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割増賃金に対する付加金の請求


(感想)
付加金の支払いに関する明確な回答が載っているので、参考になる。

(重要文言)
労基法114条の付加金の義務は、使用者が未払い割増賃金等を支払わない場合に当然発生するものではなく、
労働者の請求により裁判所が付加金の支払いを命ずることによって初めて発生するものと解すべき
使用者に同法37条の違反があっても、裁判所がその支払いを命ずるまでに使用者が未払割増賃金の支払いを完了しその義務違反の状況が消滅したとき
裁判所は付加金の支払いを命ずることができなくなると解すべき

(訴え)
Yを雇用していたX社が、Yを普通解雇した旨主張
Yに対して、未払い賃金債務が173万1,919円を超えて存在しないことの確認
YがXに対して、上記解雇は無効であると主張
雇用契約に基づき、Yが雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認
未払割増賃金、未払賞与、解雇期間中の賃金及び付加金の支払いを求めた
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派遣労働者の黙示の労働契約の成否


(感想)
派遣法の改正もあるため、気にして見ておりましたが、派遣労働者の雇用に対しては、いつも通りの判断が出ていると思われる。
契約の転換方法については、一つの対策として参考になると思う。

(重要文言)
労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合
そのことだけにより、派遣労働者と派遣元との間の労働契約が民法90条違反などの理由により無効になることはない
企業間の業務請負契約あるいは労働者派遣契約が同様の理由で無効となることもない

労働者派遣法は、同法40条の4の規定の実効性を確保するために、
 厚生労働大臣による指導又は助言、
 労働契約締結の申込の勧告、
 それに従わないときは勧告を受けた者の公表という間接的な方法で労働契約締結の申込を促す
という制度を採用しているにとどまっている
同法40条の4の要件を満たした場合、
同条の直接雇用契約申込義務は公法上の義務
私法上の雇用契約申込義務が発生するものではない。

Y1が派遣可能期間が経過していることを知りながら同期間を超えてXの受け入れを継続したことを持って、Y1が直接雇用契約申込義務を履行したものと認めることはできない

(参考条文)
民法90条(公序良俗) 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

派遣労働法40条の4(派遣労働者の雇用) 派遣先は、第35条の2第2項の規定による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第40条の2第1項の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第35条の2第2項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であつて当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならない。

公法と私法 :公法とは、国家と市民との関係を規律する法をいい、私法とは、私人間の関係を規律する法をいう。具体的には、憲法や行政法が前者の典型であり、民法や商法が後者の典型とされる。

労働基準法6条(中間搾取の排除) 何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

(事件概要)
Y2社は製造業務請負、人材派遣などを事業内容とする株式会社
両者の間に資本関係などはない。
Xは、Y2社との間で、雇用主をY2とし就労場所をY1とする内容の期間雇用契約書に署名
Y1・Y2間で平成21年1月13日、同年3月末日をもって労働者派遣契約を終了させるとの合意がなされた。
Xを含む派遣労働者に対して、Y1との労働契約の締結を希望する場合には、契約期間を3か月単位、最大でも2年11か月までとし、基本給を時給810円とする旨などの労働条件を提示

平成21年1月30日 Y2はXに対し、別作業をするように提案し、それができないのであれば休業してもらうことを伝える。
同年2月2日 Y2はXに対し、別作業をすることの提案に対する回答がないのであれば休業してもらうと伝え、Xは同日以降、Y1において就労していない。
平成21年2月13日 Y2は、派遣契約の終了に伴い
① 希望退職に応じる
② Y2あるいはAでの就労を希望する
のいずれを希望するかなどを訪ねるアンケートを配布
Xは回答を拒否

(訴え)
Xが、派遣先であるY1社に対し、
① 期間の定めのない労働契約上の地位確認
② 賃金請求権に基づく未払賃金の支払い
を求め、Y1社ら(派遣会社Y2含む)に対し、
③ 不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料100万円及び、遅延損害金の支払い

(判決)
Y1は「平成21年1月に有期とはいえ労働契約の締結を提案したが、Xはこれに応じなかったこと」を指摘し、その主張を退けた。
雇用契約申込義務違反の不法行為が成立するものと認めることができない。
<不法行為>
労働者派遣については「労働基準法6条違反の問題は生じないと解される」
平成21年1月に有期とはいえ労働契約の締結などを提案するとの限度では違法状態の是正を図った
Xはこれに応じなかった

