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情報漏洩を理由の懲戒解雇の有効性

(考察)
懲戒解雇に至るまでの過程の難しさを再認識した判例であるとともに、理由のある懲戒事由に関しては不法行為についてもある程度考慮してもらえるという認識も持てる判例である。

(重要文言)
就業規則所定の懲戒事由に該当するには、本件勧告および報道によるYの名誉または威信の毀損についてXに帰責事由がなければならず

顧客情報の漏洩は懲戒事由に該当するが、Xに背信的な意図がなかった
軽視できない違反行為は反復継続していなかった
漏洩について注意や指導がなされていなかった
弁明の機会が与えられていなかった
懲戒権の濫用に当たる

(重要条文)
金融商品取引法
第百六十六条(会社関係者の禁止行為)次の各号に掲げる者(以下この条において「会社関係者」という。)であつて、上場会社等に係る業務等に関する重要事実(当該上場会社等の子会社に係る会社関係者(当該上場会社等に係る会社関係者に該当する者を除く。)については、当該子会社の業務等に関する重要事実であつて、次項第五号から第八号までに規定するものに限る。以下同じ。)を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買その他の有償の譲渡若しくは譲受け、合併若しくは分割による承継(合併又は分割により承継させ、又は承継することをいう。)又はデリバティブ取引(以下この条、第百六十七条の二第一項、第百七十五条の二第一項及び第百九十七条の二第十四号において「売買等」という。)をしてはならない。当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を次の各号に定めるところにより知つた会社関係者であつて、当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする。
一  当該上場会社等(当該上場会社等の親会社及び子会社並びに当該上場会社等が上場投資法人等である場合における当該上場会社等の資産運用会社及びその特定関係法人を含む。以下この項において同じ。)の役員(会計参与が法人であるときは、その社員)、代理人、使用人その他の従業者(以下この条及び次条において「役員等」という。) その者の職務に関し知つたとき。
二  当該上場会社等の会社法第四百三十三条第一項 に定める権利を有する株主若しくは優先出資法 に規定する普通出資者のうちこれに類する権利を有するものとして内閣府令で定める者又は同条第三項 に定める権利を有する社員(これらの株主、普通出資者又は社員が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条及び次条において同じ。)であるときはその役員等を、これらの株主、普通出資者又は社員が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 当該権利の行使に関し知つたとき。
二の二  当該上場会社等の投資主(投資信託及び投資法人に関する法律第二条第十六項 に規定する投資主をいう。以下この号において同じ。)又は同法第百二十八条の三第二項 において準用する会社法第四百三十三条第三項 に定める権利を有する投資主(これらの投資主が法人であるときはその役員等を、これらの投資主が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。) 投資信託及び投資法人に関する法律第百二十八条の三第一項 に定める権利又は同条第二項 において準用する会社法第四百三十三条第三項 に定める権利の行使に関し知つたとき。
三  当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知つたとき。
四  当該上場会社等と契約を締結している者又は締結の交渉をしている者(その者が法人であるときはその役員等を、その者が法人以外の者であるときはその代理人又は使用人を含む。)であつて、当該上場会社等の役員等以外のもの 当該契約の締結若しくはその交渉又は履行に関し知つたとき。
五  第二号、第二号の二又は前号に掲げる者であつて法人であるものの役員等(その者が役員等である当該法人の他の役員等が、それぞれ第二号、第二号の二又は前号に定めるところにより当該上場会社等に係る業務等に関する重要事実を知つた場合におけるその者に限る。) その者の職務に関し知つたとき。

上場会社などと契約締結の交渉をしている法人の役員などがその者の職務に関し重要事実を知ったとして同号に該当するというには、
単にそのものが職務の遂行上重要事実を知ったというのでは足りず、
当該契約の締結若しくはその交渉または履行に関して他の役員などが知った重要事実が法人内部でその者に伝わったということのできる場合でなければならない
重要事実が法人内部で伝わったというためには、伝達された情報が重要事実の主要部分を認識し得るものとなっていることが必要である。

(事件概要)
原告Xが「社外の者に対し未公表の法人関係情報を伝え、受領者がそれをもとにインサイダー取引を行ったとして証券取引等監視委員会の勧告を受け、報道された」ことを理由として懲戒解雇

