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事業譲渡による整理解雇の有効性


(事件概要)
Y社の安達営業所のタクシー車両34台、一般乗用旅客自動車運送事業をグループ会社であるK社に譲渡
安達営業所を閉鎖
従業員全員を解雇

(訴え)
整理解雇の4要件を満たしておらず、解雇権濫用した無効なものであると主張
労働契約上の地位の確認
未払い賃金及び遅延損害金の支払い

(判決)
 人員削減の必要性 :大幅な債務超過から税や社会保険料の滞納、人員削減をも含む抜本的な経営再建策を実行する必要があった。
しかし、経営を再建するために直ちに事業の一部を売却して現金化するほかない状態にあったとまでは認めることは困難
 解雇回避努力 :従業員の情報を提供して雇用の要請、解雇された従業員の一部に対してKへの就職を勧誘するなど
解雇回避措置として十分なものであったとはいえない。
 説明会 :事業譲渡について一切言及することなく抽象的な解雇理由に言及するに留まった。
組合からの団体交渉の要求にも応じていない。
十分な説明・協議が行われたと認めることができない。
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パートタイム労働法


(参考条文)
労働契約法19条
1号 有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることによりその期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められ、
2号 仮にそうでなくとも、有期労働契約の契約期間の満了後にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる

パートタイム労働法8条
1項 事業主は、職務の内容、退職までの長期的な人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結している者については、パートタイム労働者であることを理由として、その待遇について、差別的取扱いをしてはならない。
2項 1の期間の定めのない労働契約には、反復更新によって期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当と認められる有期契約を含むものとする。
① 職務の内容 が同じ
② 人材活用の仕組みや運用など が全雇用期間を通じて同じ
パートタイム労働者が通常の労働者と職務が同一になってから、退職までの期間において、事業所の人事システムや慣行から判断して同じ、となる場合です。

③ 契約期間が実質的に無期契約
次の2つの場合です。
a)期間の定めのない労働契約を結んでいる場合
b)期間を定めて労働契約を結んでいても、期間の定めのない労働契約と同視することが社会通念上相当とされる場合

上記3要件すべてにあてはまるパートタイム労働者は、通常の労働者と就業の実態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されています。
これは、契約期間について通常の労働者と同様であるかどうかを判断する際、形式的に判断するのではなく、実際の取扱いがどうなっているかを判断する、という考え方によるもので、期間の定めがない労働契約を結んでいる場合(aの場合)だけでなく、反復更新によって実質的に期間の定めのない労働契約と変わらない雇用関係の場合(bの場合)も通常の労働者と同様の実態にあると判断します。

(本件)
(a) 就業規則に記載されていたとしても、必ず面接が行われていたとは認められない。
(b) 契約期間の制限があることについて従業員の理解を得られるような説明をしていたとは認められない
(c) 準社員の更新拒絶件数は、全国でも少なく、6年間に2件あったのみで、その割合は少なかった
(d) 転勤・出向の点において大きな差があったとは認められない
(e) 正社員ドライバーの配置の範囲が準社員ドライバーと異なるとはいえない

しかしながら、パートタイム労働法8条1項は差別的取り扱いの禁止を定めているものであり、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めることはできない。

地位確認の請求はいずれも理由がないとして、請求を退けた。

他方において判決は、不法行為を構成する。

(事件概要)

(訴え)
Y社との間で期間の定めのある労働契約を反復して更新していた労働者Xが、Yが契約期間満了前の更新の申込を拒絶したこと
は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、
Yは、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申し込みを承諾したとみなされたと主張
更新拒絶期間中の月額賃金及び賞与、更新拒絶による慰謝料を請求

YがXに対して短時間労働者の雇用管理の改善などに関する法律(パートタイム労働法)8条1項に違反する差別的取り扱いをしていると主張
正規労働者と同一の雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
Yの正規労働者と同一の待遇を受ける雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求め、
同項に違反する差別的な取扱いによる不法行為に基づく損害賠償を請求

(判決)
YがXによる有期労働契約の更新の申込を拒絶した事は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められない。
慰謝料について、Yには故意又は少なくとも過失があったものと認められるとして、50万円が相当

通勤手当、トレーラー手当、無事故手当、無事故表彰金および時間外手当については、更新拒絶がされて実際に就労していない期間については請求できない
Xに賞与を支給するとの査定がされたとは認められないとして、請求を退けた。

Xは、通常の労働者と同視すべき短時間労働者に該当したものと認められる。
賞与が大幅に異なる点、週休日の日数が異なる点、退職金の支給の有無が異なる点は、通常の労働者と同視すべき短時間労働者について、差別的取扱いをしたものとして、違反するもの認められる。

不法行為として、平成21年4月1日から24年3月31日までについて、賞与及び休日の割増分の差額135万5,837円、
24年4月1日から同年6月30日までについて、賞与及び休日の割増分の差額11万2,983円、
これに不法行為と相当因果関係にある損害としての弁護士費用14万円及び遅延損害金の請求を認容

セクハラ被害に対する派遣元の責任について


(参照条文)
労働者派遣事業法31条
派遣元事業主は、派遣先が派遣就業に関する法令を順守するように、その他派遣就業が適正に行われるように、必要な措置を講ずるなど適切な配慮をすべき義務を負う。

派遣先にも
労働者派遣契約に基づき派遣就業をするものに対し、直接の雇用関係にある従業員と同様に、労務の提供に関して良好な職場環境の維持確保に配慮すべき義務を負っており、セクハラに関してもその予防や発生した時の適切な対処をすべき義務がある。

(参考文言)
解雇回避義務
セクハラ被害者が解雇されたり退職を余儀なくされたりすることのないよう配慮すべき義務

セクハラ防止義務を履行しているとは
・ 就業規則に派遣労働者はセクハラの被害を受けたと感じたとき等に派遣元責任者に相談をすべきことなど定め
・ 就業規則を読みやすくサポートガイドブックを作成して配布
・ 派遣契約を締結するときは、苦情処理の申出先が明示されている明示書を交付している。

(事件概要)
Y社から労働者派遣契約に基づきTRC社に派遣されていたXが、東レからTRC社に出向していた社員Dによりセクハラ被害を受けた。

(訴え)
派遣元事業者として派遣労働者に対する職場環境配慮義務違反があったと主張
Yに対し債務不履行または不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、損害の一部として300万円及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
東レの従業員であるHが対処した結果、TRC;社において席替え、Dへの指導、さらにはDの応援という形での異動が行われたが、
Yの派遣責任者Aが積極的な関与をした形跡がない。
Yは救済義務を履行したとはいえず、これに違反

Aは派遣先部長CからTRC社がXにかかる労働者派遣契約を中途解除する意向である旨の通知を受けた。
Xから、労働者派遣契約の中途解除の告知を受けたこと、及びDの復帰がその理由となっていることを告げられた。
AはCに一度抗議しただけで、中途解除をやむを得ないこととして容認
TRCに対するそれ以上の対応をとらなかった。
解雇回避義務の履行をしたとは到底言えず、これに違反

(損害額)
本件契約終了は、Xが従事していた業務の収束によるものであって、Xに対するセクハラの延長といえるものとは認められない。
解雇権濫用法理に照らし無効となることはない。
Xの慰謝料50万円及び遅延損害金の請求が認められた。

死亡と公務起因性

(参考文言)
Kの発見、治療の遅れは、「Kが公務中に滞在していた薬局や使用していた本件トイレ以外の場所、自宅やその他のトイレ等においても発生する可能性がある点で、

公務のみならず日常生活にも存在する一般的危険であるというべき

これを公務に内在ないし随伴する危険とみることはできない」

(事件概要)
平成19年7月8日 トイレで倒れ、心筋梗塞を原因とする急性心不全により死亡

(訴え)
21年3月2日付公務外認定処分の取消を求めた。

(判決)
Xの請求を棄却

暴言行為・業務命令拒否などを理由の解雇の有効性

(参考文言)
慰謝料支払いが命じられなければならないと評価できるほどの精神的苦痛が生じていると認めることはできない。
解雇の無効が確認され、その間の賃金支払いが命じられていることを考慮し、Xの慰謝料請求を退けた。

