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組合活動の正当性

皆さん、ご無沙汰しております。
この頃、言い訳ではないですが、忙しすぎて、死んでました。
さて、桜も咲くころとなり、組合活動も騒がしくなるころではないでしょうか。

今回は、組合活動にまつわる判例を紹介させて頂きます。

長文過ぎてごめんなさい。


(事件概要)
平成20年12月16日、X2は、枚方工場の一部を一時休業(結果)→ 会社都合による休業が生じるようになった。(自宅待機を命じられたパート従業員に対して)→ 労基法26条所定の休業手当の支払いをしていなかった。(21年3月17日)→ Y1は、X1大阪支店を訪れ、X2での組合結成が公然化したので親会社としてX2を責任を持って指導するよう要求 → X2にも、Y2の組合活動が公然化したことを話し、団交申入書、分会要求書などをX2に交付(平成21年4月3日)→ 同月20日に、X2とY1との間で第1回目、第2回目の団交が開催(第2回目)→ Y1からX2に対し、「①会社は、労働基準法・労働組合法などの諸法律を順守する、②会社は、第1回団交開催が遅れたことと職場内にて当方組合員に対し不当労働行為を行ったことに対し深く謝罪する、③会社は、当方組合員の未払い賃金を4月25日に支給される給料に加算して支払う」事などを確認事項とする協定書が提案(上記②については応じれない旨の回答)→ その後同年6月30日に行われた第3回団交においても、結局、不当労働行為に関する謝罪文言について合意が整わないまま、交渉が終了(平成21年4月24日)→ X2は、Y2に対し、4月分の給与に加算して、休業手当として時給の6割分の11万4,580円(同年6月25日)→ 6月分の給与に加算して、休業手当の支払いが遅れたことによる遅延損害金6%全額として442円をそれぞれ支払った。(平成21年7月6日から同年8月7日)→ Y1は、数度にわたって、Y1の組合員ら1名から60名でX1大阪支店やX2枚方工場を訪れる。→ 抗議活動や街宣活動を行う。(同年7月16日にX1大阪支店を訪れた際)→ 協定書に同意しなければ不買行動も含めて行動範囲を広める旨宣言(抗議活動)→ X1らの従業員などに対して大きな罵声を浴びせ、問い詰めたり、怒鳴ったり、同人らがいる期間、X1ら従業員の職務遂行が妨げられるような態様(街宣活動)→ 同年7月24日の午前中に行われたものの他はすべて、X1大阪支店およびX2本店が所在するビル付近路上で行われ、Xらを非難する内容のもの(平成21年8月18日午前6時40分頃)→ Y1は、X1大阪SSのセメント輸送業務を委託されていたI運送の子会社であるJ社の同SS駐在所長に対し、Y1と共同歩調を取るよう通告 → I運送の代表取締役あての要請書を提出(同要請書)→「違法行為を繰り返すX2に対して資材運搬納入する企業として、指導要請をして頂きたい旨の要請」「貴社が当組合の要請事項について合理的な理由なく拒否する場合については違法業者X2を擁護・荷担しているとみなし、合法的な手段を講じることを申し添えておきます」との記載 → Iは、「16年仮処分決定」にかかるY1の行動やY1のこれまでの強硬な活動歴など(Y1の上記要請に反した行為を行った場合)→ 自らが攻撃の対象となり、事業の遂行に重大な支障が生じるのではないかとの疑念(平成21年8月18日)→ X2に対し、セメントを納入できない旨の連絡(翌19日以降同年9月25日までの間、ほぼ毎日、概ね午前7時前後から午後4時ころまでの間)→ X1大阪SS付近において、一人または数名の組合員で乗用車などを停車 → 同SSに出入りする車両の監視活動を繰り返すとともにX2付近において(同月19日以降同年11月10日までの間、ほぼ毎日、概ね午前中から午後4時ないし午後7時ころまでの間)→ 同様の監視活動を繰り返した。(同年8月28日および同年31日)→ X2の周囲を自転車で周回し、同月28日の周回時には同署に待機していたY1らと言葉を交わす。


<甲事件>
原告X1社および、同社の100%子会社のX2社が、被告Y1組合らの業務妨害行為により、X社らの所有権または営業権ないし人権などを侵害された。→ Y1および、X2分会の分会長で分会長で同分会の唯一の組合員であり、X2の期間従業員であったY2(①)→ 業務妨害行為の差止めを求める。(②)→ 不法行為に基づいて損害賠償の支払いを求めた。

