fc2ブログ

精神障害と業務の間の業務起因性

平成25年2月20日、本日は初めて空手の一般部で練習をしてきました。楽しくて、何も気にせず動いていたら、体全体の筋肉痛とコブシの傷が痛くてたまりません。

さて、本日の判例ですが、精神障害が労災保険請求として認められるかどうかが争われています。

これからの世の中では、うつ病は切っても切れない病気になりそうです。

今回の判例でも、うつ病とイジメの関係、それが業務起因性として認められるかが争点となっています。

細かく解説されていて、参考になる判例だと思います。




(事件概要)
「原因」(平成15年7月31日)→ Xは出社したものの、動悸が激しくなったことから早退して病院の受診 →「ストレス性うつ病」との診断(休職届)→ 17年8月31日付で自動退職 → 営業職のマネージャーとして勤務していたXが、Eの逆恨みによるイジメ、嫌がらせにより、過重な心理的負荷を受け精神疾患を発症 → 3期間にわたり休業に追い込まれたとして、労基署長に労災保険の休業補償給付を欠く休業期間について請求 → それぞれの期間共に不支給処分 → 違法があるとして、同処分の取り消しを求めた。(争点)→ Xの発症につき業務起因性を認め、これと異なる判断を示していた行政処分を取り消した。
(原因)
亡Aの妻は、平成14年11月から保険金の支払いを申し出ていた。→ Eから回答のないまま放置(15年2月初め)→ Xは、支社長に保険金が支払われる時期について尋ねた。→ 支社長は気分を害して感情的になり、非常に強い口調で「告知義務違反があれば保険金の支払いは絶対にない。」「お前は不告知教唆したのかしてないのかどっちだ。」「裁判しても客が勝てるわけがない。」などと顔を真っ赤にして言った。→ この出来事を契機に、Xと支社長との間に軋轢、感情的対立が生じた。(平成15年2月15日付)→ 亡Aの妻は、支社長の言動への批判を含む抗議の手紙を出した。→ 保険金の支払いは、本社も死亡保険金の支給を認め、翌3月に保険金が支払われて決着
(休職届)
同年8月1日から欠勤 → 同年8月4日から同年9月28日まで第1回入院 → 同年10月24日から同年12月25日まで第2回入院(16年3月1日付)→ 休職届を提出
(争点)
(1) Xの病状、病名(ストレス性うつ病か適応障害か) :ICD-10、DSM-Ⅳに列挙されたエピソードなどに照らして判断するのが相当(ICD-10)→ 本件発症はエピソードに合致(DSM-Ⅳ)→ 大うつ病エピソードの2ないし5の要件に合致 → ストレス性うつ病によるものと認めるのが相当
 ICD :国際疾病分類第10版
 DSM-Ⅳ :精神疾患に関するガイドライン
(2) Xの精神障害と業務の間の業務起因性(相当因果関係)の有無 :業務と疾病との間には条件関係が存在するのみならず、相当因果関係があることが必要(労働者災害補償制度)→ その疾病が当該業務に内在する危険が現実化したものと評価し得るか否かによって決せられるべき(精神疾患の場合における相当因果関係の判断)→「当該業務自体が、社会通念上、当該基礎疾患を発症させる一定以上の危険性の有無 → 職場における地位や年齢、経験などが類似するもので、通常の勤務に就くことが期待されている平均的労働者を基準」として判断(本件)→ 軋轢・感情的対立 → 営業成績等について、いつもより厳しい叱責を繰り返される。→ 支社へ謝りに来るよう求められたり、長時間にわたる叱責を受ける。→ 精神的負荷を益々感じ、ストレスを増大(マネージャーの職務)→ 非常に大きな精神的負荷を蓄積 → Fから度々業績について叱責 → この叱責が、Xの精神的負荷を更に増大させ、本件発症をするに至ったと認定 → 平均人の立場から見ても非常に強いものだったと解される。→ 精神的負荷は業務の遂行により発生 → その発症は発症すべくして発症したもの(精神的負荷)→ 客観的にみてストレス性うつ病を発症させる程度に過重
 労働者災害補償制度 :業務に内在する各種の危険が現実化して労働者が疾病にかかった場合、使用者に無過失の補償責任を負担させるのが相当
 精神疾患の場合における相当因果関係の判断
① 当該業務自体が、社会通念上、当該精神疾患を発症または増悪させる一定程度以上の危険性を内在又は随伴している事が必要
② 発症前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心理的負荷の有無や程度、さらには、当該労働者の基礎疾患などの身体的要因や、うつ病に親和的な性格などの個体側の要因などを具体的かつ総合的に検討 → 社会通念に照らして判断するのが相当
 マネージャーの職務 :一般にマネージャーの同意の下で行われると認識されていた班分離 → Xの同意を得ることなくX班の分離 → この班の分離により、Xが育成したEら4名の部下を失う。(将来的)→ Xの給与は大幅に減少する可能性が高い状況
スポンサーサイト



