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勤務実績不良、適格性欠如を理由の分限免職処分取り消し請求

(一般論)
同条に基づく分限処分については、任命権者にある程度の裁量権が認めらえるけれども、もとよりその純然たる自由裁量にゆだねられているものではなく、分限制度の上記目的と関係のない目的や動機に基づいて分限処分をすることが許されないのはもちろん、処分自由の有無の判断についても恣意にわたることは許されず、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して判断するとか、また、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法なものとなることを免れない。

指定医師の診断を得ないまま、直ちに、同項1号、3号所定の事由に該当するとして当該職員を分限免職することはできないと解すべき

(経緯)
平成11年、12年頃 メニエール症を発病
14年6月12日以降 通院加療
16年9月16日 総合失調症と診断
同年10月6日(72日間) 総合失調症のために自宅療養
17年6月14日(43日間) 心因反応のために自宅療養
同年8月12日(90日間) 心因反応のために病気休暇を取得

病気休暇の上限90日を超えたため同年11月10日、11日の2日間の分限休職処分を受けた。

(訴え)
Y市長がXに対してした地公法28条1項1号、3号に基づく平成21年3月31日付分限免職処分が違法であるとして、その取り消しを求めた。
1号 「勤務実績が良くない場合」
2号 「心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合」
3号 「その職に必要な適格性を欠く場合」

(判決)
本件分限処分を取り消した。

Xの問題行動は、総合失調症を中心とするXの精神疾患に起因するものと推認されるうえ、Yも、本件分限免職当時、Xの主治医の説明を受けて、当該問題行動がどうお精神疾患に起因するものであると認識していたと認めるのが相当

YはXに対して指定医の受診を命ずる受診命令を発令しておらず、主治医の意見も聞いていない。
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安全配慮義務違反


(重要文言)
タイムカードを認識してKの労働時間を把握することすらしておらず、Kが適切な業務遂行をなしえるような人的基盤の整備ないし時間外労働の減少に向けた適切な指示などをせずに、漫然と放置していたものであるから、注意義務を怠ったものと認められる。

(経緯)
平成19年4月24日午前7時頃 E所内の風呂場で自殺
平成21年12月9日 業務上災害であることを認め、遺族補償年金などの支給決定

(訴え)
Kは長時間かつ過密な業務に従事していたにもかかわらず、YがKの心身の健康を損なうことがないよう配慮する措置を何ら採らなかったため、うつ病エピソードを発症し、前記自殺をするに至ったと主張

Yに対し、不法行為ないし債務不履行に基づき、合計8,895万3,000円の損害賠償および遅延損害金の支払いを求めた

(判決)
Xらの請求をほぼ全面的に認容

本件自殺前6か月間の時間外労働は99時間30分
自殺前1か月間の時間外労働時間は166時間を超えていた。
Kの担っていた業務は過剰なものであったと評価することができる。

何時間の時間外労働であるか記載のない定額時間外賃金は認められるか?

(参考文言)
労働条件確認書は特に複雑なものではなく、むしろ簡略なものであり、賃金を同書面記載の金額に減額することについて自由な意思で同意したものと認めるのが相当

勤務状況報告書が存在しない期間については、Xが平成20年の同時期と同一時間の時間外労働をしたものと水にするのが相当

強行法規に反する合意を直ちに全面的任寿行なものと解するのは相当ではなく、職務手当の受給に関する合意は、一定時間の残業に対する時間外賃金を定額時間外賃金の形で支払う旨の合意であると解釈するのが相当

95時間分の時間外賃金であると解釈すると、安全配慮義務に反し、公序良俗に反する恐れさえあるというべきであるので、「労基法36条の上限として周知されている月45時間…を超えて具体的な時間外労働義務を発生されるものと解釈するのは相当でない」

(経緯)
平成19年 合理的な賃金体系に改める必要があるとの判断に至り、職種・職責に比して賃金が低い者の賃上げを行うとともに、賃金が割高な者(Xを含む)と個別的に話をして賃金を引き下げる。
具体的な説明はされなかった。
平成20年4月 労働条件確認書に署名押印するよう求められた。
同月29日 この書面に署名押印し、Yに提出

