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客待ち待機時間は労働時間に該当するか否か

平成24年5月31日、今週は本当に忙しい一週間でした。明日もありますが・・・・。

生命保険で大人気だった商品が5月中で終了という事で、入りたいと言ってくれた方々全ての方を一週間で回り、やっと本日で終了!

さて、久々に判例を読みました。

今回は、割増賃金に関する判例です。

待機時間が労働時間に該当するかどうかが争点となり、やはりロいう同時間として認められました。

ただ、労働協約を作成していたにも関らず、否定されたところがポイントでしょうか。



(事件概要)

被告Y社のタクシー乗務員として雇用されていた原告X1およびX2(X1ら)が、次の基準に基づいて、労働時間からカットされた30分を超えるYの指定場所以外での客待ち時間分の賃金が未払いであるとして、これに該当する賃金(未払い時間外労働割増賃金および深夜労働割増賃金)およびその遅延損害金並びに労基法114条に基づく付加金及びその遅延損害金の支払いを求めた。(判決)→ 満額認容

<Yにおける労働時間のカットの対象とならない待機時間に関する基準>
a. 日曜、祝日の待機についてはカットしない。
b. 平日の出勤から午前12時までの待機についてはカットしない。
c. 待機場所が、東洋ホテル、都町周辺、タクシー協会が設置しているタクシーベイ、大銀ドームの場合、および婚礼待機、配車による待機、乗客の要請による待機については労働時間のカットはしない。
d. 売上月額35万円以上の場合、労働時間はカットしない。
e. 売上日額が、当直以外の勤務の場合2万7,000円以上、当直勤務の場合3万円以上あれば当該日については労働時間はカットしない。

<Yの主張>
(i) 労働時間のうち正当な労務提供と認められない部分については、昭和40年代から労働時間カットを実施
(ii) いかなる場所が労働時間カットの対象となるかについては、X1らも所属する労組との間で協議を重ね、組合勉強会についても、組合員に周知徹底がなされていた。
(iii) 52年7月20日に締結されたYと組合との間の労働協約 → 早退・遅刻、サボタージュ、労務提供をしない者及び組合用務について、労働時間ごとに定められた水揚げに達した時間は労働時間カットの対象外とする旨の規定
(iv) 労働時間カットの対象とされる時間は、信義則によって債務の本旨に従った労務の提供がないもの → ノーワーク・ノーペイの原則により賃金カットを行ったもの
(v) 特に大分駅構内での客待ち待機は極めて非効率 → 行わないように再三にわたり指導 → X1らはこの指揮命令を無視してこれを繰り返していた。

<争点>
労基法上の労働時間 :労働者が使用者の明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の基に置かれている時間(タクシーに乗車して客待ち待機をしている時間)→ 30分を超えるものであっても、その時間は客待ち待機をしている時間であることに変わりない。(Yの具体的指揮命令)→ 直ちにX1らはその命令に従わなければならない。→ X1らは労働の提供ができる状態 → 30分を越える客待ち待機をしている時間が、Yの明示又は黙示の指揮命令ないし指揮監督の下に置かれている時間であることは明らか。

労基法上の労働時間に該当するか否か :当事者の約定にかかわらず客観的に判断すべき → 労働協約の規定があったとしても、Yの指定する場所以外の場所での30分を越える客待ち待機時間が労基法上の労働時間に該当しなくなるわけでない。(大分駅構内などにおける30分を越える客待ち待機時間)→ 労働時間として否定されるほど、あるいは、およそ労働と認められないほどの信義則違反がX1らにあることは認められない。

争点①が認められた場合に、未払い賃金額はどれだけか :労働時間からカットされた30分を越えるYの指定場所以外での客待ち待機時間分につき、未払賃金(未払時間外労働割増賃金および深夜労働割増賃金)および遅延損害金の支払いが認められた。

付加金の請求は認められるか。 :Yは、時間外労働割増賃金、深夜労働割増賃金の支払いを怠っている。(労働時間に該当するかどうかの判断)→ 労基法114条所定の付加金の支払いを免れることはできない。
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うつ病羅患・自殺と業務起因性

平成24年5月27日、本日はお客様のコンペでゴルフをしてきました。

結果は、下位から3番目でしたが、良い運動が出来き、楽しかったです。

今回の判例は、業務起因性であり、結局のところは業務起因性を認める結果となるのですが、相当因果関係の判断基準として、社会通念上、精神疾患を発症させる一定以上の危険性の有無、同種労働者の中でその性格傾向が最も脆弱である者を基準とするのが相当というところに、若干疑問はできるが、今のところ、これに従わないといけないのだと思います。


(事件概要)

本件は、原告Xが、Xの子でありJ小学校に勤務する教員であった亡Kが自殺したのは、上記教員としての過重な公務によりうつ病に羅患し、引き続く公務による過重な心理的負荷によりうつ病を増悪させたことによって引き起こされたものであると主張(地方公務員災害補償基金(Y)静岡県支部長に対し)→ 亡Kの相続人として地方公務員災害補償法に基づく公務災害の認定を請求(平成18年8月21日)→ 公務外の災害であると認定する処分 → 被告Yに対し、同処分の取り消しを求めた。

勤務状況 :おおよそ午前7時に出勤し、授業準備を行い、午前8時頃から教室で授業などを行った後(午後5時頃)→ 職員室に戻り、午後6時ないし7時頃には帰宅

質的起因性 :児童Nを中心として、いじめ、カンニング等のトラブルがたびたび発生 → 授業も騒がしく、亡Kは、初任者研修資料に、「私が話していたり、だれかの発表中に大きな声で話し始める子が数人いて、その子たちが黙るまで待つようにしたら、ほとんど授業が進まなかった」「私の注意はほとんど聞かず、大騒ぎが続いて、どうしたらいいかわからない。疲れきった」等と記載 → A教論から、教室内で騒いでいる児童がいたにもかかわらずそれを注意しなかったことを指摘 →「給料もらっているんだろう、アルバイトじゃないんだぞ、ちゃんと働け」などと叱責 → Nを中心とするトラブルは終息することはない。(平成16年9月21日)→ Nが他の児童の腕を噛み、それに対して亡Kが噛まれた児童の母親に電話をするという対処(同月28日)→ 亡Kは、児童Nの母親から、「Nの事ですが、4年生になってから、頻繁に先生から電話をもらうようになりこちらも精神的に参っています」「先生はちゃんと子供の話を聞いていますか?」「先生の方も過剰に反応しすぎだと思います。もう少し先生が厳しく子供たちに接して頂きたいです」「今のままの状態では学校へ通わせることを考えなければなりません」と記載された手紙を受け取った。(翌日の同月29日午前5時頃)→ 駐車場に停車した自家用車内に火を付け、焼身自殺