アルバイト就労の兼業不許可と損害賠償請求

平成25年2月17日、本日は泉州マラソンの道路規制で仕事の往復に時間がかかり過ぎて大変でした。

本日の判例は、兼業に関する規定に基づいた判例でした。

兼業禁止を就業規則に記載されている企業は多くあると思いますが、それが現実にどのように作用するのかが記載されています。

改めて、兼業禁止の趣旨を考えさせられる判例でした。




(事件概要)
Xは、45万円程度 → A便の運行が終わりBを担当 → 予定外の仕事が入ることもほとんどなくなった。→ 手取りで30万円前後に低下(平成21年11月25日から完全週休二日制が導入)→ 勤務日が週5日、手取りで25万円程度に低下 → 給与額の低下で生活を維持するのが困難 → 就労しないように指導(数度に渡る許可申請)→ 運輸会社Yがいずれの申請も不許可としたのは違法 → Yに対し、不法行為に基づき、損害の賠償 → これに対する2回目の許可申請に対してYが不許可とした日から支払済みまで遅延損害金の支払いを求めた。(就業規則)→ 経営陣が、Xのアルバイト就労を黙認、認容していたことを認めるに足りる証拠はなく、Yが無許可での就労を黙認していたとはいえない。(業務内容)→ その内容に照らして合理性がある。(第1申請)→ 適切な休息時間の確保は、Xの労務提供にとって極めて重要な事項(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)→ 勤務終了後継続8時間以上の休息時間を与えることを定めている。(就業規則ウ)→ 兼業終了後Yへの労務提供開始までの休息時間が6時間を切る場合に不許可とする旨定めていることは合理性がある。(第2申請)→ アルバイト就労時間数を加えると、1日当たり、15時間もの労働をすることになり、社会通念上も過労を生じさせる。(脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準)→ 不許可としたことには合理性がある。(第3および第4申請)→ 恣意的な対応をうかがわせるもの(法定休日)→ 週に2日休日がある中のわずか3時間ないし4時間就労するに過ぎない。→ 兼業による支障を真摯に検討するという姿勢を明らかに欠くもの → 不当かつ執拗に妨げる対応 → Xの所属する組合と対立が激化していた状況にある事などを考慮 → 不当労働行為意思に基づくものと推認(精神的苦痛に対する慰謝料額)→ 対応の不合理性の程度、アルバイト就労によって得られた収入の程度、収入に占める割合、不合理性の主張立証に要した労力など → 諸事情を総合的に考慮して、30万円とするのが相当
(数度に渡る許可申請)
就労しないように指導(就業規則に違反)→ 会社の名誉と信用を傷つけた。→ 2か月間1万円の減給処分(アルバイト就労を継続)→ 再度会社の許可なく無断で在籍のまま他企業に就業したことは、就業規則に違反し服務規律を乱した行為 → 7日間の出勤停止処分(第1申請)→ すでに時間外労働しており、長時間労働 → それ以外の他企業での労働は承認できない旨回答(第2申請)→ 夜間も走行するトラック運転手として時間外労働もしており、過労で事故の危険がある。→ アルバイト先が同業他社であり、Yの機密が漏れる恐れがあることを理由として、認めない旨回答(第3申請)→ 前文に加えて、法定休日にアルバイト就労をすることで過労による事故の危険がある。(第4申請)→ 前文に加えて、十分な休息をとれないまま運転業務に従事 → 過労を原因とする交通事故を起こす恐れがあることを理由 → 認めない旨回答
第1申請 D社での午前8時30分から午後0時までの構内仕分け作業のアルバイト就労の許可申請
第2申請 午前1時から同5時までの構内仕分け作業のアルバイト就労の許可申請
 アルバイト就労時間数 :1日4時間で、1か月20時間程度勤務すると仮定、月間80時間
第3申請 日曜日午前10時から午後2時までの構内仕分け作業のアルバイト就労の許可申請
第4申請 ラーメン店での日曜日午後6時から同9時までの接客、皿洗い等のアルバイト就労の許可申請
(就業規則)
従業員が、会社の命令又は承認を受けないで在籍のまま他の事業に従事したり、又は公職に就くことを禁ずる。(労働者の兼業)→ 例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許される。(数度に渡って改定)→ 一貫して就業規則に無許可での兼業を禁止する旨の同一内容の定めを設けている。→ 一貫して無許可での兼業を禁止する趣旨であったとみるのが相当
ア 勤務時間以外の時間 :労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許さなければならない。
イ 労働者の兼業 :労働者の使用者に対する労務の提供が不能または不完全になるような事態が生じる。→ 使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得る。
ウ 労働者が行おうとする兼業 :経営秩序を乱す事態が生じ得るか → 使用者がその合理的判断を行うために、労働者に事前に兼業の許可を申請 → 使用者がその拒否を判断するという許可制を就業規則で定めることも、許される。
(業務内容)
アルバイト就労の許可を判断することは自然 合理性も認められる。
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(平成12年12月25日労働省告示第120号)→ トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」
休息期間分割の特例 :業務の必要上、勤務の終了後継続した8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合には、当分の間、一定期間(原則として2週間から4週間程度)における全勤務回数の2分の1の回数を限度として、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。
この場合、分割された休息期間は、1日において1回当たり継続4時間以上、合計10時間以上としてください。

