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解雇に対する損害賠償(逸失利益)

平成24年7月29日、本日は久々に子供と二人で遊びに行ってきました。外で遊んでいたら、余りにも暑かったせいか、子供から家に帰ろうと言われ、どちらが大人なのかと考えてしまいました。

さて、今回の判例は、解雇に関する特徴を捉えた判例でした。

解雇に関する法律の一般的解釈、不法行為が認められた場合の逸失利益について等、分かり易い判例でしたが、少し逸失利益に対する額が少ない気がします。



(事件概要)

Xは、平成22年5月に、職種を不動産営業事務とし、時給を1,100円とする期間の定めのない雇用契約を締結 → 3か月間の試用期間が定められていたが、同年8月5日、同試用期間は満了(担当業務、トラブル)→ 配転を巡る同意の有無、Xに対する解雇の有無も争われているが、前者の同意の存在は否定、後者の解雇については上記8月30日時点でY1がXに対して解雇の意思表示を行ったものと認定 → 原告Xが、Y1社に対し、(①)→ その代表取締役Y2が行った不当解雇により著しい生活上の不利益を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償(②)→ 解雇予告手当および未払い賃金などの支払いを求めた。
1. 担当業務 :リフォーム中の物件の売却準備業務(営業成績)→ Y1の期待を大きく下回るもの(配置転換)→ 農業部門では専従社員が退職したために欠員が生じ、Xも農業に興味がある様子(同年8月24日)→ Y2はXを呼び出して配転の打診 → Xとの合意には至らなかった。(Y2がXに対し)→ 8月30日に農業部門のある山梨への出勤を促した。→ Xが念のため都内のY1事務所を訪れたところ、Y2と遭遇(問いただしたところ)→ Y2が上記発言をしていない旨を述べた。(トラブル発生)→ 数名の警察官に対し、XがY2の社員であることを告げたところ(Y2は警察官に対し)→「いや、こいつはもうとっくに解雇している人間だ」と述べた。→ Xは、Y2に対して「解雇なんですか」と確認 → Y2はXに対し、「解雇だ」と返答
2. トラブル :Y2がXに対し預けておいた鍵の返却を求めた。→ 本数を巡ってトラブルが生じ、Y2が警察官を呼び出すなどした結果、その場でのトラブルは収まった。(担当業務)→ 再び警察官を呼び出すなど発生
3. 解雇通知書の交付 :請求したところ、Y2は後日に送る旨の返答 → Xの再三の請求や所轄労基署による是正命令(同年11月9日)→ Y1はXの離職票手続きを行わなかった。


(考察)

争点① 一般論「労契法16条は、あくまで使用者の原則として「解雇の自由」が保障されていることを前提とする規定」→ 当該解雇が同条に違反したとしても、直ちに民法709条上も違法な行為であると評価することは出来ない。→ 著しく社会的相当性に欠けるものであることが必要と解するのが相当(本件解雇に至るまでの経緯やその後の対応等)→ 客観的にみて本件解雇事由が認められないことは明らか → 何ら解雇を回避する方法・手段の有無が検討されないまま行われた解雇は、余りに請求且つ拙速な解雇というよりほかない。
 労契法16条 :解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
 民法709条(不法行為による損害賠償) :故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
イ. 損害額 :Xは、9月1日、Y1に対し、8月分の賃金支払い請求書と解雇予告手当支払い請求書を送付 → 本件解雇による雇用契約関係の終了を前提とするものである。→ この時点においてY1の指揮命令下で就労する意思を喪失していたものと認めるのが自然 → 本件解雇の意思表示とその後のXの上記就労意思の喪失により上記8月31日の経過をもって終了したものといわざるを得ない。(9月以降の賃金請求権)→ 消滅したものと解するのが相当 → Xは、本件解雇という不法行為により本来得られたはずの賃金請求権を喪失したことになる。
ロ. 逸失利益の範囲 :再就職に必要な期間の賃金相当額に限られるものと解すべき(本件解雇後直ちにY1への復帰を断念)→ 解雇予告手当を請求しているものの、その支払を拒絶し、離職票などを通常よりかなり遅れて交付していることなどの事情を考慮(少なくともXの再就職に要する期間)→ 客観的にみて解雇予告期間に加え、数か月間は必要であるとみるのが相当 → 賃金の概ね3か月分
争点② 解雇予告手当などの支払いについて、Y1が平成22年8月30日にXに対して本件解雇の意思表示を行ったことを前提(Xの賃金が時給制)→ 労基法12条1項1号の特則により算定した額である17万1,810円の支払いを命じ、概ねXの請求を認容している。 
 労基法12条 :この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の一によつて計算した金額を下つてはならない。
1号 賃金が、労働した日若しくは時間によつて算定され、又は出来高払制その他の請負制によつて定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
2号 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によつて定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額