(考察)

相当因果関係 :単に公務が他の原因と共働して精神疾患を発症または増悪させた原因であると認められるだけでは足りず、当該公務自体が、社会通念上、当該精神疾患を発症または増悪させる一定程度以上の危険性を内在または随伴していることが必要(判決)→ 業務とうつ病発症、増悪との相当因果関係の存否を判断(うつ病に関する医学的知見)→ 発症前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心身的負荷の有無や程度、労働者の基礎疾患などの身体的要因や、うつ病に神話的な性格などの個体側の要因などを具体的かつ総合的に検討 → 社会通念に照らして判断するのが相当(相当因果関係の判断基準)→ 社会通念上、精神疾患を発症させる一定以上の危険性の有無 → 同種労働者の中でその性格傾向が最も脆弱である者を基準とするのが相当(判決)→ 勤務状況のみからは、直ちに公務の過重性を導く事実を認めるのは困難 → 指導に困難を要する複数の児童らの問題が当初から顕在化 → 数々の問題行動が発生していたというべき(その程度)→ 亡Kが注意して収まるといったものではない。→ 児童を身体的に制圧したり、保護者からの要請・苦情への対処をしたりするほどに重大 → 個々の問題ごとにみれば、教師としてクラス担当になれば多くの教師が経験するもの(亡Kの場合)→ 数々の問題が解決するまもなく立て続けに生じた点に特徴がある。(かかる状況は改善される兆しもない。)→ 新規採用教員であった亡Kにとり、客観的に見て強度な心理的負荷を与えるものであったと理解するのが相当(こうした状況下)→ 当該教員に対して組織的な支援体制を築き、他の教員とも情報を共有したうえ、継続的な指導・支援を行うことが必要であるところ → 亡Kに対してかかる支援が行われたとは認められない。(精神障害)→ 公務に内在ないし随伴する危険の現実化として発症したものということが出来る。(相当因果関係)→ 肯定することが出来、本件自殺を公務外の災害と認定した本件処分は違法 → 取り消しを免れない。

イ) 私的要因 :亡Kに公務以外で特段の心理的負荷を発生させるような出来事があったとは認められない。

ロ) 精神障害 :亡Kは、平成16年4月に着任して以降、立て続けに公務により強いストレスにさらされ、これに対する適切な支援も受けられなかった。(心理的負荷)→ 新規採用教員として初めてクラスを担任することになったものを基準 → 相当に強度のものであったということが出来る。(他方)→ 亡Kには公務外の心理的負荷や精神障害を発症させるような個体側の要因も認められない。

症状の改善 :うつ病がいったん発症してもその後の心理的負荷が適度に軽減されてさえいれば、症状の改善によって自殺に至る可能性も減少するとみる余地がある。(しかし)→ 亡Kのうつ病発症後の公務による心理的負荷は、既に羅患していたうつ病を悪化させるものであったと言えても、心理的負荷を軽減させるものではなかった。→ 精神障害によって、正常の認識、行為選択能力が著しく阻害され、または自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で行われたものというべき → 亡Kの精神障害と本件自殺との間の因果関係に中断があったとは認められない。

平成24年5月26日、今日は天気が良いのに、子供が風邪で外に出れず・・・・。残念!

暇を持て余しながら、本日読んだ判例は、配置転換命令です。

いつもの通り、二つの内容(①就業規則の記載、②配置転換が権利の濫用に当たらないか)に争点が認められ、結局のところ、毎回と同様の判例が出た感じです。



(事件概要)

Xは、Yに入社後、大阪営業所の営業担当として勤務 → Yは、親会社からの売り上げ減少による人件費削減の指示を受ける。(平成21年3月23日頃まで)→ 削減対象の従業員を全体で9名とすることを決定(同日以降)→ Yの東京・大阪の各事務所において、個別の従業員に対する退職勧奨が開始(同月25日以降)→ Yは、4回にわたり、Xに対し退職勧奨に応じるよう面談 → Xはこれを拒絶し、自ら退職する意思はない旨回答(平成21年4月16日)→ Yは、Xに対し、同日付の解雇予告通知書により同年5月16日付で解雇する旨の意思表示(翌17日)→ Xは、Yに対し訴外労働組合に加入した旨通知 → 同組合は、Xに対する解雇の撤回を協議事項に掲げてYとの間で数回の団交を行った。→ Yは解雇の方針を撤回しなかった。(平成21年6月22日)→ 大阪地裁に対し、解雇無効を理由に地位保全及び賃金仮払いの仮処分申し立てを行った。(同年12月18日)→ 人員整理の必要性があるとは認められず、解雇権濫用 → Xの賃金仮払いの一部を認容する決定(本件処分決定を踏まえて)→ 解雇を撤回、本件仮処分に基づく賃金仮払いを行う。(平成22年2月22日)→ ①Xに対し、本件解雇を撤回、②22年3月1日より名古屋営業所の「輸出入カスタマーサービススタッフ」としての勤務を命ずる旨の辞令 → R社の100%出資にかかる日本法人であるY社が、従業員である原告Xに対してした同社の名古屋営業所への配転命令が無効 → XがYに対し、配転先である同営業所における雇用契約上の義務を負わないことの確認を求める。→ Xに対する解雇の意思表示行為が不法行為に該当する。→ 民法709条に基づく損害賠償の支払いを求めた。

