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精神障害と業務起因性


(考察)
精神障害について、パートタイマーと正社員とで心理的負荷の強度が異なることは勉強になる。

(重要文言)
平均的労働者にとって心理的負荷が一般に精神障害を発症させる危険性を有しているとはいえ、
特段の業務以外の心理的負荷及び個体側の要因のない場合には、業務と精神障害の発生との間に相当因果関係が認められる。

基本的には判断し神及び認定基準を踏まえつつ、当該労働者に関する精神障害発病に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌して判断するのが相当

Xと同種の労働者の特質に鑑みれば、パートタイマーは正社員と比べて事故の業務及びその危険性に対する心構えの程度も相対的に低いと解される。
本件事故にかかる心理的負荷の強度は「強」と評価すべき

(事件概要)
平成21年1月12日 Xは、回転歯によって左示指が中節骨を9mm残して切断
平成21年3月11日 療養補償給付及び休業補償給付の各支給決定
同年12月2日 障害等級12級の認定を受け、傷害補償一時金の支給決定
平成21年2月17日 PTSDとの診断
平成21年11月19日 療養補償給付の請求
22年10月21日 休業補償給付の請求をしたが、いずれも不支給の決定
24年4月25日 審査請求、再審査請求の棄却を経て、各処分の取消を求めた

(判決)
Xが何らかの精神障害を発症していることは当事者間に争いがない。
Xが患った精神障害は適応障害であると認めるのが相当
業務との相当因果関係を肯定し、各不支給処分を取り消した。

懲戒処分の有効性

(考察)
業務命令による不支給を伴う処分は出来ないこと、デジカメでの就業規則の撮影が違法行為に当たらない点は、今後の仕事面においても留意したい。
2重処分と長期間経過後の懲戒解雇については、今までの判例が継続されている。
(重要文言)
賃金の全部または一部の不支給を伴う業務命令としての自宅謹慎及び車庫待機処分は、いずれも違法な不利益処分
業務命令として行うことはできず、懲戒処分として行わなければならない。
懲戒処分を行うことが可能であったにもかかわらず、これを行わなかった。

平成20年6月10日の乗務後、速やかに所定の懲戒手続きを行っていれば、懲戒解雇処分を行うことができたが、
二度にわたり違法な不利益処分を課しながら、これを撤回することなく、懲戒解雇処分を行った。

就業規則をデジカメで撮影しても、違法な行為とはいえず、弁護士への提供行為も何ら懲戒事由に当たらない。

(事件概要)
平成20年6月10日 Xらは、アルコール検知器による検査を受けないまま、大阪行きのバスに新人乗務員研修生4名を同乗させて出庫
平成20年6月12日 Xらに対し、処分通知
<処分通知>
同年6月10日の飲酒などの旨が記載
自宅謹慎 20年6月12日から同年7月1日 無給
車庫待機 同年7月2日から無期限 基本給のみ支給

同年7月下旬 バス乗務を指示し、バス乗務に従事
平成24年7月7日 Xらに対し、20年6月10日の乗務を理由として再びバス乗務を禁止し、無期限の車庫待機
平成24年9月13日 就業規則をデジカメで撮影し、データを弁護士に提供したことを理由として、出勤停止14日間の懲戒処分、10万3,548円を欠勤控除
平成25年3月11日 車庫業務を正当な理由なく拒否し、弁明において、今後も就労を拒否すると宣言したこと及び無断撮影した就業規則の返却通告を無視し、懲戒解雇の処分
平成26年6月30日 20年6月10日の乗務を理由として懲戒解雇の処分

(訴え)
Y社に勤務していたXらが、車庫待機処分並びに出勤停止および懲戒解雇の各懲戒処分がいずれも無効
労働契約上の地位確認、賃金及び不法行為に音づく損害賠償の支払いを求めた。

(判決)
賃金請求及び不法行為を理由とする損害賠償請求の額を除いて、Xらの請求をほぼ全面的に認容

派遣先の共同不法行為責任

(考察)
もちろんな判決だとは思うが、派遣先にも不法行為が発生する理由を明確にした判例であると思う。取締役の責任原因についても今後の参考になる。

(重要文言)
原告Xの出退勤の管理や作業の内容・方法に関する具体的な指示は、Y1が行っていたもの
Y2の従業員であるXとの間において、特別な社会的接触の関係に入ったもの
安全配慮義務を負っていた。

本件)
道板がXの体重に耐え得るものかあらかじめ確認し
安全でない道板を撤去し
または、より頑健かつ安全なものと交換するなどの義務
道板上で作業しないこと及び作業時に安全帯を使用することについて遵守するよう管理監督すべき義務

