業員にとって一方的に不利益であるとはいえない。
(iii) 短時間で同じ業績を上げた者や同じ時間で高い業績を上げたものの業務インセンティブが相でないもののそれより高額になることは不合理とは言えない。→ 集荷・配達業務に密接に関連する準備又は整理の時間帯を300円控除措置の対象とすることは必ずしも不当とはいえない。→ これらの時間帯を含めて業務の合理化により労働時間を短縮することが必ずしも不可能とはいえない。→ Xが時間外労働を行うことが多かったとしても、300円控除措置を含む業務インセンティブの計算方法に合理性がある。→ 公序良俗に反しない。
(iv) 給与規程そのものには業務インセンティブの計算方法を記載していない。→ 従業員にこれを周知している。

業務インセンティブは出来高給に当たるか :SD個人の集荷・配達・販売という業績に基づいて計算 → 時間的要素を斟酌した300円控除措置が講じられている。(出来高給の性格上)→ 時間的要素を斟酌することが許されないということは出来ない。→ 個人業績インセンティブの計算方法は出来高給の性質に合致する。(店所業績インセンティブ)→ 店所業績を斟酌するものではあるものの、業務インセンティブ中における比率は大きくない。(加えて)→ 増額のみがされる項目であり、これにより減額がされることはない。→ 出来高給の性質を左右しないというべき → 労基法施行規則19条1項6号が適用されるというべき

労基法施行規則19条1項6号 :出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、その賃金算定期間(賃金締切日がある場合には、賃金締切期間、以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を当該賃金算定期問における、総労働時間数で除した金額

経営悪化に伴う整理解雇

昨日は久々にカラオケで夜中の2時までハッスルしてました。
今日は午前中に合気道に行ってきました。
受身を取り損ねて、肩と首が痛い。

さて、昨日から通して勉強をした判例は整理解雇です。

整理解雇の4要件については、テッパンですね。
どれだけ会社が不況に陥っても、必ずといって良いほど従業員との話し合いは必要ですね。

加えて、不法労働行為についても良くある判例内容ですが、解雇が無効で従業員に不利益を被らなければ、それ以上に不法行為としての慰謝料を求めるのは難しいみたいですね。(不法行為自体がないからでしょうね。)

(事件概要)
外部負債が不十分であり、金融機関からの借り入れなどの外部資金の調達が相当困難 → 極めて資金繰りに窮した状態 → 19年度の専任教員の人員削減数を18人と決定(20年3月末日)→ 常勤講師1名が自主退職(20年2月25日付)→ 常勤講師4名に対し、雇止めを通知(19年度の早期退職希望者募集)→ 専任教員6名が20年3月末日で退職 → 上記18名には7名足りなかったため、専任教員7名を整理解雇(選定)→ 本件組合は、職員朝礼後、上記掲示の撤回を要求し、授業を実施しなかった。→ 教頭は生徒を下校させて本件高校は臨時休校(同年3月11日)→ Yは、2月27日に授業に行かなかった件で、参加者全員を減給(同月28日の団交)→ 20年3月29日付で、就業規則36条5号に基づいて、同月31日を以って、X1らを解雇する旨の意思表示(訴え)→ 学校法人YがX1らに対してした整理解雇が、その要件を欠き無効であると主張(Yに対して)→ X1らが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認ならびに賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求める。(X4)→ Yが同人に対してした出勤停止の懲戒処分が無効と主張 → 同処分を理由に支払われなかった10日分の賃金およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めた。

(考察)
整理解雇の有効性 :次の4要件により本件整理解雇は無効(不当労働行為)→ 無効と判断される以上、判断を要しない。
必要性 :11名の退職により一時的な退職金差額の負担を除き少なくとも4,128万円程度の人件費の削減(財務状況)→ 相当程度改善されると予測(②)→ 人を入れ替えることを意図したもの → その観点からもその必要性を肯定しがたい。(③)→ 平成19年度の実際の財務状態を前提にYの計算式を適用すると、削減員数は13名(結果)→ 人数は2名になる。→ 予算による従前の計算をそのまま使用することは妥当ではない。→ 7名の専任教員の解雇を要するだけの必要性があったとは認めることが出来ない。
解雇回避の努力 :財務内容を的確に分析して合理的な人員削減計画を策定することは、解雇を回避する努力の前提事項といえる。→ Yはこのような検討を行なわなかった。
選定 :直近2年度の平成18年度、19年度の懲戒歴を基準 → 勤務態度及び能力に問題がある3名を選定(②)→ 20年3月31日現在満52歳以上のもの4名を選定
手続きの相当性 :平成19年度の当初の時点で同年度中の削減予定人員を決める。→ 希望退職の募集、退職勧奨はしたが、整理解雇の予定については、20年2月26日まで明確に告知することはない。(本件整理解雇を行なう予定を明らかにした後)→ Yの財務状況を踏まえた解雇人数や人選基準を明らかにしない。→ 解雇回避のための組合からの人件費削減の申し入れに対しても対応しようとしなかった。(判決)→ 整理解雇を行なう使用者は、組合ないし労働者との間で説明や交渉の機会を持つべきである。(労働者側に重大な不利益を生ずる法的問題)→ 関係当事者が十分意思疎通を図り誠実に話し合うというのがわが国社会の基本的なルール → Yがこれを持とうとしなかったことには、整理解雇にいたる手続きに相当性を欠く瑕疵がある。