違法性 :労働組合の行動ないし団体行動も、その目的だけでなく、その手段・態様においても社会的に相当と認められて初めて正当なものとして法的保護の対象(これを欠くような労働組合活動ないし争議行為)→ 正当なものではなく法的保護の対象から外れ、違法との評価を免れないとの判断枠組み(抗議活動、街宣活動、Xらの出荷業務を妨害する活動)→ その態様のみならずその意図も明確に同業務妨害などを意図して上記一連の行為を行っていたことが推認 → 社会的相当性の範囲を超えた違法なものと言わざるを得ない。→ XらのY1らに対する業務妨害行為の差止め請求及び不法行為に基づく損害賠償請求 → Y1のXらに対する上記一連の組合活動は、態様において社会的相当性の範囲を超えた違法なものと言わざるを得ない。→ XらのY1らに対する業務妨害行為の差止め請求及び不法行為に基づく損害賠償請求(認容額:合計1,602万余円)がともに認容

組合活動の目的に関する正当性 :Y2は、Y1の一連の行動を認識、認容し、自らもY1の監視活動を分担(一連の出荷妨害行為)→ 単なる位置組合員ではなく、重要な立場として参加していたことが推認(一連の違法行為)→ Y1と連帯して責任を負うというべき(X1の損害額)→ 合計523万余円(X2の損害額)→ 合計1,078万余円をそれぞれ認定 → Xらの差止請求を全面的に認容

差止請求とは :ある者が現に違法または不当な行為を行っている場合や行う恐れがある場合において、当該行為をやめるよう請求する権利 → 各法令に規定のあるもののほか、解釈上認められるものもある。


<乙事件>
Y2がX2に対し、Y2に対する雇止めについて、解雇権濫用法理ないし同法理が類推適用される。→ 同雇止めが正当化されず無効(雇用契約に基づいて)→ 雇用契約上の権利を有する地位の確認、同地位に基づいて未払い賃金などの支払いを求めた。

本件雇止めの解雇権濫用法理の類推適用 :Y2に対する雇用契約の更新手続きの回数は3回に過ぎず、各契約更新時にそれにかかわる雇用契約者は作成されたことはないが、X2からY2に対し雇入通知書が交付 → Y2とX2との間の有期雇用契約が期間の定めのない雇用契約と実質的に同視することができる状態になったと認めることはできない。→ 本件雇止めには解雇権濫用法理は適用されない。(しかし)→ 解雇権濫用法理が類推適用されるためにはY2に対する同雇用契約について更新に対する期待利益に合理性があることが必要

合理性の有無 :雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無などを総合考慮し、これを決するのが相当(3回の各契約更新時)→ Y2との間で雇用契約が作成されたことはない。→ Y2との面談も実施されておらず、概ね更新日に雇入通知書がX2からY2に交付されていたに過ぎない。(業務内容)→ 臨時的なものとまでは認められない。(最後の雇用契約更新時)→ それまでの午前勤務とは異なり、午後5時までの勤務時間に変更 → 本件有期雇用契約による雇用継続に対するY2の期待は合理性があると推認(本件雇止め)→ 解雇権濫用の法理が類推適用される。
① 当該雇用の臨時性・常用性
② 更新の回数
③ 雇用の通算期間
④ 契約期間管理の状況

合理的な理由の判断 :Y1の組合活動は態様において違法 → X2が損害を被っている。→ Y2は、X2会長としての立場で主体的に組合活動に関与している。→ 合理的理由に基づくものとして有効
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派遣労働者の黙示の労働契約

こんにちは。
昨日は、今年最後のスキーを満喫し、今日は朝から合気道に2か月ぶりに行ってきました。
おかげで、体がボロボロですが、気持ちは充実しています。

さて、今回はリーマンショック時に話題となった派遣切りについての判例を勉強しました。
派遣については、過去にも様々な判例があり、派遣先との黙示の労働契約があるとの主張が多い中で、その主張が却下される判決がほとんどです。
その中で、今回の判例も過去の判例に基づいて、却下されていました。


(事件概要)
Xらは、いわゆる「派遣切り」(その後)→ Yとの間で直接の有期労働契約を締結(更新されなかった事など)→ 精神的苦痛を被った。→ Yに対し慰謝料を請求(Xらの内4名)→ AによるXらの採用にYが関与したなど(XらとY 間)→ 就労開始当初から期間の定めのない黙示の労働契約が成立(Yに対し)→ 雇用契約上の地位を有することの確認、および未払賃金の支払いを請求