<取締役の責任原因>
安全配慮義務違反及び不法行為責任について、Y3に悪意または重大な過失があったことを具体的に示す的確な証拠はない。などとして否定

(事件概要)
Y2社と雇用契約を締結
Y1社に派遣
Xが、転落事故

(訴え)
主位的にはY1社らについての不法行為
Y1についての土地工作物責任にかかる共同不法行為に基づく損害賠償
Y1およびY2の安全配慮義務違反
Y3取締役としての任務懈怠責任に基づく損害賠償

(判決)
Y1およびY2の共同不法行為を認める。
Y3に対する請求などについては棄却

損害額:1,703万9,623円

精神障害と業務起因性

(考察)
精神障害について、パートタイマーと正社員とで心理的負荷の強度が異なることは勉強になる。

(重要文言)
平均的労働者にとって心理的負荷が一般に精神障害を発症させる危険性を有しているとはいえ、
特段の業務以外の心理的負荷及び個体側の要因のない場合には、業務と精神障害の発生との間に相当因果関係が認められる。

基本的には判断し神及び認定基準を踏まえつつ、当該労働者に関する精神障害発病に至るまでの具体的事情を総合的に斟酌して判断するのが相当

Xと同種の労働者の特質に鑑みれば、パートタイマーは正社員と比べて事故の業務及びその危険性に対する心構えの程度も相対的に低いと解される。
本件事故にかかる心理的負荷の強度は「強」と評価すべき

(事件概要)
平成21年1月12日 Xは、回転歯によって左示指が中節骨を9mm残して切断
平成21年3月11日 療養補償給付及び休業補償給付の各支給決定
同年12月2日 障害等級12級の認定を受け、傷害補償一時金の支給決定
平成21年2月17日 PTSDとの診断
平成21年11月19日 療養補償給付の請求
22年10月21日 休業補償給付の請求をしたが、いずれも不支給の決定
24年4月25日 審査請求、再審査請求の棄却を経て、各処分の取消を求めた

(判決)
Xが何らかの精神障害を発症していることは当事者間に争いがない。
Xが患った精神障害は適応障害であると認めるのが相当
業務との相当因果関係を肯定し、各不支給処分を取り消した。

労働者派遣法の申込義務における労働契約の有無


(考察)
労働者派遣法40条の4の申込義務について解説されているが、私法上の雇用契約が発生しない形を取っている。不法行為についても保護された利益を侵害していないという考え方がとられている。

(重要文言)
労働者供給事業への該当性(職安法違反)、及び派遣先と派遣労働者との間での明示又は黙示の労働契約の成立を否定

<派遣受入期間の制限のある業務について、派遣受入期間の制限への抵触日以降も、派遣労働者を使用しようとする場合(労働者派遣法第40条の4)>
申込義務は公法上の義務であり、これにより私法上の雇用契約申込義務が発生する訳でない。
本件では、派遣元から派遣先への抵触日通知も欠く。
派遣先の直接雇用の申込義務を否定

公法:国家と市民との関係を規律する法 憲法
私法:私人間の関係を規律する法 民法

<不法行為責任の有無>
派遣法の規制を順守
派遣労働者に対し、信義誠実の原則に則って対応すべき義務
この義務に違反して、派遣労働者の権利又は法律上保護された利益を侵害したとき

<正社員になることの勧誘>
Yの人事に関する責任ある立場の者による発言ではなく、Xらと日々労働を共にする現場の上司による意向打診
Xらの意向を社内の決定権限のある部局に伝えるとの内容
Xらの期待は、客観的にみて合理的な期待として権利又は法律上保護された利益とは認められない。

(事件概要)
Xらは、M各社において雇用
平成8年2月以降から18年11月10日以前には業務処理請負の従業者
翌11日以降は労働者派遣の派遣労働者
Xらの就労期間は、短い者で約4年、長い者では13年4か月に及んでいた。

平成21年11月頃、同月10日の労働者派遣契約の期間満了に際して、同契約が更新されないこと
翌11日以降、就業を拒否

(訴え)
労働契約上の権利を有する地位
信義則に則って対応すべき条理上の義務違反の不法行為

(判決)
偽装請負の下でも継続して訴外M社に雇用され賃金の支払いを受けていた。
実態が労働者派遣である以上、偽装請負ではなく形式上も労働者派遣とした場合と比べて、Xらに不利益があったとは認められない。

