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割増賃金に含まれる手当

平成24年10月30日、今日は税理士さんと法人設立を考えている事業主様へお伺いさせて頂き、話をしてきました。

どんな時代でも、前向きに取り組まれている方のお手伝いは楽しいものです。

さて、今回の判例は、割増賃金に含まれる手当について書かれています。

労働基準法の条文を再認識するのには、良い判例であると思います。

さて、11月も勉強会を行います。

内容は「労働トラブルの対策」「社会保険料の減額対策」などです。

ご興味のある方はコチラ → http://www.nakamine-office.com/1211_seminar.pdf



(事件概要)Y社との間で労働契約を締結するXらが、Xらに対して定額で支給される無事故手当と運行手当について、これらの半額についてのみ割増賃金の算定基礎に参入し、残りの半額については割増賃金として支払うことを定めるYの就業規則は労基法37条に反し無効であるなどと主張
 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
1 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第39条の規定による有給休暇を除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働のうち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。
4 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
5 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
争点① 無事故手当及び運行手当の各半額のみを割増賃金の算定基礎に算入し、残りの各半分は割増賃金として支払うという本件給与規定の有効性 :無事故手当及び運行手当は、「労働基準法37条5項、同法施行規則21条にいう除外賃金に該当しないことは明らかである」→ 両手当を割増賃金算定の基礎から除外する規定は無効(労基法92条1項)
 労基法施行規則21条 :法第三十七条第五項 の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項 及び第四項 の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
 労基法92条1項(法令及び労働協約との関係) :就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。
 絶対視 :絶対的なものと考えること
争点② そのような取り扱いを規定した給与規程を変更した本件給与規定変更の有効性
 労働条件統一の必要性 :以下ア、イを考慮 → 労働者への周知や本件組合への説明、協議をある程度時間をかけて丁寧に行う必要があった。→ 是正を急ぐあまり、従業員や本件組合に対する対応を蔑ろにしたと評価されてもやむを得ないもの
ア 労働者の受ける不利益が小さいとはいえない。
イ 従来運用については、労働組合間の合意もなされていた。
争点③ 付加金の支払い請求 :Yの違反の程度・態様、労働者の不利益の性質・内容などの事情を考慮 → 付加金を課さないのを相当

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就業規則の不利益変更(規程休日の削除)

