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定年後の雇用延長制度

平成24年4月28日、今日は久々に子供とトミカ博に行ってきました。
どれだけ不況と言われても、ゴールデンウィークの初日であり、子供の事となると、人は多いものです。
本当に疲れました。

本日の判例は、今話題となっている定年再雇用に関する事例です。

これまでの判例と同様、就業規則への記載の通り話が進んでおり、会社の裁量について、不当な行為がないかどうかが争点となっていました。



(事件概要)

X2は、平成14年4月2日、満60歳の定年に達す。(同月3日から6か月の契約期間)→ Zと労働契約を締結し、その後3回更新(16年2月14日付)→ 川崎営業所所長から期間満了により雇止めを行う旨の通知を受け、同年4月2日、本件雇止め → 補助参加人Z社が原告X1組合の執行委員長の原告X2に対し、平成16年4月3日以降の雇用契約更新を拒絶 → X1とX2(Xら)は、労働組合法7条の不当労働行為に該当すると主張(神奈川県労働委員会に救済申し立て)→ 県労委及び中労委がこれを棄却 → Xらが本件命令を不服としてその取り消しを求めた。

Z社 :一般乗用旅客自動車運送事業等を営む。→ 神奈川県を中心に11か所の営業所を有す。→ 従業員数は1,541名 → 川崎営業所の従業員は約230名

X1組合 :平成8年4月1日に結成 → Z社の従業員などで組織(組合員数)→ 17年7月1日現在37名(川崎支部の組合員)→ X2を含む3名 → 組合員の大多数は磯子支部に所属(Z社にはX1組合以外にも2つの労働組合)→ 17年5月15日現在の組合員数は、第一組合が993名、第二組合が75名 → Zと第一組合はユニオンショップ協定を締結

就業規則 :定年を満60歳 →「ただし満62歳まで雇用延長ができるが、6か月ごとの更新」(その後)→ 会社が特に必要と認めたものにつき別に定める準社員規定により採用することがある旨の定め(平成9年4月16日に改正された準社員取扱規定)→「定年に達したる社員であって会社が必要とし、かつ本人が引き続き勤務を希望する場合は、所属長の申請により、審査のうえ採用する」→ 就業規則及び準社員取扱い規定は、15年に共に変更(就業規則に関して)→ 定年に達した社員について6か月ごとに更新し満62歳まで雇用延長することがある旨書き換えられ(準社員取扱規定)→ 雇用延長後62歳に達した社員で勤務継続を希望する者は所属長の申請により審査のうえ再雇用する旨書き換えられた。


(考察)

裁量権の有無 :Z社においては解雇事由に該当するような特段の事情がない限り、満62歳で区切られることなく当然に準社員契約が継続されていた。(平成9年4月改正後の准社員取扱い規定)→ 満62歳時に準社員として採用される旨の就業規則の内容は変更(60歳以降)→ 準社員として、62歳時の区切りなく6か月ごとに契約の更新が行われるものに改定されていたと主張(実態)→ 62歳以降の準社員としての採用は、Zの裁量的判断により、Zが必要とするものが採用された。(乗務員の在籍人数推移)→ 有意の大きな減少が認められるとしてXらの主張を退けた。(就業規則の規定自体)→ 変更されておらず、平成9年4月16日改定の準社員取扱い規定は、必ずしも就業規則の規定内容と矛盾しない。(雇用延長制度)→ Zが裁量権の範囲を逸脱、濫用したと認められる場合 → Zの雇止めに、不当労働行為意志を認める余地がある。→ X2を準社員として採用するか否かを決するに当たりZが考慮した事情につき検討

雇用延長制度 :就業規則の規定上(満60歳の定年以降)→ 満62歳までの雇用延長と、満62歳以降の準社員としての採用を明確に区別(満62歳以降のものを準社員として採用するに当たり)→ 特に会社が必要とする者及び本人の希望により会社が認めたものについて採用することがある。→ 満62歳以降の準社員としての採否に際し、Zに裁量権がある。