公務員のうつ病による自殺と損害賠償請求


(感想)
公務員の場合、国賠法が適用されるため、個々人ではなく、国又は公共団体が賠償責を負うことは知っておきたい。
葬祭料については、実際に支払ったものを自らが申請するので、損害として改めて計上しないことも知っておきたい。
いつものことながら、遺族補償一時金の支給については、損益相殺的な調整をしている。

(重要文言)
Y1組合との関係は雇用ではなく、任用関係にあったもので、民主的な規律に服すべき公務員関係の一環をなすもの
民間の雇用関係とはおのずと異なる法的性質を有する
公務員に対する指揮監督ないし安全管理作用も国賠法1条1項にいう「公権力の行使」に該当する。

国賠法1条に基づく責任が認められることから、Y3及び、Y2は個人としての不法行為を負わない。

国賠法1条(公務員の不法行為と賠償責任、求償権)
1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

<安全配慮義務違反>
勤務が過酷であることや上司らのパワハラを認識しながら、何らの対策を講じることなく、新人医師に我慢してもらい、半年持ってくれればよい、持たなければ本人が派遣元の大学病院に転属を自ら申し出るだろうとの認識で放置
Y1にはKの心身の健康に対する違反が認められる。

X1は自らが相殺を行った者として同給付申請を行っていたものである
上記認定にかかる葬祭費用150万円は実際的にX1の固有の損害とみるのが相当
上記相殺補償によりその限度で既に損益相殺済みの者として扱う。
本件損害として改めて計上をしない

遺族補償一時金の支給を受け、又は支給を受けることが確定したとき
その補填の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当

(事件概要)
時間外勤務時間は
平成19年10月 205時間50分
同年11月 175時間40分
自殺前3週間 121時間36分
自殺前4週間 167時間42分

Y2から握り拳で1回、ノックするように頭を叩かれて、危ないと注意されたこと等、Y3やY2から多くの指導を受けたり注意されたりしていた。

平成19年12月10日午前零時頃 自宅として居住していた本件病院の職員用宿舎の浴室内にて、コンロで燃料を燃やし、一酸化炭素中毒となって自殺

22年8月24日付 本件自殺は公務災害に当たると認定
X1は、地方公務員災害補償基金より、遺族補償一時金、遺族特別支給金等及び、葬祭補償を受領

(訴え)
Xらが、Y1組合の運営する本件病院に勤務していたKが過重労働や上司らのパワハラにより、うつ病を発症し、自殺に至った。
Y1及び、当時のKの上司であったY2とY3に対し、債務不履行または不法行為に基づき、
死亡慰謝料等及び、損害元金の各支払いを求めた。

(判決)
Kが従事していた業務は、質的にも相当過重なものであったばかりか、
Y2やY3によるパワハラを継続的に受けていたことが加わり、これらが重層的かつ相乗的に作用して一層過酷な状況に陥ったものと評価

過重業務やパワハラがKに与えた心理的負荷は非常に大きく、同人と職種、職場における立場、経験などの点で同等の者にとっても、社会通念上客観的にみて本件疾病を発症させる程度に過重であったと評価
これらの行為と本件疾病との間には優に相当因果関係が認められ
本件自殺は本件疾病の精神障害の症状として発言したと認めるのが相当
パワハラなどと本件自殺との間の相当因果関係も認めることができる。


X1について3,081万8,745円
X2について6,929万3,745円

労災保険給付は使用者自らの負担といえるか

(感想)
労基法と労災保険法の関係性を示した判例といえる。内容は条文を並べたものであるが、労災保険の支給が使用者自らの負担の場合と異にするものではないと判断されたのは有意義である。

(重要文言)
業務災害に関する労災保険制度は、労基法により使用者が負う災害補償義務の存在を前提
労災保険法に基づく補償給付の実質は、使用者の労基法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであると解するのが相当

使用者自らの負担により災害補償が行われている場合とこれに代わるものとしての労災保険法に基づく保険給付が行われている場合、
労基法19条1項但し書の適用の有無につき取り扱いを異にすべきものとはいいがたい

(事件概要)
15年3月13日に医療機関で頸肩腕症候群に罹患
平成15年6月3日から1年間の欠勤及び、16年6月3日から1年間の私傷病休職、さらに18年1月17日からの欠勤について、「Y大学勤務員災害補償規程」に照らし、労働災害による「欠勤」
規程所定の欠勤期間である3か年が経過した平成21年1月17日に至ってもXの症状にほとんど変化がなかった
規程に基づく2年間の業務災害休職
「休職期間を満了しても、なお休職事由が消滅しないとき」に該当するものと判断し、解雇
打切補償として1,629万余円を支給
平成23年10月24日付で本件解雇の意思表示