平成24年10月29日、今日は次回のセミナーの打ち合わせをして参りました。

内容としましては、「労働災害による会社への損害賠償とその額」「社会保険料の控除」「助成金の使用方法」の3点です。

今後、セミナーの日時が決定しましたら、またお話をさせて頂きます。

さて、今回の判例は、就業規則に記載されている休日を経費削減策として4日削除することが、妥当かを争った内容となります。

いつもと同様に次の4点が求められ、結果としては、合理性なしと判断されています。
①話し合い・説明
②必要性
③不利益の程度
④代償措置

11月にも出張勉強会を開催させて頂きます。

内容は、労働トラブルや経費の削減を中心に行っております。

詳細・申込はコチラ → http://www.nakamine-office.com/1211_seminar.pdf





(事件概要)APAC経費削減施策 → Y社は、平成21年4月28日に行われた本件組合との団体交渉の席で、上記休日のうち「5月1日、12月25日、12月30日および社員の誕生日」の4日間の廃止などの経費削減策を行う旨を発表 → 同施策により1億5,400万円の経費削減が見込まれる 旨を口頭で説明(本件組合)→ Yに対し、資料の配布もない口頭での説明に留まることに抗議 → 経営状況に関する資料や根拠となる具体的な数字の提出を求めた。(しかし)→ Yからは上記数字しか発表できない旨の回答(平成21年5月14日)→ 従業員代表に対し、本件会社休日を廃止する就業規則の変更について説明 → 同年に入り輸出が5割減、輸入が2ないし3割減のために、さらなる経費削減が必要 → 本件会社休日の削減で中・長期的に安定した労働環境を保ち、他社との競争力を保つことが必要であることなどを説明 → Yは、同月20日には成田地区で、同月21日には関西空港で、同月25日には再び成田地区で、各日2回ずつ、「レッツ・トーク・ミーティング」を行い、延110名の従業員が参加(訴え)→ 会社の定める休日とされていた4日間を休日から削除した就業規則の変更には合理性がない。→ Yに対し、4日間を休日として行使できる地位にあることの確認を求めた。
1. 上記休日 :日本の祝日の他、「社員の誕生日、年末年始(12月30日、同月31日、1月2日、同月3日)、メーデー(5月1日)及びクリスマス(12月25日)」の7日間が休日と定められた。
2. 本件組合 :Xら(107名)は、Y日本支社のエアポート部門の業務に従事 → Yの日本支社の従業員で組織されるフェデラルエクスプレス日本支社労働組合に所属
3. APAC経費削減施策 :平成20年秋のリーマンショック以降の世界的な経済危機および21年度第2四半期における業績を踏まえて(21年1月)→ 役員及び取締役全員の同年2月1日付の基本給の恒久的5%削減要請 → 21暦年度における昇給停止、22年度末までの昇給停止策を内容とする。(平成21年4月)→ 役員および専門職全員の同年5月1日付の任意の基本給の恒久的5%削減要請、太平洋横断便の運航本数の減便、希望無給休暇制度の導入、海外駐在員などの本国帰国等の推進などを内容とする。
4. 争点 :本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすもの → XらとYとの間の労働条件が変更されたといえるか → 5つの観点から本件就業規則変更の合理性に検討を加えた。(①から④より)→ 本件就業規則変更は労働契約法10条所定の合理性の要件を満たすものとはいえない。→ Xらには、労働契約法10条による就業規則変更の拘束力は適用されず、Xらの労働契約の内容としては本件会社休日の4日間はいずれも休日のまま → Xらは本件会社休日を休日として行使することが出来る。
 労働契約法10条 :使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
① 合理性の有無につき、労働者の受ける不利益の程度 :本件就業規則変更により年間総労働日数が243日または244日 → 従業員の年間所定労働時間数は29時間程度増加 → これにより約2%の賃金カットと同様の効果が生じる。→ 土日祝日を除いた休日が7日から3日に減っている。(半数以上になっている。)→ 労働者の受ける不利益の程度は必ずしも小さいとはいえない。
② 労働条件の変更の必要性 :賃金カットと同様の効果を生じさせる本件就業規則変更は、「高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであることを要する」(一方)→ Yの業績は大幅に落ち込んでいる。→ Yにおいてこれに伴う経費削減施策を行う必要性があったことは認められる。(他方)→ 平成21年の後半以降は早い段階で回復傾向に転じている。→ 業績が落ち込んだとはいえ、未だ経営破綻に近い状況に至っているわけではない。(APAC経費削減施策に加えて)→ Yにおける独自の経費削減施策として本件会社休日の廃止を行う旨のYの判断はいささか性急すぎている感が否めず(就業規則変更)→ 上記不利益を労働者に法的に受任させることを正当化するまでの高度な必要性があるとは言い難いというべき
③ 変更後の就業規則の内容の相当性 :「代償措置その他関連するほかの労働条件の改善状況」および「同種時効に関する我が国社会における一般的状況」も引き続き考慮すべき(本件就業規則変更後)→ Yにおける年間休日日数は同規模、同業種の他社と比べて格別相当性を欠いているとはいえない。(少なくとも)→ 5月1日と12月30日については休日としている航空会社が過半数以上を占めている。→ 4日間のすべてを通常の労働日とすることについてはいささか相当とは言い難い。(代償措置)→ 変更後の就業規則の内容の相当性については当然に認められるというものではなく、相当性があるといえるのか疑問が残る。
 代償措置 :なんも取られていない事などを指摘
④ 労働組合などとの交渉の状況 :「労働組合等」とは、多数組合、少数組合、過半数代表その他労働者を代表するもの等が広く含まれる。→ それらとの交渉状況全てが合理性の判断の際の考慮対象となると指摘 → それなりの具体的な資料を示したうえでの説明はなされていない。→ 本件就業規則変更について合理もなされていない。→ 意見を述べてもYがこれに対して十分な検討および対応をしていない。→ 十分に労使間の利益調整がなされた上で本件就業規則変更がなされたとは到底言い難い。(判決)→ 労働組合などとの合意がないことをもって直ちに合理性が否定されるというものではない。(しかし)→ 合理に至らなかった理由やその間の交渉状況などによっては合理性を否定する方向の一要素となる場合もある。

年休取得と不利益

平成24年10月28日、先日久々にセミナーに行ってきました。

労働契約法、高年齢法、パートタイム労働法の改正についてですが、今後の判例がどのように変わってくるのか楽しみでもあり、不安でもありますが、今後の対応には、かなり参考となるものでした。

さて、本判例は、有給休暇取得したものに対する不利益がどこまで有効かを示したものです。

まずは、労働基準法136条が努力義務であり、不利益取り扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。