雇止めの不当労働行為 :就業時間中の休憩取得指示違反(平成14年6月以降)→ X2は、Zから繰り返し休憩取得指示を受けていながらこれに従わなかった。(就業時間中の組合活動)→ 就業規則並びに労働協約により一定の場合以外はZの許可が必要(しかし)→ X2はこの許可を受けずに就業時間中に組合活動を行っていた。(制帽着用義務違反)→ X2は、平成14年6月以降、Zから繰り返し制帽着用指示を受けていたのにこれに従わなかった。(タコメータの開閉)→ 乗務員服務規程で勤務時間中のタコメータの開閉が禁止(しかし)→ X2は複数回にわたり開けていたと認定(採用するか否か)→ これらの事情を考慮することは、いずれも相当というべき(Zの判断)→ 裁量の逸脱、濫用があったとは認められない。→ X1とZが対立的な労使関係にあったとしても、本件雇止めが、X1の弱体化を図る目的でおこなわれたものと認めることはできない。(結論)→ 本件雇止めは、不当労働行為には当たらない。→ Xらの請求を棄却
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有期の契約社員の雇止め

平成24年4月24日、4月もあとわずかで終わりになりますが、これからが「労災保険の更新手続き」「社会保険の算定届」が開始される時期となります。

お困りの場合には、是非一度ご相談ください。

本日の判例は、有期契約社員の雇止めについてです。

雇止めについて、明確な例としてみるには、勉強になる判例でした。


(事件概要)

Xは、Yに、平成18年4月から嘱託契約社員として、契約期間9か月とする有期雇用契約で採用(更新)→ 契約期間を1年とする有期契約が合計3回(年棒額)→ 775万円から825万円の範囲で毎年異なっていた。(4度目の契約期間満了以前の同年11月20日)→ Xに対し、有期雇用契約は更新しない旨を通告(同年12月7日)→ 契約を更新しない理由として書面をXに交付 → 本件雇止めの理由を詳細に記載した書面をXに交付して納得を得ようとしたが、Xはその受領を拒否 → 有期の契約社員であった原告Xが、使用者である被告Y社に対し、Yが行った更新拒絶の意思表示はXの雇用継続への合理的な期待を裏切るもの(①②の結論)→ 本件雇止めは有効 → 本件有期雇用契約は平成21年12月31日の経過をもって終了したものというべき
① 地位確認
② 上記更新拒絶の意思表示の後である平成22年1月分以降の未払い賃金などの支払い

労働条件 :平成18年4月当時、契約期間を同年12月31日まで(年棒)→ 800万円(業務内容)→ クリエイティブディレクター(CD)

書面 :CDとしてのプロジェクト遂行力、チーム統括力にかけていること、X の行為に起因する顧客などからのクレームが発生したことなど → Xは業務を遂行する能力が十分ではないと認められる。


(考察)

解雇権濫用法理の類推適用 :本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるためには → 本件有期雇用契約による雇用継続に対するXの期待利益に合理性があることが必要 → 合理性の有無

合理性の有無 :総合考慮し、これを決するのが相当(本件)→ 雇用継続に対するXの期待利益に合理性があるとは言い難い。→ 本件雇止めに解雇権濫用の法理を類推適用する余地はない。

①当該雇用の臨時性・常用性 :当初の応募対象であったコピーライターではなく、CDという職種で採用された経緯、Xの年齢など(Yとの雇用契約が長期かつ安定的に継続さえれることに対して)→ それなりの期待を抱いていたことは否定できない(一方)→ CDという職務は、本来常用というよりも、むしろ臨時的な性格を有しているものと認められる。

②更新の回数 :Yは、CDにつき1年ごとの嘱託契約社員向きの業務であると位置づけ(Xに対して)→ その採用面接時はもとより入社直後のオリエンテーション等において、その旨を明確に説明(雇用継続に対する期待利益を抱かせるような言動)→ 形跡はうかがわれない。