YとAの契約形態 :原告Xらは、平成16年4月から20年4月の間に訴外A社との間で労働契約を締結 → 被告Y社の姫路工場内で、自動車のベアリングの製造業務に従事(平成15年12月当時)→ YがAから出向の形態でAの社員を受け入れ(17年10月1日)→ 業務委託契約に変更(18年8月21日)→ 労働者派遣契約が締結(平成21年2月3日)→ リーマンショックのなかで、AとYの本件労働者派遣契約につき同年3月21日をもって中途解除する旨の通知 → Xらは、同日をもって中途解雇する旨の解雇予告通知をAから受けた。(平成21年3月23日)→ 所轄労働局は、Yおよび、Aに対して、派遣期間の制限違反の労働者派遣法違反、および、業として行われていた出向につき労働者供給事業を禁止する職安法違反があった。(同年4月23日まで)→ Xら派遣労働者の雇用の安定を図るための具体的方策を講じて報告するようにとの是正指導を行った。(本件派遣契約の解除)→ Yは、平成21年3月31日付から同年4月23日付へと変更 → Aも、前記解雇を同日付に変更(同年4月23日)→ Yは、Xらとの間で、期間を同月24日から同年9月30日までとして、有期労働契約を締結(Xらは、労働契約の期間について異議をとどめる旨を述べていた。)→ 本件期間雇用契約は、同年9月30日をもって更新されることなく終了

(考察)
黙示の労働契約 :事実関係などに現れた全事情を総合的に判断 → 発注元・労働者間の雇用契約関係が目次的に成立していたものと評価することはできないと判断 → Xら4名に対する作業場の指揮監督権や配置・懲戒の権限を有していた。(しかし)→ 解雇権限まで有していた訳ではなく、賃金や諸手当についても、Aが主体的に決定していたことが認められる。(Xら4名がAと正式な雇用契約書を作成する以前にYの工場を見学していた点)→ 同工場が油の臭いで充満した職場 → 就労者が金属アレルギーであったことが原因で、1日ないし数日で退職するものが少なからずいた。→ 主としてXらに就労する職場を見せてその体質などに合うか否かを判断(労働者派遣法26条7項)→ 派遣労働者を特定したり、Yが実質的にXらの採用不採用を決めたりすることを目的として行われたものとは認められない。(業務委託料の対価額の決定)→ 労働者一人当たりの時給を基準として決めていたことが不合理とは言えない。(派遣元であるA)→ 労働者によって、こうした対価の時間単価よりもかなり低額の賃金を支払っていた。→ Aが独自の判断でXらに対する賃金を決定していた。→ Xらの主張を退けている。

解雇(更新拒絶)の有効性、および解雇期間中の賃金請求権の有無 :Xらは、本件是正指導によって成立したもの → 本件期間の定めのない労働契約として実現されなければならず、期間の定めのないもの絵である旨の主張(本件是正指導にある「雇用の安定」とは)→ 期間の定めのない契約や、更新を前提とする有効契約の実現までをも意味するものではないと言わざるを得ない。(兵庫労働局に対し)→ Yは、既に平成21年4月7日の時点で、契約の更新につき、その旨の文言は入れるものの、契約更新自体は難しい旨を伝えていた。(仮に更新のための最大限の努力をする旨を伝えていたとしても)→ 景気動向を睨みながらの努力を意味するものであると考えるのが相当 → 同労働局が、それを超える「努力」を期待して、是正報告書を受理したかは、甚だ疑問 → 本件雇止めが無効であるとは認められない。

不法行為の成否 :Xらの就労実態が実質的には労働者派遣に該当 → 労働者派遣法違反の問題は生ずるとしても職安法44条違反の問題は認められない。(労働者派遣法)→ 行政上の取締法規(同法4条の規定する労働者派遣を行うことのできる事実の範囲や同法40条の2が規定する派遣可能期間などについてどのようにするか)→ 我が国で行われてきた長期雇用システムと、企業の労働力調整の必要に基づく労働者派遣とを以下に調整するかという、その時々の経済情勢や社会労働政策にかかわる行政上の問題であると理解される。(労働者派遣法によって保護される利益)→ 基本的に派遣労働に関する雇用秩序であり、それを通じて、個々の派遣労働者の労働条件が保護されることがあるとしても、派遣先企業との労働契約の成立を保障したり、労働条件を超えて個々の派遣労働者の利益を保護しようとしたりするものではない。(非許容業務でないのに派遣労働者を受け入れ、許容期間を超えて派遣労働者を受け入れるという労働者派遣法違反の事実)→ 直ちに不法行為上の違法があるとは言い難く、ほかにこの違法性を肯定するに足りる事情は認められない。

(参考判例)
積水ハウスほか(派遣労働)事件 : 成否の判断 → 派遣元の独自性、派遣労働者と派遣先との間の事実上の使用従属関係、労務提供関係、賃金支払関係等の総合判断(例)→ 派遣元が形式的な存在にすぎず、労務管理を行っていないのに対して、実質的に派遣労働者の採用、賃金額その他の労働条件を決定し、配置、懲戒等を行い、派遣労働者の業務内容・派遣危難が労働者派遣法で定める範囲を超え、派遣先の正社員と区別しがたい状況 → 派遣先が派遣労働者に対し労務給付請求権を有し、賃金を支払っている。→ 黙示の労働契約が成立(本件)→ Y1がXの賃金を決定・支給、出退勤の管理、派遣労働契約を締結するに当たっての更新手続き、契約締結に掛かる経緯 → 認められない。

