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偽装請負(違法派遣)に関する交代要請の正当性

(参考文言)
派遣法違反の事実を認めつつも、通常、偽装請負それ自体が、労働者の雇用関係に直接不利益を与えるものとは解されない。

<派遣法26条1項7号、40条1項、41条3号>
派遣先は労働者派遣契約において「安全及び衛生に関する事項」や「苦情処理に関する事項」を定める義務があり、このことは偽装請負(違法派遣)の場合でも異ならないところ、設けられていない中で、派遣先による交代要請は安易なもので正当な理由がなく、交代条項に基づく権限を濫用した

(経緯)
B社と国Yが設置する神戸刑務所長との間で管理栄養士業務委託契約を締結
管理栄養士X1が本件刑務所に派遣
本件刑務所総務部用度課長の主導のもと、管理栄養士の交代要請をされる

(訴え)
これらが原因で就労の機会を奪われたことから、損害賠償責任を負うと主張

 本件業務委託契約は偽装請負
 正当な理由がないのにBに交代要請をし、実質的に違法な退職強要などを行った
 職場環境調整義務を尽くさなかったこと等

(判決)
G用度課長も苦情・要望の処理を放置し、容易に交代条項の規定により交代要請を行おうとしたとして、交代条項に基づく権限を濫用したものとして交代要請は違法
本件刑務所長及びG用度課長には過失があるとして、X1の控訴を認容
経済的損害(120万円)、精神的損害(30万円)、弁護士費用15万円の合計165万円を認めた。

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固定残業の有効性

(重要文言)
<固定残業の有効性>
 基本給に時間外労働手当が含まれると認められるためには、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分が判別できることが必要
 時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分が労基法所定の方法で計算した額を上回っているか否かについて、労働者が確認できるようにすること
 賃金規定所定の時間外労働手当相当額が通常時間外の割増賃金のみを対象とするのか休日時間外の割増賃金をも含むのかは判然とせず、割増賃金部分の判別が必要とされる趣旨を満たしているとはいいがたい
<規定自体の合理性>
次の内容に鑑みれば規定自体の合理性にも疑問なしとしないとも指摘
 労基法36条の上限として周知されている月45時間を大幅に超えていること
 改定時に同規定が予定する残業時間を引き上げるにあたり、支給額を増額するのではなく、基本給全体に対する割増賃金の割合の引き上げで対応していること
<試用期間中の解雇>
試用期間中の労働契約は試用期間中に業務適格性が否定された場合には解約しうる旨の解約権が留保された契約であると解されるから、使用者は留保した解約権を通常の解雇よりも広い範囲で行使することが可能であるが、その行使は解約権留保の趣旨・目的に照らして客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当として是認されうる場合でなければならない。

(事件概要)
平成23年5月10日 Y社に獣医として入社
平成23年11月9日 解雇

<就業規則>
休日は原則として週休2日制とし、各人の休日について事前にシフトで定める

<賃金規定>
以下の式により算出される金額を75時間分の時間外労働手当相当額及び30時間分の深夜労働手当相当額として、能力基本給および年功給に含むもの

<固定残業代規定>
75時間分の時間外労働手当相当額=(能力基本給+年功給)×34.5%
30時間分の深夜労働手当相当額=((能力基本給+年功給))×3.0%
その月の時間外労働手当、法定休日労働手当及び深夜労働手当の合計額が前各号の時間外労働手当相当額を超える場合には、会社は、その超過分について支払う。

(訴え)
解雇理由とされる事実自体が存在せず社会通念上相当性を欠いているなどと主張
① 雇用契約上の地位確認
② 本件解雇後の23年11月から本判決確定まで毎月末日限り30万2,000円の賃金及び遅延損害金
③ 割増賃金及び遅延損害金
④ 付加金
⑤ 精神疾患に罹患したとして、不法行為に基づき、慰謝料および遅延損害金

(判決)
割増賃金の支払い、付加金の支払いを命じている。
留保解約権の濫用として無効

部長に対する懲戒解雇などの有効性

(参考文言)
<労働者の職位や役職を引き下げる降格処分>
 人事権の行使として就業規則などに根拠規定がなくても行い得る。
 使用者が有する人事権といえども無制限に認められるわけではなく、その有する裁量権の範囲を逸脱、またはその裁量権を乱用したと認められる場合は、その降格処分は無効
 特に、給与も減額されるなど不利益を被る場合には、その降格に合理的な理由があるか否かは、その不利益の程度も勘案しつつ、それに応じて判断されるべき