配転命令 :Xは、1か月に1回程度、有給休暇を取得 → 病気の母親に付き添って病院に送り迎えしていた。(平成22年9月22日)→ 母親は死亡(配転命令に異議)→ 同年3月1日以降名古屋営業所において就労

名古屋営業所 :所長が不在のうえ、社員は7名の小所帯で、営業部門3名を支えるカスタマーサービススタッフ2名がいるという状況 → 輸出案件も1か月で10ないし20件程度と必ずしも多くなく、カスタマーサービスの部署しかなく、そこで輸入案件とともに輸出を取り扱って処理してきていた。(配転後)→ 大阪営業所におけるXの後任者はいなかった。→ 大阪から新幹線通勤をしていたが、交通費については、全額Yが負担

民法709条(不法行為による損害賠償) :故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

契約書 :平成18年11月にYと雇用契約を締結 →「本契約に基づく被雇用者の就労拠点は、大阪に所在するYのオフィスとする。→ Yの業務上の必要性に応じ、被雇用者は業務遂行のために転勤あるいは出張を求められる場合がある。→ Yは親会社、支社又は日本における関連企業またはそれに類するほかの場所へ業務遂行のために、被雇用者を配転あるいは出向させる絶対的な権利を有する。」との記載 → Xは、Yとの採用面接などにおいて、同条項の削除を求めなかった。→ 高齢の母親がおり、叔父も入院していること、家のローンがあることから大阪以外での勤務が困難である旨話をするなど、勤務地限定の合意があることを前提とした話をしていない。

解雇予告通知書 :同年5月16日付で解雇する旨の意思表示(解雇理由)→ 大幅な業績悪化に伴い全世界規模で組織を改編せざるを得なくなり、日本支社大阪事業所営業部においても剰員を生じたためと記載


(考察)

本件配転命令の適法性 :勤務地限定の合意があったか否か(上記契約書の通り)→ Yにおいては、最終的に従業員の同意を得ることはあるとはいえ、勤務場所を異にする配点が行われていたことからすると、Xが主張するような勤務地限定の合意があったとは認められない。→ 名古屋営業所の位置づけや同営業所においてXが従事した業務内容などを勘案 → 解雇を撤回し、Xが職場復帰するという平成22年3月時点において、あえてXを輸出案件を特化した、あるいは輸出案件もできるカスタマーサービススタッフとして同営業所に配転する必要性及び合理性は認めがたいと判断(Xの営業職としての資質)→ 問題があったとまでは認められない。→ 業務上の必要性及び合理性があると認めがたい本件配転命令は、権利を濫用した無効なもの → Xは、名古屋営業所において勤務する雇用契約上の義務を負っていないと判断(不法行為)→ Xの復職に当たって、不当な動機目的をもってなされたものと推認 → 損害賠償請求権を発生させるに足りる違法性を有している。→ 不法行為に該当(損害額)→ 社内規定では認められないにもかかわらず、Xが申請した新大阪名古屋間の新幹線利用にかかる通勤費を全額負担している。→ 配転に伴って、一定の配慮をしている。→ 配転命令後、毎日ほぼ定時に退社している。→ 大阪営業所で就労していた時と帰宅時間が著しく異なるとは認めがたい。→ 母親は平成22年9月22日に死亡、叔父は入院中であり、毎日介護する必要があるとはうかがわれない。→ 生活上の不利益はさほど大きいとは認められない。→ 精神的損害の慰謝料として50万円が相当

XのYに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の有無及び、その額 :人員削減の必要性について疑義(しかし)→ Yは、親会社の指示に従い人員整理に踏み切らざるを得なかった状況 → Yにおいて特段Xに対する不当不法な目的などがあったと認められない。→ Yは、整理解雇の有効性を十分に認識 → 整理解雇の有効要件毎にその充足性を慎重に検討して整理解雇を行ったと推認できる。→ Yの判断について明白重大な誤りがあったとまでは認めがたい。→ Xに対して、本件仮処分決定に従って金員を支払っている。(仮処分決定後)→ 解雇の意思表示を撤回 → XとYとの間の雇用関係が回復している。→ 損害賠償請求権を発生させるに足りる違法性を有していたとまで評価することはできない。

労働組合法上の労働者性

平成24年5月23日、本日はお客様の訪問時に面白い話題が出ました。

社会保険が高すぎるので、どうにかしたいという相談だったのですが、考えてみれば、そろそろ算定基礎届の時期ですよね。

また、バタバタするんだろうなと思います。

さて、本日は労働組合法上の労働者とはどのようなものを指すのかを争った判例です。

普段の労働者性を確認することと同様の内容を争っている所に目が行きました。



(事件概要)

X社が、Xと業務委託契約を締結して、その修理等の業務に従事する個人代行店が加入する上告補助参加人から個人代行店の待遇改善を要求事項とする団交を申し入れられる。→ 個人代行店はXの労働者に当たらないなどして上記申し入れを拒絶 → 団交に応じないことは不当労働行為に該当 → 団交に応ずべきことなどを命じる。→ これを不服として、中労委に対し再審査申し立てをした。→ これを棄却する旨の命令を受けたため、その取り消しを求めた。(最高裁)→ 全員一致で原判決を破棄する。→ 個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情があるか否か(個人代行店が労働組合法上の労働者に当たると解される場合)→ Xが本件要求事項に係る団交の申し入れに応じなかったことが不当労働行為に当たるか否かなどの点についてさらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。

団交内容 :平成17年1月31日、Xに対し、個人代行店が加入したことなどを記載した通知書とともに、最低保障賃金を月額30万円とする。→ 1日の就労時間を午前9時から午後6時まで、年間休日数は110日とする。→ 社会保険及び労働保険に加入すること → 業務の遂行上必要な経費はXが全額負担(その他)→ 労基法に準拠することなどを要求する書面を提出(本件要求事項)→ 数度にわたって団体交渉の申し入れ → Xは、本件支部に対し、その都度、参加人文化はXの雇用する労働者をもって結成された労働組合とは解されない。→ 参加人分会が出席する交渉および個人代行店に関する事項についての交渉は応じられないと回答(平成17年3月29日)→ Xの各申し入れに対する対応は労組法7条2号に定める不当労働行為に当たる。→ 本件団交申し入れにかかる団体交渉に応ずべきこと並びに謝罪文の手交及び掲示を求めて救済申し立て