③雇用の通算期間 :更新手続きの回数はわずか3回にとどまっている。(通算期間)→ 4年に満たない。

④契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる言動・制度の有無 :各契約期間の成果などに関する評価資料に基づき → Xとその上長との間において面談を実施 → これを踏まえて年棒の額などを決定 → Xとの間において有期雇用契約書を取り交わしている。(更新手続の管理)→ 厳格に行われていたものといい得る。

労災保険の不支給

平成24年4月23日晴れ

本日は、就業規則を作成した会社へ、従業員への説明会を行ってきました。

アンケート用紙を従業員へ配布し、今後従業員からのアンケート用紙の回収待ちです。

どんな質問や意見が寄せられるかが不安でもあり、楽しみでもあり、私の一番好きな瞬間です。

さて、今回の判例は、労災保険の給付請求を不支給とした案件です。

業務起因性について、自宅での仕事についても時間外労働と認めた事案としては、有効なものであると思います。


(事件概要)
同年7月2日早朝、リビングで胸を押さえてうつ伏せに横たわっているKをXが発見 → 救急搬送したが、既に心肺停止の状態 → 前日の午後11時頃に死亡したものと推定 → Xは、Yに遺族補償給付請求(Kの死亡前1か月の時間外労働)→「脳血管疾患及び虚血性心疾患など(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」→ 目安とされる100時間を大きく下回っている。→ 自宅での書類作成は量的にも質的にも過重なものとは言えない。(不支給とする本件処分)→ 労災保険審査官への審査請求、労働保険審査会への再審査請求も棄却 → 業務外としたY労基署長の遺族補償不支給処分の取り消しを、Kの妻の原告Xが請求 → 本件処分の取り消しを命じる。

日常業務 :押し出し機と仕上げ機を準備し、操作してチューブを製造する作業が全体のおよそ8割 → 梱包箱詰めや生産実績のPC入力作業がおよそ2割(原則)→ 午前8時30分始業、休憩を挟み17時30分就業で勤務(平成10年4月以降)→ 生産量の増加のため、夜間(15時から24時)の交代勤務を実施 → Kも4月中に6日間の夜間勤務(その後)→ Kは夜間勤務を担当しなかった。(時間外労働)→ 同年5月は約26時間、6月は約68時間(同年11月)→ 社内だけでなく自宅へ持ち帰ってこれらの書類を作成


(考察)
死亡の業務起因性 :Kの従事業務の内容、KがISO対応業務の完成期限を7月末として作業標準シート74通、機械操作マニュアル3通を作成 → Kの自宅作業時間の正確な記録は存しない。(Kが作成した文書の内容などから推計して算出せざるを得ない。)→ 作業標準シートが1通20分、作業標準書が1通10時間、機械操作マニュアルが1通5時間程度必要(合計)→ 約49時間40分(Kの日記の記載や同僚の証言など)→ Kは発症前1か月の間にその約95%の作業を行う。(そのうち70%)→ 自宅で行ったものと推計(KのISO対応業務のために自宅で行った作業)→ 従業員がそれをせざるを得ない状況にあった。→ 明治の指示の有無にかかわらず業務性が認められる。→ 時間外労働として計算すべき(Kの発症前1か月の時間外労働時間)→ 自宅での業務も合わせると100時間を超える量的に相当に過重なもの(通常業務)→ 物理的・精神的に相当の負担を伴うもの

業務上の疾病 :業務と疾病との間に相当因果関係を要す。(相当因果関係の有無)→ 当該疾病などが当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき(労働者の素因などを自然の経過を超えて増悪させたと認められる場合)→ 相当因果関係を肯定するのが相当

一般論 :自宅での作業と社内での業務従事を同等に評価することはできない。(しかし)→ 期限まで短期間のうちに完成させなければならない。(精神的負担)→ 多忙な製造業務の作業に並行してISO対応業務を行わなければならなかった。(業務の過重性)→ 社内におけるものと同等の評価をすることには十分な合理性がある。