委託契約された看護師の労働者性


(考察)
医師の指示の下で仕事に従事する看護師の委託は難しいと思われる。
夜勤については、巡回命令を命じている時点で労基法上の労働時間に当たる可能性が見える。
賃金相殺については、控除後の額が少ないからといって、合理的な理由が認められないというのはどうだろう。
(重要文言)
<労働者性>
契約の形式や内容のみならず、実質的な使用従属性の有無を、労務提供の形態や報酬の労務対称性及びこれら委関連する諸要素をも勘案して総合的に判断すべき
① 使用者の指揮監督下において労務の提供を行うもの
→ 勤務場所や時間に関して拘束されている。
② 労務に対する対象を支払われるものである
→ 報酬の労務対称性も認められる。

医師の指示の下で、Yのケアプランに従って業務を遂行し、外来業務では医師の具体的な指示の下で診察解除業務に従事していた
これらの業務従事の指示などについて諾否の自由や代替性はない

<労働時間>
始業時刻は午前9時であるが、午前8時45分からの朝礼について「Xらは、朝礼への参加を事実上強制されていたといえ、朝礼の時間からYの指揮命令下に置かれたものと評価すべき」

<夜勤業務>
仮眠中であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たる。
労働契約上の薬務の提供が義務付けられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当

<賃金相殺>
賃金から家賃などを天引きした残額は2万5,000円であり、黙示的に同意していたとしても、自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在していたものとは認められない。

(事件概要)
Xらは、年棒300万円とするなどの年棒制契約を締結
Xらは、業務請負契約書と題する契約書を作成
C苑の家賃など合計13万円を賃金から天引き
夜勤業務に従事しており、夜勤の際、3回巡回をし、それ以外の時間で当ても、必要であれば適宜巡回

(判決)
Xらの請求を一部認容し、Yに未払い賃金等の支払いを命じた。

派遣・請負労働者の解雇ないし、雇止め


(考察)
派遣・請負に関する判例で良く見られるが、違法があったとしても、それ自体のみで不法行為を構成することはないという考え方に変わりはないようです。
それに以外については、期間途中の解雇、雇止めの合理性に関しては、認められるのは難しいということでしょうか。

(重要文言)
<期間短縮の合意の有効性>
本件期間短縮の合意により2か月間に短縮されたと認めた。

<解雇の有効性>
契約の当事者は契約の有効期間中はこれに拘束されるのが契約法上の原則
当該契約期間内の雇用継続に対する合理的期待は高いものといえる。
同条にいう「やむを得ない事由」とは、期間満了を待たずに直ちに契約を終了させざるを得ないような重大な事由をいうと解するのが相当

<雇止めの有効性>
契約更新のたびに契約書が作成されていたことに照らすと、労働契約が実質的に期間の定めのない契約と変わりがないものとなっていたとまで認めることはできないものの、
雇用継続についての合理的期待を有していたと解するのが相当

<不法行為>
派遣法違反についても、事実が認められたとしても、直ちに個々具体的な権利が損なわれたと見ることはできない。
不法行為を構成するに足る違法性があったことを認めるに足る主張、立証がない。

(事件概要)
Xらが、Y2との間で労働契約を締結し、Y1社で派遣労働者又は請負労働者として勤務
21年5月に解雇ないし雇止めをされた

Y1はY2に対し、平成21年4月の発注金額が1,304万225円であったところ、同年5月の発注金額を716万9,172円に減少させることを通知
Y2は、同年4月10日、Xらに対し、同年1月1日から同年12月31日までの1年間とされていた労働契約の契約期間を同年4月1日から同年5月31日までの2か月間とする新たな労働条件通知書への署名押印を求め、Xらはこれに応じている。
有効性などについては争いがある。

平成21年4月17日、Xらに対し、同年5月17日付で解雇する旨の解雇予告通知

(訴え)
Y1に対し、規範的・合理的意思解釈又は黙示の合意により期間の定めのない労働契約が成立
Y1がXらに対して行った21年5月17日付の解雇及び同月31日付の雇止めがいずれも無効
Y1との間で労働契約が存続していると主張
労働契約上の権利を有する地位の確認および同年6月1日以降本判決確定の日までの賃金の支払い
Y2社がXらに対して行った21年5月17日付の解雇及び同月31日付の雇止めがいずれも無効
Y2との間で期間の定めのある労働契約が存続していると主張
労働契約上の権利を有する地位の確認および同年6月1日以降本判決確定の日までの賃金の支払い
Y1らに対し、脱法的な派遣・請負関係の維持や不当解雇、雇止めをした共同不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料および弁護士費用相当額の支払い