・労組法第7条(不当労働行為) :使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。

① 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること又は労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること。ただし、労働組合が特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する場合において、その労働者がその労働組合の組合員であることを雇用条件とする労働協約を締結することを妨げるものではない。

② 使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと。

③ 労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。

④ 労働者が労働委員会に対し使用者がこの条の規定に違反した旨の申立てをしたこと若しくは中央労働委員会に対し第27条の12第1項の規定による命令に対する再審査の申立てをしたこと又は労働委員会がこれらの申立てに係る調査若しくは審問をし、若しくは当事者に和解を勧め、若しくは労働関係調整法 (昭和二十一年法律第二十五号)による労働争議の調整をする場合に労働者が証拠を提示し、若しくは発言をしたことを理由として、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること。


(考察)

ビクター製品に係る出張修理業務のうちXの従業員によって行われる部分は一部 → Xは、自ら選抜し、約3か月間のXが実施する研修を了した個人代理店に出張修理業務のうち多くの割合の業務を担当させている。(個人代理店が担当する各営業日ごとの出張修理業務について)→ Xが1日当たりの受注可能件数を原則8件と定め、各個人代行店とその営業日及び業務担当地域ごとの業務量を調整して割り振っている。(個人代理店)→ Xの上記事業の遂行に必要な労働力 → 基本的にその恒常的な確保のためにXの組織に組み入れられているものとみることができる。(本件契約の内容)→ Xの作成した統一書式に基づく業務委託に関する契約書及び各書によって画一的に定められている。(業務の内容やその条件など)→ 個人代行店の側で個別に交渉する余地がないことは明らか → Xが個人代行店との間の契約内容を一方的に決定しているものといえる。

個人代理店に支払われる委託料 :原則としてXが定めた修理工料などに一定割合を乗じて算定 → 形式的には出来高払いに類する方式が採られている。→ 個人代行店は1日当たり通常5件ないし8件の出張修理業務を行い、その最終の顧客訪問時間は午前6時ないし7時頃になることが多い(実際の業務遂行の状況)→ 修理工料などが修理する機器や修理内容に応じて著しく異なる。→ 仕事完成に対する対価と見ざるを得ないといった事情が特段窺われない本件において → 実質的には労務の提供の対価としての性質を有するものとして支払われている。

労働組合法上の労働者性 :出張修理業務を行う個人代理店について、他社製品の修理業務の受注割合、修理業務における従業員の関与の態様、法人等代行店の業務やその契約内容との等質性など、独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情がない限り、労働組合法上の労働者としての性質を肯定すべきものと解するのが相当(特段の事情)→ 出張修理業務を行う個人代行店が独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特段の事情の有無を判断するうえで必要な上記の諸点について審理が十分に尽くされていないものと言わざるを得ない。

労働者死亡に対する既往症と業務起因性の関係

平成24年5月17日、本日は、就業規則の作成に携わることとなりました業者へお伺いさせて頂きました。

余りにも、きっちりと時間外労働に対しても、退職金に対しても支払われており、脱帽した次第です。

また、今後の景気の悪化を考えて、先を読み就業規則を見直そうと考えられた事業主様を尊敬いたします。

ただ、余りにもキッチリとされすぎているため、何をするにも労働者にとって不利益変更となってしまうのが一番の問題であり、こちらとしても頭を悩まさないといけないと思いました。

さて、今回の判例は、労災保険の適用の有無について記載されております。記事の内容を見て、まず認められるだろうと考えていましたが、案の定労災認定されております。

時間外労働を80時間未満であるにもかかわらず、業務外での労働に起因する時間を含められている事については、今後の対策としては考慮すべき個所であると思いました。



(事件概要)
一郎(当時39歳、Z社の管理職員であり、労働時間の管理は受けていなかった。)は平成13年10月12日午前4時頃、心停止を発症して死亡 → 原告X(一郎の母)は、業務上の事由に起因するものであるとして、Y労基署長に対して労災保険法に基づく遺族補償給付の支給を求めた。(平成19年1月16日)→ Yは、本件不支給決定を行った。→ Xは、労災補償保険審査官並びに労働保険審査会に行政不服申し立てを行った。→ いずれも棄却 → 不支給決定の取り消しを求めた。

業務起因性 :当該疾病などの結果発生と業務などとの間に条件関係があるだけではなく、当該疾病などが業務などに内在又は随伴する危険が原因となって発生したという相当因果関係があることが必要(発症原因)→ 心停止の原因として挙げられる基礎疾患のうち、冠状動脈疾患であるとした。(剖検の結果)→ 冠状動脈狭窄度は10%程度(死亡発見時の状況)→ 既往の虚血性心疾患が本件疾病の原因となる基礎疾患として存在していたとも考え難い。(他方)→ 軽度の冠状動脈疾患が進行していたと認められる。→ 冠状動脈疾患が本件疾病の原因となるべき基礎疾患を構成していた可能性が高いと判断

心疾患における業務起因性の有無 :医学的知見を基礎(労働者が従事した業務)→ 客観的に見て、社会通念上、「基礎疾患としての冠状動脈病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ、当該心臓疾患の発症に至らせるほどの過重負荷を与えたものと評価できるか否か」という観点より判断


(考察)

業務の過重性 :過労すなわち睡眠時間の減少に直結する時間外労働の時間数を第一次的要素 → 勤務の不規則性、高速性、交代制勤務、作業環境などの諸要因や、業務に由来する精神的緊張の諸要素を総合考慮 → その有無・程度を判断する必要(判決)→ Zにおける一郎の業務は、同人の基礎疾患をその自然的経過を超えて著しく増悪させ得る程度の精神的・肉体的負荷のある過重な業務であった。→ 相当因果関係を肯定する判断に至った。