と示したところが大きいと思います。

今後の有休や給与規定の変更に大きく参考になると思います。

また、11月にも出張個別相談会を行います。

私が直接事務所までお伺いさせて頂きます。

ご興味のある方は、是非次のホームページをご確認ください。

http://www.nakamine-office.com



(事件概要)原告4名は、タクシー事業を営む株式会社である被告に、タクシーの乗務員として勤務 → 被告は、乗務員が交番表(月ごとの勤務予定表)に定められた出番(始業から終業までの勤務単位)を全て乗務した場合 → 皆勤手当5,500円を支給(出番全て無事故無違反で乗務した場合)→ 安全含む手当9,000円を支給(他方)→ 年次有給休暇権の行使を欠勤と同視(乗務員が年休権を1出番行使した場合)→ 皆勤手当金額及び安全服務手当のうち4,500円支給しなかった。→ 2つの手当について、年休権を行使した場合には、行使しなかった場合よりも1か月最大1万4,500円を減額されることとなった。(訴え)→ 原告らは、年休権の行使を理由に賃金の一部である安全含む手当及び皆勤手当を減額されたことは、労基法39条、136条に違反 → 民法90条により私法上無効 → 減額分の支払いを求めて訴えを提起
 労基法136条 :使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
 労基法39条
1. 使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
2. 使用者は、一年六箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して六箇月を超えて継続勤務する日(以下「六箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数一年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる六箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者に対しては、当該初日以後の一年間においては有給休暇を与えることを要しない。
3. 次に掲げる労働者(一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前2項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の一週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第一号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
一 一週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
二 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、一年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に一日を加えた日数を一週間の所定労働日数とする労働者の一年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者
 民法90条 :公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
1. 争点 :年休取得を理由とする安全含む手当及び皆勤手当の減額・不支給が司法上有効であるか否か(労基法136条)→ 同条はそれ自体としては使用者の努力義務を定めたもの → 不利益取り扱いの私法上の効果を否定するまでの効力を有するものとは解されない。→ このような措置は、年休権を保障した労基法39条の精神に沿わない面を有することは否定できない。(しかし)→ 効力については、趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、年休権行使に対する事実上の抑止力の強弱など諸般の事情を総合 → 年休権行使を抑制し、ひいては同法が労働者に同権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるものでない限り、公序に反して無効とは出来ないと解するのが相当(①から③)→ 労基法39条および136条の趣旨からみて望ましいものではないとしても、原告らの同法上の年休権行使を抑制し、ひいては同法が労働者に上記権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとまでは認められない。→ 公序に反し無効であるとはいえない。
① タクシー事業者であり専ら営業収入により利益を上げている。→ 交番表作成後の代替要員確保が困難 → 仮に確保できたとしても当該代替要員の乗務が予定されていた別の出番が休車になってしまうという事情 → 車両の効率的な運行確保のために乗務員の出番完全乗務を奨励する目的で行われているもの → 原告ら乗務員の年休権行使を一般的に抑制しようとする趣旨・目的があるとは認められない。
② 本件で問題とされている減額分についての対賃金総支給額割合がたまたま1.99%ないし7.25%であるからといって、本件減額が乗務員に対して常に年休権行使の抑制に結びつくほど著しい不利益を課するものと断定できない。
③ 使用者として時季変更権を行使することが考えられるような場合 → 申請の通りに年休権を行使させる方向で運用がなされていて、乗務員の年休権行使の実情をみても本件減額によって乗務員の年休権行使が一般的に強く抑制されているものとは認められない。

安全配慮義務違反

平成24年10月21日、今日は八尾のアリオの円谷ジャングルにウルトラマンのショーを見に行ってきました。
これが11月末になくなるという事で、今の間に行っとかないとという気持ちで行ったのですが、これが満員で大変でした。