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従業員の不法行為

平成24年7月23日、本日は助成金の申請手続きをしていました。

就業規則との関連性が大きく、就業規則の作成についても勉強になることが多々ありました。

さて、本日の判例についてですが、バタバタしていて久々に読むことが出来ました。

従業員の背任行為について、全体的に損害額を認めています。しかし、今回の従業員は管理監督者であり、その分を考慮した上で、今後の在り方を検討していければと考えています。



(事件概要)

Xは、Y1を退職したが、退職に当たって後任者に対する十分な引継ぎを行わなかった。→ Y2は、Xの退職に不明朗な点を感じ、東京支社の調査を行った。→ Xが使用していた机の中から多数の請求書を発見(各請求書の内容と口座への入金状況とを突き合わせて調査)→ 一部の請求書について対応する入金がないか、不足金があることが判明(Xの在職中)→ Y2は、東京支社の業務に用いる口座の通帳などを保管し、取引先からの入金の事実を確認するのみ → 請求書の内容を確認することや、請求書と入金状況を突き合わせて未入金の取引がないかなどを確認することは行っていなかった。→ Y2は、東京支社の収支に関してXに問い合わせた。(しかし)→ Xが真摯に対応しようとしなかった。→ Xへの電話で感情的になって発言し、またXの仕事上の知人への電話でXを非難する発言(Xは退職後)→ Y1に対して、未払いとなっていた平成21年3月分の給与の支払いを求める。(Y2に対して)→ 同人から脅迫的言動を受けたり、名誉を棄損する発言をされたなどとして、不法行為に基づく損害賠償を請求(Xに対して)→ Y1は、同人が在職中に売上金を不正に取得 → 不法行為に基づく損害賠償を請求


(考察)

1. Xの不法行為の有無およびY1の損害 :支社長としてY1の利益を最大限に図るべき立場 → 業務委託契約の相手方である取引先から定期的に定額の報酬を受け取り、取引先の利益のために行動するというのは、明らかにY1との関係で利益相反行為である。→ 不法行為の成立が認められる。→ Xの背任行為であるとして損害賠償請求を認容
イ. Xは、Y1社と取引関係にあるC社の東京支店長という肩書の名刺を作成 → Xは、業務委託先の名刺を作成しておけば円滑に業務が進む旨述べてY2の承諾を得ていた。
ロ. Cから業務を受託して月額10万円(合計350万円)の金員を受け取っていた。→ Y2に報告していなかった。
 不法行為による損害額 :XがY1と取引先間との業務委託契約の趣旨に従って業務を誠実に履行し、Y1の利益を最大限図るべく行動していれば、Y1に帰属したはずの利益であると推認するのが相当 → その全額がY1の損害として認められる。
2. 未払い賃金額 :XがY1に対する背信的行為を行ったことが賃金の支払いを拒む理由とはなりえないのは明白 → 賃金支払い請求を認容
3. Y2のXに対する不法行為の有無およびXの損害 :Xが背信行為を行っており、Xが真摯に説明しようとしなかったことは事実(しかし)→ Xおよびその家族にことさら恐怖感を与える言動をすることは許されるべきではない。→ 仕事上の知人に対しXの経済的信用を損なうことを意図してY1の金員を横領した旨流布することは社会通念上その相当性を逸脱した行為 → Xに対する不法行為に当たる。→ 精神的苦痛に対する慰謝料として、20万円が相当

期間途中の解雇の有効性

平成24年7月1日、今年も半年が過ぎてしまいました。本当に一年が年々早くなる気がします。
明日からは算定基礎届の提出も始まり、バタバタ日々が続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。

バタバタですが、ミスをしないようにもう一度気持ちを入れ替えて頑張ろうと思います。

さて、本日の判例ですが、管理監督者に対する解雇の有効性です。

細かい内容はございますが、大まかな内容は従業員に対する場合と変わりはありません。




(事件概要)

Xは、Y1によるAの塾長の公募に応じ、平成21年4月付で塾長に採用 →  学校法人東奥義塾Y1が設置するA高校の塾長であったXが、塾長を解職されたことを争い、Y1に対し、塾長としての労働契約上の地位の確認並びに塾長としての賃金などの支払いを求めた。
1. 労働契約 :その期間が21年4月1日から25年3月31日までの4年間(賃金)→ 給料月額50万200円、管理職手当月額4万円、住居手当月額2万6,000円、賞与は期末手当57万228円、勤勉手当130万520円、入試手当16万5,060円(就任後)→ 運営方針などに関してY1理事会とたびたび衝突(A構内)→ 東奥義塾同窓会事業部がY1から委託を受けて設置していたコカコーラなどの炭酸飲料の自動販売機の撤去などを求めて同事業部と対立 → 張り紙を張るなどの行為を行った。
2. 解雇通知 :平成22年3月12日のY1理事会において、Y2はXを解雇する旨の緊急動議を提出(可決)→ Y1は翌13日付でXを解職する旨の解職通知 → 解職予告手当(50万200円)を支払った。(同年3月19日)→ Xは解職処分の理由を明らかにするように求めた。