(判決)
解雇は無効

懲戒処分の有効性

(考察)
今回の懲戒処分は当たり前の対応に思えるが、それでもなお院内にとどまるなどの考慮において全てにおいて有効とは認められない事は納得しづらい。

(重要文言)
<3か月間の停職>
3か月間の停職をもって対応したことは重きに失する。
懲戒処分には社会的相当性がない。
① Xの非違行為は決して軽微な態様のものではないが、前回の懲戒処分がなされてから4から5年後になされたもの
② 基本的には病院内部にとどまる行為
③ 患者に対して直接損害を与えるものではない

<降任・降格>
人事上の措置として特段違法と評価されるところは見当たらないこと等からすると、人事権を濫用したものではなく有効

<不法行為>
懲戒処分は無効であるが、客観的に合理的な理由があったなどの事情に照らせば、不法行為にはならない。

(事件概要)
医師Xが3か月間の停職の懲戒処分、医長から医員への降任、それに伴って降格されたことについて、これらが無効であるとともに、Xに対する不法行為に当たる。
① 医長として勤務し、本件降格前の給与を受ける雇用契約上の地位の確認
② 本件降格前の賃金額と実際に支払われた賃金額との差額等の支払い
③ 停職期間中に支払われるべき賃金等の支払い
④ 慰謝料300万円等の支払い

(判決)
病院の管理職として院外処方を推進する義務があったのに方針に従わず、それを妨げる行為、
検査室を私的に利用した上に、私物を撤去して退去するようにとの院長の命令にも従わなかったこと
パワハラをしたとして同僚を誹謗中傷、同僚の私事(懐妊)を病院内に公にしたことを指摘
懲戒処分には客観的に合理的な理由がある。

虚血性心不全死と業務起因性


(考察)
心疾患の業務起因性の判断枠組みについて詳細に記載されている判例であると思われる。

(重要文言)
<相当因果関係の判断枠組み>
① 本件疾病は、労基法施行規則別表第1の2第8号に規定する「心停止(心臓性突然死を含む。)」こと
② Kが従事していた業務が「長時間にわたる長時間の業務その他血管病変などを著しく増悪させる業務」に該当するということ
特段の反証のない限り、本件疾病及びこれを原因とする死亡は業務に起因するものであるという事ができる。

<脳血管疾患及び虚血性心疾患などの認定基準>
一定の合理性を有するものと認められる。
平均的労働者を基準として、Kの業務が長期間の過重業務に該当するか否かを判断すべきもの
疲労の蓄積の最も重要な要因である長時間労働の有無及びその程度について検討
本件発症前6か月間の業務の過重性を判断
その上で、本件発症前6か月より前の業務の過重性を付加的に検討するのが相当
業務の過重性については、1週間当たり40時間を超えて労働したか否かを考慮すべき
 
(事件概要)
Kが虚血性心不全により死亡
Xらが、労災保険法に基づく遺族補償給付などを請求
池袋労働基準監督署長がこれらの給付などを支給しない旨の各処分
Xらが本件各処分は違法であるとして、その取消を求めた。

(判決)
本件発症前36か月頃から、恒常的な長時間労働に従事してきたものというべき
Kの時間外労働時間数は100時間を超えるか又はほぼ100時間の長時間になっていたことが認められる。
恒常的な長時間労働及び出向後の更なる長時間労働に加え、業務に伴う精神的負荷によって疲労を蓄積
これにより、血管病変などが自然経過を超えて著しく増悪し、冠動脈狭窄が生じて胸痛が発症したものと認めるのが相当

Xの請求を認容

自殺の業務起因性


(考察)
自殺に関する業務起因性の判断枠組みをある程度正確に表してくれている判例であると思う。

(重要文言)
<業務起因性の判断枠組>
基本的には「精神障害に関する現行の認定基準(平23.12.26基発1226第1号)」にのっとって、当該労働者に関する精神障害の発症に関する具体的事情を総合的に考慮
必要に応じて認定基準を修正しつつ、業務と精神障害の発症との間の相当因果関係を判断するのが相当

<自殺を図った場合>
精神障害によって正常の認識、行動選択能力が著しく阻害され、
あるいは自殺行為を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態に陥ったものと推定し、業務起因性を認める。

(事件概要)
Kの妻であるXが、Kの精神障害発症と自殺が過重な業務負担等に起因するものであると主張
労働災害補償保険法に基づく遺族補償年金及び葬祭料を不支給とした秋田労基署長の処分取り消しを求めた。

(判決)
Kの自殺について業務起因性を認めることができるから、これを業務起因性がないものと認定してされた本件処分は違法である。
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