fc2ブログ

派遣労働者の黙示の労働契約

(重要文言)
<黙示の労働契約>
派遣元会社が名目的存在に過ぎず、労働者の労務提供の態様や人事労務管理の態様、賃金額の決定などが派遣先会社によって事実上支配されているような特段の事情が必要

<派遣法40条の4の申込義務>
公法上の義務で、これによって私法上の雇用契約申込義務が発生するわけではない
労働契約関係を形成したり、擬制したりするものでもない
派遣元から派遣先であるYへの抵触日通知も欠くとして、Yの直接雇用申込義務が否定

<公法と私法>
公法は国と人との関係、私法は人と人との関係を規定した法律です。
詐欺を行った人は、国との関係では犯罪となり、相手との関係では詐欺による契約を取り消される可能性があるということです。
同様に、労働契約に関し企業側に違反行為等があった場合、企業は労働基準法により国等の指導を受けるとともに、その違法行為に基づく労働契約から生じる労働者との紛争に関しては、労働契約法に基づき処理されることになります。

(重要条文)
雇用契約の申込みが義務付けられるのは、次の2つの場合です。
派遣受入期間の制限のある業務について、派遣受入期間の制限への抵触日以降も、派遣労働者を使用しようとする場合(労働者派遣法第40条の4)
派遣受入期間の制限のない業務について、同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、その同一の業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合(労働者派遣法第40条の5)

(事件概要)
派遣元会社から派遣先会社であるY社に対し、Yの工場などにおいて就業していた原告Xら12名が、Yと派遣元との間の労働者派遣契約の終了に伴ってYの向上における就業を拒否されたことについて、
① 請負契約当時のXら、Y、派遣元である訴外会社の三者間の契約関係は、違法な労働者供給
XらとYとの間で直接の労働契約関係が成立
その後も、当該関係は変化なく維持され、XらとYとの間には直接の労働契約関係が継続していたというべき
② XらとYとの間には、黙示の労働契約が成立していたというべき
③ ①及び②の労働契約の成立が否定されるとしても、
労働者派遣法40条の4の雇用契約申込義務により、XらとYとの間には労働契約が成立していた主張
Yに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び未払い賃金と遅延損害金の支払いを求める。
④ Yが長年にわたりXらの労務提供を受けてきた中で、Xらに対する条理上の信義則違反などの不法行為が成立すると主張
Yに対し、それぞれ200万円の慰謝料及び遅延損害金の支払いを求めた。

YにおけるXらの就労期間は、短いもので約4年、長い者では約13年4か月に及んでいた

(判決)
製造業における労働者派遣は、平成16年2月29日以前は派遣法によって解禁されていなかった。
派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質などに照らせば、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の労働契約が無効になることはない
上記三者間の関係は、派遣法2条1号にいう労働者派遣に該当
職安法4条6項にいう労働者供給には該当しないから、
労働者供給に該当することを前提とするXらの主張は、前提において失当というべき

Xらは、派遣労働者としての就労の機会を突然奪われ、将来にわたっての雇用不安から精神的苦痛を受けたことが認められる
XらのYにおける就労期間及び派遣法が製造業につき未解禁であった時代からの勤務の有無、
正社員への登用についての勧誘の有無、
就労継続のための帰化の有無などの諸事情を考慮
Xらにそれぞれ50万円から90万円の範囲で慰謝料請求を認容
スポンサーサイト



委託契約と労働者契約の判断要素

(参考文言)
XはYと使用従属関係にあったという事ができるから、本件社員契約は労働契約に該当する。
報酬は完全歩合給制であり、所得税などの源泉徴収や社会保険への加入もされていなかった。
保険契約の勧誘業務に必要な物品を自らの費用で準備し、その使用に必要の費用も負担
解約後、Xが保険契約を保険契約者にかかる保険代理店契約のうち、Xの移転先代理店に移管
Xの使用従属性を弱める事情であることはいえるものの、Xの使用従属性を直ちに否定するものとまではいえない。

<社員契約書>
乙が受ける報酬はフルコミッションとする。
割合は乙が契約した保険手数料の80%
ガソリン代、携帯代など営業にかかる諸経費など一切甲は負担しない
乙が退職した場合、退職した月のコミッションが最終コミッションとなり、以後如何なるコミッションも甲は負担しない

乙の勤務時間は土・日・祝を除く午前9時から午後5時
やむを得なく直行・直帰する場合、乙は項に遅滞なく報告し了承を得なければならない


本件解約以前の3か月間にXに支払われた賃金は平成22年10月17日以降の京都府の最低賃金額である時給749円に達しない
その部分について本件社員契約は無効

(事件概要)
平成22年1月12日 社員契約書を締結
平成23年8月31日 本件社員契約を解約する旨の意思表示
本件解約後 別の代理店との間で契約を締結
B生命との間の保険代理店契約を移籍先代理店に移管

(訴え)
Xが、保険代理業を営む株式会社であるY社に対し、Yとの間で基本給月額10万円及び歩合報酬を支払う内容の社員契約を締結
社員契約は労働契約に該当し、XはYから解雇された旨主張
① 未払いの基本給合計200万円等の支払い
② 未払いの歩合給報酬合計62万2,454円等の支払
③ 労基法20条1項本文に基づき、解雇予告手当10万円などの支払い
④ 労基法114条に基づき、解雇予告手当と同額の10万円の付加金などの支払い
⑤ 解雇が違法であることを理由とする不法行為に基づき、慰謝料50万円などの支払い

(判決)
基本給10万円を支払い旨の合意の存在を否定
退職後にYに支払われた保険手数料については、歩合給報酬は発生しないことを合意
Xは、Yに対し、本件解約以降Yに支払われた保険手数料に対する歩合給報酬を請求することはできない。