業務委託契約を締結した者に対する割増賃金

平成25年2月12日、もうすぐバレンタインデーですが、相変わらずもらえる見込みがありません。

本日は勉強会を行ったのですが、いつもの事ですが、人に物を伝えるのは難しいですね。

さて、判例は時間外労働に関してです。

業務委託契約を締結しているという内容ですが、どちらかというと残業代を支払うに当たって検討する内容が盛りだくさんに詰まった判例のように思います。

今年は一度もできていない個別勉強会を早く開催したい今日この頃。

もっと要領よく仕事を行って、3月には必ずしてみせるぞー!



(事件概要)
X1は、平成16年4月12日から22年2月28日まで、X2は、21年4月1日から22年3月31日まで、Yの売買事業部に所属して、投資用マンションの販売に従事 → Xらが、雇用契約に基づく賃金請求として、時間外労働に対する割増賃金およびそれに対する遅延損害金の支払いなどを求めた。(判決)→ 割増賃金の総額は、278万6,557円、193万1,121円 → 割増賃金の請求が一部認容 → X1について275万円、X2について190万円の付加金の支払いが命じられた。
(就業規則)
1 賃金 :①基本給のほか、②諸手当として、職能手当、管理者手当、役職手当、営業手当、住宅手当、住宅補助手当、通勤手当を支給。③割増賃金については、労基法37条の規定と同様の定め
ア 実行手当 :営業成果を上げた従業員の他、グループの構成員に対しても、「ヘルプ」「班長」「APO」等の役割に応じて支払われていた。→ Yとの間で使用従属関係にある従業員が属するグループ全体の成果に対して支払われることが予定 → 業務委託契約が締結されていたとは認められない。
イ 住宅手当 :賃金の範囲 → 労基法37条5項及び労基法施行規則21条所定の除外賃金に該当するか否か → 名称に関わりなく実質的にこれを判断(本件)→ 住宅所有の有無や賃貸借の事実の有無にかかわらず、年齢、地位、生活スタイルなどに応じて1万から5万円の範囲で支給 → 住宅手当に該当しない。
ウ 営業手当 :定額残業代の支払いに当たるか。(①から③)→ 実質的な時間外労働の対価としての性格を有していると認めることは出来ない。
① 実質的にみて、当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していること
② 時間数と残業手当の額が労働者に明示されていること
③ 残業数を超えて残業が行われた場合、別途精算する旨の合意が存在すること → 差額の精算を行った形跡はない。
2 労働日 :タイムカードの記載から業務に従事したことがうかがわれる日と認めるのが相当 → 客観的な証拠がない限り、「休」と記載された日は労働日にはあたらない。
3 終業時刻 :タイムカードの打刻をさせていない。→ 原則として、終礼までの時間を終業時刻と認めることができる。
4 休憩時間 :実際には、昼1時間午後6時30分から午後7時までの30分間の合計1時間30分であったと認定
5 管理監督者 :自らの部下らに対する労務管理上の決定権を有していたとまでは認めることは出来ない。→ 業務開始時刻については、タイムカードによる出退勤管理を受けていた。→ 労基法41条2号の管理監督者に該当しない。
(業務内容)
毎月曜日および木曜日の午前9時から開催される営業会議に出席 → 月の前半の2週間は午後8時頃から、後半の2週間は午後9時頃からミーティング
 タイムカード :始業時に打刻、終業時にはタイムカードを打刻させていなかった。