(判決)
本件勧告の内容が事実であればXの帰責事由があることは明らかであるが、認定した事実が事実であったとは認められない
懲戒事由に該当しない。

Xには証券会社の営業に携わる者として著しく不適切な行為があり
それ自体が懲戒事由に該当する可能性があった
懲戒事由の一部はその情状も決して軽視することのできない違反行為
懲戒事由について証券取引等監視委員会が認定した事実を信じて懲戒解雇を行ったYの判断は不自然・不合理ではない
本件懲戒解雇は不法行為には該当しない

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合併に伴う退職金減額の従業員同意の有効性


(考察)
給与や退職金についての労働条件の不利益変更についての難しさがつづられた判例であると思われる。署名だけでは効力をもたらすことが難しいというのは、相当なハードルの様に思われる。

(重要文言)
労働条件は、労働者と使用者との個別の郷甥によって変更することができ、
このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても、
その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではない。

変更が賃金や退職金に関するものである場合、
変更に対する労働者の同意の有無についての判断は慎重にされるべき

<労働条件の変更に対する労働者の同意の有無>
 労働者の行為の有無だけでなく、
 労働者にもたらされる不利益の内容及び、程度
 労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様
 当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等

当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべき

(事件概要)
合併により、Xらにかかる労働契約上の地位を承継したYに対し、Cの職員退職給与規程に基づく退職金に支払いを求めた事案

(判決)
新労働条件による就労に同意した者の氏名欄に署名押印
新労働条件による就労に同意した者の氏名欄などへの署名押印により、本件基準変更の効力が生じたとした二審判決が破棄、高裁に差し戻された。


派遣労働者の派遣先における黙示の労働契約の有効性


(考察)
派遣労働者の派遣先での従業員としての地位の確認は、これまでも多くの判例が存在し、法律上違反をしていても、それによりすぐに無効とはならないという結論が多く、今回についても不利益をこうむっていないという点で、主張を否定している。
今後、法改正によりどのように判例のスタイルが変化するかが楽しみである。

(重要文言)
労働者派遣法が、労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講じる
派遣労働者の保護などを図り、
派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする
行政上の取締法規

取締法規:特定の行為や状態の発生を防止するために定められた規定。法学上,効力規定に対する概念。私人に対して一定の行為を制限または禁止する規定で,警察法規がその例である。公共の安全,秩序の維持をはかることを目的とするから,その違反に対しては制裁を加えたり,現状回復などの措置を講じたりするが,その制限禁止に違反してなされた法律行為の効力には, 原則として影響を及ぼさない。

労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合、特段の事情がない限り、そのことから直ちに派遣労働者と派遣元の間の雇用関係が無効になるものではない。

仮に、同法に違反する事実が認められたとしても、直ちに法律上保護されるべき利益が損なわれたものとみることはできない。

<黙示の労働契約が成立するか否か>
派遣元の企業体としての独自性の有無
派遣労働者と派遣先の間の事実上の使用従属関係
労務提供関係及び賃金支払関係の実情などを検討

(事件概要)
X5は、平成16年9月1日から17年7月31日まで派遣従業員として、Y1に就労
同年8月から18年1月31日までY1と期間従業員として労働契約を締結し、就労
同年2月から同年8月まで、Y3と派遣契約を締結し、Y1に就労
同年9月から同年12月まで、期間従業員として就労
19年1月から20年3月31日まで、Y3と派遣労働契約を締結し、就労
平成20年2月頃無断欠勤
派遣就労を終了することに決定
同年3月26日から、Y2に派遣されて就労
平成21年2月、Y3とY2との間の派遣契約が解除
Y3は、X5の派遣労働契約の終期である同年3月末日を待たず、同年2月28日又は同年3月4日に解雇

(訴え)
X1およびX2はY1を派遣先、Y4を派遣元とする派遣労働者として勤務していた者
Y1との間で労働契約が成立しているとして、労働者たる地位の確認および賃金の支払いを求める
Y1およびY4に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うように求める

X3及びX4は、Y2の雇止めが無効
Y2に対し、地位の確認および賃金の支払いを求める。
Y2及びY1に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うように求め

X5は、Y3を派遣元とし、Y1その後はY2を派遣先として就労
Y1との間で労働契約が成立している
Y1に対し、地位の確認および賃金の支払いを求める
Y1、Y2及びY3に対し、不法行為に基づく慰謝料300万円を連帯して支払うように求める

(判決)
何らかの権利又は法律上保護された利益が侵害されたとは認められず、不法行為が生じるとはいえない。
派遣登録をし、派遣労働者として就労することを認識した上でY1における就労を継続
派遣労働契約に基づく相応の賃金の支払いを受けており
不利益が生じていたものとは認められない。