さて、今回の判例は、安全配慮義務違反に関する判例であり、毎回の事ながら、労災保険の認められる場合には、この違反がついて回る感じがします。

加えて、損害額が5,000万円級の額になるのも、毎回驚かされる限りです。


さて、11月にも勉強会をしたいと考えております。
以下の所から、申込、拝見して頂くこともできますので、一度興味のある方はご連絡をください。

<お問い合わせページ>
http://www.nakamine-office.com





(事件概要)18年9月15日朝、Kは自宅から都内にある勤 務地に出勤するかのように出かけた。(しかし)→ I市に向かい、無断で欠勤してJ川河川敷のベンチでビールなどをラッパ飲み → 翌16日午前1時半頃に意識不明で倒れている所を発見され救急車で搬送 → すでに心肺停止状態で死亡していることが確認(Kの直接起因)→ 急性心疾患の疑いがある。(しかし)→ 死因の種類は不詳(Kの死亡について)→ 中央労働基準監督署長は業務災害と認定して、遺族補償年金などを支給(主張)→ Xが、Y社に対し、Kが死亡したのは、長時間の時間外労働や配置転換に伴う業務内容の高度化・業務量の増大により心理的負荷が過度に蓄積したことから精神障害を発症 → 正常な判断能力を欠く状態で過度の飲酒 → 同人の使用者又は代理監督者には、上記心理的負荷を軽減し、心身の健康を損なうことがないようにすべき注意義務 → これを怠った。→ 債務不履行ないし不法行為に基づき、それぞれKに生じた損害およびXら固有の損害の内5,000万円及び遅延損害金の支払いを求めた。
1. 労災保険における精神障害の業務起因性判断の指針 :債務不履行責任又は不法行為責任の有無が問題となる事案 → 精神障害の発症と業務との因果関係を判断する際にも参考となると解される。→ 業務による心理的負荷の強度の総合評価は「強」→ 客観的に精神障害を発症させる恐れのある程度の心理的負荷と認められ(他方)→ 業務以外の発症要因は見当たらない。→ Kの精神障害の発症はYの業務において受けた心理的負荷に起因するもの → その発症とYの業務との間には相当因果関係が認められるというべき
2. Kの業務上の心理的負荷 :Yの代理監督者は、Kの従事していた業務が上記精神障害を発症するなど心身の健康を損ねる恐れのある状態にあることを認識し、又は認識し得た。(心理的負荷などを軽減させる措置を採らなかったこと)→ 従業員に対する安全配慮の義務に違反している。→ 従業員の心身の健康に配慮すべき義務は、使用者として尽くすべき一般的注意義務になると解される。→ Yは不法行為に基づきこれにより発生した損害を賠償する責任がある。
3. 過失相殺 :死亡した労働者が、帰宅後ブログやゲームに時間を費やしていたことや自ら不調を申し出なかったことは過失相殺事由として考慮すべき(これらの事情に加え)→ Kは就労後の時間を適切に使用し、出来るだけ睡眠不足を解消するよう努めるべきであった。→ 就寝前にブログやゲームに時間を費やしたのは、自らの精神障害の要因となる睡眠不足を増長させたことになる。→ その落ち度は軽視できない。→ 過失3割を減額すべき
4. 労災保険や公的年金などの給付 :てん補の対象となる特定の損害と同性質 → 相互補完性を有する損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきものと解される。(労災保険の遺族補償年金と葬祭料)→ その趣旨目的に照らすと、逸失利益、葬儀費用の元本との間で損益相殺的な調整を行うべき(遅延損害金が発生している場合)→ 上記損害賠償債務とは発生原因を異にする別個の債務 → 定期的支給ないし支給が確定している遺族補償給付金及び葬祭料につき、損害額の元本から控除された。
5. 損害額 :過失相殺すると、残額は原告それぞれ2,966万3,432円(死亡逸失利益1,966万3,432円、葬儀費用120万円)、2,846万3,432円
ア 死亡逸失利益 :年収564万2,888円(一郎は結婚していなかった)→ 生活費控除率は50%(死亡時25歳)→ 就労可能年数42年に対するライブニッツ係数17.4232を乗じて逸失利益は4915万8583円(564万2,888円×(1-0.5)×17.4232≒4,915万8,583円)
イ 死亡慰謝料 :安全配慮義務ないし注意義務違反の態様、その他本件に現れた一切の事情を考慮 → 慰謝料は1,800万円が相当(原告らの固有の慰謝料)→ 各200万円が相当
ウ 葬儀費用 :150万円

パワハラ

24年10月17日、今日は個人相談会で、ある事業所を訪れました。

この頃良くある、監督署からの是正勧告でお困りの会社でした。

少しでも私のアドバイスが役立ってもらえれば幸いです。



今日の判例は、パワハラについてです。

つい、この間まではパワハラやセクハラについては、被害者側がそう感じた場合には認められることが多かった気がしますが、この頃は、下記の内容のように、細かく確認をすることで判決が出されているように感じます。


