(重要文言)
解雇処分後に給与減額処分はなしえない。
解雇処分後に従業員の離職を職務放棄とみることはできないとして、給与減額の根拠が否定
(訴え)
第1事件
Yに対し、
① Yに解雇されるまでの未払い賃金と立替金の支払い
② 解雇予告手当の支払い
③ 違法な業務を行うクリニックで勤務させられたことや些細な事柄で怒鳴りつけられるというパワーハラスメントを受け、
精神的苦痛を受けたなどして慰謝料の支払い
④ 労基法114条に基づく解雇予告手当金と同額の付加金の支払い命令を求めた
第2事件
Xらが業務命令に従わず職務放棄
訪問看護サービスの実施が不可能になり損害を被ったなどと主張して、
① 債務不履行(民法415条)もしくは不法行為(同709条)にも続く損害賠償請求又は
② 使用者の被用者に対する求償権行使(同715条3項)として損害金などの支払いを求めた。
(判決)
Yに対して、Xらにつき慰謝料各50万円を認容
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(参考条文) <労基法116条2項が家事使用人を適用除外した趣旨> 労働が一般家庭における私生活と密着して行われるため、労基法による国家的監督・規制を服せしめることが実際上困難であり、 一般家庭における私生活の自由の保障との調和上好ましくないという配慮に基づくものであり、 この適用除外の範囲については厳格に解すべき 本件 その従事する作業の種類、性質などを勘案して、その労働条件や指揮命令の関係などを把握することが容易 一般的における私生活上の自由の保障と必ずしも密着に関係するものでない場合 当該労働者を労働基準法の適用除外となる家事使用人と認めることはできない。 (参考文言) 深夜勤務について、子供に何らかの問題が発生した場合などについては、直ちに対応することが求められていた。 使用者の指揮命令下から外れて労働からの解放が保障された休憩時間があったとは認められない。 深夜労働の割増賃金は、基本給月額30万円のうちのどの部分が何時間分の深夜労働の割増賃金に当たるものとして合意されているかが、明確に区分されていなければならない。 (事件概要) Yに雇用され、その代表者個人宅でベビーシッター等の業務を行っていた原告X1、X2が、Yに対して、主位的に、 ① X1が解雇無効による地位確認 ② 平成22年5月以降の給与の支払い ③ 未払い給与及び時間外割増賃金並びにこれと同額の付加金の支払い ④ Yを退職したX2が時間外和臨死賃金及びこれと同額の付加金の支払い ⑤ 予備的に、不法行為に基づき、Xらの請求債権と同額の損害賠償を求めた。 <勤務条件> 所定労働時間が ① 午前8時から午後4時 ② 午後3時から午後11時 ③ 午後11時から翌日午前8時(拘束時間9時間であるが実質1時間以上の休憩が可能となるため、8時間勤務として扱う。) それぞれ1コマとし月22コマを勤務 月額30万円、コマ数を超過した時間については1時間当たり2,000円 (判決) 労働基準法の適用除外となる家事使用人と認めることはできない。 ① 業務の中心となっていたのは、夢子の面倒を見るというベビーシッターの業務 ② 1コマ8時間という勤務時間が設定 ③ タイムカードによる時間管理が行われており ④ 月22コマという所定のコマ数を超えると残業代が支給 ⑤ 業務の内容が各種マニュアルに明示 ⑥ 丙川夫妻が指示・監督などを行っていた。 1コマ8時間・月22コマとする勤務時間体制について、労基法32条(週40時間)に違反する部分は無効 割増賃金の基礎賃金部分が基本給の支払いにより支払い済みとみることはできない。