(考察)

<解職理由>
Y1は、XがY1の理事会を非難し、A、生徒及び教員を誹謗し、寄付行為に違反した行動や塾長としての品位に欠ける行動をとることにより、A内の秩序を乱したとの理由でXを解職した旨通知(判決)→ これまで何らの処分歴のないXに対して、より具体的かつ丁寧な指導や教示を十分に行うこともないまま、いきなり最も重い解雇という手段を選択したのは処分としては重すぎるもの → Xが塾長という管理職及び専門職労働者として中途採用されたものであることを考慮しても、本件のような有期契約労働者の期間途中の解雇に必要な法17条1項に定める「やむを得ない事由がある」とまではいえない。
<Xの言動>
(i) Xには、教職員や生徒らといった対内的な問題だけでなく対外的にも、塾長の言動としての相当性や謙虚さに欠ける面があったことは否定できない。(しかし)→ 表現方法に問題があったとはいえ、XなりにAの生徒の健康や教育、交換留学生の留学内容の充実などを図り、また、これまで欠席する教員が多かった職員会議を全員出席させるようにするといった改善を行っている。(職員会議において解職処分に対する反対決議がなされた。)→ 教職員らの信頼もある程度得ていた様子が窺える。
① XがAの卒業祝賀会において「落ちこぼれ」「 停学くらった」等の発言を行ったこと → 父兄の労苦をねぎらうなどの意図でなされたものと認められる。→ 極めて不適切とはいえない。
② 同校の卒業生のうち青森県内における企業の社長経験者で構成される団体の定時総会において、知能が低い生徒がいる、同校の教員らは外界の知識に乏しいといった趣旨の発言をしたこと
③ Xが炭酸飲料水の自動販売機の撤去などを求めて張り紙を張り、これが問題となった際に、学校組織の長である塾長としていささか配慮に欠ける言動があったこと → Aの生徒の健康を図る目的
④ Aの礼拝説教において、Y1の外部団体が自動販売機排除に関連してXを排除する計画を立てている旨の発言したこと等 → Xが、Aから排除される懸念を抱いたことによりなされたものとも推測(その後)→ 実際に本件解雇処分が行われたことも踏まえると、いずれもきわめて不適切とはいえない。
(ii) Xの採用から本件解職処分に至るまでの経緯に鑑みれば、Y2をはじめ多くの理事らは、塾長としてのXに対し、対外的にはAのよき広告塔となり、また、理事長や理事会の意向に従い(教職員側をまとめ上げた上で理事会側と対立する場合)→ 理事長や理事会の意向に沿うよう教職員に納得させ(他方)→ Aのこれまでの慣習や伝統、教育体制などに内在する改善点を指摘し、改革していく能力を期待していたように見受けられる。(ところで)→ 一般的にこのような期待に応えるためには相当の能力や期間が必要(本件)→ Y2をはじめ理事会がXに期待する職務内容や限度について具体的に教示していたとは未だ認めがたい。(そして)→ Xには、そもそも管理職経験はおろか国内における一般的な教職経験も有しておらず、Y2をはじめとする理事会もこれを承知であえて採用した。
(iii) Xの塾長としての活動により、職員会議への職員の出席率が向上 → 学制の態度に良好な変化があったと認められる。(4年の任期の初年度において)→ 塾長として一定の成果を出していた。→ 教職員らからの一定の信頼を得ていた。
3. 解雇の有効性 :法17条1項にいうやむを得ない事由があったとは認められない。→ 地位確認請求及び賃金などの支払い請求を認めた。
 法17条1項 :やむを得ない事由 → 客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当(Xの言動)→ 概ね一審の認定を踏襲したうえで、理事会への批判、塾友会の定時総会における発言などは「不適切とはいえ」ず、「やむを得ない事由の有無を検討するうえで、考慮することは出来ない。」
4. 不法行為の成否 :Xの言動にも不当なものやいささか配慮に欠けるとみられるもの → 本件解職処分当時、法17条1項にいう「やむを得ない事由」が存在しないことが明らかであったとまでは言い難い。
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