正社員と有期社員の労働条件の差異の合理性

(考察)
通勤手当については、今後見直していく必要がある。正社員との差異についても、本社のみの事業所であれば、その他の差異をキッチリと見つけておく必要があると思われる。

(重要文言)
労働契約法20条「不合理と認められるもの」とは
当該労働条件上の相違が、職務内容や職務内容・配置の変更の範囲の異同にその他の事情を加えて考察して、
当該企業の経営・人事制度上の施策として不合理なものと評価せざるを得ないものを意味すると解すべき

本件)
正社員は、就業場所および業務内容の変更命令を甘受しなければならず、
全国規模の広域移動の可能性がある
教育を受ける義務を負い、
中核を担う人材として登用される可能性がある
労働契約法20条に反するということもできない。

通勤手当に関し、正社員が5万円を限度として通勤距離に応じて支給(2km以内は一律5,000円)
契約社員は3,000円を限度でしか支給されないとの労働条件の相違
公序良俗に反するとまではいえないものの、経営・人事制度上の施策として不合理なもの
労働契約法20条「不合理と認められるもの」に当たる。

無効とされた労働契約の条件が自動的に代替されることになるとの効果を労契法20条の解釈によって導くことは困難

通勤手当について労契法20条に反し、同条に違反する労働条件の定めは、強行法規違反として無効
不法行為を構成する。

(参考条文)
労働契約法20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

(言葉の意味)
強行法規 :法令の規定のうちで、それに反する当事者間の合意の如何を問わずに適用される規定をいう。

(訴え)
期間の定めのある労働契約を締結したXが、期間の定めのない労働契約を締結した労働者と比較して不合理な相違のある労働条件を定めた部分は公序良俗に反して無効
同一の権利があると主張

(判決)
正社員の最低支給額である5,000円と、受給額である3,000円の差額である2,000円は不法行為による損害
労契法20条施行後の差額合計1万円が被った損害と認められる。

会社分割の有効性と、街宣行為の範囲


(考察)
司法書士も連帯して損害賠償の請求を認められている事について、今回の判例は考えさせられる。街宣行為についての一つの範囲が記載されていることについても参考になる。

(重要文言)
不法行為による損害について、賃金相当額から未払い賃金立て替え制度による支給分と他社で就労して得た収入額を控除した額と
慰謝料80万円、本件組合について無形損害150万円

<街宣行為の態様>
労使関係の場で生じた問題は、労使関係の領域である職場領域で解決すべき
使用者といえども、住居の平穏や地域社会ないし私生活の領域における名誉・信用が保護、尊重されるべき
使用者の私生活の領域において行われた場合には、労働組合活動あることの故をもって正当化されるものではない
D2の運転する車を追尾したり、自宅前にパイプ椅子を並べて待機したりする行為は、正当な範囲を逸脱しており、
多数回にわたりD1自宅付近で頻繁にD1個人名を名指しし、家族も含め避難する発言を拡声器で叫ぶなどの行為は社会的相当性を逸脱している。

C2はD1とともに数回Eの事務所を訪れた際、会社分割をして労組を排除する、
分割無効の申立期間が経過した後で会社をつぶした方がいいなどのEの発言があったと認められる
会社分割を用いた組合排除という手法は法的知識がなければできない
D1がEにその目的を秘匿して本件会社分割の手続きを依頼するのも不自然不合理
不当労働行為目的であると知らなかったとするEの証言は採用できない

(訴え)
D1とその妻であるD2が、自宅付近での街宣などの差止、損害賠償を請求
司法書士のEは本件会社分割が不当労働行為であることを認識した上でD1らと共謀して不法行為を行った
本件組合及びA2らの被った損害について連託して賠償することを求めた。

(判決)
事業の主要部分を会社分割により新設会社に移転
分割前会社の事業を廃止
壊滅を目的とした不当労働行為であり違法
分割前の元代表取締役D1および、新設会社Mの代表取締役C2による共同不法行為に当たる。

D1の母で自身も取締役であったD3について、D1に実質的に経営を任せており、会社分割に関与したとは認められない。
損害賠償請求が棄却

会社分割の手続きを行った司法書士Eについて、D1らと共謀して不法行為を行ったものと認められる。
D1らと連帯して損害賠償の支払いが命じられた。

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roumutaka

Author:roumutaka
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