セクハラによる懲戒解雇

平成25年2月5日、本日は裁量労働制に関する相談で、初めてのお客様の所へ訪問しました。

かなり細かいところまで安全配慮を従業員へ施しており、初めて伺う僕から見ても、従業員思いの会社であることは明確でしたが、裁量労働制の壁は大きなものです。

国の思いと会社の思いが交わることはあるのでしょうか。

出来る限り、交わることのできる橋渡しが自分に出来ればと思います。

本日の判例は、懲戒解雇です。

内容は、二重制裁処分、徹底されていない調査等、当たり前の結論であると思われる判例でした。

セクハラで懲戒解雇が認められるのか、出来れば細かいところまで話を詰めることのできる結論であればと思いました。



(事件概要)
(X(業務第三課長)からY社に対し)
懲戒解雇、懲戒解雇までの期間の時間外・深夜・休日勤務手当及び付加金の支払いを請求 → 地位確認と解雇後の賃金を請求 → 不法行為に当たるとして、それに基づく損害の賠償
 労基署に相談 :労基署に時間外手当などの不支給の事実を申告
(Y社からXに対し)
在職中、女性職員に対するセクハラの事実 → 不法行為ないし雇用契約上の債務不履行に当たるなどとして、損害の賠償を反訴請求
 セクハラ :職員の一人が経緯を記載した書面の交付
(争点)
① 懲戒解雇の効力 :表面化させることを回避し、課長職から解任することでY社内にくすぶる不満を収めようとしてきた。→ 時間外手当などの請求をされたことに立腹して、この点を再度、問題として取り上げることにしたものと推認 → 2年も経過した後に懲戒解雇という極めて重い処分 → 二重処分のきらいがあることも否定できない。(不法行為)→ Xの時間外手当など請求の阻止という目的に出た違法な行為であることは明らか → 会社法350条、民法709条により、Xに生じた損害について賠償すべき責任を負う。→ 慰謝料30万円
ア Xから事情聴取したが否定 → 同女性職員の退職後同人からの事情聴取を実施していない。
イ 女性職員に対する再度の事情聴取も含めて何等の事実調査も行うことなく
ウ Xに対し約2年間も何らの懲戒処分を行うことがなかった。
エ 直ちにXに対する事情聴取を行うことなく放置
 二重処分 :課長職を解任 → 一般職員に降格
 不法行為
(ア) 夜間、予告なくXの自宅を訪問
(イ) 予告なく実父を訪問するという常軌を逸した行為に出ているもの
 会社法350条 :株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行なうについて第三者に与えた損害を賠償する責任を負う。
 民法709条 :故意又は過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害したものは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
② 時間外手当など支払の可否 :756万余円の支払いを命じた。
(イ) 労働時間把握、管理 :タイムカードの打刻を義務付けていたことは明らか → 記載はほぼ正確なものと認めることができる。→ Yからその正確性に関し格別の反証もされていないもの → 記載に基づいて認定されるのが相当
(ロ) 年棒に時間外手当などを含む旨の合意がなされている。
(ハ) 管理監督者に該当する旨の主張をいずれも採用しなかった。
③ Xの損害賠償責任の有無等 :業務上のデータが記載されたUSBを紛失したことは不法行為に該当し、賠償すべき責任を負う。→ 内容は証拠上不明である上、それが流失したか否かも不明 → Yが損害額の立証を尽くしていないと評価するのは相当ではない。→ 将来的な流出の危険性に晒されるというリスクを無形の損害として評価する他はない。(諸般の事情を考慮)→ 紛失による損害は、30万円と認めるのが相当

労使慣行に関する不利益変更の効力

平成25年2月3日、本日は節分で鬼に扮して子供に豆まきをさせてあげようと思ったら、鬼さん怖いから絶対に来んように電話してと言われ、計画が壊れてしまいました。

本日の判例は、労働者が被る不利益の程度に関して記載されています。

労使慣行がどこまで有効かを細かく書かれている所に勉強になる判例であると思いました。




(事件概要)