11月にも、勉強会を開催いたします。

詳細は次の通りです。

http://www.nakamine-office.com/


お誘い合わせの上、お申し込みください。


(事件概要)Xは、平成18年4月28日、脊髄空洞症などに羅患したことにより、同日から同年7月15日までの間、I病院に入院し、退院後、自宅療養を経て、同年9月に職場復帰し、Q支店に配属(19年11月16日)→ Xは、脊髄空洞症による左肩関節、左肘機能の著しい障害により身体障害者等級4級と認定(20年12月5日から21年3月13日)→ 不安抑うつ状態によりI病院に4回通院(平成21年2月)→ Xは、不安抑うつ状態とインフルエンザにより欠勤(同年3月13日)→ Y1に対し辞表を提出(同年3月31日)→ 選択定年退職(訴え)→ Xが、上司のパワハラにより退職を余儀なくされたとして、Y2らとして不法行為に基づく損害賠償を請求(Y1に対して)→ Y2らの使用者責任を追及 → Y1が、雇用する労働者の業務の管理を適切に行い、心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っている。(注意義務を怠ったとして)→ 不法行為に基づく損害賠償および遅延損害金を求めた。
1. パワハラ(不法行為) :Y2は、ミスをしたXに対し、厳しい口調で辞めてしまえ、(他人と比較して)以下だなどといった表現を用いて、叱責していたことが認められ、それも1回限りではなく、頻繁に行っていたと認められる。→ ミス及び顧客トラブルでY2に叱責されている内容からすると、Xが通常に比して仕事が遅く、役席に期待される水準の仕事が出来てはいなかったとはいえる。(しかし)→ 本件で行われたような叱責は、健常者であっても精神的にかなりの負担を負うものであるところ(脊髄空洞症による療養復帰直後であり)→ 同症状の後遺症などが存するXにとっては、さらに精神的に厳しいものであったと考えられる。→ Y2が全くの無配慮であったことに照らすと、上記X自身の問題を踏まえても、Y2の行為はパワハラに該当する。
2. Y1の使用者責任 :Y2らに不法行為責任が発生しない事のみを使用者責任が発生しない根拠として主張(民法715条1項ただし書き)→ 選任、監督に相当の注意をしたことなど責任発生を阻害するほかの事情を主張していない。→ Y1に使用者責任が認められる。
 民法715条1項(使用者等の責任) :ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
3. 配転等について注意義務違反 :Xが病気明けであることを踏まえ、外勤から内勤へと異動(Xの事務能力、Y2との関係及びY1銀行Q支店の繁忙度などから)→ 本店のサポートセンターへの異動を行い、残業や情報処理能力の問題の解消のため現金精査室へ異動(Xの体調面の問題)→ 最後に人事総務部への異動 → 短期間で各部署へ移されている上、その結果、各部署で不都合が生じたことから次の異動を行ったという場当たり的な対応である感は否めない。→ Y1が能力的な制約のあるXを含めた従業員全体の職場環境に配慮した結果の対応 → 従業員の配置転換には、使用者にある程度広範な裁量が認められている事にも鑑みると、Y1銀行に安全配慮義務違反がるとして、不法行為に問うことは相当ではない。
4. 損害額 :Y2の行為について、Xの精神的苦痛を慰謝するのに100万円の支払いをY2およびY1に命じた。(逸失利益)→ Y1に責任が認められるのは、Y2のパワハラに対する使用者責任となる。→ XがY2と共に勤務していたのは平成19年4月30日まで(その後退職まで)→ 2年近くの期間がある。→ Y2及びY1の行為によりXが退職を余儀なくされたとまでは言い難い。→ 本件で認められる不法行為と、Xの退職との間に相当因果関係があるとまでは認められない。→ 本件では、逸失利益まで損害に含めることは相当ではない。