<懲戒権>
顧客リストの送信により、Yに実害が生じた形跡は認められない

<不法行為>
Xの行為も懲戒事由に該当する行為であって、責められるべき点があることも否定できないことに鑑みると、解雇後の賃金損失は填補されており、賃金相当額以上に損害賠償を命ずべき特段の事情はない

(経緯)
部長職として、賃金を月額48万円とする期間の定めのない雇用契約を締結
平成21年12月14日 分析のため必要である旨を告げて、Y社取締役からY社顧客リストのデータを受け取った。
同月18日および24日 訴外B2社の代表取締役CにメールでY顧客リストを送信(上司への相談なし)
平成22年1月19日 Yの退会済の過去の顧客から、Yの宣伝メールが送信されたと苦情メールが送信され、Xに対して注意をし、Xもその注意を受け入れた。
平成22年3月30日 部長職降格・月額給与5万円(部長職手当相当額)降給処分
平成22年4月7日 Xの送受信メールの内容の調査を行い、顧客リストを送信したCへのメールを発見し、XがB2に転職して、顧客情報を不正に利用することを企図していると推測
平成22年4月8日 Xを問いただしたところ認めたが、転職を検討したこともあるが取りやめた、CがYの顧客情報を利用したことはないはずであるなど述べた。
顧客データ送信行為について、就業規則61条および62条に基づいて、Y社から懲戒解雇処分

(訴え)
解雇が無効であるとして、地位確認および解雇後の賃金の支払いを求める。
降格・降給処分が無効であるとして、部長の地位にあること及び降格・降給処分前の額である月額48万円の基本給の支払いを受ける地位にあることの確認並びに平成22年4月以降本判決までの賃金支払い
懲戒解雇などが不法行為に当たるとして、損害賠償を請求

(判決)
 降格・降給処分を裁量権の濫用により無効

具体的事実のうち、顧客からの苦情のみで、どの程度広範囲の顧客に対し送信したかについては証拠上明らかでなく、役職手当相当額5万円の賃金減額を伴う処分の合理性を基礎づけることはできない。

 懲戒権の濫用に当たり、無効

顧客リストの送信には、Y商品の販売代理店の営業を促進させ、Yの売上を伸ばすという面があったこと
当時行い得た調査を十分に行わずに踏み切っている。

 不法行為の成立を否定

懲戒免職処分の有効性

(事件概要)
22年6月24日 同僚のAと河川清掃業務に従事していた際、Aが拾い上げた鞄の中から10万円程度の千円札の束を見つけ、バケツの水で洗った後、その約半分をXに交付する様子を、カメラで気づかれないように撮影(Xは受領した後そのまま鞄に戻し、塵芥槽内に放置した)
平成22年12月22日付 以下を理由に大阪市長から懲戒免職処分

(ア) 上記の通り、現金をAと配分してその後廃棄
(イ) 職場で蓄えていた拾得金銭の一部をジュース代に使用
(ウ) 拾得した物品を私的に取得
(エ) 暴言や恐喝などの行為
(オ) 河川事務所内の壁や備品を破損

(訴え)
その理由としている事実の誤認に加え、裁量権の逸脱又は濫用に違法があるから無効であるとして、同処分の取消を求めた。

(判決)
同僚から分配された約5万円を受領した後、元あったカバンに戻して廃棄に至らせた行為は、所有者への返還意思がなかったことが明らか。
Xが拾得した現金やICカード等を領得後に廃棄したこと、拾得したリュックを使用したことは懲戒事由に当たり、また同僚、上司らに対する暴言や器物破損行為が認められるから、懲戒事由

しかし、次の事案を指針の標準例も勘案すると、懲戒処分歴のないXに更生の機会を与えることなく直ちに懲戒免職とした処分は重きに失し、違法というべき
 長年の河川事務所ぐるみの物色・領得行為があり、それを招いたY市に帰責事由が認められること、
 領得によりXは利益を得ておらず、着服した場合との違法性に大きな違いがあること
 一連の粗暴行為に対するYの対応にも問題があったこと
 Xの内部告発により不適切な公務の是正が図られたことは有利な事情と考慮すべきこと