従業員を拘束しない会社の労働時間について

こんばんは。

今日は朝から労働保険の更新に関する説明会に行ってきました。

何でもかんでもパソコンで行うようになり、すごく楽になったような、覚えることが増えて大変になったような、複雑な気分に陥っている今日この頃。

さて、今回の判例は割増賃金についてです。
今回の判例でも、パソコンの立ち上げ、切る時間を労働時間の目安としております。
また、業務に関して、従業員の自由に拘束をなくしているように見えて、締切などの起源に追われて、従業員には自由な時間は全くない状態を作り出しているとして、従業員の訴える労働時間を認めた例としても、これまでの判例によく似たケースがもたらされています。



(事件概要)
原告Xは、被告Y社の元従業員(平成19年7月23日から22年7月31日)→ Yとの間で雇用契約関係(所定労働時間)→ 午前10時30分から午後7時30分(休憩1時間)→ 全体として仕事量が多く、所定の出退勤時刻を守っていたのでは、担当の業務を終えることは不可能(一方)→ Yの代表者Bは、締め切りまでに良い仕事さえすれば勤務時間の使い方は自由で構わないとの考え(出退勤管理)→ 関心がなく就業規則はもとより、タイムカードや出社簿等も全く存在しなかった。→ Xは、Yにおいて全く出退社管理などが行われていないことに疑問 → 将来の残業代請求を視野(平成20年1月から)→ 自らの出退社時刻を分単位まで手帳に記録するようになった。(証拠として客観性に欠けると考え)→ 出退社時ごとに、パソコンのソフトを立ち上げたうえ、各出退社時刻を打刻し、パソコンのフォルダ内に保存する方法を用いた。→ Xは、Y社の代表者に対しタイムカードの設置や就業規則の作成を求めた。(しかし)→ 要望に応じる構えは全くみせなかった。

Xは、支払いを求めた。→ Yから割増賃金の一部弁済があったことから、訴えの一部取り下げにより請求金額を減縮


(考察)
時間外労働の割増賃金(判決)→ パソコンの立上げ・終了時刻の保存記録が改ざん変更されたことをうかがわせる証拠はない。(的確な反証がなされない限り)→ Xの出退社時刻を一応推認させるに足る証拠価値を有する。(Yの反証)→ 警備会社のセット・解除時刻との齟齬やフォルダに記録された変更日の日付 → 不自然であったり本件不ソフトの記録時刻の信用性に合理的な疑いを生じさせるものではない。→ Xの出退勤時刻にあたるものと認めるのが相当

労基法上の労働時間 :労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。(最高裁判所平成7年(オ)2029号同12年3月9日第一小法廷判決・民集54巻3号801頁)→ ①当該業務の提供行為の有無(②)→ 労働契約上の義務付けの有無(③)→ 義務付けに伴う場所的・時間的拘束性(労務の提供が一定の場所で行うことを余儀なくされ、かつ時間を自由に利用できない状態)の有無・程度を総合考慮 → 社会通念に照らし、客観的に見て、当該労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かという観点から行われるべき(本件)→(時間帯a)本件出退社時間を午前6時から同10時30分まで(時間帯b)→ 午後7時3j0分から午前零時まで(時間帯c)→ 午前零時から午前6時まで(それぞれにつき労働時間制を検討・判断)→ 編集業務ということもあり、かなりフレキシブルな勤務形態を許容(しかし)→ 担当業務の締め切りは厳しく管理、その結果も一定レベルのものが求められた。(結果)→ 所定労働時間だけの労働では時間が足りず、法定外残業を余儀なくされる状態 → 早朝(午前6時、7時頃)から出社、深夜午前零時近くまで業務に従事することが常態化 → 時間帯aおよびbにおいて、Y内における残業を余儀なくされ、Bも当然認識(黙示に指示ないし容認)→ 時間帯aおよびbにおけるXの行為は、Yの指揮命令下に置かれていたと評価(時間帯c)→ 実態から、1,2時間程度は残業が続いている。→ Bもこれを容認していたとみることが可能(午前2時以降)→ 一般的に使用者の指揮命令権が及び難い時間帯、作業効率や創造性も著しく低下 → Yにおいて容認していたとは考え難い。→ 午前零時から同2時までに限り労基法上の労働時間にあたる。(休憩時間)→ 勤務状況から、1時間もの労働義務から解放された時間が保障されていたとは認められない。→ 拘束時間が9時間を超える場合に30分間を休憩時間として認定