就業規則36条5号 :学校経営上、過員が生じたとき、その他経営上やむを得ない理由が生じたとき

懲戒処分
X4 :同年9月中旬頃に発生した野球部員同士のトラブルを認識(同月15日)→ 校長から高野連に支給電話するよう指示されたにもかかわらず、これを怠った。(19年11月25日)→ 本件入試説明会に出席した生徒の中学校を渉外担当者として訪問して、本件高校への入学を勧めるよう指示された。(しかし)→ 同中学校を訪問せず、同年12月11日に同中学校を訪問 → Yの代表者に対し、当該生徒が他の私立学校への入学を決めた旨報告(19年10月18日)→ 学校日誌の閲覧を怠った。→ 寄稿依頼を認識せずに、クラブ便りを執筆しなかった。(20年1月24日付)→ 上記3件を理由に、出勤停止10日間の懲戒処分を受けた。(同年2月8日付)→ 喫煙指定場所ではない体育教官室での喫煙により、譴責処分(判決)→ 就業規則上の業務命令違反に該当する行為が重なっていた。→ 本件出勤停止処分は有効
X5 :Y側当局者ら多数の面前で「関関同立のノウハウがある」旨の発言をしたところ、虚偽発言であるとして、19年12月21日付で譴責処分を受けた。(20年2月28日の英語の授業中)→ 生徒に対し、前日の授業ボイコットなどについて、組合の正当性を主張 → Yの代表者および校長を誹謗中傷した。→ その他英語の知識及び指導力の欠如並びに粗暴な言動を理由 → Yは、整理解雇対象者に選定

就業規則の不利益変更の有効性

本日は、社労士業務とは異なりますが、自賠責保険の保険金請求について相談を受けました。
保険外診療についても、もう少し加味してもらえたら良いのにとつくづく思います。

さて、本日勉強をした判例は、就業規則の不利益変更です。

金額的には、些細な賃金減額であり、僕としては認められても良いのにと思いますが、判例では、やはり不利益変更に対する必要性、相当性、代償措置、話し合いといった毎回決まった内容の検討が認められました。

難しいというか、辛い現実です。


(事件概要)
(平成21年5月から22年9月)Xは東京都労働委員会から6回にわたり証人として呼び出しを受け出頭 → いずれの呼び出しとも午後2時からの出頭を求めるもの → Xには各日につき不就労が発生 → Y(社会福祉法人)は、給与から控除(本訴)→ Xは、本件各賃金カットなどを理由とする未払い賃金と、本件各賞与カットを理由とする未払い賞与の支払いを求める。

労基法7条 :公民権の行使などに要した時間を有給とすることを使用者に求める規程であるか。(解釈)→ 労働者がその労働時間中に公民権の行使などのために必要な時間を請求した場合 → 使用者はこれを拒んではならないことを規程するにとどまる。(公民権の行使などに要した時間に対応する賃金)→ 有給とすることを要求するものではない。→ 当事者間の取り決めに委ねるという趣旨

本件旧就業規則15条 :不可抗力の事故のため、又は公民権行使のため遅刻又は早退したとき → 届出により遅刻、早退の取り扱いをしない。(「遅刻、早退の取り扱いをしない」の意味)→ 単に就労義務を免除し、不利益な取り扱いをしないとの意味にとどまるのか(もしくは)→ 就労したものとして取り扱い、その時間に対応する賃金についてこれを有給とする趣旨を含むものであるか(判決)→「勤務時間及び休憩時間」の中に、公民権の行使などに伴う遅刻、早退に関する規定 → 単なる就労義務の免除を意味するのではなく、ノーワーク・ノーペイの原則の例外として → 公民権の行使などに伴う遅刻、早退についてはこれを就労したものとみなす。→「労務時間」の中に組み入れることを明らか。→「本件旧就業規則15条が適用される限り、Xの本件各府就労はいずれも有給として扱われ、本件各賃金カットは違法」

給与規程3条 :正規職員が所定時間内に休業した場合には、不就労時間数に応じて基準内給与から控除する旨の規定

(考察)
不利益変更の合理性 :合理性要素(不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容自体の相当性、代償措置、交渉の経緯、国社会における一般状況)→ 一定の合理性があると推認できる。(不利益の程度)→ 労基法91条が減給の制裁額を一賃金支払期における賃金総額の10分の1の範囲に制限していることを踏まえると → 倒産回避のための必要性の高さや代償措置を考慮しても、X1らの各月の賃金について、20%以上減額する限度で合理性が認められない。(大阪京阪タクシー事件)(本件)→ 変更が高度の経営上の必要性に基づくものであるとの評価が成り立つためには、人件費の抑制という大きな目標の実現にとって、有給扱いをも削減の対象とする高度の必要性が存在していることが求められるものであるところ、そうした必要性の存在が認められない。→ その他の諸事情(労働組合との交渉の状況など)を勘案したとしても、変更に同意しない原告Xのような職員に対して、これを法的に受任させることを許容することが出来るだけの合理的な内容のものであるということは出来ない。

必要性 :Yにおいてかなり大掛りな人件費の削減に着手せざるを得ない状況(有給取り扱い)→ それ自体決して根拠にかける不要な賃金の支出に当たるものということはできない。→ Yのような公益性の強い社会福祉法人にとっては、有用な規程であるとみることもできる。(加えて)→ 頻繁に生ずる出来事ではなく、支出額それ自体もそれほど高い金額に上ることは想定されない。(人件費削減)→ 余り大きく寄与するものとは考えがたい

代償措置 :変更に伴って消滅する「既得の権利」の存在は看過しがたい。→ 有給扱いの廃止について然るべき代償的措置などが講じられた形跡は認められない。

相当性 :経済的不利益はさほど大きくなく、むしろ些少である。→ 減少する賃金の額が小さいからといって、変更の不利益性が小さいということにはならない。
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