リスクファクター :本件疾病発症を引き起こした何らかの素因または疾患を元々有していた。(程度)→ 極めて低いものであった。(ほかに疾病発症に至る確たる増悪要因が見当たらない本件)→ 過重な業務によってAが有する何らかの素因または疾患をその自然の経過を超えて増悪させ本件疾病発症に至ったと認めるのが相当

安全配慮義務違反

皆さんこんにちは。
今日も怪しい天気が続いており、仕事がやりにくい日ですね。
今回は、アスベストによる被害に関しての事例です。
こういう事例を見ていると、労災保険だけではどうにも出来ない事が実際にあるのだと考えさせられます。


(事件概要)

亡Kは、被告Y社の下請会社の従業員として、昭和42年から平成18年までの約40年間、船舶の修繕作業に従事(平成19年8月)→ 良性石綿胸水と診断(21年8月頃)→ 中皮腫にり患(22年9月)→ 中皮腫により死亡 → X1らは、Kの訴訟承継人として、Yの安全配慮義務違反により、石綿粉塵に暴露(結果)→ 中皮腫などにり患しKが死亡 → 債務不履行又は不法行為に基づき、損害賠償を請求(結論)→ 以下の通りであり、損害額合計は4,624万5,952円と認められる。
<亡Kの被った損害額>
① 治療費 :7万3,695円
② 付き添い看護料 :164日間入院したことが認められ、付添看護費98万4,000円(1日当たり6,000円)
③ 入院雑費 :164日間の入院が認められ、少なくとも9万円
④ 休業損害 :治療のため、平成19年8月30日から同22年9月6日まで3年余りの期間(同19年1月から8月)→ 月額27万5,865円の収入を得ていた。(り患していない場合)→ 治療期間中949万1,760円(少なくとも月額26万3,660円)の収入を得ることができたことが認められる。
⑤ 逸失利益(本来得られるべきであるにも拘らず、不法行為や債務不履行などで得られなかった利益を指す。) :り患していなければ、平成19年当時の平均給与月額27万5,865円×0.4(生活費控除)×12か月×6,463(同22年9月時点での亡Kの就労可能期間8年間に相当するライプニッツ係数)=855万7,994円
⑥ 入通院慰謝料 :治療のために合計5か月間入院し、合計133日間通院(入通院期間に加え)→ 中皮腫には一般的な治療法がないことなど一切の事情を考慮 → 亡Kの通院慰謝料の額は361万円とするのが相当
⑦ 葬儀関係費 :98万5,538円
⑧ 死亡慰謝料 :亡Kが死亡するに至った経緯 → 安全配慮義務違反の内容など一切の事情を考慮 → 2,500万円とするのが相当
⑨ 労災支給分 :中皮腫り患などに基づいて休業補償などとして674万7,035円を得たことに争いがない。
⑩ 弁護士費用 :420万円
⑪ 過失相殺 :喫煙が中皮腫の原因となることを認めるに足りる証拠はない。

労災保険 :中皮腫り患などについて休業補償などを受給

原告X1からX4 :Kの妻と子であり、Kの相続人

訴訟上の因果関係の立証 :一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討 → 特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明すること(判定)→ 通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りる。(判決)→ Kの石綿粉塵暴露と、その死亡との因果関係を認めた。→ 本件製造所で約40年間にわたって石綿に暴露していた一方、他にKが石綿に暴露する機会があったとは認められない。(本件全証拠)→ Kの本件製造所内での石綿暴露が中皮腫り患の原因であることと矛盾すると考えられる特段の事情は窺われない。→ Kの石綿暴露と中皮腫り患との間には、因果関係が認められる。


(考察)