付加金 :従業員の出退勤管理を怠ってきた経緯、基本給の中に残業代が含まれていたとは到底言い難いこと(時間外労働に対するYの対応)→ 労基法37条などの趣旨・目的に大きく違反するものと言わざるを得ない。→ 制裁金たる付加金の支払いを命ずるほかない。(しかし)→ Yは一部弁済をし、裁判所の和解勧告に基づき解決金の上乗せを受諾していた。→ Yに有利に斟酌して、付加金の額は30万円が相当

賞与支払いに関する損害賠償

皆様、ご無沙汰しております。

顧問先のお客様の社員旅行に参加をさせて頂き、グアムへ行っていたため、ブログを書くことができませんでした。

さて、今回の判例ですが、損害賠償です。

団体交渉で話し合いが成立しない場合、賃金の支払いをしないのは、不法行為に当たるのか?ということへの一つの判断基準となると思いました。

決定している額については、支払うべきであり、不法行為については、賃金規程などで、交渉によって支払うなどの文言がない場合、交渉をキッチリと行っている場合には、損害賠償を棄却されることが多いと思います。


(事件概要)
K分会結成以前である平成14年夏季賞与までは、従業員に対する賞与の支給に際し、Yから従業員に対して支給額の事前通知をしない。→ 支給時期にYが決定した賞与支給額を支給(K分会結成後)→ Yから従業員に対し、Yの決定した支給額を通知 → 従業員から確認・承諾書の提出を求める。(提出を受けた後)→ 支給(本件)→ X1がYの通知した金額に合意し、支給対象者、支給金額、支給日のみを定めた協定書を締結することを主張(対して)→ Yは、X1の提示した協定書の内容のほかに、「本協定は、賞与に関する団体交渉の議論を経て妥結・
合意したものであり、組合・会社は、妥結・行為内容及び本件団体交渉経緯について今後なんら異議を申し立てないことを確認する」との条項(以下、本件確認条項)を加えた協定書を締結することを主張(協定書を締結して賞与が支給された後)→ X1は、支給額に異議を述べたり、交渉のやり直しを求め、議論を蒸し返したりするものではないとして協定書の締結を求める。(X2ら)→ Yが通知した賞与支給額の支払いを求めた。(しかし)→ Yは、協定書の締結は支給額だけでなく、賞与に関するすべてを決着することを表示するもの → そのことを確認することが必要であると主張 → 本件確認条項の削除に応じなかった。(以上のような経過により)→ Yは、X1らに対する本件各賞与を支給していない。(組合員でない社員に対して)→ 各従業員からYが通知した賞与額を承諾などする旨の確認承諾書の提出を受けた後、賞与を支給(訴え)→ X2らが、平成21年夏季賞与及び同年冬季賞与の支払い(また)→ X1組合が、本件各賞与にかかる団体交渉などにおけるYの対応 → X1組合の団体交渉権などを侵害する不法行為に当たるとして損害賠償を求めた。

原告X1労働組合 :昭和43年に設立された労働組合(平成14年10月20日)→ Y社の従業員36名中21名によって下部組織としてK分会が結成 → 原告X2ら6名は、X1の組合員であり、K分会の構成員

給与規定32条 :賞与は、業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合を除き、7月に夏季賞与、12月に冬季賞与として年2回支給(支給額)→ 会社の業績に応じ、従業員の能力、勤務成績、勤務態度などを人事考課により査定 → その結果を考慮して決定する旨定めている。→ 以上のほかに賞与に関する定めはない。

救済命令 :K分会結成後の団体交渉におけるYの対応が不法労働行為に当たる。→ X1が労働委員会に救済申し立て → 労委から救済命令が出された。


(考察)
賞与請求権の有無ないし賞与請求権を侵害する不法行為の成否 :賞与の支給額は、従業員の関与を経ることは要件となっていない。(分会結成後)→ 従業員に対し、Yにおいて決定した賞与支給額を通知 → 従業員から確認・承諾書の提出を受けた後に賞与を支給していた事実(しかし)→ Yから従業員に対する賞与支給額の通知及び従業員からの確認・承諾の提出は、賞与支給を円滑にするため、慣行的に行われてきているもの → 賞与支給額の決定自体はYの専属的事項である事を定めている給与規定32条を変更するものではない。(賞与支給額)→ YからX2らに対し、支給額を通知した時点で確定していた。(X2らに対して)→ 協定書の締結が支給条件となっていたと解されるかという点について → X1の組合員であるX2について、YとX1との協定書の締結自体が賞与の支給要件となっていたものと解することはできない。→ X2らの賞与支払い請求が認容

X1に対する団結権など侵害としての不法行為の成否 :賞与協定の締結にあたって、Yが、今後異議を申し立てない旨の確認条項を加えた協定書の締結を求め続けた行為 → 使用者の交渉態度として違法なものとは言えない。→ X1からYに対する損害賠償請求が棄却

整理解雇

こんにちは。
明日からグアムへ行ってきます。
4日くらい間が空くと思いますが、また書きたいと思います。
今回の判例では、地裁の判決を無視した態度について、整理解雇に関する判決を揺るがしていると共に、不法行為を構成している事に新しさを感じました。


(事件概要)
Xは、平成16年4月15日、訴外A 社が保有するヘアケアのブランドの1つを担当するクリエイティブディレクター(CD)としてYに採用(平成18年3月7日)→ Xに対し、Yの業績悪化およびXの勤務成績不良を理由として退職勧奨(同年7月)→ Xを仕事から外した。(同年11月28日)→ 東京地裁に対し、Yを相手方として、退職勧奨の禁止及びXの仕事を取り上げないことを求める。(Yが雇用契約は終了した旨を主張)→ Xは、話し合いによる解決の余地がないと考え、別途、訴訟を起こす。(平成19年2月14日)→ Xに対し、同年1月25日限りで雇用契約は終了したので、立ち入ることを禁じる旨の通知 → 同年2月分以降の給料の支払いを停止 → Xは、賃金仮払いなどを求める旨の仮処分を東京地裁に申し立て。(同年4月13日)→ 同年4月から20年3月まで1か月48万円の仮払を命ずる仮処分決定(平成20年1月9日)→ XY間において、①19年12月分の賞与の内金として49万余円②20年4月から本案訴訟の第1審判決言い渡しまで1か月48万円をそれぞれ支払う旨の和解が成立(同年9月5日)→ 本案訴訟の控訴審判決があるまで1か月48万円の仮払を命ずる仮処分決定(平成19年6月6日)→ 雇用契約上の地位の確認、賃金・賞与の支払い、慰謝料の支払いを求める訴訟を提起(20年7月29日)→ 慰謝料額を60万円の限度で認容すること以外、Xの請求を全て認める旨の判決 → Yは、不服として控訴(21年4月23日)→ 控訴を棄却する旨の判決(Yは、上告受理申し立て)→ Xとの訴訟外での話し合いによる解決を図るべく交渉 → 解決に至らなかったことから判決を履行(同年7月3日)→ 申し立てを取り下げ(同月10日)→ Xに対し、上記判決で命じられた金額から木払い分を控除した額を遅延損害金とともにXに支払った。(平成21年7月16日)→ 企業年金・退職一時金、未消化の有給休暇の買い上げ、特別退職金の合計1,204万余円の支給を条件とする退職勧奨 → Yが同年2月から別途実施した希望退職募集の際に、Yが対象従業員に対して提示した条件と同じ。(同年7月24日)→ 職場復帰を求める通知を送付(同年8月28日)→ Xに対し、面談をして退職勧奨の提案の経緯や理由を直接説明 → Xは、退職勧奨には応じられない旨を回答(同年10月15日)→ Xに対し、同年11月15日をもって解雇する旨の通知

職務内容 :広告表現の企画と制作を担当するクリエイティブ部門において、クリエイターを統括するチームリーダーである。


(考察)
人員削減の必要性 :組織再編などに伴う企業の合理的運営上の必要性 → Yの経営状況が客観的に高度の経営危機下にあること、倒産の危機に瀕していることを認めるには足りない。

解雇回避措置の相当性 :人員削減の必要性が企業の合理的運営上の必要性という程度にとどまる。→ 相当高度な解雇回避措置が実施されていなければならない。(解雇回避措置)→ 希望退職者の募集、不利益緩和措置としての退職条件の提示 → 甚だ不十分と言わざるを得ない。

本件解雇に至るまでの紛争の経緯 :判決後にXを実際にYで勤務 → XY間の関係をいったんは原状に戻すという手続きを踏むべき。→ 本件解雇に至る手続き相当性を揺るがす大きな事情 → 整理解雇としても有効ではない。


能力不足ないし整理解雇に関する人選の合理性
① 相当程度高額の賃金の支払いを受けている。
② 中途採用者として、入社当初からCDとしての成果が求められる立場
③ 最重要の担当ブランドについて、特に躍進もない代わりに逆に急落もない。
④ シェアの漸減傾向が窺われるとも一定のシェアを維持していたともいえる。
⑤ いくつかのクライアントの新規開拓の成果を上げた。(しかし)→ それらの中には長くは続かないものもある。
⑥ 別のクライアントの新規開拓の成果 → それらの中には長くは続かないものもあった。
⑦ CDの人事評価 :平成17年まではむしろ良好(18年3月7日)→ 退職勧奨がなされ、それまでの間の評価期間が約4か月 → 7月にYから仕事を与えられなくなった。→ 同年の評価は必ずしもXの業績の実態を正しく示したものとは認められないと判断