就労請求権

昨日は、お客様に誘って頂き、朝の3時まで遊んでしまいました。
お陰で今日は眠たくて仕方ありません。

本日の判例ですが、業務命令(移転)に関する手続きがどこまで使用者の裁量を認めることが出来、逸脱することがあるのかを考えるのに参考になる判例だったと思います。

さて、今月から本格的に勉強会をしたいと考えております。
以下の所から、申込、拝見して頂くこともできますので、一度興味のある方はご連絡をください。

<お問い合わせページ>
http://www.nakamine-office.com




(事件概要)訴外Mは、Y1大学に入学し、平成17年4月に大学院に進学 → Xの研究室に配属(19年2月6日)→ Xに対し、博士課程への進学を断念する旨のメールを送信(19年3月)→ 大学院修士課程を修了(本件行為)→ 問題があるとして、本件各措置を行った。(懲戒処分)→ Y3は、卒研生などが配属されないことを理由にXの研究室をより狭い居室に移転する業務命令を発した。(Xがこれに従わなかったため)→ Y1はXに対して戒告の懲戒処分を行った。→ 主張の通り(懲戒処分)→ 1回限りの本件業務命令違反を理由にされたもの → 本件懲戒規程6条8号の要件を欠き、同条9号を適用するのも相当でないうえ、その必要性にも乏しかったというべき → 客観的合理性を欠き、社会通念上相当であるとは認められず、権利の濫用として無効 → Xが被った精神的苦痛は、本件懲戒処分の無効が確認されることをもって慰謝されると解するのが相当
 戒告 :公務員の職務上の義務違反に対する懲戒処分(他には免職・停職・ 減給がある)の中でも一番軽く、職員の服務義務違反の責任を確認し、その将来を 戒める処分
本件行為① Xは、不特定多数の者が閲覧可能なインターネットホームページ上に「M-破門」と掲載 → 学科主任であるY2からMの名誉を棄損するものであるので削除するように求めた。→ 上記記載を削除(判決)→ Mに対する「戒めの手段・方法として不適切なものである」→ 教育者としての配慮を著しく欠く行為
本件行為② Mから在学中のXによるセクハラを非難するメールが返信(判決)→ 事実を認めることが出来ない。
本件行為③ Xは、Mがパソコンを返却したのみで卒業後もソースコードなどを提出・返却しなかったので、勤務先の個人メールアドレスを含むMの複数のメールアドレス宛に数回連絡を行ったが返信がなかった。→ Mの勤務先の「問い合わせフォーム」のメールアドレス宛に返却・提出すべきものを返却・提出しないのは信義則違反であり、窃盗扱いになる旨のメールを送信(判決)→ 教育者としての配慮を欠く不穏当なもの → 教育者としての配慮を著しく欠く行為
本件行為④ 訴外Pに対するセクハラ(判決)→ 事実を認めることが出来ない。
本件行為⑤ 重度の身体障害のために文字を執筆することが出来ない訴外Nに対する定期試験中の便宜を不正行為とみなすという過剰な対応(判決)→ 本件各措置の理由とするのは相当でない。
 便宜 :都合の良いこと
本件行為⑥ 学生2名に対する不当対応(判決)→ 教育者としての配慮を著しく欠くもの → 教育者としての配慮を著しく欠く行為
本件行為⑦ ホームページ上又はメールによる他人の誹謗中傷(判決)→ 本件各措置の理由とするのは相当でない。
主張① Y1がXについて、本件各措置を取ったことが、Y1の懲戒権を濫用し、または人事権の裁量を逸脱するもの → Xの講義を担当する権利、研究室を持ち卒研生などの配属を受ける権利、学科会議などに出席する権利を侵害し、違法・無効である。(Y1に対して)→ 必修科目の講義を担当する地位のある事の確認及びその妨害排除などを求める。
争点① 抗議の科目、時間数及び時間割などの編成については、年度ごとに、教授会及び研究科会議の審議・議決を経て、最終的には、学長がこれを決定(平成22年度以降)→ Xに必修科目等を担当させる手続きが履践されていない事情の下 → Xには、具体的な講義の担当を求める権利ないし法律上の地位はおよそ認められない。→ 個々の教員が特定の研究室を持ち卒研生等の配属を受ける地位、および学科会議などに出席し、審議に参加する地位にあることの確認を求める訴えも不適法であるとして、却下
 履践 :実行すること
争点② 学長が「あらゆる事情を総合考慮の上、幅広い裁量の下に決定する権限を有しているというべき」→ 個々の教員には、特定の研究室の使用や卒研生などの配属を求める「具体的権利があるわけではない」
争点③ 教授総会や研究科会議に出席し、審議に参加することは禁止されておらず、Xが学科会議などに「出席する地位のある事の確認を求める訴えも不適法であって、却下を免れない」
主張② Y3らがXに対して発令した研究室移転の業務命令が、人事権の裁量を逸脱した違法なもの → 懲戒処分が懲戒権の濫用として無効 → 本件各措置
① 本件各措置 :本件3措置をA学部第二部教授会などにおいて決議 → Xの弁明を聴かずに、その旨を口頭でXに告知(判決)→ 使用者は、教員に対し、大学の管理運営上、必要な事項について、人事権・業務命令権の行使としての職務上の命令を発令する権限を有している。(対象)→ カリキュラムの編成、具体的な講義担当者の選定、卒研生などを配属する研究室の決定等に及んでいる。(行使)→ 広範な裁量が認められるものと解するのが相当(権限の行使)→ 大学教員の権利を制限することになる。→ 正当とするだけの合理的理由が必要 → 人事上の措置を行うに当たって、Xの弁明を聴いたり、告知の文書を交付したり、異議申立ての手続きを整備したりすることは必ずしも必要ではない。→ Y1の権限を著しく逸脱するものとはいえず、社会通念上、相当なものとして合理性を有するというべきであるから、有効
 本件3措置
ア 必修科目の講義の担当を外す。
イ 研究室に卒業研究性・大学院生を配属しない。(判決)→ 直ちに違法、無効となるものではない。(Xに配属されている大学院生3名をほかの研究室に移籍)→ Xの権利を侵害することになる。→ 正当とするための合理的な理由が必要 → 他の研究室に移籍されたとしても、引き続き選択科目の講義を担当する。(加えて)→ 施設内に研究室も割り当てられており、そのような研究環境の下で、大学教員としての研究活動を継続することが可能
ウ A学部第二部の学科会議及び大学院A学研究科B学専攻の専攻会議に出席させないとの措置(判決)→ 争点③の通りで、直ちに違法、無効となるわけではない。
主張② Y1が本件3措置を取ったのは、Y2らが、Y1の教授会などに正当な理由のない本件3措置を提案したことが原因 → Y1およびY2の共同不法行為が成立(Y2に対し)→ 不法行為に基づく損害賠償請求(判決)→ 人事上の措置が有効 → 違法、無効を前提とする不法行為の主張も採用することは出来ない。
主張③ 懲戒処分はY1およびY3が共同して行ったもの → Y3らの共同不法行為が成立 → 上記各主張が無効であるため、本主張も無効

派遣契約における団交拒否

平成24年10月1日、今年もついに10月になり、そろそろ年末に向けての準備をしていかないといけないかなと考える今日この頃です。
9月は、24日にセミナーを行い、今週あたりにアンケートの回収ができると思うので、その中で役立ちそうな内容があれば、ここでも紹介させて頂きます。
さて、今月から本格的に勉強会をしたいと考えております。
以下の所から、申込、拝見して頂くこともできますので、一度興味のある方はご連絡をください。

<お問い合わせページ>
http://www.nakamine-office.com




(事件概要)X1は同年4月2日に、C社との間で雇用契約を締結し、同日からはこれら契約に基づき本件刑務所内で管理栄養士業務に従事(平成19年8月17日)→ 本件交代要請により、同月21日以降は本件刑務所に出勤していない。(同日付)→ Cはハローワークを介して、本件刑務所で業務を行う管理栄養士の募集(平成19年9月11日)→ X1はX2組合に加入(同日付)→ Cに対して「組合員の地位・身分、雇用関係について、その他」を協議事項とする団体交渉を申し入れ(本件刑務所長に対して)→「本件協議事項1」として同月20日付で団体交渉を申し入れた。→ 第1回協議、第2回協議(「本件団交申入れ」)→ X2は、第3回協議として、本件刑務所長に対し平成19年10月26日付の要求書と第3回目の交渉を求めた。→ 第3回協議への参加を拒否し、以後、Xらが求めた協議に応じていない。(平成19年11月29日)→ X2は本件刑務所およびY(国)を被申立人として、本件拒否が労組法7条2号の不当労働行為に該当するとして救済申立て(20年12月18日)→ 本件刑務所は法律上独立した権利義務の帰属主体でないとしてこれを却下 → Yについては、X1の労働条件などについて、部分的とはいえ、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定している実態がある。→ X2からの団交の申し入れに応じるべき地位にある。(本件拒否)→ 正当な理由のない団交拒否 → 労組法7条2号の不当労働行為に該当することを認める。→ CがX1に対し何度も職場復帰を求めたがX1は復帰しないまま雇用期間が終了し、別の管理栄養士が労働している。→ X1が職場復帰をする可能性がない。→ 団交の実施を命じる必要はないなどして結論として請求を棄却(平成21年7月27日)→ X1およびX2は、本件訴訟を争点①から③を提起
争点① 本件刑務所長又は職員が、X1に対し、偽装請負に基づきX1を就労させた行為、本件交代要請、職場環境調整義務違反、直接雇用申込み義務違反の各行為に関し、国賠法上の違法行為を行った事実の有無(本件刑務所長らのX1に対する各行為)→ いずれも国賠法上の違法行為には該当しない。
イ. 偽装請負に基づき就労させた行為 :X1の就労に至る経緯や本件刑務所による事前面接の事実などを指摘して派遣法違反の事実を認めた。(派遣法に違反した労働者派遣が行われた場合)→ 特段の事情のない限り、そのことだけによって派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはない。→ 偽装請負によって受け入れたとしても、X1の権利が侵害されたものとは認められない。→ 締結した本件刑務所長の行為が、国賠法上の違法行為に該当すると評価することは出来ない。
ロ. 本件交代要請の違法性 :派遣元は派遣先に対して約束した役務を提供する債務を負っている。(勤務状況が、派遣契約に照らして不完全履行の状態となる場合)→ 派遣先は、派遣元に対して、債務の完全履行請求として派遣労働者の交代を求めることが出来る。(本件刑務所内での就労実態)→ X1が事実と異なる発言などを繰り返しできた。→「本件刑務所の用度課および処遇部の職員らの間に混乱を生じさせて、用度課および処遇部の業務の円滑な遂行を妨げる。(本件業務委託契約において)→ 業務担当栄養士が行うべき業務の遂行状況として不十分な状態に該当するものと認められる。」→ 合理性がある。
ハ. 派遣法に基づく直接雇用申込義務違反 :本件業務違反契約は派遣期間に上限のあるもの → 派遣法の期間制限に違反している。→ 本件刑務所長およびCのいずれもこれを認識しておらず、派遣停止の通知(派遣法35条の2第2項)を欠く。(派遣法40条の4の申込義務)→ 派遣先の派遣労働者に対する直接雇用申込み義務を規定したにとどまり → 申込の意思表示を擬制したものではない。→「上記義務違反により、派遣先と派遣労働者との間に当然に雇用契約が成立するものとは認められない。」→ X1がYに直接雇用されることについて、法的保護に値するに足りる期待権が生じていたとは認められない。
 派遣法35条の2第2項(労働者派遣の期間) :派遣元事業主は、前項の当該抵触することとなる最初の日の1月前の日から当該抵触することとなる最初の日の前日までの間に、厚生労働省令で定める方法により、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行わない旨を当該派遣先及び当該労働者派遣に係る派遣労働者に通知しなければならない。
 派遣法40条の4 :派遣先は、第35条の2第2項の規定による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第35条の2第2項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申し込みをしなければならない。
争点② 本件拒否が不当労働行為に該当するか(本件刑務所長は労組法7条の「使用者」に該当するか、本件協議事項2は義務的団交事項に該当するか、本件拒否に正当な理由があるか)
イ. 労組法7条の「使用者」 :上記「事件概要」の通り(加えて)→ 派遣先で出勤確認がお紺われていた事実関係 → X1の基本的労働条件などについて雇用主である訴外Cと部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位 → その限りで労組法上の「使用者」に該当
ロ. 本件協議事項2は義務的団交事項に該当するか :本件交代要請は、「事実上、X1とCとの労働契約上の地位に影響を与える。」→ 義務的団交事項に該当する。
ハ. 本件拒否 :第1回および第2回の協議で本件交代要請の理由に関し一定の説明があったことは認めつつも、未解決の問題に対して協議の回数が2回に留まることを指摘 → 拒否する正当な理由があったとはいえない。→ 労組法7条2号の不当労働行為に該当
争点③ Xらの損害の内容および額 → X2は労働組合として団結権、交渉権を法的権利として保障(本件団交拒否)→ 団体交渉権を侵害されるとともに、労働条件の改善に貢献する機会を奪われ、組合員からの信頼や信用及び社会的評価が低下するなどの無形の損害を被った。→ 損害賠償請求が30万円の範囲で認容(X1の損害)→ 本件拒否により権利を侵害されて損害を受けた事実はないとして否定
1 本件交代要請 :平成19年8月17日、本件刑務所朝の決済の下、Cに対してX1の交代が要請
2 本件刑務所とCとの関係 :本件刑務所では、健康増進法21条1項等に基づき管理栄養士をおくことが義務付けられている。→ 管理栄養士業務委託契約の一般競争入札で落札者となったCとの管理栄養士派遣契約または管理栄養士業務委託契約を締結して管理栄養士を確保
3 業務委託契約(本件交代条項) :「本件刑務所長は業務管理者又は業務担当管理栄養士を不適当と認めたときは、…その理由を付して交代を求めることが出来る」旨が定められていた。
4 本件協議事項1 :「X1の本件刑務所内での就業環境についての事実確認、X1の退職に関わる経緯」を協議事項
5 第1回協議 :団交要求を受けて、平成19年10月2日には、X1およびX2役員6名と本件刑務所のGら3名、ならびにCとの間でX1の就労状況や本件交代要請に至った経緯などについて話し合いがもたれた。
6 第2回協議 :平成19年10月23日、CのL取締役から、本件刑務所とCとの調査結果として、本件刑務所長が本件交代要請を撤回し、CがX1を本件刑務所での勤務に復帰させるとする提案(しかし)→ X2組合側は、職場復帰の前提として、本件交代要請に至る事実確認を明らかにする必要がある。→ 上記提案を受け入れず、①から③等を求めた。
① 本件刑務所長名義による本件交代要請の謝罪文の提出
② 本件交代要請の理由を記載した文書の提出
③ 用度課長の人事異動などの職場環境の改善策の提示
<要求書>
① 本件刑務所長名で謝罪すること
② これまでの経過につき業務委託発注責任者として文書で説明すること
③ 本件協議事項2
 本件協議事項2 :X1の職場復帰に向けて、就業環境及び契約条件の改善の内容をCと協議の上提示
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