殺害と業務起因性

(参考文言)
労働者が業務に起因して負傷または疾病を生じた場合とは、業務と負傷または疾病との間に相当因果関係があることが必要

労働者が業務遂行中に、同僚あるいは部下からの暴行という災害により死傷した場合には、当該暴行が職場での業務遂行中に生じたものである限り、当該暴行は労働者の業務にない存または随伴する危険が現実化したものと評価できるのが通常
<例外>
労働者との私的怨恨または労働者による職務上の限度を超えた挑発的行為又は侮辱的行為によって生じたものであるなど、労働者の業務とは関連しない事由によって発生したものであると認められる場合

(事件概要)
Kが警備員として勤務していたCに殺害
Kの遺族であるXらがKの業務に起因するものであると主張して、遺族補償年金と遺族補償年金前払い一時金及び葬祭料とをそれぞれ不支給とした監督署長の各処分の取消を求めた。
(判決)
Xらの請求を認容

<相当因果関係>
恋愛感情も決してないとはいえず、良識を失い、ストーカー的行動を引き起こすことも、全く予想できないわけではなく、職務に名依存する危険性に基づくものであると評価するのが相当

<例外の有無>
KとCとの間には業務をかけ離れた付き合いは全くなく、CがKの業務とは関係がない私的怨恨、または職務上の限度を超えた挑発的行為もしくは侮辱的行為、あるいは、喧嘩闘争によって生じたものと認めることはできない。


自殺に対する安全配慮義務

(参考文言)
<予見可能性>
適応障害の発症及びこれによる自殺は、長時間労働の継続などにより疲労や心理的負荷などが過度に蓄積し、労働が心身の健康を損なう態様の一つ
使用者はそのような結果を生む原因となる危険な状態の発生自体を回避する必要がある。
就労環境などに照らし、労働者の健康状態が悪化する恐れがあることを容易に認識しえたというような場合には、結果の予見可能性が認められるものと解するのが相当

<不法行為>
Y2はY1に代わって業務上の指揮監督を行う権限を有する者として、注意義務の内容に従ってその権限を行使すべき義務を負っている。

<逸失利益の算定>
Y1における給与体系が男性大卒全年齢平均年収よりも相当程度低い水準であることに鑑みれば、男性学歴系全年齢平均年収を基礎収入とするのが妥当

<損益相殺>
労働福祉事業の一環として、被災労働者の援護などによりその福祉の増進を図るために行われるものであるため、Xらが受領した遺族特別支給金及び意足特別一時金を損害額から控除することはできない。


(経緯)
平成21年5月頃まで Y2(C1営業所長)からC1営業所における従業員の増員の要請
同年6月 LをC1営業所に勤務
同年8月 Fを勤務
平成21年9月中旬 適応障害を発症
平成22年11月30日 C労働基準監督署長は、K(大卒者)が業務上の心理的負荷により適応障害を発症した結果、自殺に至ったものとして、自殺が業務災害に当たるものと認定し、遺族補償一時金837万6千円、遺族特別支給金300万円、遺族特別一時金13万6千円および葬祭料56万6,280円を支給

(業務起因性)
蓄積した疲労と相まって、正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態となり、自殺
 自殺前3か月前の時間外労働 月129時間50分に上る
 自殺5か月前 月100時間程度か、それを超える恒常的な長時間労働
 内容的にも肉体的・心理的負荷を伴う業務に従事
 適応お生涯発症後も引き続き長時間の時間外労働への従事を余儀なくさせられ、状態が悪化

(予見可能性)
Kの業務の過重から、勤務状態がKの健康状態の悪化を招くことは容易に認識し得た。

(安全配慮義務)
Kの業務の負担や職場環境などに何らの配慮をすることなく、その長時間勤務などの状態を漫然と放置し、Y1の行為は、不法行為における過失を構成する。

(Y2の不法行為)
Y2の権限の範囲内で期待される相応の行為を行っていたと評価でき、義務に違反したとまでいうことはできず、不法行為法上の責任を負うものとは認めることができない。
 従業員に対し、業務に余裕ができやすい夕方の時間帯などに各自適宜休憩を取るように指導
 増員してもなお、長時間労働が解消されていないことを認識することができた。
 Y1における人員配置の権限があったとは認められない
 他の営業所においても報告とは異なる長時間労働が常態化していたものと伺われる。
 毎月の残業時間の報告によって、従業員の長時間労働が解消されていないことをY1に認識させていた。

(損害額)
<過失相殺>
出勤前の飲酒や自殺前日の出勤前の飲酒も、適応障害を発症したことによる問題行動と評価でき、業務の付加以外の私的な出来事や個体側の要因に起因してこのような問題行動に至ったとはいえないことから、Kの過失として評価することはできない。