精神的苦痛 :前件訴訟により、Xに関する雇用契約上の地位確認などにつきほぼ全部敗訴の判決が確定していた。(しかし)→ その後も約2年間にわたってXの出勤を許さず、再び退職勧奨 → 無効という本件解雇に及んだ。→ 不法行為を構成するというべき → 専業主婦の妻と幼い双子(一人は障害がある。)の児童を抱えている。→ こうしたYの行為によって著しい精神的苦痛を被った。→ 30万円の慰謝料の支払いが命じられた。

有期契約社員の雇止め

こんにちは。
週末はお客様とゴルフ旅行に同伴させて頂き、いつもの通りの最悪のスコア(142)でした。
まあ、いつものことですので、辛くはございませんが。

さて、今回の判例では、雇止めについてです。
これまでにも良く目にしましたが、期間雇用の場合の雇止めでは、業務内容が恒常的であるか、期間的なものであるかが大きく判決を左右する気がします。



(事件概要)
Yとの間で期間6ヶ月の有期契約を締結(同年10月1日に22年3月31日まで更新)→ 平成22年2月26日、Xは同年3月31日の契約満了後の更新をしない旨説明 → 退職予告通知書、雇止め理由説明書の交付を受ける。(訴え)→ 同雇止めには解雇権濫用法理が適用され、無効(Yに対し)→ 労働契約上の地位確認などを求めた。

業務内容 :Y入社後のXの就労場所はCにいた頃と変更がない。(21年10月以降のXの賃金額)→ インセンティブ給など合算すると多い月で約142万円、少ない月では約63万円

(考察)
雇止めの合理的存否 :平成21年4月以降、Xはデータ入力の遅れや行動計画表の未提出(同年11月)→ Xの行動を監視したところ、Xの報告に不備があり、報告どおりに取引先を訪れていない。→ これに伴って旅費の不正請求が生じていることが判明(認定しつつも)→ 個人成績に特段問題があるとは認められない。顧客から一定の評価を受けている。(旅費の不正請求が認められるものの)→ 不正受領額は2,190円(データ入力では指導を受けているものの)→ 処分までは受けていない。→ 本件雇止めを正当化させるに足る事由はない。→ 濫用があり無効であると判示 → 地位確認請求を認容

合理的期待 :業務内容がフリーダイヤルやナビダイヤルの営業で恒常的な業務 → YはXの業務経験を踏まえて採用している。→ Xも同労働契約が更新されるとの認識を持っていた。(更新時に締結された契約書)→ X保持分については、作成日付も抜け、Xの記名押印もない。(本件雇止め当時)→ 同労働契約が更新されるとの合理的期待を有していた。→ 解雇権濫用法理が類推適用される。

未払賃金額の算定 :期間を含めて同雇止め時までの労働条件で更新されたと解するのが相当 → Yの営業に係る契約社員に対するインセンティブ給はXの雇止め後に改正(Xが勤務を継続したとしても)→ 同更新時の新たな契約によって改正されたインセンティブ給制度の範囲内である。→ インセンティブ給を約3分の1としてXの賃金額を算出 → 月額約56万円の限度で未払賃金の請求を認容

整理解雇

こんにちは。
少し、労働条件の不利益変更について、これまでの判例をまとめておりましたところ、余りにも色々ありすぎて現在格闘中です。
また、まとまり次第、本ブログに載せることができれば幸いです。
ということで、久々のブログへの記載ですが、整理解雇に関する判例となります。
どちらかというと、整理解雇というよりも、普通解雇に近い気がするのですが、このような争い方もあるのかと思い、取り出してみました。
結局のところ、かなり細かい個所までキッチリと話し合いをしなければ、労働者側に有利な判例が出るのだと改めて考えさせられました。