安全配慮義務違反 :元請会社の直接の労働契約関係にない下請会社従業員に対する安全配慮義務(労働契約上の使用者)→ 支配下にある労働者に対し、労働者の生命及び健康などを危険から保護するよう配慮する義務を負っている。(安全配慮義務)→ ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの(元請会社が下請会社の労働者に対して実質的に支配を及ぼしている場合)→ 変わらないというべき(本件)→ Yの管理する本件製造所で船舶の修繕作業に従事 → Aの従業員はYの定めた本件安全規則…等を順守することを義務付けられていた。→ Yの従業員が、現場監督を務め、Kを含む作業員に対して作業や安全管理などについての指示(作業状況把握のための巡回を行っていたこと)→ 下請会社の従業員は、Yの作業員と同様に、Yによって作業などを管理されていた。→ YはKに対し、実質的に使用者に近い支配を及ぼしていたというべき → Yは、Kに対して信義則上、安全配慮義務を負っていたというべき(判決)→ 昭和42年頃、石綿の有する危険性を認識できた。→ 健康被害を被る恐れがあったことを予見できた。(同年以降、安全配慮義務の具体的内容)→ 石綿粉塵を吸引しないようにするための措置を怠っていた。(結果)→ Kは、本件製造所において石綿粉塵に暴露したものというべき → Kに対する安全配慮義務違反に基づく責任を免れない。
<安全配慮義務の具体的内容>
(ア) 石綿粉塵の生じる作業とそうでない作業を隔離するなどして可能な限り作業員が石綿粉塵に接触する機会を減少できるような作業環境を構築(加えて)→ 作業場に堆積した粉じんなどが飛散しないように撒水等をする設備ないし体制を整える義務(作業環境管理義務)(現状)→ 粉じん作業と非粉じん作業の隔離を徹底せず、粉じん作業によって生じた粉じんの飛散を十分に防止しなかった。
(イ) 作業員に対して防塵マスクを支給、その着用を支持指導(作業員の粉じんマスク着用を徹底)→ 粉じんの付着しにくい防護衣などを支給 → 作業後には必ず粉じんを落とすように指導する義務(作業条件管理義務)(現状)→ 防塵マスクを支給せず、着用を徹底せず、防護衣等を支給しなかった。
(ウ) 作業員にも石綿粉塵の危険性を認識させるため、必要な安全教育を実施する義務(健康管理義務)(現状)→ 必要な安全教育をしなかった。

Yの予見義務 :生命・健康という被害法益の重大性にかんがみ、安全性に疑念を抱かせる程度の抽象的な器具であれば足りる。→ 必ずしも生命・健康に対する障害の性質、程度や発生頻度まで具体的に認識する必要はないというべき(本件)→ 遅くとも第9回国際癌学会の結果が報告された同42年ころまで → 石綿が発がん性を有し、中皮腫とも強い関連性を有しているとの認識が相当程度深まっていた。(昭和42年ころ)→ 石綿が人の生命、身体に重大な障害を与える危険性があることを十分に認識することができる。→ 実際に作業中に石綿が飛散することがあった。→ Kを含む作業員が石綿に暴露することによりその生命、身体に重大な障害を与える危険性があることを十分予見することができる。

派遣労働者の契約終了

平成24年4月10日、今日は入園式で一日仕事という仕事をせず、子供との時間を過ごしました。
本当に子供の成長の早さには驚かされるばかりです。

今日は、話題の派遣事業に関する判例です。
リーマン・ショックの影響で派遣切りが行われ、これまでの判例と同様に黙示の労働契約に関しては、否定されています。
しかし、自分のこれまでの知識の中で、派遣先に対して、派遣元と共に共同不法行為として損害賠償を求めた判例はこれが初でした。




