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私的使用による損害賠償

平成24年5月7日

今日はばたばたした一日でした。雨も降ったりやんだり大変でしたが、それ以上に連休が続いた後だからか、電話が鳴りやまずに、朝から頭が痛かったあ。

本日の判例は、取締役の私的流用に対する損害賠償に関する判例です。
役員の裁量権を逸脱・濫用したかどうかが争点となっていますが、簡単な話が完全な私的流用については、損害賠償責任を認めることが出来るという考え方で大丈夫なような気がしました。

僕としては、会社側が、本件役員が退職するまでの間、私的流用に気付かなかったのか、気付いていたのであれば、それまでに対策をとることが出来なかったのか?という事に、もう少し焦点を置いてもらえたら良かったと思いましたが、皆さんは如何でしょうか。



(事件概要)

被告Yは、常務取締役に就任し、X社の資金繰りや経理の全般を統括(21年10月)→ Xを退職(訴え)→ Xは、Yの関与のもとでなされた行為に関して、YがXに無断で自らの利を図る横領・背任行為に及んでいたと主張 → Xが同社の負担額相当の損害を被ったとして、民法709条または会社法423条に基づいて、その賠償を求める。

<無断で自らの利を図る横領・背任行為>

① 本件各クレジットカード(1から5枚)をXに無断で作成し、使用したか否か → 本件各クレジットカードによる給油が業務によらないものか(判決)→ 2から5は、Yの家族が使用する本件車両3から5の給油のために使用 → Xの業務に使用することが予定されないYの家族が使用する車両にXの負担により給油をすることがYの有する裁量を逸脱・濫用するもの → 給油代金相当額について損害賠償請求を認容(クレジットカード1)→ XとYとの間には、YがXへの通勤に使用する車両について給油することが出来る旨の合意が存在 → 損害賠償請求を棄却

② YがXの締結した生命保険契約について詳細な説明をしたか否か → それが不法行為や任務倦怠に当たるか否か(保険契約1及び2)→ 経営者保険であることから、締結したこと自体が直ちにYの有する裁量を逸脱・濫用したものとはいえない。(保険契約の締結に際して)→ 各契約書にX代表者自らが実印を押印 → 逸脱・濫用したものとはいえない。→ 損害賠償請求を棄却(詳細な説明がなかった場合)→ そのこと自体が不法行為に当たるとすることはできない。

③ YがXの締結した医療保険契約をXに無断で締結したか否か → 同②

④ YがY所有の車両を業者に売却して締結された本件車両1についてのファイナンスリース契約などをXに無断で締結したか否か(車両売買契約書及びリースバックするための業者との売買契約書)→ X代表者自らが実印を押印 → 代表者自身がリース契約の締結を承認したといわざるを得ない。→ 逸脱・濫用するものとはいえない。

⑤ 本件車両1から5がXの業務に使用されない車両であったか否か → その整備など 代金をXが負担すべきものとする合意の有無(車両1及び2)→ リース契約に基づいてXが保有するもの → 整備など代金の支出についてYの有する裁量を逸脱・濫用するものとまで評価することはできない。(車両3から5)→ もともとXの業務に使用されることが予定されない車両 → 裁量を逸脱・濫用するものであることは明らか → 整備費などについて損害賠償請求を認容(車両1にかかる整備代等代金とは認められない部品代及び修理代金の返還分)→ 整備代など代金をXに負担させておくことなどがYの有する裁量を逸脱・濫用するものであることは明らか → 損害賠償請求を認容

⑦ YがDVDチューナーナビTV一式を本件車両2にXに無断で取り付けたか否か(Yが通勤に使用する車両2)→ 本件ナビを設置する必要性は乏しく、その代金をXのものとして社内手続きを進めるという欺罔的な手続きに及んでいる。→ 裁量を逸脱・濫用するものと言わざるを得ない。→ 設置代金相当額の損害賠償請求を認容

⑧ YがX使用車両のタイヤホイールをXに無断で持ち去ったか否か → 車検の際に社用車としては特異なホイールであったものを取り替える。(その後)→ 廃棄 → このような経緯によるホイールの廃棄をもってYの有する裁量を逸脱・濫用したというべき余地はない。→ 損害賠償請求を棄却

⑨ YがXに無断で業者に自宅の除・排雪を依頼したか否か → Xの依頼していた業者に対してYの除・排雪を依頼 → Xにその代金を負担させることがYの有する裁量を逸脱・濫用するものであることは明らか → 損害賠償請求を認容

⑩ YがX名義の3枚のETCカードをXに無断で作成し、使用したか否か、本件各ETCカードの使用が業務にならないものか → Yが私的用途に使ったと認められる部分に限って、逸脱・濫用したものと評価できる。→ 損害賠償請求を認容

⑪ YがXに無断でタクシーチケットを持ち出したか、タクシーチケットが業務に使用されたものではないか → タクシーチケットの使用はYの裁量に委ねられていたものといわざるを得ない。→ Yが業務ではなく私的用途に使用するなどその有する裁量を逸脱・濫用したものと認められない限り、使用を直ちに違法と評価することは出来ない。(少なくとも)→ YがXに支払った額を超える一定の額についてYが私的用途にタクシーチケットを使用したものと認めることはできない。→ 損害賠償請求を棄却


(考察)

経理財務関係の業務に関する裁量 :Yは、他社で経理などの業務に従事 → 独立行政法人で株式会社の上場に携わったりするなどの経験を持っている。→ X代表者から同社への入社を強く要請(採用時の年収)→ 当初の提案を上回る本人希望700万円(採用後)→ Xにおける経理財務の全般を統括 → Xから深く信頼されていた。(その経費などの支出を含めた経理財務関係の業務)→ 一定の裁量を有していた。→ Yが行った具体的な経費などの支出が違法と評価されるのは、当該経費などの支出がYの有する裁量を逸脱し、濫用したものと認められる場合である。(本件)→ Yが提出する経理関係書類に対する決裁の実態 → Yに対して経費の支出等について具体的な制限が設けられた事実を窺わせるような証拠がない。(最終的な決裁権)→ X代表者に留保されてはいるものの、その経費などの支出を含めた経理財務関係の業務について一定の裁量を有していた。(事前に了承を得ることがなかったとしても)→ ただちに当該経費などの支出が違法との評価を受けるものという事はできない。

民法709条 :故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

会社法423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)
イ) 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

ロ) 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

ハ) 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。
① 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役
② 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役
③ 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)
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