(事件概要)
原告Xは、平成10年2月、Y社のパート社員として雇用(12年6月)→ 準社員(平成21年3月頃)→ 翌22年3月をもってMP製造部(Xを含む30名が所属)を廃止(Xを除き)→ 同部の所属従業員は、21名が他部署に配転、7名が希望退職に応じて退職、1名が定年退職(平成21年7月)→ 労働組合との間で希望退職者の募集に関する労使協定 → 募集対象は40歳以上の正規社員、募集人数は30名(賃金の期限付き減額に関する協定)→ 減額期間は同月19日から最長で22年5月まで(減額幅)→ 本給の10%に相当する額を毎月の給与から減額 → 準社員は賃金減額の対象とされていなかった。(平成21年8月から同年12月まで)→ 派遣社員ないし請負会社の従業員(計41名)を新規に受け入れ → 22年7月の時点で、計29名が継続して稼動(22年1月)→ 求人の募集(同年2月頃)→ 登録派遣型派遣社員3名の派遣を要請(訴え)→ 本件解雇が整理解雇の要件を満たしておらず無効 → 雇用契約上の地位があることの確認及び、賃金等の支払を請求

Xを退職勧告の対象
平成21年7月から8月にかけて、4回の面接 → 希望退職の提案と条件提示 → Xは、雇用の継続を希望(Xは労働組合に加盟)→ 平成21年8月から22年3月までの間に、計10回程度の団体交渉が実施(21年8月20日)→ 1回目の団交の際に、Xに対して、同年9月19日を持って普通解雇する旨の意思表示(平成11年度から20年度までの人事評価(S,A,B,C,D及びEの6段階評価))→ B以上を1度も取ったことがなく、D,Eを4回以上取った。→ このような評価は従業員の下位8%に当たるもの(平成16年頃から20年4月頃)→ アルバイトをしており、就業規則に違反することを認識 → Yにはこれを報告していなかった。(本件解雇後)→ 平成22年4月から23年3月までAで稼動し、収入を得ている。

配転先の候補 :配転先には夜勤務があると考え、難しいと答える。

廃止となる平成22年3月まで胴部においてパートで働くことを提案 :Xは、これに納得できないと回答

経営状態
18年6月から19年5月まで :営業利益約369万円
19年6月から20年5月まで :営業損失約1,071万円
20年6月から21年5月まで :営業損失約4億1,800万円
21年6月から22年5月まで :営業利益約3,986万円

準社員 :パート社員から昇給するもの → 準社員は同組合の組合員ではない。

準社員就業規則 :いずれも正規社員に適用される就業規則が適用(退職金を除く給与)→ 正規社員に適用される給与規定が適用

(考察)
整理解雇の有効性 :(以下の4要件により判断)経営不振を理由として準社員一人に対してなされた解雇が整理解雇に該当(本件解雇時点)→ 切迫した人員削減の必要性があったとまでは認められない。→ 解雇に先立ち、解雇回避努力を十分に尽くしたとは言いがたい。(対象者の人選)→ 合理性を認めることは出来ない。→ 手続きの相当性について直ちにこれを欠くものとはいえないことを考慮 → 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。

イ. 人員削減の必要性 :受注状況の改善傾向、経営状況の回復、派遣社員などの受け入れ → 本件解雇の4ヵ月後における正規社員の求人募集、Xが配属されたMP事業部の廃止時期(本件解雇の6ヶ月以上先)などの事情 → 本件解雇の時点で、Xただ1人を解雇すべき切迫した人員削減の必要性があったまで認めることは出来ない。(実態)→ Yの行動は正規社員や準社員から派遣社員などへの従業員の入れ替えであったと評価(必要性の有無という観点から)→ このような実体を容易に容認することは出来ない。

ロ. 解雇回避努力 :YがXに対して昼勤務のみに従事するという条件提示をしていなかった。(Xを配転し昼勤務のみで稼動させること)→ Yの体制面においてもXの能力面においても十分に受け入れ可能だと認識 → Xは昼勤務のみの条件が提示されればこれを受諾する可能性があったことなどを指摘 → Xの解雇を回避することが出来る可能性がある提案の不行使に当たると評価 → 解雇回避努力の履行が十分ではなかったと判断

ハ. 人選の合理性 :準社員には退職金を除き全て正規社員に適用される就業規則及び給与規程が適用される。(準社員と正規社員との差異)→ 企業内組合の組合員でない点程度しか存しない。(会社との結びつきの面)→ 正規社員と全く同一ではないもののこれに準じた密接な関係にある。→ 準社員であったことが解雇対象者選定の事情として合理的であると認める事はできない。→ 労働組合との間での希望退職者募集に関する協定の締結、希望退職者の募集定員への到達といった事情の下では、正規社員に対する解雇に踏み切れなかった。→ 組合員でないことを理由として解雇の対象とするもの

ニ. 手続きの相当性 :解雇に先立って行なわれた個別の面接、本件解雇後に実施された団交等に言及 → 直ちにこれを欠くような事情までは認められない。

中間収入の控除の当否 :労働者に対して負う解雇期間中の賃金支払義務のうち平均賃金額の6割を越える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許される。→ その範囲内でXの中間収入を控除することを認め、賃金支払い請求の一部を認容
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