(事件概要)
平成20年11月初めの時点、リーマンショックによる世界同時不況の影響(21年1月)→ 各派遣会社との派遣契約を解約し、解消する方針を急遽決定(平成20年12月2日)→ Y2は、Y1から中途解約の通告があったことを理由に、X3を含む34名の派遣労働者に対し同月末日をもって解雇する旨を通告 → 受注高の減少によるとの簡単な説明をしたのみ → 具体的な説明もせず、雇用継続や就業機会の確保に向けた努力や配慮の姿勢を示したりすることもなかった。(Y3)→ Y1に対し、解約時期について交渉を行うとともに、X2らに早期退職になる旨通告(X2との話し合いの結果)→ 有給消化を消化、合意退職扱い(X2に対し)→ 単発の仕事であれば新たな派遣先を紹介することができる旨申し出た。→「結構です。自分で探します。」と答えたことから、新たな派遣先を紹介することはなかった。(Y4)→ Y1に対し、中途解約の撤回を申し入れる。(翌2日)→ 解雇せざるを得ない旨伝えた。(同月11日)→ 再就職の支援に向けてできる限りの努力をする姿勢 → 訴外J社の正社員の求人募集の情報を得て、X1に紹介 → 応募書類の提出もしなかったため、Y4が詫びることになった。→ 被告派遣会社Y2・Y3・Y4社(Y2ら)から被告Y1社に派遣労働者として派遣される形式で就業していた原告Xら(平成21年1月9日)→ X1(同月31日)→ X2(同年2月19日)→ X3につき、それぞれY2らから解雇(X2は合意退職扱い)→ Y2らは名目的雇用主にすぎず、X1らの実質的な雇用主はY1 → X1らとY1との間に黙示の雇用契約が成立 → Y2らによる解雇も実質的にY1社が主導して行ったもの → X1らの解雇は解雇権の濫用に当たる。(Y1に対し)→ 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金の支払いをそれぞれ求める。(X1らを解雇したこと)→ X1らの雇用契約上の地位を不当に侵害するもの → Y1とY2らとの共同不当行為に当たる。→ 600万円の請求

Y2、Y3、Y4 :業務請負業、一般労働者派遣業、人材紹介事業等を目的とする株式会社 → Y1にも労働者を派遣


(考察)
黙示の雇用契約 :派遣元事業主が名目的な存在にすぎず、派遣先事業主が派遣労働者の採用や解雇、賃金その他の雇用条件の決定、職場配置を含む具体的な就業態様の決定、懲戒などを事実上行っている。(派遣労働者の人事労務管理など)→ 派遣先事業主によって事実上支配されているような特段の事情がある場合であることを必要とする。(X1らのY1の事業所における就業)→ 実態としても労働者派遣 → X1らにおいても雇用主はY2らであるとの認識をもって就業 → 派遣労働者の人事労務管理などを事実上支配していたような事情は窺えない。→ 黙示の雇用契約が成立するといえる事情は認められない。

共同不法行為の成否 :中途解約は、法的にX1らの雇用主の地位にないとはいえ、著しく信義にもとるもの → 不安定な地位にある派遣労働者の勤労生活を著しく脅かすもの(Y3)→ 解約日を9日間延長するとともに、有給休暇の消化、自己都合による欠勤の場合にも給与相当額を補填 → 考慮しても、派遣先事業主として信義則違反の不法行為が成立する。→ 慰謝料の支払いが命じられた。(Y2)→ 自ら雇用主として契約責任を果たすための真摯な努力をすることを怠った責任は重い。→ Y1の行為と共同不法行為を構成 → 精神的損害に賠償責任を負うと判断(Y3,Y4)→ 派遣元としてできる限りのことをしていた。→ 不法行為を成立することを否定

性的行為を行った准教授に対する懲戒処分

平成24年4月1日、今日はエイプリルフールでしたが、日が変わってしまったので、もう嘘はつけないですね。

今回は、停職処分を行った大学の話です。これだけ問題を起こした准教授に対して、懲戒解雇でも良いのではと思う私自身に対して、判決は次の通りでした。

少し残念な結論を見た気がします。

ただ、就業規則の取り決めについては、勉強になる話を頂くことができました。


(事件概要)
平成20年11月、週刊誌に被告Y大学の准教授である原告Xが、新入生歓迎会の後、帰ろうとしていた女子学生Aを自らの研究室に連れ込んでレイプをした旨の記事がXの実名入りで掲載(臨時教授会)→ Xの懲戒処分について審議を行った結果、Xの行為は大学の名誉または信用を傷つけ、また、大学の秩序、風紀または規律を乱したもの(就業規則37条1項5号、6号の懲戒事由に該当)→ 同条2項3号の停職6か月の処分を行うことが相当であるとの決議(不服審査委員会)→ 同様の決定(平成22年3月17日)→ Xに対し、停職6か月の懲戒処分を発令(Xの主張)→ 同処分の無効確認並びに停職期間中の賃金478万余円などの支払いを求めるとともに、不法行為に基づく慰謝料220万円などの支払いを求めた。(不法行為)→ Yに故意または過失があったとは認められない。(懲戒処分の公表)→ Xの氏名を特定しておらず、公表の内容も処分事由を要約して行ったに過ぎない。→ 不法行為責任が否定 → Yの裁量を逸脱した違法があるとしてこれを取り消した。(しかし)→ 不法行為に基づく慰謝料請求は棄却