(事件概要) 経理および輸入業務サポートなどの業務に従事 平成22年 Xは手足のしびれなどに苦しむようになり 同年5月 ギラン・バレー症候群および無顆粒球症が考えられる旨の診断 23年11月 独歩困難、手指機能障害(握力0㎏)のため労務不能 平成24年1月16日 Y社はXに対し、就業規則に定める解雇理由である「身体の障害により、業務に耐えられないと認められたとき」 またはそれに「準ずるやむを得ない事情があるとき」に該当するものである 同年2月20日付での解雇予告 同年5月2日退院時 D1医師の診断では、XはPC作業等が可能な状態であり、事務的業務であれば就労可能 (訴え) Y社によりされた解雇は権利の濫用である 労働契約上の権利を有する地位の確認を求める 前記労働契約に基づき (ア) 平成24年2月9日から同月末日までの未払い賃金 (イ) 24年3月以降の賃金 (ウ) 21年10月1日から22年4月30日までの割増賃金 (エ) 労働基準法114条に基づき、付加金の各支払い (判決) 3カ月分の給与を支払うことで退職してほしい旨のYからXに対する打診に対し、 失業保険の受給の関係で欠勤期間を平成23年11月以降まで延長してほしい旨をXが要望 これにYが応えて解雇を見合わせていたことなどの事情が認められる 「本件解雇予告につき、社会通念上相当と認められない事情があるとは認められない」
(参考文言) Xが同日に自動車内で暴行を加えたとの事実を認めるに足りる証拠はないから、 本件懲戒解雇につき、解雇事由を認めるに足りる証拠はなく、無効 懲戒処分が無効であることから直ちに不法行為が成立するものではなく、 別途、不法行為が成立要件を充足するか否か検討して判断すべき (経緯) 平成21年9月18日 Y1と初めて面識を持った。 翌日 打ち上げ終了後、一緒に帰宅 同月22日 自動車でドライブに行き、夕食(本件ドライブ) その後、XとY1は、電話やメールで連絡を取り合い、互いの自宅を訪れ、一緒に外食するなどしており、 平成21年12月以降 性交渉もあった。 22年6月21日 XがY1に対して、メールを送信し、これを最後に双方ともに連絡を取らなくなった。 同僚の女性教員Y1に対して車中で暴行を加え、わいせつ行為を行ったとして、Y2学院から懲戒解雇 (訴え) Y2に対し、懲戒解雇が無効であるとして、 ① 労働契約上の権利を有する地位にあることの確認 ② 懲戒解雇後の平成23年4月1日からの未払賃金の支払いを求める。 ③ 本件懲戒解雇が不法行為に当たるとして損害賠償の支払い (判決) Xの供述態度が原因で事実認定が困難となった面もあるから、 本件懲戒解雇が社会的相当性を逸脱する不法行為法上違法な処分であると評価することはできない。
(重要文言) 使用者が労働者に出向を命ずるにあたっては、当該労働者の同意その他出向命令を法律上正当とする明確な根拠を要する <出向命令権> 次より、訴外F社が出向先として予定されていることなども合わせ鑑みれば、 労働者の個別の同意に代わる明確なかつ合理的な根拠がある。 就業規則 :異動(出向を含む)を命ずる場合がある旨の定め 国内派遣社員規定 :出向先における労働条件および処遇について配慮する内容の規定が設けられ 職種や職務内容 :特段の限定がない 誓約書 :入社に際し、就業規則その他服務に関する諸規定を遵守し人事異動命令に従う事などを約束する 出向命令権の行使が権利濫用に当たる場合には、出向命令は無効 <権利濫用に当たるか否かの判断> ① 出向を命ずる業務上の必要性、 ② 人選の合理性、 ③ 出向者である労働者に与える職業上又は生活上の不利益、 ④ 当該出向命令に至る動機・目的など を勘案して判断 出向命令が人事権の濫用に当たるとしても、そのことから直ちに当該出向命令が不法行為に該当するわけではない <不法行為該当性の有無> 当該出向命令の内容 発令に至る経緯 労働者が被る不利益の内容及び程度など <差止請求> 差止請求権(さしとめせいきゅうけん)とは、ある者が現に違法または不当な行為を行っている場合や行うおそれがある場合において、当該行為をやめるよう請求(差止請求)する権利をいう。各法令に規定のあるもののほか、解釈上認められるものもある。 