Kの損益相殺後の死亡逸失利益残元金4,110万6,580円および慰謝料2,200万円と、弁護士費用630万円が認容

セクシュアルハラスメントとの因果関係

(参考文言)
平成21年4月26日付の作成した診断書には、平成19年12月に社長にレイプされたために抑うつ状態に陥ったとの記載
Y2がXとの性行為に及んだ1年4か月後にXの供述のみに基づいて作成されたもの
現在の症状が平成19年12月にY2との性交渉を持ったことによって生じたと認めることはできない。
Y2との性交渉を持った後も平成20年2月までは通常通り出勤
性交渉を持ったこととの間に相当因果関係があるとは認めがたい。

(条文)
 民法715条(使用者等の責任)
1. ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2. 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3. 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

 民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(訴え)
Y1社の代表者Y2およびA店店長であったY3によって強姦などされたことに加え、強姦などされたことに関するY1社会長の言動によって、肉体的精神的苦痛を受けたとして、不法行為の損害賠償請求権に基づき、慰謝料など損害賠償の支払いを求めた。

(判決)
Y2の不法行為およびY1社の使用者責任のみを認め、連帯して慰謝料300万円の支払いを命じた。

<Y2の不法行為>
Y2はXに対して人事権を有するY1の代表取締役であり、Y2の要求に応じて性行為を受け入れたことについては、それがXの望んだことではないことは明らかで、Xは自分の置かれた立場を考えてやむなく受け入れたものと認めるのが相当
心理的に要求を拒絶することが困難な状況にあったものと認められ、性行為を受け入れたからと言って、Xの自由な意思に基づく同意があったと認めることはできない。

<使用者責任>
Y2がXの自宅を訪問した行為はY1社の事業の執行と密接な関係性を有すると認められるから、不法行為につき、使用者として、損害賠償義務を負う。
1. 深夜に電話で自宅を訪問することを告げられた際、Y2から業務用メールに対する対応の件で注意を受けるのではないかとも思い、来訪を了承
2. Xの住宅は社宅で、一人暮らしの生活ぶりや部屋の整頓の状況を抜き打ちでチェックするために来訪するのではないかと思ったこと

<Y1の不法行為>
事業主は、職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が害されることのないよう雇用管理上必要な措置を講ずる義務を負っている。
以下の結果、Xに対するセクシュアルハラスメントという事態に至ったことが認められるから、損害賠償義務を負う。
1. 幹部社員の間でも職場におけるセクシュアルハラスメントがあってはならないとの意識が希薄
2. 防止に向けた方針の明確化やその周知、啓発が十分になされていなかった

<Y3の不法行為>
不法行為を否定
平成19年12月中旬から20年2月までの間、Y3と極めて親密な関係にあったと認められ、自由な意思に基づく性交渉を持ったものと認めるのが相当

<Y1社会長の不法行為>
不法行為を構成すると認めることはできない。
Xの心情を傷つけるものが含まれていたことがうかがわれるが、他の客には気づかれないような態様で発言されていることなどに照らし、社会通念上許容される限度を超える違法なものであるとまではいえない。

時間外手当など請求

(参考文言)
労働による賃金債権の放棄がされたというためには、その旨の意思表示があり、それが当該労働者の自由な意思に基づくものであることが明確でなければならない。

(訴え)
 YがXを社会保険に加入させてなかったこと及びXに有給休暇を取得させてなかったことは不法行為に当たると主張して、精神的損害に対する慰謝料の支払い
 平成17年5月から18年10月までの時間外手当及び付加金の支払い

(労働条件)
手取り額を増やしたいのであれば、自分で国民健康保険や国民年金に加入する方法もあるなどの説明を受け、雇用保険には入りたいと答えていた。

月額の稼働時間は140時間から180時間であれば月額基本給が41万円
稼働時間が180時間を超えた場合は1時間当たり2560円の残業代を支払い
稼働時間が140時間に満たない場合には1時間当たり2920円を控除する旨合意

有給休暇の定めはないので、毎月の稼働時間の範囲で調整してほしい旨

(判決)
社会保険に加入したかったという希望が妨害されたということはできないとして請求を退ける。

実質的にみると有給休暇を付与されていた場合と同じような休暇取得状況にあったということができるとして請求を否定

Xの自由な意思に基づく時間外手当の請求権を放棄する旨の意思表示があったとは言えない。
月間180時間以内の労働時間中の時間外労働についても、月額41万円の基本給とは別に、同項の規定する割増賃金を支払う義務を負う。
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
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