(労働条件確認書)
「基本給22万4,800円」「職務手当(割増賃金)15万4,400円」
何時間の時間外労働の対価であるかは記載されていない。
年2回の賞与

平成21年2月19日
基本給18万6,000円、職務手当7万4,700円に減額する旨の説明

同年4月10日 長時間残業をさせておきながら残業代も支払わず、一方的に賃金を切り下げようとするYの労務管理の在り方に強い反発を覚えたことから退職

(訴え)
Yに対し、未払い賃金の一部および遅延利息の支払いを求めるとともに、労基法114条所定の付加金の支払いを求めた。

(判決)
X・Y間の合意は、「時間外労働が何時間発生したとしても定額時間外賃金以外には時間外賃金を支払わないという趣旨で定額時間外賃金を受給する旨の合意…であったものと解される」

Xの請求を求め、Yの請求を棄却

特別加入者の労災適用範囲


(参考文言)
労働者を個々の建設等の現場における事業にのみ従事させ、本店などの事務所を拠点とする営業などの事業に従事させていないときは、営業などの事業につき保険関係の成立する余地はない。

(通達)
「特別加入者に係る業務上外の認定の取扱い」(昭50.11.14基発671号)

通達より、特別加入の申請にかかる業務内容と実際に災害の発生した業務内容とが全く異なる場合に保険給付されないかどうかということであろうと思われますが、特別加入した保険関係の業種と、災害の発生した事業(有期事業)とが異なる場合は、特別加入申請書の業務内容が異なることになりますので、前記認定基準にいう「特別加入の申請に係る事業のためにする行為」とはいえず、保険給付は行われないこととなります。

特別加入はあくまでも任意であり、同一の中小事業主が二つ以上の事業を行っている場合に、一つの事業のみについて特別加入することができるのはいうまでもありませんが、二つ以上の事業について重ねて特別加入することを妨げないとされています。そこで、これらすべての事業について特別加入しようとするためには、それぞれの事業ごとに、それぞれの事業について成立している保険関係に基づいて特別加入をしなければならないことになっています。

(経緯)
平成5年4月1日 特別加入者をK、業務の具体的内容を「建築工事施工(8:00~17:00)」として、法28条1項に基づく労災保険の特別加入の申請をし、同月2日、承認を受けた。
平成10年11月23日 前日から泊りがけで各工事の予定地の下見に赴き、その途中で事故が発生
平成12年2月15日 広島中央労基署長に対し、本件事故当時のKの行動は特別加入社として承認された行布内容の範囲とは認められないとの理由により、これらを支給しない旨の本件各処分をした。

(判決)
現場の下見は、ほとんどKが1人で行っており、従業員も同行したことがあるが、それは現場の作業に携わる従業員も補助として下見に行った方が作業等の計画を立てやすいということによるもの
Xの上告を全員一致で棄却した。

再雇用制度の雇止めは有期労働契約の雇止めに準ずる


(参照判例)
有期労働契約の更新拒絶(雇い止め)に関する東芝柳町工場事件および日立メディコ事件を参照

(参照文言)
継続雇用規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当
期限や賃金、労働時間などの労働条件については、継続雇用規程の定めに従う

(訴え)
Yに対し、同契約終了後の継続雇用を求めたものの拒絶されたことから、Yが定めた高年齢法9条2項所定の「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係わる基準」を満たすものを採用する旨の制度により再雇用されたなどと主張
Yに、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
同契約に基づき週40時間の労働時間に対応する額の賃金及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
定年後に締結した嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由がある
嘱託雇用契約の終期の到来によりXの雇用が終了したものとすることは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものと言わざるを得ない。

固定割増賃金の効力

(参考文言)
 上記意思表示は、それが同人らの自由な意思によるものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存すると言えるから、割増賃金債権放棄の意思表示として有効

 既に発生済みの割増賃金を、労働者がその自由意思に基づき放棄することは何ら労基法には反しない

 使用したトラックを返却するのに要する時間、本社から事務所への移動時間である20分間についても、Xらの労働時間に含まれるものと評価するのが相当

 固定割増賃金に関する合意がされた場合、実際に行われた時間外労働時間に基づいて計算した割増賃金の額が、あらかじめ定められた固定割増賃金の額に満たない場合であっても、基本給は満額支払われるというもの