(訴え)
打切補償として平均賃金の1200日分相当額の支払いを受けたうえでされた解雇
Xは労基法81条にいう同法75条の規定によって補償を受ける労働者に該当せず、
本件解雇は同法19条1項但し書所定の場合に該当するものではなく
同項に違反し無効
労働契約上の地位の確認などを求めた

(判決)
労基法81条にいう同法「75条規定によって補償を受ける労働者」に含まれるものに対して同法81条の規定による打切補償を行ったものと認められ
本件については労基法19条1項ただし書の規定により同項本文の解雇制限の適用はなく、本件解雇は同項に違反するものではない。

懲戒解雇の有効性

(感想)
当たり前のことではあるが、弁明の機会を与えることは重要である。また、懲戒事由記載の文言についても、「著しく不良」「極めて重要」など、かなり認めてもらうには高いハードルがあると思われる。

(重要文言)
同条2号所定の事由(職務怠慢、素行不良)
その職務の遂行の積極的な懈怠があり、
その懈怠が顕著な場合であることを要する
職務の遂行に顕著な支障をきたした場合、その行状が著しく不良な場合であることを要する

9号(無許可の物品持ち出し)
明示的な持ち出しの禁止を認識しながら、殊更、業務上極めて重要な物品を持ち出すなど、その情状の悪いことが顕著なことを要する。

11号(加害行為)
行為者の行為の故意・過失の有無・程度、加害行為による損失の代償を考慮し、その情状の悪いことが顕著なことを要する

就業規則52条2項(懲戒処分)
その事実を調査し、関係協議のうえ、処分を決定する旨定めている。
同条に定める手続きを踏む必要があり、殊更に懲戒解雇は懲戒処分のうち最も過酷な処分である
特段の支障がない限り、事前に弁明の機会を与えることが必要というべき

(事件概要)
Xに対し、処分決定書を交付
同日付の懲戒解雇処分を通告
処分理由は、
就業規則55条2号 職務怠慢、素行不良
就業規則55条9号,11号 無許可の物品持ち出し、Y法人に対する加害行為

(訴え)
XがY法人から3次にわたり懲戒解雇の意思表示を受けた。
これらの解雇はいずれも無効であると主張
Y法人との間で雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める
雇用契約に基づき、賞与を含めた未払賃金および遅延損害金の支払いを求めた

(判決)
サーバーセキュリティ更新業務などの各行為について、就業規則55条2号に該当するまでのものとは認められない
事前の弁明の機会を得ないまま懲戒解雇を行うことは懲戒手続きにおける手続き的正義に反するものとして社会的相当性を欠き、懲戒権の濫用となる

懲戒処分による精神障害・自殺の業務起因性

(感想)
労災の認定基準に対しては、従業員の過失の有無を問わないところから、懲戒事由に対する精神疾患でも認定されるところが興味深い。精神障害については、認定基準に従って行うことについても覚えておきたい。

(重要文言)
<傷病と業務との間の相当因果関係の判断基準>
業務上の傷病とは、当該傷病が被災労働者の従事していた業務に内在する危険性が発言したものであると認められる必要があると解される。
<業務の危険性の判断>
同種の平均的労働者、すなわち、何らかの個体側の脆弱性を有しながらも、当該労働者と職種、職場における立場、経験等の社会通念上合理的な属性と認められる諸要素の点で同種の者
特段の勤務軽減まで必要とせずに通常業務を遂行することができる者を基準
当該労働者の置かれた具体的状況における心理的負荷が一般に精神障害を発症させる危険性を有し、
当該業務による負荷が他の業務以外の要因に比して相対的に有力な要因となって当該精神障害を発病させたと認められれば、
業務と精神障害発病との間に相当因果関係が認められると解するのが相当
<精神障害の業務起因性>
厚生労働省の平成23年12月26日付の認定基準に従って判断するのが相当

(参考条文)
労基法第75条(療養補償)
1 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
2 前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。

(事件概要)
平成16年2月13日 アルコール検知、停職2日の懲戒処分
平成20年6月28日 アルコール検知、バス業務を行わず、下車勤務を行う。事情聴取
平成20年7月3日 署長からお前はクビだと言われた。死んだほうが楽だなどと述べた。
平成20年7月4日 同年6月29日以降、食事を摂っていないため、ケトンガスが体内で発生し、検知器が作動してしまった
平成20年7月7日 自殺

(訴え)
Xの夫である亡Kについて、退職を強要されたことが原因で精神障害を発症し、その結果自殺したもの
本件精神障害が労災保険7条1項1号及び労基法75条所定の業務上の疾病に該当する。
平成21年6月19日 監督署に対し、遺族補償年金などの支給を請求
不支給処分をしたため、その取消を求めた。