新人社員のうつ病・自殺の業務起因性

(参考文言)
「使用者は、その雇用する労働者を従事させる義務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負うと解するのが相当」

使用者に代わって労働者に対し業務上の指揮監督を行う権限を有する者は、使用者の前記注意義務の内容に従って、その権限を行使すべき

<予見可能性>
うつ病などの精神障害を発症していたことの具体的認識などを要するものではないと解するのが相当

(事件概要)
平成21年4月1日 Kは、Y法人に雇用され、A病院臨床検査料において、臨床検査技師として勤務
平成21年10月17日 Bは、Kが遅刻することが許されない日に遅刻したことに立腹して、Kの留守番電話に「早く起きろ、ばかもの、死ね」というメッセージを残した。
同日午後10時頃 Kは、自宅において自殺

BおよびCは、Kに対し、自習を行うように強制をしたことはない。
Kは、担当検査業務終了後、頻繁に専門書を読み、BやCによるレクチャーを受け、
自分などを被験者として検査を実施するなどの方法により、臨床検査についての自習を行っていた。

(訴え)
Y法人の安全配慮義務違反により、Kが精神疾患を発症した結果、自殺するに至ったと主張
債務不履行による損害賠償請求権に基づき、それぞれ4731万3957円の損害賠償および遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
自殺の1か月前96時間程度の時間外労働
超音波検査担当による心理的負荷が大きく、自殺当日に2時間近く遅刻をしたうえ、上司からの「早く起きろ、ばかもの、死ね」という留守番電話のメッセージを発症
業務と自殺との間の相当因果関係が肯定

Kに対して超音波検査の担当件数を減らすことを打診しただけであり、具体的、実効的な措置を講ずるのを怠り、安全配慮義務を怠っていた
逸失利益、死亡慰謝料等の損害賠償請求が認容

税理士の補助業務を行うスタッフの裁量労働制の適否

(参考条文)
専門業務型裁量労働制の対象となる「税理士の業務」とは、税理士法3条所定の税理士となる資格を有し、同18条所定の税理士名簿への登録を受けたもの自身を主体とする業務をいうと解するのが相当

Xの業務は専門業務型裁量労働制の対象となる「税理士の業務」ということはできない。


(事件概要)
平成22年1月1日 Xは、Y1社らの法人税・資産税部門における税理士の補助業務を行うスタッフとして、期間の定めなく雇用される旨の労働契約を締結
同年9月末日 Y1らを退職

同年9月末日までの間に、公認会計士となる資格を取得するために必要な実務補修を終了しておらず、税理士となる資格を取得することもなかった。

(訴え)
Y1社およびY2税理士法人(以下、Y1社ら)に雇用されていたXが、
割増賃金及びこれに対する最終給与支払日の翌日からの遅延損害金、
付加金及びこれに対する翻案判決確定の翌日からの遅延損害金
を、それぞれ連帯して支払うことを求めた。

(判決)
Y1らは時間外労働についての割増賃金を支払う義務がある。

派遣労働者の中途解雇による黙示の労働契約の成否


(参考条文)
労働者派遣法49条の2 :労働者派遣法は行政取締法規であり、同法違反の行為には、厚生労働大臣による勧告や公表の行政措置が講じられるにとどまる
派遣労働者保護の必要の観点からすれば、そのことによって直ちに、本件請負契約や労働者派遣契約が労働者派遣法違反により公序良俗に違反して無効であるという事はできない。

労働者派遣法40条の4 :直接雇用申込義務
派遣元事業主から、抵触日の前日までに厚生労働省令で定める方法により、当該抵触日以降継続して労働者派遣を行わない旨の通知を受けた場合に生じる
上記義務は、抵触日の前日までに当該派遣労働者であって当該派遣先に雇用されることを希望する者に対して雇用契約の申込を行うべき公法上の義務にすぎない。
X1らの就業を継続させたことのみをもって、黙示の労働契約の成立を推認できるものでないことは明らか

(参考文言)
労働者派遣個別契約の中途解約などについて、必要な配慮を欠き、その時期や態様などにおいて派遣労働者であるX1らの雇用の維持または安定に対する合理的な期待をいたずらに損なうことがあった場合
中途解約などが信義則上の配慮義務に違反するものとして、X1らに対する不法行為となる。


(事件概要)
X1 :平成20年5月13日以後更新を繰り返し
最後の更新は同年12月1日から21年2月28日
(20年12月2日解雇通知、21年1月9日解雇)
X2 :平成18年10月16日以後更新を繰り返し
最後の更新は21年1月1日から21年3月31日
(20年12月19日解雇通知、21年1月31日解雇)
X2 :平成18年10月15日以後更新を繰り返し
最後の更新は20年11月1日から21年4月30日
(20年12月3日解雇通知、21年2月19日解雇)

(訴え)
X1らの実質的な雇用主はY1社であり、同社とX1らとの間に黙示の雇用契約が成立していたもの
Y2社らによる解雇は理由がなく、実質的にY1社が主導したもので共同不法行為に当たるなどと主張
Y1社に対し、雇用規約上の権利を有する地位にあることの確認および各賃金の支払いを求めるとともに、Y1社及びY2社らに対し、共同不法行為に基づき慰謝料の支払い及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
X1らとY1社との間に黙示の雇用契約の成立を認めず
不法行為に対する損害賠償請求55万円
プロフィール

roumutaka

Author:roumutaka
毎日、2時間以上の勉強を欠かさず、一歩ずつでも前進致します。
顧問先様への新しい情報の発信及び、提案の努力を怠りません。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる