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うつ病後の自殺の公務起因性

(重要文言)
本件自殺が公務に起因するか否かは、本件精神疾患の発症後(職場復帰により)に従事した公務のみでなく、本件精神疾患の発症前に従事した公務も併せて判断すべき

相当因果関係のあることが必要
公務による心理的負荷が社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であるといえることが必要
故意による死亡は、公務上の災害と認めることはできないことになるけれども、
職員が精神障害を発症した結果、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、
または自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われた場合については、
当該精神障害が公務に起因すると認められるならば、自殺による死亡についても公務起因性が認められると解するのが相当

(事件概要)
うつ病を発症しておよそ半年間の病気休暇を取得
職場復帰した後に自殺
Xは、Kの自殺が公務に起因するとして、Y基金に対し、地方公務員災害補償法に基づき、公務災害認定の請求をしたが、公務外災害認定を受けたため、Xが、公務起因性を否定した本件処分は違法であると主張して、処分の取消を求めた。

(判決)
本件自殺を公務外の災害と認定した本件処分は違法であり、取消を免れない。
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金銭授受を理由とした懲戒解雇の有効性

(重要文言)
変更された就業規則の合理性の有無は、
「具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又はほかの従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況などを総合考慮して判断すべきである」

従業員全般に対し50%超の退職金を減額し、Xについてみれば約3分の1までに退職金を減額するという重大な不利益が及ぶ

このような過酷な不利益を受任させることを許容し得るだけの高度の必要性があるとは到底認められない。

(事件概要)
金銭授受から約1年を経過した後、Y代表者はFからの情報提供により上記の事実を把握し、Xを呼び出して事情聴取を行うなどした。
Xは、82万円は職人への支払いにあてた旨説明
その裏付けとして、E小学校の工事に従事した職人3名とJに対し、領収証の発行を依頼し、上記職人らはこれに応じた。
Yは、Xの説明や上記領収証を確認した結果を踏まえ、
平成23年2月14日、Y本社においてXに対し本件懲戒解雇を通知
Yは、X代理人弁護士からの求めに応じ、解雇理由証明書を発行
解雇理由は「不明朗な金銭授受による」とされていた。

(訴え)
Y社の従業員であったXが、平成23年3月15日に限りで懲戒解雇されたことが無効
翌日からXのYに対する雇用契約の解約申し入れが効力を発した同年9月1日までの賃金と、不支給とされた退職金の支払いを請求

Xは、Yが主張する退職金規定の変更について、その効力を争い、変更前の退職金規定に基づく退職金額を主張

(判決)
本件懲戒解雇の相当性について、本件懲戒解雇は無効
イ) Yの対外的信用の低下は、あるとしても軽微なものにとどまる。
ロ) 本件金銭授受の総額自体が82万円にとどまることに加え、Yもその返還請求へ向けた行為を一切していない。

遺族補償年金など受給資格該当性

(重要文言)
今日においては、配偶者の性別において受給権の有無を分けるような差別的取り扱いはもはや立法目的との間に合理的関連性を有しないというべき
Xのその余の主張について判断するまでもなく、遺族補償年金の第一順位の受給権者である配偶者のうち、夫についてのみ60歳以上との本件年齢要件を定める地公災法32条1項ただし書及び同法附則7条の2第2項の規定は、憲法14条1項に違反する不合理な別的取り扱いとして違憲・無効であるといわざるを得ない

(事件概要)
平成10年10月18日 Xの妻であったKが、公務により精神障害を発症し、自殺
平成22年4月23日 Kの自殺を公務上の災害と認定
平成22年6月2日 XがY基金らに対し、遺族補償年金、遺族特別支給金、遺族特別援護金及び遺族特別給付金の支給請求
平成23年1月5日 X(昭和22年生まれ)はKの死亡当時に51歳であり、同法32条1項ただし書1号および同法附則7条の2第2項に定める要件に該当せず、
同法32条1項ただし書4号および同法施行規則29条に定める障害の状態にあるとは認められない
いずれも不支給とする本件各処分

<地公災法>
(遺族補償年金)
第32条
一 夫、父母又は祖父母については、60歳以上であること
四 第三号の要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、総務省令に定める障害の状態にあること

(訴え)
処分行政庁がいずれも不支給とする処分をしたため、XがYに対し、本件各処分の取消を求めた。

(判決)
年齢要件一般について、「社会保障的性質をも有する遺族補償年金の受給権者の範囲を定めるに当たり、立法当時の社会情勢や財政事情などを考慮して、
職員の死亡により被扶養利益を喪失した遺族のうち、一般的に就労が困難であり、自活可能でないと判断される者に遺族補償年金を支給するとの目的の下に、
障害要件とともに、そのようなものを類型化するための要件として設けられたものであると解されるところ、
地公災法が遺族補償年金の受給権者にこのような要件を設けたこと自体は合理的なものといえる」

妻については、年齢や障害の有無にかかわらず類型的に生計自立の能力のないものとして、年齢要件などを設けずに生計維持要件を有する者は遺族補償年金の受給権者としたことには、地公災法が立法された当時においては、一定の合理性があった。

地公災法32条1項ただし書1号及び同法附則7条の2第2項を根拠としてなされた、Xに対する遺族補償年金の不支給処分は、違法な処分であるから取り消すべきであり、Xが遺族補償年金の受給権者に該当しないとしてなされた、Xに対する遺族特別支給金、遺族特別援護金及び遺族特別給付金及び不支給処分も、いずれも違法なものとして取消を免れない。

早出残業の有効性

(重要文言)
時間外労働等に対する未払賃金の有無
そもそも、労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下におかれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるもの
使用者の指揮命令下にあるか否かについては、労働者が使用者の明示又は黙示の指示によりその業務に従事しているといえるかどうかによって判断されるべき

本件)終業時刻後のいわゆる居残り残業と異なり、始業時刻前の出社については、通勤時の交通事情などから遅刻しないように早めに出社する場合
生活パターンなどから早く起床し、自宅ではやることがないために早く出社する場合などの労働者側の事情により、
特に業務上の必要性がないにもかかわらず早出出勤することも一般的にまま見られるところであることから、
業務上の必要性があったのかについて、具体的に検討されるべき
労働時間に該当すると認めるに足りる証拠はない。

(事件概要)
Xは、60歳になったもの
雇用期間は、21年3月11日から23年11月5日
Y社は、平成23年9月29日、本件労働契約について、契約の更新は行わず、雇用期間(同年11月5日)が満了したことにより終了することを口頭で伝えた。

(訴え)
Xが、Y社に対して
未払いの早出出勤手当、休日出勤手当、賞与の支払いを求めるとともに、
労基法114条に基づく付加金の支払いを求め
労基法の時効にかかる未払い賃金などについては、不法行為に基づいて損害賠償を求め、
主位的には正社員を定年退職した後に嘱託社員としての地位を有することの確認を求め、
予備的には期間雇用の契約社員としての地位を有することの確認を求めるとともに
賃金と遅延損害金の支払いを求め、
Xが発明考案したにもかかわらず、Y社がXの了解を得ずに公開技法に公開したため、Xが特許申請をすることができなくなった一方、
Y社がXの発明を導入し不当に利得を得ているとして、不当利得の返還を求めた。

(判決)
Xの担当業務は広く、技術部…全体に及ぶものであり、臨時的な業務であったとは認めがたいこと
本件労働契約的悦時に作成された雇用契約書には、特約事項として60歳以降は6ヶ月単位の嘱託契約が予定されているような記載
実際、準社員就業規則に定められている。
本件労働契約については、契約継続に対するXの合理的な期待が存在したと認めるのが相当

海外旅行添乗員のみなし労働の可否

(重要文言)
使用者は「割増賃金支払い義務を負う地位にあるのであるから、就労場所が事業場外であっても、原則として、労働者の労働時間を把握する義務を免れない」

<労働時間を算定し難いとき>
当該業務の就労実態などの具体的事情を踏まえて、社会通念に従って判断する
使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価され、客観的に見て労働時間を把握することが困難である例外的な場合

労働時間を把握するについて、その正確性と公平性を担保することが社会通念上困難とは認められないのであれば、本件添乗業務について「労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるものではない」

