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法人格否認


(感想)
法人格を分かる方は多々いるが、分けるに当たり差別化を行う事は大切だと思われる。

(重要文言)
Xが当初入社した訴外ANC
その事業を引き継いだY3
y3から無償で事業譲渡を受けたY1
それぞれの法人格としての使い分けが全くなされておらず、
全て一体の組織として、対客との関係でも、対従業員との関係でも活動していたと評価せざるを得ない。

Y1が設立されたのは、Y3がXが加入した組合から解雇無効の主張を前提に、バックペイや残業代等の支払いを求められ、これらの債務の支払いを免れるために法人格を濫用したと評価できる
法人格否認の法理を適用し、解雇無効によりY3に生じる債務については、Y1が負担すべき

(訴え)
Xが、Y3社から解雇されたことに対し、解雇が無効
Y3とY1社とは一体であるから、
Y1;に対し、Xが新たに就職することができた平成24年9月1日より前の同年8月31日までの賃金
同年9月1日以降の遅延損害金の請求

(判決)
Xに対する解雇の無効及びそれに伴う未払い賃金債務に関するY1への承継を認容
その余りの請求は棄却
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下請け、孫請けに対する安全配慮義務


(感想)
下請、孫請の従業員を使用している会社には大いに関係するものと思います。
キッチリとした委託契約書と安全配慮義務違反が生じた場合の対策を保険で加入しておくなど、リスク対策を講じる必要があると思います。

(参考文言)
<安全配慮義務違反>
①から⑤より、Yは、下請従業員らに対する安全配慮義務が認められる。

① 元請企業が下請労働者に対し作業の遂行に関する指示その他の管理を行うことにより、人的側面について支払を及ぼしていること、また、元請企業が下請け労働者の作業環境を決定するなどして、物的側面について支払を及ぼしている事を要する。
② 下請従業員らは、主な作業についてY社の調達した工具、設備、材料、資材などを用いて行っていたと認められる
③ 下請従業員らの勤務先はYの下関造船所以外の下請・孫請の仕事を全く行っておらず
④ 下請従業員らの作業場所についてはYが決定していたと認められる
⑤ Yと下請従業員らは特別な社会的接触の関係に入っているという事が出来る

(訴え)
下請ないし孫請会社の従業員が、同造船所における労働に起因してじん肺に罹患したと主張
債務不履行(安全配慮義務違反)ないし不法行為に基づく損害賠償として、いずれも3,520万円およびこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた。

調査回答拒否に対する戒告処分の取消


(感想)
今回のケースでは、問題点を視認していることもあり、戒告処分に処するのは難しく、賠償についても、実損分は支払いをしてもらったこともあり、損害賠償は棄却されたことは良くあるケースであると思う。

(事件概要)
本件調査票の提出は拒否するが、業務において支障なきように現認してもらいたいと述べ、本件調査対象部位に入れ墨がないことを視認により確認された。
Xに対し、同人が刺青の有無などを訪ねる調査に所定の書面で回答しなかったことが職務命令違反に当たるとして、懲戒処分としての戒告処分

(訴え)
Xが、Y市に対し、上記調査は憲法13条などに違反する違憲・違法な調査
上記調査に回答するように命じた職務命令及び本件処分も違法
本件処分の取消ならびに国賠法1条1項に基づく慰謝料等を求めた。

(判決)
Xが求めた本件処分の取消は認容したが、損害賠償請求は棄却
X自身は刺青をしていないのであるから、本件調査対象部位をH所長らに視認させることにより、損害賠償を認めるほどの精神的苦痛を受けたとは認めがたい。
交通局から本件調査票を提出するよう求められたことについても、Xの人格的利益が侵害されたものと評価することはできない。
本件処分が違法であるとはいえ戒告にとどまるものであり、経済的不利益についても、判決により本件処分が取り消されることで、上記不利益は回避され、Xの名誉も回復されることになるのであるから、別個に慰謝料の支払いを命ずるまでの必要はない。
本件調査により特定の職員が刺青をしているとの情報を含む本件刺青情報を収集することはY市の個人情報保護条例6条2項に違反し違法
差別情報を収集することを目的とするものであるから、同項に反し違法

歩合給賃金規定の有効性

(感想)
歩合給を用いるための一つの考え方であると思う。
当たり前とは思いながらも、これに近い形で実情は運用している企業も多いと考えられる。
付加金の対策については一つの考え方として捉えることができる。

(重要文言)
タクシー乗務員である原告Xらに支払われる歩合給の計算に当たり、計算の基礎となる「対象額A」から時間外手当及び深夜手当等割増金を控除する旨定めているYの規定は、労基法37条の趣旨に反し、ひいては公序良俗に反する
民法90条により無効

<労働基準法>
37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金) 使用者が、第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を考慮して定めるものとする。
3 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
4 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

<民法>
90条(公序良俗) 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

交通費を実費支給する旨の規定とともに、歩合給の計算に当たり対象額Aから「交通費」として交通費に見合う額を差し引く旨の規定が明記されている。
これを無効と解すべきとはいえない。

Yが労基法37条の規定自体に違反したものとは認められないことになるから、Yに対して付加金の支払いを命じることはできない。

(訴え)
タクシー乗務員であるXらが、Y社の賃金規則は無効であり、Yは、控除された残業手当等相当額の賃金支払義務を負うと主張
未払賃金及び、これに対する遅延損害金の支払い、労基法114条に基づき付加金等の支払いを求めた。

(判決)
割増金と交通費の合計額が対象Aを上回る場合を別にして、揚げ高が同じである限り、時間外などの労働をしていた場合もしていなかった場合も乗務員に支払われる賃金は全く同じになるのであるから、本件規定は、法37条の規制を潜脱するものといわざるを得ない。

遺族補償年金の損益相殺


(感想)
普段、労災請求をするにあたっては余りお目にかかることはないですが、損害賠償としての話し合いの場においては、損益相殺という考え方が出るものです。

(重要文言)
労災保険法の遺族補償年金による填補の対象とする損害は、被害者の死亡による逸失利益などの消極損害と同性質

消極損害:実際には支払わないが、損害として認められる損害
積極損害:実際に支払った損害

被害者が不法行為によって死亡した場合、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したとき
損害賠償額を算定するにあたり、遺族補償年金につき、その填補の対象となる被扶養利益の喪失による損害と同性質であり、
かつ、相互補完性を有する逸失利益などの消極損害の元本との間で、損益相殺的な調整を行うべきものと解するのが相当

(事件概要)
安全配慮義務違反による損害賠償を請求

(判決)
損害賠償の支払いを命じた。
精神障害の要因となる睡眠不足を増長させた落ち度は軽視できないとして、過失相殺を3割
Xらに対して既に支給され、ないし支給が確定した労災保険遺族補償給付金及び葬祭料を、損害額の原本から控除すべきとした。

配置転換の有効性


(重要文言)
配転命令に業務上の必要性が存しない場合、配転命令が不当な動機・目的を持ってなされた場合、若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合には、当該配転命令は権利の濫用となる。

Y学園理事らがXを勤務態度に問題があると評価しているのに、教職員を研修する立場に選任することは合理的な判断であるとはいえず、「恣意的に行われていると認めるのが相当」

(事件概要)
YがXを23年4月13日に解雇
Y学園では平成19年頃に教職員組合が結成
Xは、20年4月以降、その執行委員長の地位にあった。
23年4月1日付でY学園本部教職員研修室勤務を命じられ
同月13日、本件配転命令を拒否したことを理由に即日普通解雇を通告

(判決)
Xに対し不当な目的を持って行われたもので、不当労働行為にも該当し、違法・無効である。
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