(判決)
Kが自殺当時適応障害を発病していたことを認定
アルコール検査に3回引っかかったとの発言や、クビになるかもしれないとの認識
Kの心理的負荷の強度は「強」と評価

精神障害は、業務に起因して発病したもの

うつ病・自殺との業務起因性


(感想)
因果関係に対して、残業時間が大いに影響することが分かるが、安全配慮義務違反については、ここまで企業で行えるかは不安である。今回、代表者の損害賠償はないという判断ですが、今後の判例にも注目したい。

(重要文言)
<安全配慮義務違反とKの自殺との相当因果関係>
① Kの残業時間は、平成20年が1か月平均37.9時間
平成21年32.9時間
平成22年25.8時間
格別多いとはいえない。
② 担当業務は、現場管理で、主に書類作成業務が中心、原子力発電所の運転に係わるものではなく、必ずしも精神的負荷が多い業務とは言い難いもの

<安全配慮義務違反>
従業員であるKの体調不良を把握した以上、安全配慮義務の一環として、具体的に不良の原因や程度などを把握
必要に応じて産業医の診察や指導などを受けさせるなどとすべき

本件)これを怠り、その限度でKに対して慰謝料の支払い義務が生じたものと認められる。

<代表者などの損害賠償責任>
Y2およびY4はそれぞれの会社の代表者や従業員であり、個人的にKに対して損害賠償を負うものではない。

(事件概要)
平成19年2月5日 精神科医院で受診し、不安障害や不眠症と診断
21年10月下旬ころ以降 うつ症状
22年3月と4月 Kが休暇取得や早退をすることがあった
Y2が様子を確認
Y2がメールで体調を問い合わせ
Y4も面談して仕事の状況などを確認
Kは「薬を飲んでいるが、体調は大丈夫である」「以前より改善していると思い、薬は使用していない」旨等の話をする。
Y1社に派遣労働者として雇用、派遣先Y3社合わせてY1社らに従事していたKが22年12月9日に自宅で自殺

(訴え)
妻子であるXらが、Y1の代表取締役Y2および、Y3の出張所長Y4と合わせてY1社らに対し、YらはKのうつ病を認識しまたは認識することができたのに安全配慮義務などを怠り、Kを自殺に至らしめた
Y2およびY4にたいしては不法行為に基づき
Y1社に対しては債務不履行および会社法350条に基づき
Y3社に対しては債務不履行及び使用者責任に基づき
X1につき3,898万8,104円およびX2につき1,949万4,052円ならびに遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
因果関係はないものの、安全配慮義務違反によって精神的苦痛を慰謝するには200万円の損害賠償を認めるのが相当


車内での受動喫煙症発症と業務起因性


(感想)
化学的な根拠を示すという考え方は面白いが、こんなことで労災請求をするのだというビックリもあります。

(重要文言)
公務上の災害といえるためには、単に当該公務と災害との間に条件関係が存在するだけではなく、社会通念上、公務に内在する危険の現実かとして災害が発生・増悪したといい得ること、すなわち公務と災害との間に相当因果関係が必要

(事件概要)
建築完了検査の現場に行くために公用車に乗り込んだ際、本件公用車に充満していたたばこの煙から生じた化学物質に曝露したことにより化学物質過敏症を発症した等と主張
公務災害認定を申請
Xに生じた疾病は公務上の災害とは認められないとして公務外災害と認定する処分

(訴え)
Xが本件処分の取消

(判決)
車内から厚生労働省又は環境省が示した基準値を上回る量のホルムアルデヒド、TVOC及びベンゼンが測定されていることは認められる
これらの基準値は人がその化学物質の示された濃度以下の曝露を一生受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろう数値として設定された基準値
待機の汚染に係わる環境上の条件につき人の健康を保護するうえで望ましいとして設定された基準値

本件実験の結果によっても、本件公用車内に、直ちに急性中毒症状のような重大な健康被害を生じさせるに足りる大量の化学物質が充満していたと認めることはできない。

Xの症状が他の要素に起因する可能性も認められること等の諸事情に照らすと、社会通念上、本件公用車を使用するという公務に内在する危険が現実化して化学物質過敏症を発症したと認めることはできず、Xの化学物質過敏症の発症に関して公務起因性を認めることはできない。

期間契約者に対する雇止めの有効性


(感想)
期間雇用者であっても、労働契約法による制限が掛かることが辛いところです。
客観的に合理的な理由に当てはまる状況は、各会社にとっては辛いが、これを乗り越えるような状況を作ることもまた重要だと思います。

(参考条文)
労働契約法
19条(有期労働契約の更新等)  有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
1 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
2 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

(重要文言)
期間の満了時に当該労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある場合、解雇権濫用法理が類推適用され、使用者による雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、当該契約の期間満了後における使用者と労働者間の堀津関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の関係となる

<雇止めの有効性>
軽微なものとして客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない。
① 数日間の病気欠勤
② 育児が業務に影響する
③ 比較的遅い時間まで授業や会議等の一部を十分に行えなかった。
④ 出張旅費申請の在り方や教務上の事務手続きの不備

(事件概要)
契約期間は23年4月1日から24年3月31日まで
Y学園は、平成24年3月19日、Xに対し、「雇用契約終了の予告通知書」を交付
同月31日をもって本件労働契約を終了する旨を通知

(訴え)
Y学園の行った雇止めは無効であると主張
労働契約上の地位の確認および未払賃金の支払いを求めた。

(判決)
労働契約法19条2号により、従前と同一の労働条件で再度更新されたものとみなされる。

休職規定変更及び、復職拒否の有効性


(感想)
労働契約法10条により、就業規則の変更の有効性を求めるのが難しくなっている現状だと思います。
また、うつ病については、従業員に承諾を得て、診療録の提供を受けるなど、医師との密なやり取りが不可欠になってきていると思います。
余談にはなりますが、本裁判で記載されている復職要件の9項目は他の事業所でも十分に使える内容にはなっていると思います。

(重要条文)
<労働契約法>
10条(就業規則による労働契約の内容の変更) 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
※本件
業務外傷病のうち特に精神疾患は、一般的に再発の危険性が高く、完治も容易なものではない
「健康時と同様」の業務遂行が可能であることを復職の条件とする本件変更は、業務外傷病者の復職を著しく困難にするもの
変更の必要性及びその内容の相当性を認めるに足りる事情は見当たらない。
合理的なものということはできない。

(重要文言)
業務外傷病により休職した労働者について、治癒したというためには、原則として、労働者が主張・立証すべきもの

使用者が休職制度を設けるか否か、その制度設計については、基本的に使用者の合理的な裁量に委ねられている

内部資料として作成されたものにすぎず、従業員には開示されていない。
内規による運用が本件雇用契約の内容として、Xの復職可否の判断を無条件に拘束するものではない。

Xの復職可否の判断の際に医師に照会し、Xの承諾を得て、同医師が作成した診療録の提供を受けて、Yの指定医の診断も踏まえて、診断書及び本件情報提供書の内容を吟味することが可能であったが、何らの医学的知見を用いることなくして、診断を排斥
不合理なものであり、その裁量の範囲を逸脱又は濫用したものというべき

(事件概要)
平成22年12月13日 うつ状態と診断
同月14日 Yに診断書を提出
23年10月14日まで 傷病休暇を取得
24年9月1日 就業規則の変更
24年12月20日まで 療養休職
24年12月6日 診断書及び情報提供書を提出
※症状が改善したため、同月14日より就労可能であるとの所見が記載
同月17日 Y指定医の診察を受け、復職に問題ないとの診断
平成24年12月20日 雇用終了に関する通知を交付し、本件雇用契約終了を通知

<就業規則の変更>
傷病休暇、療養休職および復職の制度に関し、
復職とは従来の業務を健康時と同様に通常業務遂行できる状態の勤務を行うことをさし
リハビリテーションとして短時間勤務などが必要な場合、休職期間中に行うもの
※療養休職者の復職可否判定基準
①本人が職場復帰に対して十分な意欲を示している。
②通勤時間帯に一人で安全に通勤ができる。
③復職する部門の勤務日、勤務時間の就労が継続して可能であること。
④業務に必要な作業をこなせること。
⑤作業などによる疲労が翌日までに十分回復していること。
⑥適切な睡眠覚醒リズム。
⑦昼間の眠気がないこと。
⑧業務遂行に必要な注意力・集中力が回復していること。
⑨休職期間が満了するまでに問題なく職務が遂行できる健康状態に回復していること。

(訴え)
雇用契約を締結した後、業務外傷病により傷病休暇及び療養休職を取得した原告Xが、療養休職期間満了時に休職事由が消滅したから、X・Y間の雇用契約がY社の就業規則により終了するものではないなどと主張

Yに対し、雇用契約上の権利を有する地位の確認を求める。
未払賃金及び遅延損害金の支払いを求めた。

(判決)
地位確認及び賃金支払いについてXの請求を認容

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roumutaka

Author:roumutaka
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