イ) 量的過重性(労働時間) :当該労働者の疾病が、業務などに伴う危険の現実化として発生したものであることが必要(危険責任の法理)→ 労働契約に基づき使用者の支配または管理下にあることに伴って発生するリスク(業務起因性の第一次的判断要素としての「労働時間」)→「就労のため使用者の指揮命令下にある時間帯」をいうものと解するのが相当(就労状況について検討)→ 労働時間の管理はされていなかったため、<a>から<c>の認定資料を用いる。→ <a>を基本と位置付けながらも、<a>は事後的な報告に留まる面があるから、逐次時刻を確認されながら記載された<b>の方が証拠としての価値が高い。(休憩時間)→ 一般の労働日については、1時間が確保 → 拘束時間から控除 → 休日出勤も同様(認定された時間外労働時間)→ 発症1か月前-約51時間、2か月前-51時間、3か月前-34時間、4か月前-68時間、5か月前-108時間、6か月前-46時間 → 6か月平均は59時間42分(関連性の検証)→ 1か月あたり45時間を超える時間外労働を行っていた事実は認められる。(しかし)→ 業務と発症との間に強い関連性が肯定される1か月あたり概ね80時間を超える時間外労働を行っていたものとは言い難い。(労働時間とは認められない時間帯)→ 業務との関連性においては濃淡があり得る。(以下①から④)→ 日常業務における負荷を増大させる要因 → 不規則な勤務ないし拘束時間の長い業務に準じて、業務起因性を検討するための一要素として考慮されるべき

  フレックスタイム勤務予定・勤務状況報告書

  ビルの退館台帳の記録(終業時刻が午後10時以降に及ぶ時と、休日出勤の場合)

  旅費・交通費などの精算書

 ① 一郎はZの管理職 → 休日に自宅などにおいて業務の一部を行う時間があったことが推測

 ② 会議や講演会の後の懇親会などを設定 → 出席することもあった。

 ③ 終業時刻は深夜の時間帯に及びことが稼働日数の3分の1程度 → 3時間を超える深夜勤務は月に一回程度 あったことが認められる。

 ④ 臨床開発を2つ兼任 → 厳しいスケジュール管理のもとでの業務遂行を求められる。(死亡当日)→ 会議 における発表が予定
 
 ⑤ 死亡直前の3日間の実労働時間は42時間(1日平均14時間)を超える労働に従事 → その密度も濃いもの

 ⑥ 発症4から6日前の3日間は連続して休日(しかし)→ パソコン履歴では、4日前には深夜午前2時45分頃ま で会議資料を作成した記録 → 休日において十分な休養をとっていたかについては疑問を挟む余地

ロ) 既往症 :既往の心筋虚血はみられないものの、冠状動脈疾患が進行していたと認められる。→ 冠状動脈疾患が本件疾病の原因となるべき基礎史観を構成していた可能性が高い。(しかし)→ 軽度のものに留まる。(本件発症の直前)→ その自然の経過により心停止を引き起こす寸前にまで増悪していたとはいえないことは明らか(健康診断)→ 発症因子が存在したことを推認させたるものはない。(基本疾患として有していた軽度の冠状動脈疾患の増悪)→ いつ心停止の状態に至ってもおかしくない状態にあったものとは認められない。

整理解雇の有効性

平成24年5月17日、今日は本当に暑くて、仕事をするのが辛かったあ。

今回の判例は、整理解雇の有効性についてです。

毎回の事ながら、四要件を満たしていることが必要であり、今回もこの要件について確認の上で、合理性なしと判断されています。



(事件概要)

平成22年3月時点の従業員数は600人余、そのうち東播工場勤務者85名(平成21年頃)→ 大規模開発プロジェクトの減少、大型公共工事の縮減、海外からの受注減など → 生産量が最盛期の20%程度に低下(21年12月末)→ X1に整理解雇を通告したことを契機に、組合分会が結成 → 分会からの労働協約締結や賃上げなどに関する団交要求に応じたものの、労働協約締結を拒否(平成22年2月)→ 主要取引先である2社からの新規発注が途絶えた。(平成23年1月)→ 生産量はかなり減少し、3月末で休止することを通告(希望退職募集した結果)→ 分会組合員21名、非組合員12名が退職し、さらに数名が退職(団交を要求)→ Yが団交に応じなかったため、労委へのあっせん申請、救済申し立て(結果)→ 3月になって団交に応じ、数度の団交(同年6月25日付)→ Yは解雇を譲らず、工場の保全と事後管理のための人員を除く28名に対して、就業規則に基づき、本件整理解雇を行った。→ 工場の操業停止を理由に債務者Y社を整理解雇された債権者(X1からX22)が、解雇無効を主張 → 地位保全仮処分及び本案一審判決言い渡しまでの間の賃金仮払い仮処分を求めた。(結論)→ 本件整理解雇を無効として、賃金仮払いを命じる。(退職金が振り込まれているとしても)→ 解雇の効力が争われている以上は用いることが出来ない建前 → その受領をもって保全の必要性を否定することはできない。(地位保全処分)→ 仮処分が任意の履行に期待するため実効性に乏しい。→ 雇用契約上の地位が国内滞在の要件となる外国人の場合や、技能低下など、特段の事情がない限りはその保全の必要性は認めがたいとして却下


(考察)

整理解雇の有効性 :労働者側に帰責事由がない一方、終身雇用を前提とする我が国の企業において整理解雇回避のための相応の努力をせず解雇することは信義則に反する。→ 整理解雇が合理的なものとして有効とされる。(整理解雇の4要件ないし要素)→ 人員削減の必要性があったかどうか、使用者が解雇回避努力を尽くしたかどうか、解雇の対象者の人選が合理的なものであるのかどうか、解雇の手続きが相当であるかどうかなどの観点から、慎重に検討する必要がある。(総合的に考慮)→ 労働契約法16条により解雇は無効 → 毎月の賃金仮払いを命じる。

