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育児休業取得に対する不利益取り扱い


(重要文言)
Yの育児休業規定9条3項に基づく職能給の不昇給は、Y病院の人事評価制度の在り方に照らしても合理性を欠き、育児休業取得者に無視できない経済的不利益を与える者であって、育児休業の取得を抑制する働きをするもの

育児介護休業法10条に禁止する不利益取り扱いに当たり、かつ、同法が労働者に保障した育児休業取得の権利を抑制

ひいては同法が労働者に同権利を補償した趣旨を実質的に失わせるものであるといわざるを得ず、控除に反し、無効というべき

(事件概要)
人材育成評価システムマニュアルには、育児休業、長期の療養休暇または休職により、評価期間中における勤務期間が3か月に満たない場合は、評価不能として取り扱う旨の規定

Yは、Y病院の労働組合に確認した上で、22年9月に、育児介護休業規定9増3項において、「昇給については、育児休業中は本人給のみの昇給とする」と改めて、同年10月1日から適用

Xは25年1月31日付でYを自己都合退職

(訴え)
Yが開設するY病院において看護師として勤務していた控訴人Xが、平成22年9月4日から同年12月3日まで育児休業を取得
Yが、Xの3か月間の不就労を理由として、23年度の職能給を昇給させず、そのため昇格試験を受験する機会も与えなかった。
これらの行為は、育児介護休業法10条に定める不利益取扱いに該当し、公序良俗(民法90条)に反する違法行為であると主張
Yに対し、不法行為に基づき、昇給・昇格していれば得られたはずの給与、賞与及び退職金の額と実際の支給額との差額ならびに慰謝料の支払いを求めた。

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内因性疾患死と業務起因性


(参考文言)
拘束時間数がトラック運転手の労働条件の改善を図るために厚生労働省が示した1日13時間及び1か月293時間という改善基準告示の基準を超えることもしばしばあった。

(事件概要)
Kの発症前6か月間における時間外労働時間数は、
発症前1か月間80時間12分
発症前2か月間82時間51分
発症前3か月間80時間34分
発症前4か月間79時間19分
発症前5か月間79時間46分
発症前6か月間84時間21分

平成19年4月6日 寒気や体のだるさなどを訴えて、F医院を受診し、高血圧と診断
1か月に1回程度の頻度で、F医院を受診
21年11月30日 心室性期外収縮などの異常があると診断
平成22年1月3日 意識不明の状態で発見、内因性疾患により死亡

(訴え)
内縁の妻であったXが福岡東労働基準監督署長に対し、Kが平成22年1月3日に内因性疾患によって死亡したのは、本件会社の業務に起因するものであると主張
22年9月17日付で、労災保険法各給付を支給しない旨の各処分を受けたため、Xが本件各処分の取消を求めた。

(判決)
Kを含む配送運転手に、休憩時間を過ごすための休憩施設が用意されていたわけではなく、Kは、この休憩時間のほとんどを配送業務に用いるトラックの中で過ごし、
ある程度まとまった休憩時間を採ることができたとしても、その間に、疲労を緩和し、体力を回復させることは困難
Kの業務には、量的にも質的にも過重な負荷があったというべきであり、Kは、本件会社の業務に由来する疲労を、長期間にわたって蓄積させていた。

業務と適応障害の発症との相当因果関係


(重要文言)
当該業務と適応障害の発症との相当因果関係
① Xには精神疾患の既往歴は認められず、センター長としての通常業務を支障なく遂行することが許容できる程度の心身の健康状態を有する平均的労働者であったといえる。
② Xの業務以外に適応障害を発症させる要因があったことを認めるに足りる証拠はない。
Xが適応障害を発病する前である平成21年9月15日から平成22年2月15日までの間の所定時間外・休日労働時間数が0分であるとしてもXの当該業務と適応障害の発症との間には相当因果関係があるという事が出来る。

本件降格人事権の裁量の範囲
Xからセンター長たる地位を奪うものである。
給与面では、センター長たる地位にあった場合に比較して、Xに何ら不利益を与えるものとは認められない。
Xが休職に至った経緯を考慮してもなお、Y1の人事権の裁量の範囲にあるものとして有効

(事件概要)
平成22年10月13日 Xは休職処分後、島田労基署長に労災補償を請求
23年8月5日 同所長は、退職処分後、Xの症状が業務起因性を有する者として療養補償給付の支給を決定

(訴え)
平成22年2月15日頃から休職していた原告Xが、Y1法人に対し、Xに対し降格を行い、更に業務上の疾病による休業中であるにもかかわらず、Xを休職期間満了による退職処分としたことはいずれも無効であると主張
雇用契約上の権利を有する地位にあること及びデイサービスセンター長の地位にあることの確認を求めるとともに、休職期間中及び退職処分後の未払い賃金及び遅延損害金の支払いを求め、さらに、Y1およびその常務理事であった被告Y2に対し、XはY2から恒常的にパワハラを受けたために適応障害に陥った等と主張
安全配慮義務違反及び不法行為に基づき、慰謝料及び遅延損害金の支払いを求めた