(経緯)
平成17年6月1日施行 賃金規程(基本給中に一定の割増賃金を含ませる旨の規定は設けられていなかった。)
17年以降20年7月まで 割増賃金を支払わない取扱
平成20年6月12日 労基署から是正勧告
同年9月8日 同年7月までの割増賃金の支給、就業規則の改定等に関する下記の説明
第1確認書 自由な意思に基づき了承し、受領したことを確認する旨の書面にそれぞれ署名捺印した上、Yに提出
第2確認書 今回受領した割増賃金以外に、貴社に対する賃金債権はありませんとの文言が記載された書面にそれぞれ署名捺印した上、Yに提出

平成21年1月1日施行 賃金規程(管理監督者以外の従業員の基本給には、時間外労働等に対する一定の割増賃金を固定和臨死賃金として一部含ませることがある旨の規定)

固定割増賃金額を超える超過割増賃金の精算がなされることはなかった。
実際の時間外労働が45時間を下回る場合でも固定割増賃金全額が支給されていたにもかかわらず、同年8月から11月にかけて、基本給の一部が不支給

(訴え)
未払割増賃金及び付加金を求め、未払賃金の支払いを求めた。

(判決)
基本給中に含まれる固定割増賃金については、割増賃金の弁済としての効力を有するものと認められる。
Yに対して、労基法114条に基づき、未払い割増賃金額と同額の付加金の支払いが命じられた。

降格処分及び、解雇の有効性

(一般論)
降格処分の有効性 :以下①から③等の諸点を総合してされるべき
①. 使用者側の人事権の行使についての業務上・組織上の必要性の有無・程度
②. 労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適正を有するか否か
③. 労働者の受ける不利益の性質・程度

(重要文言)
解雇事由に該当する行為として求められるのは、懲戒処分ですでに制裁を受けた行為であって、解雇事由としてこれを重視するのは相当でない。
Yの業務を阻害するようなものとは認められず、いずれも解雇に値するほど重大なものと評価できない。

(訴え)
雇用契約上の地位にある事の確認
賃金未払分、賞与未払分、解雇後の未払賞与、未払賃金の支払いを求めた。

(判決)
解雇権を濫用したもので無効として、雇用契約上の権利を有する地位にある事の確認
未払賃金として平成20年8月から平成21年4月まで毎月10日限り14万5,000円、同年5月から同年12月まで毎月10日限り14万4,000円及び、各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払
解雇後の賃金として平成22年1月から本判決確定の日まで毎月10日限り50万円及び、各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める限度で理由があるから認容
その余は理由がないからいずれも棄却

事業承継に伴う労働条件の保全の必要性

<労働契約承継法>
承継事業に主として従事する労働者の労働契約は、当該労働者が希望する限り、会社分割によって承継会社などに承継される
転籍同意方式による契約は、労働契約承継法の趣旨を潜脱する契約であると言わざるを得ず、これによって従前の労働契約とは異なる別個独立の労働契約が締結されたものとみることは出来ない。
 4者合意の効力を認めることは、労働契約承継法が承継会社に分割会社と労働者間の労働契約を承継させることを労働者に補償した趣旨を実質的に失わせるものというべき

(重要文言)
ア 障害者に対し、必要な勤務配慮を合理的理由なく行わないことは、法の下の平等(憲法14条)の趣旨に反するものとして公序良俗(民法90条)ないし信義則(同法1条2項)に反する場合があり得る
イ 勤務配慮を行わないことが公序良俗又は信義則に反するか否かについては、①②を総合的に考慮して判断する
① 勤務配慮を行う必要性及び相当性
② これを行うことによるYに対する負担の程度

(経緯)
平成20年6月20日 申立外会社と申立外会社労組は、自動車運送事業部門を21年4月1日付でYに統合し、バス事業として継続
平成20年7月10日 「4者協議に関する合意書」を締結
同年10月24日 新たなルールに関する書面を従業員らに交付
平成23年3月4日 地位保全を申し立てた

(4者協議に関する合意書)
勤務配慮は原則として認めない。

(判決)
本件同意書、新ルール、4者合意のXに対する拘束力の有無などに関するYの主張が公認されるなどしない限り、被保全権利の疎明はされているものというべき
4者合意中の勤務配慮に関する条項は、公序に反し無効であると解するのが相当

非違行為に対する退職金不支給規定の効力

(重要文言)
非違行為発覚後の合意退職の場合であっても、任命責任が辞職を承認するか否かを判断するまでに事案の審査を了することができなかった場合には、辞職を承認したからと言って、懲戒解雇又は論旨解雇に該当しないと認められたとはいえない。

懲戒処分についての判断を留保した上で、辞職を承認するとの判断をしたものと認めるのが相当

<賃金後払いとしての性格を有する退職手当>
不支給ないし制限することができるのは、「労働者のそれまでの勤続の功労を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られる」

(経緯)
平成20年11月6日 自転車で通行中の当時16歳の女子高校生に対し、致傷の行為をはたらき、加療1か月を要する障害を負わせる。
平成21年6月22日 逮捕
平成21年7月13日 合意退職
平成21年11月26日 懲役3年(t年間の保護観察付執行猶予)の判決
平成21年12月24日 退職金を不支給とする旨の通知

(訴え)
退職金1,375万1,750円および、これに対する遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
諸般の事情を総合的に考慮すれば、Xの請求は退職金額の7割を減額した額である412万5,525円および遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。
 職場外での強制わいせつ致傷事件で有罪判決
 本件非違行為が私生活上の非行であること
 被害者との間では示談が成立して民事上、道義上の責任については解決済み
 Yが被害者との関係で使用者責任を問われるものではなかったこと
 Xが管理職ではなかったこと

従業員であったという主張は?

(重要文言)
XとYとの間に指揮命令関係が認められるか否かという実質によって判断
★ YがIT関連事業について全くの素人であり、Xの自由裁量に委ねられていた。

業務委託契約
委託者が受託者に委託料を支払い、売上から委託料を差し引いた金員を委託者が取得するという契約形態もあり得るので、経費の負担や利益の分配に関する合意内容と、雇用契約の成否とは直接結びつくものではない。

報酬額の決定方法
一般に、従業員ではない下請の個人事業者などについて、雇用保険等に加入するために賃金という体裁をとる事例も存在する。

(一般論)
XとYとの間の契約が雇用契約といえるか否かは、単に契約の形式のみによって決すべきではなく、仕事依頼への諾否の自由、業務内容や遂行の仕方についての裁量の有無・程度、勤務場所や勤務時間の高速の有無など、諸般の事情を考慮して、XとYとの間に指揮命令関係が認められるか否かという実質によって判断

支払われる報酬が賃金に当たるか否かの判断に当たっては、その額、計算方法、支払い形態において従業員の賃金と同質か否か、源泉徴収、雇用保険等加入の有無などが参考となる。

(本件)
事業計画書
Yは、クライマックスに営業に関する業務を月額30万円の報酬でアウトソーシングしていたと評価することも可能
(ア) X及びYは、クライマックスをYから独立した事業主体であると考えていたことが認められる。
(イ) XとYとの間に指揮命令関係が存在しなかったことを強く推認させる事実

勤務場所の拘束
Yの他の従業員とは明らかに異なる取り扱いを受けている。

勤務時間
Xは、土曜日のみならず、平日であっても、日中、明らかにしようと認められる行動を行ており、Yの承認を受けた形跡もない。


(訴え)
 Yから一方的に賃金を減額されたとして減額前の賃金との差額を請求
 割増賃金及び付加金を請求
 YがXの離職票に虚偽の事実を記載したことにより損害を被ったとして、不法行為に基づく損害賠償を請求

(判決)
XとYとの間で雇用契約が成立していたとは認められない。

(契約関連)
 Yが、Xのために、倉庫・ガレージを賃借して用意し、Xは自由に使用することができた。
 OA機器や社用車等もYが用意し、Xに使用させていた。
 XはYに対しクライマックスの事業計画書を提出したが、その中で、Xは、Yを親会社、クライマックスをYの営業会社として位置付けていた。
 Yは、IT関連の知識を有しておらず、仕事の進め方はXの裁量に任されていた。
 必要経費は、Yが負担
 売上が入金される預金口座の口座名義はYの妻(経理担当者)
 通帳もまたYの妻が管理
 OAフロア工事の場合は、請求書はYが発行し、代金もYに支払われていた。
 Xに対し、「給与明細書」を交付

(給与明細書)
 基本給の名目で15万円、外注費の名目で15万円の30万円ずつを支払っていた。
 基本給名目については、所得税の源泉徴収を行い、雇用保険料も支払っていた。
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
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