本件)
Aは、添乗員に対し、国際電話用の携帯電話を貸与し、常にその電源を入れておくものとしている。
添乗日報には、ツアー中の各日について、行程に沿って最初の出発地、運送機関の発着地、観光地等の目的地、最終の到着地及びそれらにかかる出発時刻、到着時刻などを正確かつ詳細に記載

(訴え)
Y社に雇用されて添乗員として旅行業を営むA社に派遣され、
A社が主催する募集型の企画旅行の添乗業務に従事していたXが、時間外割増賃金の支払いをYに求めた。
Yが、労基法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとして所定労働時間労働したものとみなされるなどと主張

(判決)
ツアー中の労働時間を個別に認定し、Yに対し未払賃金として15万8,225円と、同額の付加金の支払いを命じた。

精神障害を発症による自殺未遂と業務起因性

(重要文言)
業務と精神障害発症との間の相当因果関係が認められるためには、
ストレスを業務に関連するものとそうでないものとに区別したうえ、
個体側の反応性、脆弱性を総合考慮して、
業務による心理的負荷が、客観的に、精神障害を発症させる程度に過重であると認められるものでなければならない

(事件概要)
Z社に勤務していたXが、業務に起因して精神障害を発症し、
平成15年5月30日朝 A社長と口論となり、同人からZ社をやめるように通告
平成15年6月1日 同精神障害により自殺を図ったところ、視力喪失などの重い障害を残して労働能力を喪失
労災保険法に基づく療養補償給付及び休業補償給付の支給を求めた。
19年3月29日 同療養補償給付及び同休業補償給付のいずれも支給しない旨の処分

(訴え)
同各処分の取消を求めた。

(判決)
業務と障害との相当因果関係を否定する事由とすべきことにはならない
Xの本件各処分取り消し請求を認容

うつ病による自殺に対する業務起因性

(重要文言)
同種労働者、あるいは平均的な労働者を基準とするといっても、性格傾向に着目すればさまざまな気質や性格を持った労働者が現場で勤務している
同種労働者を観念するといっても、一定程度幅のあるとらえ方をせざるを得ず、
社会通念上一般的に想定ないし容認される通常の範囲内の性格などの持ち主であれば、基準となる同種労働者の範疇に入れるべき

(事件概要)
平成16年9月29日午前5時頃、亡Kは、駐車場に停車した自家用車内に火をつけ、焼身自殺した。

(訴え)
教員としての過重な公務によりうつ病に罹患し増悪させた結果、自殺するに至ったと主張
Yに対し、亡Kの自殺を地方公務員災害補償法に基づく公務災害と認定しなかった処分行政庁に処分の取消を求めた。

(判決)
亡Kは、平成16年4月に着任して以降、立て続けに公務により強いストレスにさらされ、これに対する適切な支援も受けられなかったところ、
かかる心的負荷は、新規採用教員として初めてクラスを担任することになったものと基準とすると、
相当に強度のものであったという事ができ、
他方で、亡Kには公務外の心理的負荷や精神障害を発症させるような個体側の要因も認められない

本件自殺を公務外の災害と認定した本件処分は違法であり、取消を免れない。

管理監督者の時間外労働について

(重要文言)
年棒制の適用下で、年棒額を14で除した金額が月ごとに支払われ、2か月分の金額が賞与部分とされていた場合に、
賞与額の決定に当たって正式な人事考課が行われておらず、Y代表者が裁量により随意決定したものであると認められることからすると
「臨時に支払われた賃金」(労基法施行規則21条4号)ないしは「一か月を超える期間ごとに支払われる賃金」(同条5号)に当たるものとして、時間外労働に対する割増賃金の算定基礎から除外することは相当でない。

<労働者が管理監督者に該当するか否かの判断>
① 当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあると認めるに足るだけの重要な職務と責任、権限を付与されているか
② 事故の出退勤をはじめとする労働時間の決定について厳格な制限・規制を受けない立場にあるか
③ 一般の従業員と比較してその地位と権限に相応しい賃金上の待遇を付与されているか
を総合的に考慮したうえで決定すべきもの

(訴え)
Xが、Y社に対し、
(1) 雇用契約に基づき、平成21年1月1日から22年8月4日までに発生した未払割増賃金及び遅延損害金並びに
(2) 労基法114条に基づき付加金及び遅延損害金の支払いを求めた。
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