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定年再雇用者の賃金減額の有効性


(考察)定年再雇用者に対する対策として、大きな変化をもたらす判例であると思われる。今後の対策として、定年に向けての賃金規定での給与の引き下げ、時給社員での対応等を考えていく必要がある。

(重要文言)
<有期契約労働者と無期契約労働者との間の労働条件の相違が不合理であるか否か>
① 有期契約労働者の職務内容ならびに
② 当該職務の内容及び → 業務の内容及び責任の程度に差異がなく
③ 配置の変更の範囲 → 勤務場所や業務の内容を変更することがある点も両社で差異はなく

が無期契約労働者と同一であるにもかかわらず、
賃金額について、有期契約労働者と無期契約労働者との間に相違を設けることは、相違の程度に関わらず、正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理である

嘱託社員の労働条件の内賃金の定めに関する部分が無効である場合、
正社員就業規則の規定が原則として全従業員に適用される

無効である賃金の定めに関する部分については、正社員就業規則その他の規定が適用される

「特段の事情」の有無について、定年後継続雇用者の賃金を定年前から引き下げることそれ自体には合理性が認められる

(参考条文)
労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

(判決)
有期契約労働者である嘱託社員と、無期契約労働者である正社員との間に、その地位の区別に基づく定型的な労働条件の相違があることが認められる
労働条件の相違が期間の定めの有無に関して生じたものであることは明らか

正社員の就業規則に基づく賃金請求が認められた。
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季節労働者の更新と雇止めの正当性


(考察)
労働契約法に関して、理解を深めるのに良い判例であると思われる。

(重要文言)
労働契約法19条2号は、期間満了後も継続することに対する期待と、有期労働契約を終了させる使用者の必要性との調整をはかるため、
期待することについて合理的な理由が認められる場合
雇止めすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められず、
同一の労働条件で有期労働契約の更新または、申込を承諾したものとみなす旨を規定するもの

労働契約法19条2号は、法定更新を定める規定

労働契約法18条2項は、同期間が一定限度内であれば両契約期間を通算することを認めており、
同法19条も、各契約間に全く空白のないことまで求めているものではない

労働契約法19条2号の類推適用をするためには、空白期間は、法定更新によって継続されると法律上評価することができる程度のものにとどまる

(参考条文)
労働契約法19条(有期労働契約の更新等)
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
①  当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
②  当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

労働契約法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
2  当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

(事件概要)
季節労働者として従事していたXが、労働契約締結を拒否
約17年間にわたり、3月下旬から6月中旬、9月下旬から11月下旬までの時季に労働契約を締結
前年から雇用されている作業員が引き続き雇用できることを見込んだ人員配置とか同計画を立案
採用を希望して拒否されたものはほぼおらず
「本契約満了後の再契約は、保障されない」との記載があるが、説明を行ったことはなかった。

(訴え)
不当な更新拒絶である等と主張
労働契約上の地位の確認並びに未払い賃金等の支払いを求めた。

(判決)
一定の季節の一定の期間に業務が終了することが当然に予定されている
長さも一定ではなく、次年度の各有期労働契約の期間を確定的に予定することも困難
各契約期間の間には、3か月、4か月の空白期間があり、各契約期間と同程度ないしそれ以上の長さに及んでいる
各契約の終了時に時期についての始期付き雇用契約が締結されていたとは認められない。

季節労働者であるXの雇止めにつき、合理的期待があるとは認められない。
労働契約法19条2号の類推適用が否定され、取り消された。


使用者の責めに帰すべき事由と休業手当


(考察)
休業手当の支払いに関して、新たな発見があった判例である。今後の不利益変更について考えさせられる。

(重要文言)
ノルマ未達成を理由の配転命令につき、
賞罰規程の目的は、困難な売上高の達成を求めるもの
達成できなかった場合には、直ちに固定給を月額10万円減額するか、他の支店に異動させるという制裁を課すもの
過酷に過ぎ、著しく不合理
本件配転命令が権利の濫用に当たる

破壊されたXとの信頼関係は、本件配転命令を撤回し、誓約書を提出しただけでは回復したとは認められない
撤回後も出勤していないのは、Yの責めに帰すべき事由
民法536条2項により、本件配転命令の撤回後も賃金支払い義務を負う

労基法26条は、使用者の責めに帰すべき事由によって不能となった場合、
使用者の負担において労働者の最低生活を6割以上の限度で補償しようとする趣旨に出たもの
使用者の責めに帰すべき事由により、違法に配転命令を受け、これにより発令前の勤務部署に出勤することが出来なくなった場合
適用ないし準用される