① 人員削減の必要性 :Yは現に赤字で、それが継続する見込みを踏まえた創業の停止の判断 → 高度の経営上の必要性ないし合理的な運営上の必要性に基づくもの → 人員削減の必要性それ自体は認められる。

② 解雇回避努力 :Yが工場での社外工の削減、休業の実施、新規採用の取止め、希望退職者の募集を行った。(解雇対象者)→ 他部門から受け入れ不能という回答があった。→ 配点可能性を全く否定するものかどうかは疑問の余地がある。(個別的に)→ 配点の希望の聴取や具体的な配転交渉が行われた形跡がないうえ、個々の労働者にあらかじめ整理解雇基準を説明し、配転先の打診などをきめ細かく行うことが必要 → 組合側の拒否により不可能絵であったという事情も明確に認められない。→ 解雇回避努力が尽くされたとは言い難い。(加えて)→ 一部非常勤ではあるものの9名の社外工を残している。(工場以外)→ 新規採用を行っている。(給与や賞与面)→ 経費削減が行われているか疑問の余地がある。

③ 人選の合理性 :余剰人員を企業の再建という観点から削減するために行われる解雇である。(整理解雇の対象)→ 企業の再建にとって必要な人材かどうかという相対的判断によって行う。→ 残留者の人選基準が明示されたとは言い難い。→ 合理性が十分に裏付けられたとはいえない。

④ 解雇手続きの相当性 :十分に協議する義務(しかし)→ 誠実な交渉や譲歩もなく進め、その間、解雇対象者の個別な配転可能性を具体的に検討することもなく解雇に至った。(一定の情報を開示し、団交に応じたとしても)→ 解雇対象者ないし組合との間で誠実に協議・説明をなしたものとは評価できない。

年次有給休暇取得による不利益

平成24年5月16日、今日は朝から就業規則の作成に取り組んでいます。

今回は、お客様の就業規則の作成に当たり、皆勤手当を年次有給休暇の取得をした従業員に対しても支払わない方向で話が進んでいることから、法律的には規制がかけられていないまでも、判例でどのように提示されているかを検証してみました。

私自身、皆勤手当を支給しなければいけないという固定観念にとらわれていたため、今回の勉強は私の頭を見直すのにも良い判例を見る事が出来たと思います。



(事件概要)

原告4名は、被告に、タクシーの乗務員として勤務 → 被告は、乗務員が出番(月毎の勤務予定表に定められた始業から終業までの勤務単位)をすべて乗務した場合、安全服務手当9,000円を支給 → 年休権の行使を欠勤と同視(就業規則に基づいて、年休権を1出番行使した場合)→ 皆勤手当全額及び安全服務手当のうち4,500円の合計1万円を支給しない。(同じ月に年休権を2出番以上行使した場合)→ 上記に加えてさらに安全服務手当を4,500円支給しなかった。→ 年休権を行使した場合には行使しなかった場合よりも1か月最大1万4,500円を減額(訴え)→ 年休権の行使を理由に賃金の一部である安全服務手当及び皆勤手当を減額されたことは、労基法39条、136条に違反し、民法90条により私法上無効 → 減額分の支払いを求めて訴えを提起

労基法136条 :使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。

民法90条 :公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。


(考察)

年休取得を理由とする安全服務手当及び皆勤手当の減額・不支給が私法上有効であるか否か :労基法136条によれば、使用者が労働者の年休権行使を何らかの経済的不利益と結び付ける措置をとること → 経営上の合理性を是認できる場合であっても出来るだけ避けるべき → 同条はそれ自体としては使用者の努力義務を定めたもの → 労働者の年休権行使を理由とする不利益取り扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。(年休権を保障した労働基準法39条の精神に沿わない面を有することは否定できないが)→ その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休権行使に対する事実上の抑止力の強弱など諸般の事情を総合 → 年休権行使を抑制し、ひいては同法が労働者に同権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り → 公序に反して無効とはできない。(総合)→ 本件減額は、労基法39条および136条の趣旨から見て望ましいものではない。(しかし)→ 年休権行使を抑制し、同法が労働者に権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められない。→ 公序に反し無効であるとはいえない。

判決① 本件減額は、被告がタクシー事業者であり専ら営業収入により利益を上げている。→ 作成後の代替要員確保が困難(仮に確保できたとしても)→ 当該代替要員の常務が予定されていた別の出番が休車になってしまうという事情 → 車両の効率的な運航確保のために乗務員の出番完全乗務を奨励する目的で行われるもの → 原告ら乗務員の年休行使を一般的に抑制しようとする趣旨・目的があるとは認められない。

判決② 被告の賃金制度が一部歩合給制を採っている。(1か月あたり最大1万4,500円という減額分が当月の賃金総支給額の何%にあたるか)→ 各乗務員の営業収入に応じて異なり得る。(問題とされている減額分について)→ 対賃金総支給額割合がたまたま1.99ないし7.25%であるからといって、本権減額が乗務員に対して常に年休権行使の抑制に結びつくほど著しい不利益を課するものと断定できない。

判決③ 使用者として時季変更権を行使することが考えられるような場合でも、申請の通りに年休権を行使させる方向で運用されている。(年休権の行使の実情)→ 本件減額によって乗務員の年休権行使が一般的に強く抑制されているものとは認められない。

育児休業取得による復職後の降格、賃金減額

平成24年5月13日、今日は母の日でした。
皆さんは何をプレゼントされましたか?
私は、カバンをプレゼントし、子供と一緒に渡しに行きました。

さて、今回の判例は、育児休業を取得した従業員に対する降格、賃金減額の効力についてです。
私自身、まあ、会社の負け化とは思いましたが、降格や賃金減額が育児休業以外の理由により行われているのであれば、妥当性もあるかとは思いましたが、完全に育児休業に起因するものであり、万が一起因しなくても、余りにも大きな弦楽であったので、これは妥当な判決なのかと考えました。



(事件概要)

Y社の従業員であったXが、育児休業後に復職 → 担当職務を変更されたうえ減給(Yに対して)→ 一連の人事措置は妊娠・出産をして育児休業などを取得した女性に対する、差別ないし偏見に基づくもので人事権の濫用に当たる。→ 女性差別撤廃条約、憲法、労基法、育児・介護休業法、雇用機会均等法、民法に違反する無効


(考察)
雇用契約に基づく賃金請求として、降格・減給後に給与額と降格・減給前の給与額との差額及びこれに対する遅延損害金(判決)→ 職場復帰に伴い、平成21年6月16日以降のXの役割グレードをB-1からA-9に引き下げ(役割報酬)→ 550万円から500万円に減給(同日以降の成果報酬をゼロと査定)→ Xの年棒を、産休、育休などの取得前の合計640万円から復帰後は合計520万円に引き下げたことは、違法(理由)→ 一般のサラリーマンの場合、いかに成果報酬の考え方に基づく報酬制度を導入したとはいえ、特段の事情がない限り、前年と同程度の労働を提供することによって同程度の基本的な賃金は確保できるものと期待するのが当然 → 期待を不合理なものであるという事はできない。(担当職務の変更を伴うものであっても)→ 大幅な役割報酬の減額は、人事権の濫用であって、無効なもの → 平成21年度のXの役割報酬の額は、20年度の役割報酬の額が変更されることなく引き続き適用されるものと考えられる。(年に550万円であったとし、従来の年棒額と新しい年棒額との差額請求)→ 21年6月16日から退職までの間の役割報酬の減額に伴う差額の請求を認め(合計35万4,168円)、年6分の遅延損害金の支払いも命じた。(平成21年度の成果報酬をゼロと査定したこと)→ 育介指針等に照らしても、育休などを取得して休業したことを理由とした不利益取り扱いを禁止している趣旨に反する結果(Yの成果報酬の査定)→ Xが育休などを取得したことを合理的な限度を超えて不利益に取り扱うことのないよう、成果報酬を合理的に査定する代替的な方法を検討することなく、機械的にゼロと査定したことは、人事権の濫用として違法(成果報酬)→ しかるべき金額が決定されておらず、賃金支払い請求権として具体化していない。→ 差額支払い請求が棄却

不法行為に基づく損害賠償などの支払い(判決)→ Bクラスの成果報酬の平均は60万円(平成20年度のXの成果報酬)→ 90万円(21年度のXの成果報酬)→ 本来であれば、Bクラスの平均60万円を下ることはない。→ 調整報酬20万を控除し、Xが22年2月には退職したことを考慮 → 不法行為に対するXの慰謝料として30万円とするのが相当(弁護士費用相当損害金)→ 30万円を加えた60万円をYからXに支払うように命じ、その余の請求を退けた。

退職した従業員による時間外割増賃金請求

平成24年5月11日、今日は朝から寒い一日でしたが、仕事については本当に良い日でした。

毎回思うことですが、お客様より自分の仕事に対して感謝をしてもらえることは、何よりもうれしいことです。

本日の判例は、時間外労働に関する判例ですが、内容としては、専門型裁量労働制の効力について気になる点がありました。

当たり前のことですが、全てを任せるのではなく、ある一定の箇所だけを任せていたり、時間に関する縛りをつけていなくても、任せた仕事が休みなくしないと間に合わないような量であれば、裁量労働制の効力はないと考えられます。



(事件概要)

被告Yは、原告X社の立上げの時に誘われ、平成13年5月の成立当初から従業員(平成20年9月)→ 組織変更があり、その頃からカスタマイズ業務について不具合が生じる。(原因)→ YやFのメンバーのミスであることが多かった。→ カスタマイズ業務の質が低下したことで徐々に発注量を減らした。(売上)→ 20年7月の約420万円から12月には約320万円に低下 → 売上の低下について、上司から叱責されることが続き、自責の念に駆られるなど(委員で受診)→「うつ病」と診断(21年3月22日)→ 退職(労災を申請)→ 労災認定され休業補償給付(業務の不適切実施、業務未達など)→ Xは、Yに対して、2,034万余円の損害賠償の支払い → YはXに対して、未払い時間外手当及び付加金の支払い、ならびに不法行為などに基づく損害賠償請求


(考察)

専門型裁量労働制 :平成15年5月20日、労働者の代表としてYとの間で、書面による協定を締結 → 労基署に届け出したが、それ以降は届け出をしていない。→ みなし労働時間を1日8時間(対象者)→「情報システムの分析又は設計」とは(①)→ ニーズの把握、ユーザーの業務分析などに基づいた最適な業務処理方法の決定及びその方法に適合する機種の選定(②)→ 入出力設計、処理手順の設計などのアプリケーション・システムの設計、機械構成の細部の決定、ソフトウェアの決定など(③)→ システム稼働後のシステムの評価、問題点の発見、その解決のための改善などの業務をいう。(プログラミングについて)→ その性質上、裁量性の高い業務ではない。→ 専門業務型裁量労働制の対象業務に含まれない。(本件)→ 下請であるXには、システム設計の一部しか発注していない。→ かなりタイトな納期を設定していたことからすると業務遂行の裁量性はかなりなくなっていた。→ Yが行っていた業務は専門業務型裁量労働制の要件を満たしていない。

Yの管理監督者性 :平成19年4月1日に課長 → Fチームの責任者兼担当窓口(課長としての業務)→ 顧客の窓口対応、納品後の不具合対応、プログラミング、詳細設計作業、部下の管理など(労基法41条2号)→ 管理監督者には当たらない。

労基法41条2号 :「監督惜しくは管理の地位にあるもの」
①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか
②その勤務形態が労働時間などに対する規制になじまないものであるか
③給与及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているか等の観点から判断すべきもの

労働契約上の義務違反による損害賠償責任 :労働者のミスはもともと企業経営の運営自体に付随、内在化するもの(業務命令内容)→ 使用者が決定するもの → その業務命令の履行に際し発生するものであろうミスは、業務命令自体に内在するもの → 使用者がリスクを負うべきもの → 事業の性格、規模、施設の状況、労働者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防もしくは損害の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし → 損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において → 労働者に対し損害の賠償をすることが出来る。(本件)→ Yに故意または重過失は認められず、売上減少、ノルマ未達などは法相責任・棄権責任の観点から本来的に使用者が負担すべきリスクである。→ Yに対する損害賠償請求は認められない。

時間外手当の額 :労働時間の認定 → Xにはタイムカードが存在しなかった。→ Yが提出した作業日報とそれに基づく労働時間表に記載された労働時間に基づいて、Yの請求する時間外手当の額を認容

付加金 :未払時間外手当と同額の付加金

Xないし代表者の不法行為責任 :不法行為責任を否定

契約期間満了による雇止め

平成24年5月8日、ゴールデンウィークも終わり、二日が経ちますが、まだ休日ボケが直りません。

今日の判例は、契約終了による雇止めです。

私の顧客にもありますが、契約社員として従業員を雇い、その契約を満了した際に、正社員として雇うという方法です。

本判例の会社についても同様の方法を用いており、契約期間の満了について解雇権の濫用法理が適用されるかどうかを確認するのに参考となる判例でした。



(事件概要)

平成20年5月13日、雇用期間を同日から21年4月30日までとする雇用契約を締結(20年7月12日)→ 客室乗務員に任用(21年4月20日)→ 同年5月1日から22年4月30日までの1年間で更新(2年目契約)→ 被告Y1社と雇用契約を締結した原告Xが(①)→ Y1から同契約の雇止めを通告 → 雇止めは無効であると主張(Y1に対し)→ 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及び、平成22年6月以降の未払い賃金などの支払いを求める。(②)→ Y1におけるXの上司であった被告Y2が、X1に対して、Y1からの退職を強要するなどして、Xの人格権を侵害したと主張 → Y2に対しては不法行為に基づいて、Y1に対しては不法行為(使用者責任)及び債務不履行責任(職場環境調整義務違反など)に基づいて、慰謝料などの支払いを求めた。

客室乗務員の採用 :すべて契約制(募集要項)→ 雇用形態につき「一年間の有期限雇用、但し、契約の更新は2回を限度、3年経過後は、本人の希望・適性・勤務実績を踏まえて正社員への切り替えを行います。」と記載(2年目契約において)→ 雇用期間につき、勤務実績の総合評定が一定基準に達しない場合、Y1とX双方合意に基づき雇用期間を延伸することがある。(合意に至らない場合)→ 雇止めする旨の定め(1年目契約2年目契約共に)→ 更新条項として、Xの業務適性、勤務実績、健康状態などを勘案し、業務上必要とし(Xが希望する場合)→ 本契約を更新することがある旨の定め(本件)→ 入社後4か月を得た時点で技術・知識の定着に危惧を抱く。(21年3月)→ Xの業務への取り組み姿勢、業務知識、注意力、判断力、確実性などを問題視 → 契約更新は実施するものの3か月を限度に経過観察期間と位置付ける。→「部長注意書」が交付(その後)→ 同年8月までの経過観察期間は延長 → Y2は契約満了を妥当とする旨の報告(Y1は)→ Xの課題及び職務遂行レベルのこれ以上の改善は困難と判断(22年3月31日)→ Xに対し、「会社の決定であなたの契約を終了する。今なら自己都合退職にしてあげることもできるので、4月5日までのなるべく早い段階までに気持ちをまとめて伝えてほしい。」などと通告(Xが就労の継続を希望)→ 3年目契約の更新をしないことを内容とする平成22年4月22日付通知書をXに交付 → 2年目契約の雇止めの通知


(考察)

解雇権濫用法理の適用ないし類推適用 :契約期間の存在が明記(業務上必要とする場合)→ 契約を更新することがあるという条件が明示(契約社員の2年目契約)→ 自動的に更新されることあるいは雇用期間が通算3年に達した後に正社員として雇用されることがXとY1間の雇用契約の内容となっているという事はできない。(契約社員の雇止めについて)→ 当然に解雇権濫用法理の適用があるとはいえない。(類推適用)→ 客室乗務員は、契約社員として採用 → 別に正社員として採用される制度が存在しているわけではない。(募集要項)→ 3年経過後の正社員への切り替えについて記載 → 将来正社員として採用され、長期間雇用されることを通常期待する。(団交の際の発言など)→ 契約社員についての雇用継続に対する期待利益は法的保護に値する。→ 雇用継続経過によって、雇用契約が当然に終了するというのは相当ではない。→ 解雇権濫用法理が類推適用されると解すべき

雇止めの効力 :3年の経験を経て業務適正が認められた時に初めて正社員の地位に登用するとの契約社員制度を採用していることにつき、不合理なものという事はできない。→ 客室乗務員として業務適正を欠くと判断される契約社員を雇止めにすることには合理性が認められる。→ この判断が不合理なものかどうかという観点から検討

Xに対して行った評価・判断 :その基となる事実関係を欠く不当なものであると認めることはできないこと、Xが業務適正を欠くとの判断はXの複数の上司らの概ね一致した判断、Xの業務中の過誤が多数回に及びまた繰り返されていることなど → 諸般の「事情を総合考慮すれば、Xの本件雇止めに関するY1の前記最終的な評価・判断は不合理なものとは認められない」→ 解雇権濫用法理によって無効なものになるとはいえない。

Y2およびY1による不法行為などの成否 :退職勧奨を行うことは、不当労働行為に該当する場合、不当な差別に該当する場合などを除き、労働者の任意の意思を尊重し、社会通念上相当と認められる範囲内で行われる限りにおいて違法性を有するものではない。→ その説得のための手段、方法が上記範囲を逸脱するような場合には違法性を有する。(本件)→ 懲戒免職の可能性を示唆するなどして、Xに退職を求めている言動などは、社会通念上相当と認められる範囲を逸脱している違法な退職勧奨と認められる。→ Y1もまた、この点についての使用者責任を負う。→ 慰謝料として20万円の支払いを命じる。
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