本件組合に対し、同年度の一時金として本件一時金額とする旨を回答 → 団体交渉や事務折衝が行われたが、合意に至らなかった。(あっせん)→ 問題は解決しなかった。(17年度から19年度に、一時金として本件一時金を支給)→ XらとYとの間で一時金を本件基準額(給与月額の6.1か月分及び10万円)とすることが具体的請求権として労働契約の内容 → 本件一時金額(給与月額の5.1か月分及び10万円)とする不利益変更は無効 → Yの対応は誠実交渉義務違反に当たることを主張 → 労働契約または債務不履行に基づき、本件基準額と本件一時金額との差額及び遅延損害金の支払いを求めた。(争点①)→ 主張を退けた。(争点②③)→ 本件一時金額との差額の支払い請求を認容
 労働協約 :昭和57年度から平成16年度まで、年間一時金の支給基準について労働協約が締結
 労使慣行 :誠実に労使交渉を行うべき義務がある。→ その義務が尽くされない限り、使用者は減額を強行できない。→ 少なくとも従前の額の一時金を支給しなければならない。
 認定事実 :細かすぎて記載できない。
 規範意識 :経営状態が悪化したりするなど人件費抑制の必要性が高くなった場合 → 本給のベースアップをするなどして賃金体系を見直したために一時金の額を引き下げる必要がある場合など → 特段の事情がない限り、年6か月以上の一時金を支払う。
 給与規定29条 :「賞与及び臨時手当を、予算の範囲内で、理事長が定める要領により支給することができる」
(労使慣行の変更が許される場合)
必要性及び内容の両面からみて、労働者が被ることになる不利益の程度を考慮 → 当該労使関係における当該変更の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有する必要(特に賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす労使慣行の変更について)→ 当該変更がそのような不利益を労働者に法的に受任させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合 → その効力を生ずるものというべき
 合理性の有無 :具体的には労使慣行の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の関連するほかの労働条件の改善状況、労働組合などとの交渉の経緯、他の労働組合またはほかの従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況などを総合考慮して判断すべき
(争点)
① 誠実交渉義務違反による債務不履行責任
 使用者に誠実交渉義務違反が認められるとしても、誠実に交渉していれば本件基準額(給与月額の6.1か月分及び10万円)で合意していたとはいえない。
② 一時金を本件基準額とすることがXらとYとの間の労働契約の内容となっていたか
 労働協約が年度ごとに定められたものであることが書面上明らか(平成17年度以降)→給与規定29条は労働協約に抵触しない。→ 同条により理事長が一時金を裁量により定めることができる。(労働協約が14年間にわたって締結)→ それに基づいて一時金が支給されていたとしても、労使慣行が成立していたとはいえない。(一時金の額を変更しようとする場合)→ 労使慣行が成立していたとはいえない。(しかし)→ 認定事実の事情が認められない本件では、少なくとも年6か月の一時金を支給することが労働契約の内容となっていたものと認めるのが相当
③ 一時金を本件基準額とすることが労働契約の内容となっていた場合、それを変更することに合理性は認められるか
 Yの一時金は生活給的な性格が強く、労働者にとって重要な権利、労働条件であることは明らかである。(労使慣行の変更が許される場合)→ 総合的に考慮すれば、労使慣行を本件一時金額とする変更は、これを法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであるということは出来ない。
(1) 労働者が被る不利益の程度 :突然に削減される不利益は極めて大きい。
(2) 変更の必要性の内容・程度 :企業経営上、一時金水準を切り下げる差し迫った事情があったとはいえず、当該労使慣行を変更する高度の必要性があったとは認められない。
(ア) Yの教職員が国家公務員、民間企業、国立大学などと比較して一時金の水準が高い
(イ) Yの財政状況が良好であったこと
(ウ) Yと同規模の他の私立大学と比較するとYの教職員の年収が低い水準にある状況
(3) 代償措置 :一時金減額の救済ないし激変緩和措置としての経過措置をとっておらず、何らの代償措置も行っていない。
(4) 交渉の経緯 :組合に対して何度も説明したといえるものの → より丁寧な説明が求められる点もある。→ 結果として合意には達していない。
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
毎日、2時間以上の勉強を欠かさず、一歩ずつでも前進致します。
顧問先様への新しい情報の発信及び、提案の努力を怠りません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる