承継した場合の労働条件の変更は可能か
(判例に対する自分なりの意見)
労働契約承継法によれば、労働者が希望すれば、そのままの労働契約が保障される。
不利益変更までも付いてくるとすると、承継するまでに話し合いを済ませている方が良いかも。
(参考文言)
Xに対し、三者択一の回答を求めた。
(イ) 阪神電鉄を退職してYに転籍するか
(ロ) 阪神電鉄を退職するか
(ハ) Y以外での就労を希望するか
その中に、阪神電鉄との間の従前の労働契約をそのままYに承継させるという選択肢はなく、そのような選択が可能であるとの説明もされなかった。
配慮を行わないことに対して異議申出の前提となる労働契約承継法所定の通知の手続きを省略し、Xの利益を一方的に奪ったもの
同法の趣旨を逸脱するものと言わざるを得ず、いずれも公序良俗に反して無効
Xが適法に同法4条1項所定の異議申出を行った場合と同様に、そのまま承継会社であるY社に承継される。
不利益変更にXが同意したことが認められるとしても、
Xの利益を一方的に奪う手続きに基づいてされたもの
公序良俗に反して無効
Xの同意によっては変更されない。
(参考条文)
労働契約承継法の各規定
承継会社に承継される事業に主として従事する労働者には、各会社分割に当たり、当該労働者が希望しさえすれば、分割会社との間で従前の労働条件がそのまま承継会社に承継されることが保障されている。
通知義務の規定(労働契約承継法2条1項)
例外規定はないから、転籍にかかる同意が得られたからといって上記通知などの手続きの省略が当然に許されるものと解されない。
労働契約承継法2条1項(労働者等への通知) :前項の分割をする会社(以下「分割会社」という。)は、労働組合法(昭和二十四年法律第百七十四号)第二条の労働組合(以下単に「労働組合」という。)との間で労働協約を締結しているときは、当該労働組合に対し、通知期限日までに、当該分割に関し、当該労働協約を承継会社等が承継する旨の当該分割契約等における定めの有無その他厚生労働省令で定める事項を書面により通知しなければならない。
(経緯)
9年4月 腰椎椎間板ヘルニアに罹患して手術を受けた。
腰椎由来の神経障害が残り、排尿・排便が困難となる障害が残った。
10年1月 復職
本件排便傷害などを理由として、Xの勤務シフト等において必要な配慮を行う。
少なくとも、午後の比較的遅い時間からの勤務シフトばかりを担当させるという勤務配慮を行うことが合意
平成20年7月16日から同月18日
各従業員に対する説明会を実施
同説明会で、補足説明資料を配布
本件説明資料には、「勤務配慮は原則として認めない」との記載
同年4月1日 Xは、Yに転籍することに同意する旨を記載
「自動車事業経営改善計画に対する同意書」と題する書面を提出
Yとの間で、勤務配慮は原則として認めない事などを内容とする新たな労働契約を締結
Yに転籍
(訴え)
排便・排尿が困難となる障害を有することを理由に、勤務シフト上の配慮を受けていたXが、Y社に転籍した後、上記勤務配慮を行わなくなった。
公序良俗に反するなどと主張して、従前どおりの配慮された勤務シフトに基づく勤務以外の勤務をする義務のない地位にあることの確認を求める。
従前受けてきた配慮が受けられなくなったことなどにより、Xが精神的苦痛を受けた。
不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び遅延損害金の支払いを求めた。
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