(考察)
主張① 平成12年5月の時点、Yが認定したXの行為を懲戒する規定は存在しなかった。→ 現在の懲戒処分に関する規定をその制定以前の行為に適用することはできない。(判決)→ 法人化前のQ大学から法人化後のYに勤務するようになった際、別に辞令の交付を受けた事実は窺われず(法人化前にXが行った行為に対する就業規則の適用に関して)→ XとY間において別段の合意がされた事実も認められない。(Xは、Yが法人化される前に行った行為)→ 就業規則37条1項各号に該当する事実が明らかになった場合 → 同条2項各号に定めるところに従って懲戒処分を受けることについて合意したものと認めるのが相当

主張② Yが認定した「女子大学院生と深夜かなりの時間、二人きりで研究室で過ごした」という事実は、仮にそのような事実が明らかになったとしても、「性交渉が疑われる」ものではないから、懲戒事由に当たらない。(判決)→「研究室は、教育及び研究のための施設として教員に使用を許可しているもの」→ 学生が安心して教育を受け、研究を行うことができるように配慮すべき立場 → 自ら、深夜に大学院生であるAを研究室に誘い、密室である研究室において性交渉の事実をうかがわれるような状況を作り出した行為 → 就業規則所定の懲戒事由に該当 → 就業規則37条1項5号、6号に該当

主張③ Yが、不服審査手続きにおいて、Xの代理人弁護士の同席要求を許さなかったこと、および、Xに反論の機会が与えなかったことは、手続上、違法である。→ 不服審査手続は、内部手続きである。(不服審査手続きに関する規定)→ 代理人の出席を認める規定はない。(Yが代理人弁護士の同席を認めなかったとしても)→ 手続きとして不相当であるということはできない。→ Xは事情聴取において十な反論の機会が与えられた。(本件通知を受け取った後)→ 事情聴取を行うとして呼び出しを受けたにもかかわらず、2度にわたって欠席したことが認められる。→ 反論の機会が与えられなかった旨の主張は事実に反する。

主張④ 停職6か月の処分は重すぎるなどの理由から、Yのなした懲戒処分は違法であると主張 → 一定の非難は免れない。(平成10年4月にセクハラに相当する行為)→ 始末書を提出したにもかかわらず、その約2年後の12年5月に研究室において性交渉の事実を疑わせる状況を作り出している。(XがAと性交渉に及んだ当時)→ 配偶者がいたものであり、Xの行為は強い道徳的批判に値する。(事情聴取)→ Aとの性交渉も同意の上であれば問題ないとの開き直りとも受け取れる態度を示していた。→ 停職処分を選択したこと自体は相当(本件処分以前)→ Xに懲戒処分歴は窺われない。(一方)→ Xは同僚教員からも非常に有能な研究者と認められる存在 → AがXから交際を強要されたような事実も窺われない。(12年5月から約8年半が経過した時点)→ 引き続きXがYの准教授の地位にあることを考慮 → 記事が公表されたことによるY大学の社会的信用の低下は限定的なものに留まる。(停職期間中)→ 賃金の支払いがなされないのみならず、Yの施設の利用もできない状態 → Xが被る不利益も大きい。→ 停職期間としてはせいぜい3か月程度にとどめるのが相当(停職期間を6か月間)→ Yの裁量を逸脱した違法があるというべき(本件処分)→ 相当性を欠き、Yの懲戒権を濫用したものとして、違法、無効であるというべき
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