Xが他社から支払いを受けた給与などを控除すべきであるが、
その限度は、XがYから受けた給与の4割に相当する額にとどまる

(参考条文)
民法536条(債務者の危険負担等)
2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

労基法26条(休業手当)
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

労基法114条(付加金の支払)
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。
第20条(解雇の予告)
第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
第39条(年次有給休暇)

(事件概要)
平成24年7月1日付でY社に入社
平成25年9月12日付
「M社員」を対象とする賞罰規定
月間受注ノルマを200万円
ノルマを達成できなかった従業員に対して、Y側で決定する支店へ異動または、
雇用条件を変更(固定給が月額約10万円低い「S社員」等)

同年9月度に売上高200万円を達成できなかったところ
平成25年10月18日、本件配転命令が発令
以後、Yに出勤しなかった。
Xは、他社において就労し収入を得ていた。

Yは、本件訴訟継続中の平成26年8月15日、配転命令を撤回、福井市店への出勤命令を発令
誓約書を提出

信頼関係が確立しているとはいえないとして、出勤を拒否

(訴え)
Xが、福井市店から長野支店への配転命令を受け、その有効性を争ったことを契機にして出勤していない
① 1か月あたり29万円の未払い賃金
② 未払いの時間外労働賃金
③ 労基法114条所定の付加金及びこれらに対する遅延損害金

(判決)
Xは、50年近く福井市内で暮らし、発令当時は妻子と同居していた
内示もないまま突如として長野支店への異動を命じられることは、X及びその家族にとって生活上著しい不利益となることは明らか
権利の濫用によるものであって、違法

未払い賃金額を算定するにあたって、他社から支払いを受けた給与などを控除するべき
XがYから支払いを受けていた月額29万円の4割に相当する11万6,000円にとどまる
6割が休業手当

臨時社員に対する同一労働同一賃金の正当性


(考察)
臨時社員の存在意義を明確にしている判例であると思われる。曖昧な気もするが、8割という格差は今後の参考になると思われる。

(重要文言)
「正社員」「臨時社員」の区別は、雇用契約の内容の際から生じる契約上の地位であり、労基法3条にいう「社会的身分」には該当しない。

臨時社員として採用したまま固定化し、2か月ごとの雇用期間の更新を形式的に繰り返すことにより、女性正社員との顕著な賃金格差を維持拡大
同一(価値)労働同一賃金の原則の根底にある均等待遇の理念に違反し、公序良俗違反となりうる

均等待遇の理念も抽象的なもので、使用者側の裁量を認めざるを得ない

同じ勤務年数の女性正社員の8割以下となる場合に、裁量が公序良俗違反となるとして、その差額分につき違法な賃金差別を認めるにとどめた。

臨時従業員制度も企業の雇用調整の必要上、その存在意義を否定し得ないから、単なる名目的なものと断ずることはできない。

(参考条文)
労基法3条(均等待遇)
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

(訴え)
正社員と勤務時間も勤務日数も変わらないフルタイムのパート労働者として「同じ仕事」をしてきたにもかかわらず、
過去5年余りの間に約230万円から550万円の賃金差別を受けたとして、不法行為に基づき、
差別賃金相当額など総額約1億4700万円の損害賠償を請求

(判決)
女性正社員の賃金の8割までの差額を被告の不法行為に基づく損害額と認定し賠償支払いを命じた。

業務委託注文者との黙示の雇用契約の成否


(考察)
今後、このケースの判例は多く存在しそうな感じがするが、重要文言についての内容は覚えておく必要がある。

(重要文言)
職安法44条及び労基法6条に違反する行為がされた場合においても、
特段の事情がない限り、そのことだけによって本件雇用契約が無効になることはないと解するのが相当
上記特段の事情の存在を肯定し得るだけの主張立証はないといわざるを得ない

(参考条文)
会社法429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)
1項 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。

職業安定法44条(労働者供給事業の禁止)
何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

労働基準法6条(中間搾取の排除)
何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

(事件概要)
Xが、Y4社との間で雇用契約を締結
ミクロとY4社との間の業務委託契約
ミクロとY1社との間の業務委託契約
Y1社のD工場に派遣されて作業に従事


(訴え)
雇用契約および業務委託契約はいわゆる偽装請負である
公序良俗に反して無効
雇用契約上の地位の確認
Y1、Y4については共同不法行為に基づく損害賠償
Y2、Y3、Y5と合わせて共同不法行為または会社法429条1項に基づく損害賠償を求めた。

(判決)
仮に、Yらの職安法44条及び労基法6条に違反する共同不法行為や任務懈怠が認められるとしても、
これらの行為により、Xが損害を被ったという事はできない。
Xの請求は退けられた。


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