(判決)
本件退職処分は、Xが業務上疾病にかかり療養のために休業する期間にされたものと認められるから、労基法19条1項本文に反して無効

労基法19条(解雇制限)1項
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

雇止めに対する判断理由の合理性


(重要文言)
再任の業績審査は、大学教員としての適格性の判断という性質上、本件大学の専門的裁量的な判断に委ねざるを得ない
判断過程に著しく不合理なものがない限り、雇止めの合理的理由が肯定されると解するのが相当

(事件概要)
助教として、期間を定めて雇用されていたが雇止めとされたXが、平成25年3月末の任期満了によりなされた雇入止めを違法と主張

3年の期間を定めて採用

33名中Xを含む16名は本件基準を満たしていなかったが、そのうち13名は人気更新された。

定年の定めのある職員就業規則が適用され、職員給与規程が適用される。

再任希望者33名のうち30名が再任されており、X自身、過去2回の再任を得ていることから、更新に合理的期待を認める。

うつ病の業務起因性


(重要文言)
亡Kが担当する融資案件数が同僚に比べてかなり少ないにもかかわらず、同僚とは異なり、亡Kのみが恒常的な早出出勤を行っている。
Kは土・日・祝日に出勤したことはなく、有給休暇も取得している。
早出出勤が業務上の必要に迫られていた者であったとは認められない。

業務と労働者の傷病などとの間に相当因果関係の存在が必要である。

業務によりうつ病などの精神障害を発症したと認めるには、
① 当該精神障害の発症前おおむね6か月の間に、客観的に当該精神障害を発症させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められる。
② 業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発症したとは認められないことを要するもの

(事件概要)
平成17年7月7日午前3時ごろ、Kはうつ病の発症に伴って生じる希死念慮により自殺
A1労基署長は、19年12月20日付で、Kの本件自殺を業務災害と認め、遺族補償年金および葬祭料の支給を決定

(訴え)
業務が過重であったために精神疾患(うつ病)を発症し、希死念慮によって自殺したと主張
公庫に対し、安全配慮義務違反(民法415条)または不法行為(民法709条)による損害賠償請求
X1およびX2につき、それぞれ損害賠償金および遅延損害金の支払いを請求

遺族年金・生命保険取扱規定に基づく給付の損益相殺の有無


(重要文言)
生命保険取扱規定の損益相殺は?
生命保険契約に基づいて給付される保険金は、すでに払い込んだ保険料の対価の性質を有し、不法行為ないし債務不履行の原因と関係なく支払われるべきものである。
これを損益相殺の対象とすることはできないというべき

遺族年金規定に基づく遺族年金、他方、厚生年金保険法の損益相殺は?
在職中に死亡した従業員の遺族の生活安定と遺児の育英に資することを目的
不法行為により死亡した被害者の相続人が、その死亡を原因として厚生年金保険法に基づく遺族厚生年金の受給権を取得したときは、
被害者の逸失利益全般との関係で、支給を受けることが確定した遺族厚生年金を控除すべきものと解される。

(事件概要)
平成24年4月23日から同年10月17日まで、継続的に長時間労働に従事
同年6月20日以降、時間外労働時間は常に1か月合計100時間を超えており、
同人が死亡する前の1か月については合計209時間にまで上っていた。
24年10月初旬、Y社における長時間労働によりうつ病を発症し、
同月18日、Y本店の7階から投身自殺を図り、外傷性ショックにより死亡

熊本労働基準監督署長は、遺族特別支給金、葬祭料及び遺族補償年金の支給を受けた。

また、厚生年金保険法に基づき、遺族厚生年金の支給を受けた。

Y社の遺族年金規定に基づき、24年11月分から、X1に月額6万、X2らに月額2万の遺族年金の支給

YとA生命保険会社との間の契約に基づく保険金について、保険取扱規定により、Yから弔慰金として700万円の支給

Yの業務上災害補償規定に基づいて、遺族補償金及び養育一時金の支払いを受けた。

(訴え)
Xらが、従業員の疲労や心理的負荷が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っているにもかかわらず、Kを長時間労働に従事させるなどしてこれを怠ったため、同人はうつ病を発症し、その影響により投身自殺したと主張

(判決)
使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷などが過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負う。

Yは上記の注意義務を怠ったものと認められ、原告Xらに対し、不法行為に基づき、Kの死亡により発生した損害を賠償すべき義務を負う。

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