(事件概要)
Xは営業活動での言動や対応について複数の取引先からクレームを受けていた。
Xの能力などを把握してXに適した業務を与えることを考え、Xに対して職務経歴書の提出を指示
しかし、就業規則上、提出する必要はないとして拒否

(訴え)
本件解雇は無効
Y社に対し労働契約上の地位確認を求めるとともに、賃金及び不法行為に基づく損害賠償などの支払いを求めた。

(判決)
Xの言動が主たる理由となって交渉や事業が頓挫したり、Y社に損害が生じたことは認めるに足りない
Xが担当した顧客の多くからクレームを受けたという具体的事実を認めるに足りない
Yにおいて、懲戒解雇事由及び普通解雇事由に当たる具体的行為が存在しないことが明らかであるにもかかわらず、このことを承知しながら本件解雇に及んだとまで認めることはできない。

休職期間満了を理由とする退職

(参考文言)
<パワハラを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求>
Y1の発言は、Xの人格非難に及ぶものではなく、
Xの名誉を棄損する内容のものでもなく、
Xがそれらに矛盾や不合理を感じることがあったとしても、業務上の指示・指導の範囲を逸脱したものとはいえない。
Y1の不法行為及び、Y2の使用者責任が否定

<相当因果関係>
Xのうつ病の既往歴は、今回のうつ病発症の7年以上前
平成12年9月に入社して以来、5年以上の間、これを再発することなく就労していた
Xが精神的に脆弱な傾向にあったことを考慮しても、相当因果関係がある。

<職場復帰に当たる損害賠償請求を否定>
復職に向けて産業医との面談や復職支援プログラムを作成するなど、長時間休職後の復職が円滑に実現されるような方策を採っていた
軽微な作業を中心とした仕事をXに割り当て、徐々に従前遂行していた業務内容、業務量を与えるような復職支援プログラムを作成して業務量の調整を図っていた
Xの職場復職に当たり、Y2に安全配慮義務違反があったとは認められず、この部分に関する損害賠償請求を否定

<休職期間満了後の解雇>
休職中の平成19年10月を過ぎたころには業務に起因する心理的負荷により生じたといえない
雇用を解かれた21年1月30日の時点で、発症から3年以上が経過してもなお全快せず
Y2で業務に従事することが困難であった。
解雇が有効

(事件概要)
Y2社において、従業員が3か月間を通算して175時間を超える時間外労働を行うとする場合には、産業医の許可を必要

平成17年12月8日時点 Xの同年10月からの通算残業時間が158時間
産業医の診察を受けたところ、産業医からは、以後の残業を不許可とする旨の指示

平成17年12月21日 残業中、身体が硬直、FリーダーがXを実家にタクシーで帰宅
同月22日から18年2月10日までの間
Y2を休職し、
同月13日 勤務を再開
同年10月26日 傷病休職期間
20年11月1日付 試験期間として仮復職
Xは体調不良を理由に休暇を取ることが多かったため、Y2は、Xが就労することは困難であると判断
平成21年1月30日付 仮復職を取り消し、Xは、休職期間満了により、Y2を退職

(訴え)
Y2社の従業員Xが、Y1から、
長時間の残業を強いられた上、
Xの人格を否定するような非難、罵倒、叱責などを受けたことから、
肉体的、精神的に疲労困ぱいし、うつ病等に罹患して休職し、休職期間の満了を理由に退職を余儀なくされたと主張

Y1に対しては不法行為に基づき、
Y2に対しては主位的にY1の不法行為についての使用者責任、安全配慮義務違反などによる債務不履行責任

(判決)
Xの精神障害の発症を予見することが可能
① Xの時間外労働時間は、うつ病を発症した前後には1か月当たり90時間を超える程度に及んでおり、Y2社はそれを把握していたこと
② Xの業務量、業務の進捗状況とその納期を把握していたこと
③ XがY1の下で仕事をすることをつらいと感じていることについては、認識していたこと
④ Xが体調を崩しつつあることも、認識しており、休暇取得状況から、把握可能

うつ病の症状が蔓延化し、Xが長時間にわたり休職を継続したことについては、
逸失利益 :256万9,731円
治療費、交通費 :27万5,910円
慰謝料 :200万円
弁護士費用 :50万円

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roumutaka

Author:roumutaka
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