その前提として、行為が反復継続し、今後もこれが継続するおそれがあることをその要件とする (事件概要) 平成23年5月26日 各部門に対し、一律に6%の割合で余剰人員を選定 X1、X2を含む1614名が選ばれた。 平成23年7月13,14日 本件希望退職に応じるよう勧奨 面談後、X1は2回、X2は3回にわたり、勧奨されたが、いずれも断った。 平成23年9月10日 出向命令 (訴え) 業務上の必要性及び人選の合理性を欠きXらに著しい不利益を与えるものであるうえ、 Xらに自主退職を促す不当な動機・目的に基づくものである 出向命令権の濫用として無効 ① 本件出向命令に基づく出向先において勤務する労働契約上の義務が存在しないことの確認 ② Xらへの退職強要行為又は退職に追い込むような精神的圧迫に差し止め ③ 労働契約上の信義誠実義務違反及び不法行為に基づく損害賠償請求として、Xらに対しそれぞれ220万円および遅延損害金の支払い (判決) ① F社における作業は立ち仕事や単純作業が中心 ② それまで一貫してデスクワークに従事してきたXらのキャリアや年齢に配慮した異動とは言い難く ③ 身体的にも精神的にも負担が大きい業務であることが推察 ④ 退職勧奨を断ったXらが翻意し、自主退職に踏み切ることを期待して行われたもの ⑤ 人選の合理性(対象人数、人選基準、人選目的など)を認めることもできない 出向命令は、人事権の濫用として無効 退職勧奨は、やや執拗な退職勧奨であったことは否めないが、 説得活動として社会通念上相当と認められる範囲の正当な業務行為であったというべきであり 不法行為には当たらない B及びCによる面談以外の場で、Xらに対し、退職勧奨が行われた事実はないとして、Xrなお請求を棄却
(重要文言) 被災職員が時間外労働を行っていたことが認められた場合、平均給与額算定の際には時間外労働に対応する未払い手当を算入すべき 平均給与額算定に当たり、時間外勤務、休日勤務、夜間勤務などにつき、前提認定にかかる在院時間を前提に、 例えば、その何割かを割合的に認定するなどの方法により、自ら合理的に相当な時間外労働を算定しこれに基づく一定の未払い手当を行為慮すべきであったといえる。 (事件概要) 19年7月6日付で、法に基づく遺族年金補償一時金として Kの両親であるXらに対し各417万9,500円を、 葬祭補償としてKの父であるX1に対し56万5,770円を支給する決定 (訴え) Xらが、支給額の基礎となる平均給与額の算定に当たって考慮されるべき未払いの時間外勤務手当、休日勤務手当、夜間勤務手当(以下、未払手当)が算入されていないと主張 Y基金に対して、改めて適正額の支給決定を受ける前提として、本件各支給決定の取消を求めた。
(重要文言) ストレスによる影響の程度は個人差がある 公務起因性の有無は、被災者自身を基準に判断すべき 仮に客観的な基準判断するにしても、公務の提供が期待されているもののすべてを対象とし、 そのような者の中で最も危険に対する抵抗力の弱いものを基準として判断すべき 日常業務とは質的に著しく異なるほか、いずれの業務の内容も難易度が高く責任の重いもの 死亡までの16日間の時間外勤務時間も、通達が定める2週間に50時間との基準に近いもの これらの業務は、Kはもとより平均的労働者にとっても相当に過重なもの 相当な精神的負荷及び肉体的負荷を生じさえるものと認められる (事件概要) Kが勤務中に倒れ、心室細動により死亡したことは、公務に起因するものとして、Kの配偶者であるXが、Kの死亡について公務災害認定請求 Kの死亡を公務外の災害と認定する旨の処分 Xが同処分の取消を求めた。 <基礎疾患> 平成8年8月 心房細動および心室肥大があり、不整脈があるなどとして楊精密検査との判定 同年10月 全身倦怠、胸内苦悶を訴えて受診し、心房細動、心拡大、左室収縮低下が認められ、拡張型心筋症と診断 9年3月 拡張型心筋症及び慢性心房細動との診断を受けて入院した後、薬物療法を開始し、退院 約2か月に1回の通院治療 11年 高血圧症、左室肥大、冠不全 12年 脳梗塞疑 15年 播種性血管内凝固症候群、僧帽弁閉鎖不全症、心不全 (判決) 町の海外派遣事業に関して住民から問題視され、マスコミ対応に追われる中でのKの死亡 公務による過大な負荷が、Kの基礎疾患である拡張型心筋症をその自然的経過を超えて増悪 Kを死亡させたものと認められる。 公務とKの死亡との間には相当因果関係がある。
(重要文言) <損害賠償の範囲> Yの担当職員がXの弁明にもかかわらず、職務上通常尽くすべき調査義務に違反 Yによる本件停職処分は国家賠償法上も違法であり、YはこれによりXが被った損害を賠償する責任がある。 本件停職処分がなければ昇給できていたと主張し、逸失利益の支払いを求めたが、これを裏付ける証拠はないとされた。 (経緯) 平成22年○月○日 Yは、Xが「平成18年4月1日から平成21年7月15日までの間に、少なくとも72回にわたり、電車の遅延などを理由として出勤次元に遅れた上、72回のうち71回について、部下の職員に指示して、出勤記録を出勤の表示に修正させた」 Xを停職3か月の懲戒処分 本件停職処分を行った事実を報道機関及びYのホームページなどに公表 (訴え) Xが、Yに対し、本件停職処分の取消を求めるとともに、本件停職処分に伴う減収分や慰謝料等として557万198円の損害賠償の支払いを求めた。 (判決) 本件停職処分を取り消すとともに、Yに対し、386万1,239円の支払いを命じた。 期末勤勉手当などの返納分86万3,449円 本件停職処分中の3カ月分の給与183万4,086柄 期末勤勉手当の減額分76万3,704円 慰謝料20万円 弁護士費用20万円
(重要文言) 「公務上死亡した場合」とは、職員が公務に基づく負傷または疾病に起因して死亡した場合 その負傷または疾病と公務との間には相当因果関係が存在することが必要 冬季の深夜に約1時間30分ほど屋外でパワーショベルの操作に従事 待機時間も含めると約2時間10分程度、3度以下という低い気温にさらされながら屋外での作業に従事 相当程度の寒冷刺激を受けたもの プラーク破綻の要因である交感神経の一過性の過剰な緊張を生じさせて急性心筋梗塞発症の基礎となる血管病変などをその自然的経過を超えて著しく増悪させえるもの 直ちには閉塞に至らず、特段の自覚症状も出ないまま、その後の時間の経過の中で閉塞に至って急性心筋梗塞を発症したもの 本件勤務から約64時間を経ての本件疾病発症との間に相当因果関係を認めた。 (事件概要) 冬季の深夜に戸外の作業に従事する勤務を行った2日後に倒れ、急性心筋梗塞と因果関係を有する疾病により死亡 処分行政庁が、地公災法45条1項に基づき、Kの死亡は公務外の災害であるとする公務外認定処分をしたため、Xがその取消を求めた。
(重要文言) 懲戒解雇は、懲戒処分の中でも従業員の身分を奪う最も重い処分 懲戒解雇事由の解釈については厳格な運用がなされるべき 拡大解釈や類推解釈は許されず、情報が外部に流出する危険性を生じさせただけ 情報を「外に漏らさないこと」という服務規律に違反したことと同視して懲戒解雇ができるとのY主張は採用できない。 (事件概要) <吸収合併する以前> 自費で購入したハードディスクを使用 <合併後> Yは、Xの私物であることを把握していなかった。 Aは私物の持ち出しにも許可が必要である旨説明 Xは私物であるから持ち帰るのは自由である、情報は消すつもりであるという趣旨の回答 データが外部に流出したかどうかは確認できなかった。 Y社の従業員であったXが懲戒解雇 懲戒解雇は解雇権の濫用であり無効 雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認並びに解雇後の賃金及び遅延損害金の支払いを求める。 違法・無効な懲戒解雇により損害を受けたとして、その賠償を求めた。 (判決) 結論としてXの地位確認と未払賃金・遅延損害金の支払い請求を認容